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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1102449
審判番号 不服2000-20196  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-21 
確定日 2004-09-02 
事件の表示 平成10年特許願第 57492号「含油食品排水の処理装置および処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月31日出願公開、特開平11-235599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年2月23日の出願であって、平成12年11月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成12年12月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成13年1月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成13年1月22日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年1月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)手続補正の内容
本件手続補正の内容の一つは、特許請求の範囲を次の請求項1、2のとおりに補正するものである。
「【請求項1】食品排水中の油脂分を浮上分離するグリーストラップと、この前記グリーストラップに活性化されたバクテリアを供給するバクテリア活性化装置と、前記グリーストラップに空気を供給する曝気装置と、前記食品排水の排出口、前記バクテリア活性化装置および前記グリーストラップを連結する配管とを備えた含油食品排水の処理装置において、前記処理装置は、界面活性剤水溶液を収容した貯蔵容器と、吸込み口が前記貯蔵容器に連結しかつ吐出し口が前記配管に連結している水ポンプとをさらに備え、なおかつ前記バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアおよび前記界面活性剤水溶液を前記食品排水の排出口から前記グリーストラップの間で合流させて導入できる配管を設けたことを特徴とする含油食品排水の処理装置。
【請求項2】食品排水中の油脂分を浮上分離するグリーストラップと、この前記グリーストラップに活性化されたバクテリアを供給するバクテリア活性化装置と、前記グリーストラップに空気を供給する曝気装置と、前記食品排水の排出口、前記バクテリア活性化装置および前記グリーストラップを連結する配管とを備えた含油食品排水の処理装置を用いて前記含油食品排水を処理する方法において、前記バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアおよび界面活性剤水溶液を、前記食品排水の排出口から前記グリーストラップの間の配管に合流させて導入することを特徴とする含油食品排水の処理方法。」
そこで、本件補正後の少なくとも上記請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明2」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する。
(2)引用刊行物と記載事項
原査定の理由で引用された引用例1(特開平9-220589号公報)及び引用例3(特開平9-38630号公報)には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:特開平9-220589号公報
(1a)「【請求項1】 仕切板によって複数個の区画に区分されており、入口が調理場等の排水源に接続し、出口が浄化槽等の排水処理設備に接続し、排水中に含有されている油脂分を浮上分離するグリーストラップと、容器及び該容器内に収納された下記(a)〜(k)の機器からなるバクテリア活性化装置と、曝気ブロワー及び該ブロワーに接続し、前記グリーストラップ内に設置されている散気管からなるグリーストラップ用曝気装置と、各装置機器間を連結する配管とから構成される含油排水の処理設備。
(a)・・・・・(k)・・・・・。」(特許請求の範囲)
(1b)「【産業上の利用分野】本発明は食品加工工場、食堂、ホテルの調理場又は家庭の厨房等から排出される食品排水を処理するグリーストラップの中において、阻集分離された油脂分を高活性バクテリアによって効率よく分解し、排水を浄化する含油排水の処理設備に関する。」(段落【0001】)
(1c)「【実施例】以下図面に基づいて本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例を示す系統図である。図中2点鎖線で囲んだ部分が本発明に係る部分であり、その他は関連部分である。同図において調理場等1からの排水2は配管3によってグリーストラップ4の入口4Aに送られる。入口のそばには生塵芥捕集網4Bが設けられており、食品屑等を捕集する。(この捕集網は排水中の固形分が極めて少ないときは不要である。)グリーストラップ4は上部及び底部に設けられている複数枚の仕切板4Cによ複数個の区画4Dに仕切られている。入口4A、生塵芥捕集網4Bを経て区画に流入した排水は仕切板4Cによって区分されている各区画を流れ、油脂分は各区画4Dの水面部分に浮上分離し、油脂分の少なくなった排水は最後に出口4Eから流出する。その後排水は下水等5へ放流され、又は、浄化処理装置6を経て下水等5に放流される。バクテリア活性化装置11からは活性化したバクテリアが配管3を経てグリーストラップの入口4Aに送られる。また生塵芥捕集網4Bで捕集された生塵芥は別に収集された生塵芥7と共に発酵装置8で発酵処理される。」(段落【0008】)

引用例3:特開平9-38630号公報
(3a)「【請求項1】 油濁物処理方法において、
(a)油濁溶液に所定の界面活性剤を添加してエマルジョンを生成し、
(b)前記エマルジョンに所定のpH調整剤を添加して中性乃至弱アルカリ性の範囲のpH値を有するpH調整済みエマルジョンとさせ、
(c)前記pH調整済みエマルジョンを生物リアクター内において所定のバクテリアにより処理させる、
上記各ステップを有することを特徴とする油濁物処理方法。」(特許請求の範囲)
(3b)「【発明の属する技術分野】本発明は、油濁物処理方法及びシステムに関するものであって、更に、詳細には、石油精製工業、石油化学工業、ガソリン販売施設等において発生される鉱油系の産業廃棄物及び食品加工産業、畜産加工産業、魚類加工産業等において発生される産業排水中の含油排水処理過程から発生する油濁スラッジ等の油濁物を処理する方法及びシステムに関するものである。」(段落【0001】)
(3c)「即ち、油濁溶液中に存在する分散相としての油成分は通常比較的大きな寸法の粒塊としてそれと混和しない連続相としての溶液中に存在している。この様な油成分はその寸法が比較的大きいために、バクテリアが反応して油成分を分解処理するのに不向きである。比喩的に説明するならば、この様な大きな寸法の粒塊状の油成分は、バクテイリアが食べるのには大きすぎ、極端な場合にはバクテリアが油成分に囲まれて呼吸できず窒息死してしまう。そこで、本発明においては、油濁溶液に先ず界面活性剤を添加して、分散相としての油成分を連続相としての溶液中に細粒状ないしはコロイド状の微細な粒子が分散された分散系としてエマルジョンを生成させる。この場合のコロイド状とされた油成分の微細粒子は、例えば10-3〜10-6mの範囲とさせると良い。この様に、界面活性剤を添加させることにより油濁溶液から油成分を微粒状とさせたエマルジョンを生成することにより、バクテリアが積極的に油成分を分解処理することが可能となる。しかしながら、エマルジョンとさせることにより寸法的にはバクテリア処理が可能となるが、界面活性剤を添加させることによりエマルジョンはアルカリ性が強くなり過ぎる場合があり、そのためにバクテリアが被害を受け効果的に油成分を分解処理することができないことがある。そこで、本発明においては、pH調整剤をエマルジョンに添加して、エマルジョンのpH値を所定の範囲内の値に調整する。この場合のpHの範囲は、7〜9とすることが望ましく、更に好適には、7.6〜8.3の範囲であり、pH値はほぼ7.2の近傍に設定することが最も効果的である。又、pH調整剤としては種々のものを使用可能であるが、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、硫酸アルミニウム等を使用することが可能である。」(段落【0007】【0008】)

(3)対比・判断
引用例1の上記(1a)には、「仕切板によって複数個の区画に区分されており、入口が調理場等の排水源に接続し、出口が浄化槽等の排水処理設備に接続し、排水中に含有されている油脂分を浮上分離するグリーストラップと、容器及び該容器内に収納された下記(a)〜(k)の機器からなるバクテリア活性化装置と、曝気ブロワー及び該ブロワーに接続し、前記グリーストラップ内に設置されている散気管からなるグリーストラップ用曝気装置と、各装置機器間を連結する配管とから構成される含油排水の処理設備。」と記載されているが、この「含油排水の処理設備」は、上記(1b)の記載によれば、「含油食品排水」を処理するものであり、また、上記(1c)の「バクテリア活性化装置11からは活性化したバクテリアが配管3を経てグリーストラップの入口4Aに送られる。」という記載によれば、バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアを、食品排水の排出口からグリーストラップの間の配管に合流させて導入するものといえるから、引用例1には、「仕切板によって複数個の区画に区分されており、入口が調理場等の排水源に接続し、出口が浄化槽等の排水処理設備に接続し、排水中に含有されている油脂分を浮上分離するグリーストラップと、容器及び該容器内に収納されたバクテリア活性化装置と、曝気ブロワー及び該ブロワーに接続し、前記グリーストラップ内に設置されている散気管からなるグリーストラップ用曝気装置と、各装置機器間を連結する配管とから構成される含油食品排水の処理設備を用いて含油食品排水を処理する方法において、バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアを、食品排水の排出口からグリーストラップの間の配管に合流させて導入する含油食品排水を処理する方法」(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願補正発明2と引用発明とを対比すると、両者は、「食品排水中の油脂分を浮上分離するグリーストラップと、この前記グリーストラップに活性化されたバクテリアを供給するバクテリア活性化装置と、前記グリーストラップに空気を供給する曝気装置と、前記食品排水の排出口、前記バクテリア活性化装置および前記グリーストラップを連結する配管とを備えた含油食品排水の処理装置を用いて前記含油食品排水を処理する方法において、前記バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアを、前記食品排水の排出口から前記グリーストラップの間の配管に合流させて導入する含油食品排水の処理方法」という点で一致し、次の点で相違しているといえる。
相違点:食品排水の排出口からグリーストラップの間の配管に合流させて導入するものが、本願補正発明2では、バクテリアと「界面活性剤水溶液」であるのに対し、引用発明では、バクテリアだけである点
次に、この相違点について検討する。
引用例3は、上記(3b)の記載によれば、食品加工産業において発生される含油排水処理過程から発生する油濁物を処理する方法に係るものであるから、本願補正発明2の「含油食品排水を処理する方法」とその技術分野が共通するものであるといえる。そして、本願補正発明2の界面活性剤の作用についてみるに、段落【0008】の「グリーストラップ3内に送込む界面活性剤は油脂を乳化して水に溶けやすくし、アルカリ性であるので、グリーストラップ内の排水のpHを高め、グリーストラップ内の油脂の濃度が高いときも、油脂分にヘット、ラードのように融点の高い動物性油脂が多いときもバクテリアが窒息して活性を失うことがない。」という記載によれば、本願補正発明2の界面活性剤の作用は、油脂の乳化等によるバクテリアの活性化であると云えるが、例えば、引用例3の(3c)に「この様な大きな寸法の粒塊状の油成分は、バクテイリアが食べるのには大きすぎ、極端な場合にはバクテリアが油成分に囲まれて呼吸できず窒息死してしまう。そこで、本発明においては、油濁溶液に先ず界面活性剤を添加して、分散相としての油成分を連続相としての溶液中に細粒状ないしはコロイド状の微細な粒子が分散された分散系としてエマルジョンを生成させる。・・・・・この様に、界面活性剤を添加させることにより油濁溶液から油成分を微粒状とさせたエマルジョンを生成することにより、バクテリアが積極的に油成分を分解処理することが可能となる。」と記載されているように、界面活性剤による油成分のエマルジョン化(乳化)によってバクテリアを活性化させることは既に知られた事項であるから、引用発明の含油食品排水の処理方法において、バクテリアと一緒に界面活性剤を添加する程度のことは引用例3に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたことといえる。
したがって、本願補正発明2は、引用発明及び引用例3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、請求項1に記載の発明について検討するまでもなく、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての審決
(1)本願発明
平成13年1月22日付け手続補正は、上記のとおり却下すべきものであるから、本願の請求項1、2に係る発明は、平成12年8月11日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項2】食品排水中の油脂分を浮上分離するグリーストラップと、この前記グリーストラップに活性化されたバクテリアを供給するバクテリア活性化装置と、前記グリーストラップに空気を供給する曝気装置と、前記食品排水の排出口、前記バクテリア活性化装置および前記グリーストラップを連結する配管とを備えた含油食品排水の処理装置を用いて前記含油食品排水を処理する方法において、前記食品排水の排出口から前記グリーストラップの間の配管に、前記バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアおよび界面活性剤水溶液を導入することを特徴とする含油食品排水の処理方法。」
(2)引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用された引用例1及び引用例3とその記載事項は、上記「2.(2)」に記載されたとおりのものである。
(3)対比・判断
本願発明2は、本願補正発明2と対比すると、「前記食品排水の排出口から前記グリーストラップの間の配管に、」と「前記バクテリア活性化装置から供給されるバクテリアおよび界面活性剤水溶液を」との記載が前後している点、及び「合流させて導入する」が「導入する」である点で相違しているだけであるから、両者の相違点は、上記「2.(3)」で言及したとおりである。そして、本願発明2の上記相違点も、上記「2.(3)」に記載した理由により、当業者が容易に想到することができたものであるから、本願発明2も、引用発明及び引用例3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
したがって、少なくとも本願請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、請求項1に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-29 
結審通知日 2004-07-06 
審決日 2004-07-20 
出願番号 特願平10-57492
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥井 正樹種村 慈樹真々田 忠博中村 敬子  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
平塚 義三
発明の名称 含油食品排水の処理装置および処理方法  
代理人 長谷 正久  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道照  
代理人 古川 秀利  
代理人 池谷 豊  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道治  
代理人 曾我 道照  
代理人 古川 秀利  
代理人 長谷 正久  
代理人 池谷 豊  

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