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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1102638
審判番号 不服2002-11789  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-27 
確定日 2004-09-09 
事件の表示 平成 7年特許願第291792号「透過型表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月 2日出願公開、特開平 9-113906〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年10月13日の出願であって、平成14年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年7月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年7月29日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「画素電極及びスイッチング素子が形成された一方の透明基板と、対向電極が形成された他方の透明基板と、互いに接合した該一対の透明基板の間隙に保持された液晶とを備えたパネル構造を有し、入射側偏光板と組み合わせて画像の投影表示に用いられるプロジェクタ用の透過型表示装置であって、
前記パネル構造は該入射側偏光板と離間し、
熱伝導率が1W/m・K以上で厚みが1mm以上の放熱用ガラス板を少なくとも一方の透明基板の外面に接着し、
該液晶の面から該放熱用ガラス板の表面までの距離を2mm以上確保する事を特徴とする透過型表示装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「透過型表示装置」について「プロジェクタ用の」との限定を付加し、また、同じく「液晶」と「放熱用ガラス板」とについて「該液晶の面から該放熱用ガラス板の表面までの距離を2mm以上確保する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-51881号公報(以下、「引用例1」という)には、次のように記載されている。
「(1)・・・・光源と、・・・・光分離手段と、・・・・液晶表示手段と、・・・・光合成手段とを備える液晶プロジェクタにおいて、前記液晶表示手段を、液晶表示パネルと、この液晶表示パネルの両面に夫々接着される一対の放熱用のガラス板と、このガラス板に対して離間して対向配置される一対の偏光板と、この一対の偏光板のうちの一方に接着されるコンデンサレンズとで構成してなることを特徴とする液晶プロジェクタ。」(特許請求の範囲)
「上述の液晶プロジェクタの構成を第7図に示す。同図において、(1)は投射用光源、・・・・(10)(11)(12)は夫々、青色、緑色及び赤色用のアクティブマトリックス型の液晶表示パネルを含む第1〜第3液晶ユニット、(13)は投写レンズ、(14)は外装ケース、(15)はスクリーンであり、・・・・」(第1頁右下欄第8〜16行)
「本発明は・・・・液晶パネルの温度上昇を防止した液晶プロジェクタを提供するものである。」(第2頁左上欄第16〜18行)
「第1図(イ)(ロ)(ハ)は本実施例装置の正面図、平面図及び側面図であり、・・・・前記第1〜第3液晶ユニット(10)(11)(12)はR、G、Bの各映像信号により駆動されているため、各パネルの透過光は夫々、前記各映像信号で輝度変調されたものとなる。・・・・輝度変調された緑色光は・・・・前記青色光及び赤色光と合成された後、投射レンズ(13)で拡大される。」(第2頁右上欄第17行〜右下欄第3行)
「次に、液晶ユニット(10)の具体的構成について第4図、第5図及び第6図に従い説明する。同図において、(100)はコンデンサレンズ、(101)はこのコンデンサレンズ(100)の裏面に透明シリコン接着剤により接着される入射側偏光板、(102)は前記コンデンサレンズを放熱する放熱枠、(103)は・・・・液晶ユニット基板、(107)は4本の支柱(107a)(107a)…を備える固定枠であり、この支柱には・・・・ナット(108)(108)…が螺合する。・・・・
更に、(110)は液晶表示パネルであり、周辺に駆動回路基板を一体に備えている。(111)(112)はこの液晶パネルの両面に夫々、透明シリコン接着剤により接着される放熱用ガラス板、(113)は基板ガラス(114)に透明シリコン接着剤により接着される出射側偏光板、(115)はこの基板ガラス(114)が伝熱性シリコン接着剤により接着される放熱枠であり、この放熱枠はビス(116)(116)…により前記液晶表示パネル(110)と共に前記固定枠(107)に固定される。」(第3頁右上欄第9行〜左下欄第16行)
また、第1図(イ)、(ロ)、(ハ)に液晶プロジェクタの構成が示され、第4〜6図に液晶ユニットの構成が示されており、第6図において、液晶表示パネル(110)は入射側偏光板(101)と離間していることが見てとれる。
以上の記載によれば、引用例1には、「光源からの光を色分解した光をアクティブマトリックス型の液晶表示パネルを含む液晶ユニットに照射し、その透過光を合成し投写する液晶プロジェクタに用いられる液晶ユニットであって、該液晶ユニットは液晶表示パネルと、液晶表示パネルの両面にそれぞれ接着された放熱用ガラス板と、コンデンサレンズに接着されている入射側偏光板とを有し、液晶表示パネルが入射側偏光板と離間している液晶ユニット」が記載されているものと認める。
同じく引用された刊行物である特開平5-93922号公報(以下、「引用例2」という)には、次のように記載されている。
「シリコンの熱伝導係数は123W/m・k・・・・に対して、ガラスでは1.2W/m・k程度であり、・・・・」(段落【0030】)
また、原審の拒絶査定において、本願出願前の周知の技術事項を示す例として引用された刊行物である特開平2-195381号公報(以下、「引用例3」という)には、次のように記載されている。
「第1図に本発明の単板式液晶ビデオプロジェクターシステムの光学系概念図を示す。光源ランプ101から発生した光は、まず、ガラスブロック411に入射し、ついで、偏光板301にて偏光される。さらに、偏光された光が液晶パネル300に入射する。・・・・液晶パネル300にて画像変調された光は、2枚目の偏光板302を透過した後、ガラスブロック412を透過して、投写レンズ308によってスクリーン上に投写される。
ガラスブロック411、412、偏光板301、302および液晶パネル300によって構成されるユニットを、液晶パネルモジュールと呼ぶ。液晶パネルモジュールの光入射面と、光出射面は投写レンズ308の焦点深度401および402よりも外側にあり、ここに付着したほこり226は、投写レンズ308の焦点深度外となるため、スクリーン上には結像されない。」(第2頁左下欄第2〜20行)
同じく本願出願前の周知の技術事項を示す例として引用された刊行物である実願平1-125041号(実開平3-66276号)のマイクロフィルム(以下、「引用例4」という)には、次のように記載されている。
「(1)画像形成部に形成した画像をレンズを通して投写する投写装置において、画像形成部に光が入射する入射面と、この入射面にほぼ対向しており入射面に入射した光が画像形成部から射出する射出面とが、レンズの焦点深度の範囲外にあることを特徴とする投写装置。」(実用新案登録請求の範囲)
「光は画像形成部の入射面に入り、画像形成部に形成した画像は画像形成部の射出面から射出され、レンズを通って投写面に投写される。画像形成部の入射面と射出面に付着した塵、ゴミ等は、投写面に投写されない。」(第4頁15〜19行)
また、引用例4の第1図〜第6図に、液晶による画像形成部を有する投写装置の実施例が示されている。
(3)対比、判断
本件補正発明と、引用例1に記載のものとを対比すると、引用例1に記載のものにおける「液晶プロジェクタに用いられる液晶ユニット」は、本件補正発明の「プロジェクタ用の透過型表示装置」に相当し、また、引用例1に記載のものにおける「液晶表示パネル」は、アクティブマトリックス型で透過型のものであり、画素電極およびスイッチング素子が形成された一方の透明基板と、対向電極が形成された他方の透明基板と、互いに接合した該一対の透明基板の間隙に保持された液晶とを備えたパネル構造を有するものであって、本件補正発明における「パネル構造」に相当し、さらに、引用例1に記載のものにおいて、放熱用ガラス板が透明基板の外面に接着されること、液晶ユニットが入射側偏光板と組み合わせて画像投影表示に用いられることは明らかであるから、本件補正発明と引用例1に記載のものとは、
「画素電極及びスイッチング素子が形成された一方の透明基板と、対向電極が形成された他方の透明基板と、互いに接合した該一対の透明基板の間隙に保持された液晶とを備えたパネル構造を有し、入射側偏光板と組み合わせて画像の投影表示に用いられるプロジェクタ用の透過型表示装置であって、前記パネル構造は該入射側偏光板と離間し、放熱用ガラス板を少なくとも一方の透明基板の外面に接着した透過型表示装置」である点において一致するが、次の点において相違する。
<相違点>
本件補正発明における放熱用ガラス板は「熱伝導率が1W/m・K以上で厚みが1mm以上のものであり、液晶の面から放熱用ガラス板の表面までの距離を2mm以上確保している」のに対して、引用例1に記載のものにおいては、放熱用ガラス板の熱伝導率および厚みが明らかでなく、また、液晶の面から放熱用ガラス板の表面までの距離も明らかでない点。
そこで、上記相違点について検討する。
引用例1に記載のものにおける放熱用ガラス板は、液晶パネルの温度上昇を防止するために備えられるものであるから、熱伝導率をできるだけ高いものとすべきであるのは明らかであり、また、引用例2には、液晶表示装置の基板として用いられるガラス板の熱伝導率が1.2W/m・k程度のものが示されていることからみて、放熱用ガラス板として熱伝導率が1W/m・K以上のものを用いることは適宜考慮し得るところである。さらに、放熱用ガラス板の厚みを1mm以上とすること、液晶の面から放熱用ガラス板の表面までの距離を2mm以上確保することについて、本願明細書の段落【0009】に、「・・・・駆動基板1及び対向基板2の板厚は約1mm程度であるが、厚さが1mm以上の放熱用ガラス板5を接着する事により、液晶3の面からガラス表面までの距離を2mm以上確保する事ができる。これにより、表面に付着したダストがプロジェクション時にデフォーカスされ、画品位低下を軽減することができる。・・・・」と記載されているが、液晶プロジェクタにおいて、透過型液晶パネルの少なくとも一方の外面にガラスブロック等を貼付けてガラスブロックの外面が投写レンズの焦点深度より外側にあるようにすることは、引用例3及び4に示されるように周知の事項であり、このようにガラスブロックを液晶パネルに貼付けたものでは、ガラスブロックの表面に付着したダストがプロジェクション時にデフォーカスされることは明らかである。そして、上記周知の事項を勘案すれば、引用例1に記載のものにおいて液晶の面から放熱用ガラス板の表面までの距離を2mm以上確保することは、投写レンズの焦点深度を考慮して適宜なし得るところであり、透明基板の通常の厚さが1mm程度であるとして、放熱用ガラス板の厚みを1mm以上とすることも、同様に投写レンズの焦点深度、放熱用ガラス板の放熱性を考慮して、適宜なし得る設計的事項を示したにすぎない。
それゆえ、本件補正発明は、引用例2に記載の事項及び引用例3、4に示される周知の事項を勘案すれば、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成14年7月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、平成14年4月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜4に各々記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。
「画素電極及びスイッチング素子が形成された一方の透明基板と、対向電極が形成された他方の透明基板と、互いに接合した該一対の透明基板の間隙に保持された液晶とを備えたパネル構造を有し、入射側偏光板と組み合わせて画像の投影表示に用いられる透過型表示装置であって、
前記パネル構造は該入射側偏光板と離間し、
熱伝導率が1W/m・K以上で厚みが1mm以上の放熱用ガラス板を少なくとも一方の透明基板の外面に接着する事を特徴とする透過型表示装置。」
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、原査定において周知の事項を示す例として引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)本願発明は、前記「2.」で検討した本件補正発明から、「透過型表示装置」についての「プロジェクタ用の」との限定を省き、また、「液晶」と「放熱用ガラス板」とについての「該液晶の面から該放熱用ガラス板の表面までの距離を2mm以上確保する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例2に記載の事項及び引用例3、4に示される周知の事項を勘案して、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例2に記載の事項及び引用例3、4に示される周知の事項を勘案して、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例2に記載の事項及び引用例3、4に示される周知の事項を勘案すれば、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-13 
結審通知日 2004-07-13 
審決日 2004-07-26 
出願番号 特願平7-291792
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 都志行右田 昌士  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 山下 崇
町田 光信
発明の名称 透過型表示装置  
代理人 鈴木 晴敏  

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