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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1102107 |
審判番号 | 不服2002-18918 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-30 |
確定日 | 2004-08-19 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第134291号「マイクロコンピュータ」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年12月22日出願公開、特開平 6-348867〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年6月4日の出願であって、平成16年3月29日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの「マイクロコンピュータ」に関するものである。 2.当審の拒絶理由 一方、当審が平成16年1月22日付けで通知した拒絶の理由は、次のとおりである。 「1.本件出願の請求項1乃至3に記載された発明は、下記の点で発明の詳細な説明に記載されたものとは認められないから、本件出願は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 【請求項1】に、「前記インラインモードにおいて、前記PROMに書込みを行った際に、前記演算係数等を書き込んだことを示すフラグを前記PROMに書込み、前記MCUモードにおいて、前記マイクロコンピュータは、前記フラグが書き込まれている場合に前記演算係数等を用いてシステム制御する」と記載されているが、この記載によれば、請求項1に記載されたマイクロコンピュータは、システムの性能をテストした後得られる真の「演算係数等」以外の「演算係数等」を「PROM」に書込むものをも含むことになる。 しかしながら、発明の詳細な説明には、上記インラインモードにおいて「演算係数等」を「PROM」に書き込むこと等について、段落【0028】に、「…アプリケーションシステムとしてテストする。その結果制御性能等初期の性能がでない場合、所望の性能がでる真の定数,演算係数等を求め、プリント基板上でプローバ等を用いてPROMライタにより真の定数等を第2のエリアに書き込むとともに第2のエリアに書き込まれたことを示すフラグを第3のエリアに書き込む。…」と記載されているだけであり、インラインモードにおいては、テスト結果により所望の性能がでる真の「演算係数等」を求めて、それを「PROM」に書込むことしか記載されていない。 よって、本件出願の請求項1に記載された発明及びこの請求項1を引用する請求項2乃至3に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。 さらに、請求項1の記載によれば、「PROM」に真の「演算係数等」を書込むのは、マイクロコンピュータであるが、発明の詳細な説明の記載によれば、それは、PROMライタである。 この点からも、本件出願の請求項1に記載された発明及びこの請求項1を引用する請求項2乃至3に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。 2.本件出願の請求項4に記載された発明に関して、発明の詳細な説明の記載は下記の点で不備であって、当業者が容易に実施できる程度にその構成が記載されているものとは認められないから、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 記 請求項4には、「CPUと、プログラマブルROM(PROM)と、演算用RAMと、周辺回路ブロックとを1つのチップに内蔵するマイクロコンピュータを用いたシステムであって、 前記マイクロコンピュータはユーザシステムへ該マイクロコンピュータを実装した状態で前記PROMの一部へ演算係数等を書き込むインラインモードを備えていて、 前記PROM内にシステムを制御するための仮の定数、演算係数等を格納する第1のエリアと、該仮の定数等を用いてシステム性能をテストした後得られる真の定数、演算係数等を格納する第2のエリアと、該第2のエリアに真の定数等を格納したことを示すフラグ等を格納する第3のエリアとを有し、 前記インラインモードでアクセスできる前記PROMのインライン領域外に前記第1のエリアがあり、前記PROMのインライン領域内に前記第2のエリアと第3のエリアとがあり、 前記マイクロコンピュータは、前記フラグ等を調べ、前記フラグ等が書き込まれている場合は、前記第2のエリアに格納された真の定数、演算係数等を用いて前記システムを制御することを特徴とするマイクロコンピュータを用いたシステム。」と記載されている。 この記載によれば、仮の定数、演算係数等を格納する第1のエリアは、インラインモードではアクセスできないのであるから、最初の仮の定数、演算係数等に替えて第2の仮の定数、演算係数等を用いてシステム性能をテストすることはできない。 したがって、請求項4に記載された発明を実施するためには、仮の定数等を用いてシステム性能をテストした後、さらに加えてテストすることなく、真の定数、演算係数等が得られなければならない。 しかしながら、発明の詳細な説明には、真の定数、演算係数等を得ることに関して、段落【0028】の9行乃至18行に、「マイクロコンピュータに制御プログラムとともに第1のエリアに仮の定数,演算係数等を格納し、該マイクロコンピュータを他の部品とともにプリント基板上に組立てアプリケーションシステムとしてテストする。その結果制御性能等初期の性能がでない場合、所望の性能がでる真の定数,演算係数等を求め、プリント基板上でプローバ等を用いてPROMライタにより真の定数等を第2のエリアに書き込むとともに第2のエリアに書き込まれたことを示すフラグを第3のエリアに書き込む。」と記載されているだけであって、どのようにして、すべてのユーザシステムにおいて、仮の定数、演算係数を用いて常に一度で最適な定数、演算係数が求められるのかが、明らかでない。 以上のとおりであるので、本件出願の発明の詳細な説明には、請求項4に記載された発明について、当業者が容易にその実施ができる程度に発明の構成が記載されているとは認められない。 なお、上記拒絶理由の通知は、原査定の29条第2項違反による拒絶の理由が解消されたことを意味するものではなく、手続が継続された場合には、改めて、原査定で引用された文献から当業者が容易に発明をすることが出来たものかどうかの判断をすることになるのでこの点に留意されたい。」 3.明細書の記載 (1)請求項1の記載 平成16年3月29日付けの手続補正により補正された請求項1は、以下のとおりである。 「CPUと、プログラマブルROM(PROM)と、演算用RAMと、周辺機能ブロックとを備えたマイクロコンピュータにおいて、 システム制御等のマイクロコンピュータ機能としてのMCUモードと、前記PROMにプログラムや仮の演算係数を含むデータを書き込むPROMモードと、ユーザシステムへ該マイクロコンピュータを実装した状態で前記PROMの一部へPROMライタを用いて真の演算係数等を書き込むインラインモードとの少なくとも3モードを切り換えるモード切り換え信号を入力する外部ピンを有し、 前記CPUと、前記PROMと、前記演算用RAMと、周辺機能ブロックとが1個のチップに収容されており、 前記PROMは、前記インラインモードにおいて、前記PROMに書込みを行った際に、前記真の演算係数等を書き込んだことを示すフラグが書込まれ、 前記MCUモードにおいて、前記マイクロコンピュータは、前記フラグが書き込まれている場合に前記真の演算係数等を用いてシステム制御することを特徴とするマイクロコンピュータ。」 (2)発明の詳細な説明の記載 真の演算係数等を求めることに関して、発明の詳細な説明には次のように記載されている。 「本発明の更に他の実施例を図6を用いて説明する。図6において実線(外枠)は図4と同様にPROMの全アドレス空間を示す。60はインラインモードでアクセス可能なインライン領域、61は仮の定数,演算係数等を格納する第1のエリアでインライン領域の外にある。62はシステムのテスト後に得られる真の定数,演算係数等を格納する第2のエリア、63は第2のエリアに真の定数等が格納されたことを示すフラグを格納する第3のエリアである。マイクロコンピュータに制御プログラムとともに第1のエリアに仮の定数,演算係数等を格納し、該マイクロコンピュータを他の部品とともにプリント基板上に組立てアプリケーションシステムとしてテストする。その結果制御性能等初期の性能がでない場合、所望の性能がでる真の定数,演算係数等を求め、プリント基板上でプローバ等を用いてPROMライタにより真の定数等を第2のエリアに書き込むとともに第2のエリアに書き込まれたことを示すフラグを第3のエリアに書き込む。次に、システムを動作させたときマイクロコンピュータは第3のエリアのフラグを調べ、フラグが書き込まれていれば第2のエリアの定数等を用いてシステムを制御する。この結果システムは所望の制御性能を得ることができる。」(段落【0028】) 4.当審の判断 そこで、まず、上記の「拒絶の理由1」の記載不備が解消されたか否かを検討すると、「真の演算係数等」について請求項1においてはそれをどのようにして求めるものか何ら特定しておらず、一方、発明の詳細な説明には、上記のとおり段落【0028】に「マイクロコンピュータに制御プログラムとともに第1のエリアに仮の定数,演算係数等を格納し、該マイクロコンピュータを他の部品とともにプリント基板上に組立てアプリケーションシステムとしてテストする。その結果制御性能等初期の性能がでない場合、所望の性能がでる真の定数,演算係数等を求め、」と記載されているだけであり、マイクロコンピュータを実装した後でのテストを行わないで「真の演算係数等」を求めることについては全く記載されていない。 したがって、マイクロコンピュータを実装した後でのテストを行わないで求めた「真の演算係数等」をも含む請求項1に記載された発明及びこの請求項1を引用する請求項2に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。 よって、上記当審の通知した「拒絶の理由1」は、依然として解消していない。 次に、上記の「拒絶の理由2」の記載不備が解消されたか否かを検討する。 平成16年3月29日付けの手続補正書によって、上記「拒絶の理由2」でその「真の定数、演算係数等」をどのようにして求めるのか不明である旨指摘した請求項4は削除され、一方、請求項1に上記「真の定数、演算係数等」に相当する「真の演算係数等」の文言が付加されたので、請求項1に記載された発明の実施可能性について検討し、上記の「拒絶の理由2」の記載不備が解消されたか否かを検討する。 請求項1には、「真の演算係数等」をどのように求めるのかについて規定されていないので、発明の詳細な説明の段落【0028】の記載を参照すると、「真の演算係数等」は、マイクロコンピュータを他の部品と共にプリント基板上に組み込んだ後にテストを行なって求めているので、請求項1に記載された発明の「真の演算係数等」を、マイクロコンピュータを他の部品と共にプリント基板上に組み込んだ後にテストを行なって求めるものとして解釈すると、請求項1に記載された発明において、実装後に最初のテストを行う時点では、仮の演算係数等を用いてテストを行うことになる。 そして、この仮の演算係数等を用いたテストで所望の性能が得られなければ、再度テストを行なって所望の性能を得ようとすると考えられるが、当審の拒絶の理由でも指摘したように、仮の定数、演算係数等を格納する第1のエリアは、インラインモードではアクセスできないのであるから、最初の仮の定数、演算係数等に替えて第2の仮の定数、演算係数等を用いてシステム性能をテストすることはできない。真の演算係数を求めるためには、実装後、仮の演算係数でテストし、最初のテストで所望の性能を得ることができるか、又は、最初のテストの結果から、最適な演算係数を何らかの手法により決定できることが必要であるが、常に最初のテストで所望の性能を得ることができるという確実な保証はなく、また、発明の詳細な説明には、最初のテストの結果から、最適な演算係数を決定する手法について何ら記載されていないから、請求項1に記載された発明について、発明の詳細な説明には、当業者がその発明を容易に実施できる程度にその発明の構成について記載されているものとは認められない。 よって、上記「拒絶の理由2」も依然として解消していない。 5.まとめ 以上のとおりであるので、本件出願の請求項1乃至2に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められず、且つ、本件出願の発明の詳細な説明及び図面には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に、その発明の構成が記載されているとは認められないから、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、且つ、本件出願は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-06-09 |
結審通知日 | 2004-06-15 |
審決日 | 2004-06-28 |
出願番号 | 特願平5-134291 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 酒井 恭信 |
特許庁審判長 |
徳永 民雄 |
特許庁審判官 |
山本 穂積 須原 宏光 |
発明の名称 | マイクロコンピュータ |
代理人 | 作田 康夫 |
代理人 | 玉村 静世 |