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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1102342
審判番号 不服2000-17029  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-10-26 
確定日 2004-08-26 
事件の表示 平成 8年特許願第 4788号「ひ素含有廃水の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月29日出願公開、特開平 9-192677〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年1月16日の出願であって、平成12年9月19日付けで拒絶査定がなされ、平成12年10月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成12年11月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成12年11月22日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成12年11月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)手続補正の内容
本件手続補正の内容の一つは、特許請求の範囲を次の請求項1及び2のとおりに補正するものであり、具体的には、原査定時の請求項1及び2の「汚泥を550〜700℃の温度でか焼処理するとともに、」という記載を「この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、」とそれぞれ補正する内容を含むものである。
「【請求項1】ひ素含有廃水にカルシウム化合物を添加してpH12以上に調整して固液分離(第1固液分離)後、この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、該固液分離後の処理液に該処理液中のひ素と添加する第2鉄塩の重量比(Fe/As)が5〜20となるような量の第2鉄塩を添加しpHを6〜9に調整して固液分離(第2固液分離)し、前記第2固液分離後の汚泥を処理前の廃水中あるいは前記第1固液分離後の廃水中に返送することを特徴とするひ素含有廃水の処理方法。
【請求項2】ひ素含有廃水に酸化剤を添加して廃水中の3価のひ素を5価のひ素に酸化した後、カルシウム化合物を添加してpH12以上に調整して固液分離(第1固液分離)後、この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、該固液分離後の処理液に該処理液中のひ素と添加する第2鉄塩の重量比(Fe/As)が5〜20となるような量の第2鉄塩を添加しpHを6〜9に調整して固液分離(第2固液分離)し、前記第2固液分離後の汚泥を処理前の廃水中あるいは前記第1固液分離後の廃水中に返送することを特徴とするひ素含有廃水の処理方法。」
(2)当審の判断
本件手続補正の上記内容は、次の(イ)及び(ロ)の理由により、平成15年改正前の特許法第17条の2第3項及び同法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。
(イ)新規事項の追加について
本件手続補正の上記「この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、」という補正内容の根拠は、当初明細書の段落【0020】の記載、表4及び図3であるから、以下、これら記載について検討する。
当初明細書の段落【0020】には、「その後か焼炉でか焼処理し、か焼条件とか焼焼成物の溶出濃度との関係を調べた。その結果を表4及び図3に示す。その結果、か焼焼成物からのひ素溶出濃度はか焼温度によって大きく変化し、500℃で長時間か焼した場合でも処理前の値とほとんど変わらないが、550℃以上とした場合急激に低下し、550℃で1.5時間程度、600〜700で1時間程度で、廃棄物処理法施行令で定められたAs0.3mg/リットル以下を容易に達成できることが判明した。」と記載されているが、この記載で言及されているか焼処理の温度と時間の関係は、「550℃で1.5時間程度」と「600〜700で1時間程度」の2通りだけであり、「550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間」という関係について記載されているわけではない。また、表4及び図3にも、550℃、600℃及び700℃の3通りの温度とか焼時間との関係が図示されているだけであり、当初明細書及び図面には、550〜700℃の温度範囲のいずれの温度の場合でも、そのか焼時間が少なくとも1.5〜0.5時間の範囲内であればよいとする何らの記載もなく、またこのことが自明の事項であるとも云えない。
してみると、原査定時の請求項1及び2の「汚泥を550〜700℃の温度でか焼処理するとともに、」という記載を「この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、」とそれぞれ補正する上記手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないと云うべきであるから、平成15年改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
(ロ)記載不備について
本件手続補正の上記「この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、」という補正が仮に新規事項の追加でないとした場合でも、「この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理する」という記載は、本願請求項1及び2に係る発明を明確に記載したものではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満足するものではない。
すなわち、本願請求項1及び2に係る発明の具体的なか焼処理は、補正された明細書の段落【0020】の「550℃で1.5時間程度、600℃で1時間程度、700℃で0.5時間程度で、廃棄物処理法施行令で定められたAs0.3mg/リットル以下を容易に達成できることが判明した。」という記載によれば、550℃で1.5時間程度、600℃で1時間程度、700℃で0.5時間程度というものであるが、請求項1及び2の上記「550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理する」という記載では、上記の具体的なか焼温度と時間との関係すら明確に特定されているとは云えないし、そもそも550〜700℃の温度範囲のどの温度の場合に何時間か焼処理する必要があるのかについて明確に特定されているとは云えないから、上記補正の内容は、本願請求項1及び2に係る発明を明確に記載したものではないと云うべきである。
また、上記「この汚泥を550〜700℃の温度範囲で、かつそれぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理するとともに、」という記載における「それぞれの温度に対して少なくとも1.5〜0.5時間か焼処理する」の意味するところが必ずしも明らかではなく、したがって例えば具体的な温度である550℃、600℃及び700℃のそれぞれの温度において少なくとも1.5時間、1時間及び0.5時間程度のか焼処理を行なうとも解することができるところ、本願の補正された明細書の段落【0020】の記載や表4及び図3からそのように解することはできないから、上記補正の内容は、本願請求項1及び2に係る発明を明確に記載したものではないとも云える。
してみると、本件手続補正によって補正された請求項1及び2に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)むすび
したがって、本件手続補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第3項及び同法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての審決
(1)本願発明
平成12年11月22日付け手続補正は、上記のとおり却下すべきものであるから、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成12年6月26日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、以下のとおりである。
「【請求項1】ひ素含有廃水にカルシウム化合物を添加してpH12以上に調整し、固液分離(第1固液分離)後、汚泥を550〜700℃の温度でか焼処理するとともに、該固液分離後の処理液に、該処理液中のひ素と添加する第2鉄塩の重量比(Fe/As)が5〜20となるような量の第2鉄塩を添加してpHを6〜9に調整し、固液分離(第2固液分離)することを特徴とするひ素含有廃水の処理方法。」
(2)引用刊行物とその記載事項
原査定の理由で引用された引用例1(特開昭51-20485号公報)及び引用例2(特開昭60-125292号公報)には、それぞれ次の事項が記載されている。
(i)引用例1:特開昭51-20485号公報
(1a)「重金属特に砒素を含有するスラッジを、過剰の石灰の存在下で焙焼温度700℃以上で焙焼し、これにより重金属特に砒素を不溶化状態に固定することを特徴とするスラッジの処理方法。」(第1頁特許請求の範囲)
(1b)「廃酸処理スラッジ中の砒素は前述のとおり硫酸工場よりの廃酸に由来するものであるが、廃酸中では亜砒酸又は砒酸の形で溶解しており、これらが中和剤として添加された粉末石灰(主としてCa(OH)2)と反応して亜砒酸カルシウム又は砒酸カルシウムを生成するか、あるいは場合によっては砒素とカルシウムが不安定な形で結合していると考えられる。後述の実験の結果によれば、廃酸を中和し石膏を分離したあとの排液を再度中和して廃酸スラッジをうる際、再中和用の石灰を過剰に添加してpHを約12〜13に調節しておくことが、本発明による焙焼処理により得られた焙焼物中の砒素の溶出を抑制するのに極めて効果的であることが見出された。この点よりみて、カルシウムと不安定に結合している砒素は過剰な石灰の存在下で焙焼することにより難溶な砒酸カルシウムに固定され、砒素の溶出が抑制されるものと考えられる。」(第2頁左上欄第20行乃至右欄第17行)
(ii)引用例2:特開昭60-125292号公報
(2a)「本発明は、有毒物質である水溶性ひ素(As)化合物を含有する廃水を処理して、ひ素またはその化合物を除去する方法に関する。」(第1頁左欄第17行乃至第19行)
(2b)「また、pH値が6〜9の範囲に調整した廃水にFeCl3・6H2O、Fe(OH)3等のFe(III)塩を添加処理する方法も知られており、この場合処理水中のひ素濃度を1ppm以下とすることができるがFe(III)塩を比較的多量に添加する必要があり経済的ではなかった。」(第1頁右欄第9行乃至第14行)
(2c)「本発明方法に用いられるFe(III)塩は、水溶性の塩であって、特にFeCl3・6H2O、Fe(OH)3等が好ましい。Fe(III)塩の添加量としては、廃水に対して200〜1000ppmとするのが好ましい。」(第2頁左上欄第9行乃至第12行)
(3)当審の判断
引用例1の上記(1b)には、「廃酸を中和し石膏を分離したあとの排液を再度中和して廃酸スラッジをうる際、再中和用の石灰を過剰に添加してpHを約12〜13に調節しておくことが、本発明による焙焼処理により得られた焙焼物中の砒素の溶出を抑制するのに極めて効果的であることが見出された。」と記載されており、この排液には砒素が含有していることも明らかであるから、引用例1には、「廃酸を中和し石膏を分離したあとの砒素含有排液に石灰を過剰に添加してpHを約12〜13に調整し廃酸スラッジを得る処理方法」が記載されていると云える。そして、この廃酸スラッジは、上記(1a)の記載によれば、焙焼温度700℃以上で焙焼されるものであるから、これら記載を請求項1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、「廃酸を中和し石膏を分離したあとの砒素含有排液に石灰を過剰に添加してpHを約12〜13に調整し、廃酸スラッジを得た後、廃酸スラッジを700℃以上の温度で焙焼処理する砒素含有排液の処理方法」という発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本願発明1と引用例1発明とを対比すると、本願発明1の「ひ素含有廃水」は引用例1発明の「廃酸を中和し石膏を分離したあとの砒素含有排液」に、「カルシウム化合物」は「石灰」に、「固液分離後」は「廃酸スラッジを得た後」に、「汚泥」は「廃酸スラッジ」に、「か焼処理」は「焙焼処理」にそれぞれ相当すると云えるから、両者は、「ひ素含有廃水にカルシウム化合物を添加してpH12〜13に調整し、固液分離(第1固液分離)後、汚泥を700℃の温度でか焼処理することを特徴とするひ素含有廃水の処理方法」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:本願発明1では、「第1固液分離後の処理液に、該処理液中のひ素と添加する第2鉄塩の重量比(Fe/As)が5〜20となるような量の第2鉄塩を添加してpHを6〜9に調整し、固液分離(第2固液分離)する」のに対し、引用例1発明では、このような処理を行なっていない点
次に、この相違点について検討するに、本願発明1の上記相違点は、要するところ、処理液中に残留するひ素をさらに第2鉄塩を添加して処理するというものであるが、このような第2鉄塩による処理は、上記引用例2に記載されているように周知の手段である。そして、第2鉄塩の添加量についても、ひ素の毒性を考慮すれば過不足なく処理するために当業者が適宜容易に設定することができた程度のものと云える。
してみると、本願発明1の上記相違点は、処理液中のひ素の残留の度合に応じて周知の処理手段をさらに組み合わせた程度のことであり、この程度のことは必要に応じて当業者が容易に想到することができたと云うべきである。

4.むすび
したがって、少なくとも本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その余の請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-29 
結審通知日 2004-06-29 
審決日 2004-07-12 
出願番号 特願平8-4788
審決分類 P 1 8・ 561- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉水 純子杉江 渉小久保 勝伊  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 綿谷 晶廣
金 公彦
発明の名称 ひ素含有廃水の処理方法  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  
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