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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F28F
管理番号 1102746
異議申立番号 異議2001-72536  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-10-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-12 
確定日 2004-06-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3146298号「プレート式熱交換器用ガスケット」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3146298号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3146298号についての出願は、平成5年3月29日に特許出願され、平成13年1月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人 岩井機械工業 株式会社より特許異議の申立てがなされ、当審から取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年4月15日に特許異議意見書を提出するとともに、訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正は、次のとおりである。
・訂正事項1
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の【請求項1】の
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、かつ、伝熱面と流体通路孔を夫々シールするガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する複数の直線部で形成したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」を、
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する複数の直線部で形成したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」と訂正する。
・訂正事項2
特許明細書の特許請求の範囲の【請求項2】の
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、かつ、伝熱面と流体通路孔を夫々シールするガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部とで上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、直線部と伝熱面側に曲率中心を有する曲線部とで構成し、上記直線部もしくは曲線部のいずれか一方をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」を、
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、直線部と伝熱面側に曲率中心を有する曲線部とで構成し、上記直線部もしくは曲線部のいずれか一方をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」と訂正する。
・訂正事項3
特許明細書の特許請求の範囲の【請求項3】の
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、かつ、伝熱面と流体通路孔を夫々シールするガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を伝熱面側に曲率中心を有する曲線形状としたことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」を、
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を伝熱面側に曲率中心を有する曲線形状としたことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」と訂正する。
・訂正事項4
特許明細書の段落【0007】の
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、かつ、伝熱面と流体通路孔を夫々シールするガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、」を、
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項1乃至4に関連する特許明細書の記載として、「図5に示すように、伝熱面(1)の四隅に流体通路孔(2)を設けた伝熱プレート(3)を、その周縁部の全周に亘って設けたガスケット溝(4)に装着したガスケット(5)」(段落【0002】)、「上記ガスケット(5)は、伝熱面(1)をシールするガスケット本体部(6)と伝熱プレート(3)の一側縁両端隅部の所定の流体通路孔(2)をシールする通路孔ガスケット部(7)とで構成されており、所定の流体通路孔(2)と伝熱面(1)とをガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)と通路側ガスケット部(7)の伝熱面側シール部(9)とでシールして2重シール部(10)を形成すると共に、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)と通路孔ガスケット部側に位置する長手方向直線シール部(11)とを一体に接合したものである。」(段落【0003】)、とあることから、上記訂正事項1乃至4は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、明細書の訂正をしたものであり、そして、上記訂正事項1乃至3は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3の「伝熱面と流体通路孔を夫々 シールする」構成を、「伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項4は、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を上記訂正事項1乃至3との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれの訂正も、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記したように、上記訂正事項1乃至4の訂正が認められるから、本件特許の請求項1乃至3に係る発明(以下、「請求項1に係る発明」を「本件発明1」、「請求項2に係る発明」を「本件発明2」、「請求項3に係る発明」を「本件発明3」という。)は、それぞれ、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められる。
(上記2.(1)訂正の内容を参照)

(2)引用刊行物
当審が通知した取消しの理由において引用した刊行物は、次のとおりである。

刊行物1:特開昭56-34095号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証に相当する)
刊行物2:「FOOD ENGINEERING」、広告頁「SUPERPLATE HEAT EXCHANGERS」に示された「EXCLUSIVE KNOB-TYPE PLATE」(左下図)、March、1962(国立国会図書館受入日:昭和37年4月17日)(同じく、甲第3号証に相当する)
刊行物3:CHERRY-BURRELL CORPORATIONのパンフレット Bulletin G-621 「A COMPLETE LINE OF CHERRY-BURRELL EQUIPMENT FOR THE FOOD INDUSTRY」の第3頁「SUPERPLATE INDUSTRY’S MOST ADVANCED PLATE EXCHANGER」の右上図「Exclusive”Knob-Type”Plates」(同じく、甲第4号証に相当する)

(3)刊行物に記載された発明
上記刊行物1には、プレート型熱交換器に関して、図面とともに、
「第1図に示すプレートはいわゆるノルマルプレートであり通常のプレートと異なる点は、プレート隅部におけるポートが1個の外方開口部2および1個の内方開口部3を有することにある。各開口部は部分円の形状を有する。プレートはまたはゴム製ガスケット4および、5で示されるごとき乱流発生波形模様を有している。」(第2頁下段左欄第2行〜同第8行)こと、
「第3図は熱交換板10を示すものである。該熱交換板はその隅角の各部において1個の外方円形開口部11および2個の内方三角形開口部12、13を有する。開口部12、13の位置は一方においてはシート材料の最善の利用という観点から、他方においては流れの分布という観点から選定される。プレートにはガスケット14が配備される。第4図に示したプレート15は第3図によるプレートより成るものであり、開口部11をもつ隅角部分はこのプレートから截断されたものである。このプレートもまたプレートの形状に適したガスケット16を具備する。」(第2頁下段左欄第17行〜同右欄第8行)こと、
が記載されている。
また、図面のFIG.1から、プレート隅部に各々開口2、3があり、プレート長手方向一側縁両端隅部側の各々の開口2、3を取り囲むように台形のガスケット4が設けられて伝熱面を画定するとともに、他の2つの隅部にある開口2、3周囲を各々ガスケットによって取り囲んでプレート型熱交換器を構成していることが、また、FIG.3から、ガスケット14は、伝熱面側を画定するガスケット部と外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13周囲を画定するガスケット部とから成り、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13の近傍において、2重シール部を形成し、該伝熱面側のガスケット部の、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13側の近傍におけるシール部と長手方向直線シール部とを所定の交差角で交差させ、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13の近傍のシール部を、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13側に屈曲した屈曲点を有する二つの直線シール部で形成したプレート型熱交換器の構成が、示されている。
上記刊行物2には、スーパープレート熱交換器(superplate heat exchenges)のプレートとして、ノブタイププレート(”Knob-Type”plate)が左下に図示されている。
図示されたものから、プレート面大部分を取り囲み伝熱面を画定する実線と、隅部の開口を取り囲む2つの実線とが、ガスケットであること、該両ガスケットによって2重にシールされた隅部開口近傍における伝熱面側のガスケットのシール部は、伝熱面側に曲率中心を有する曲線部と、その延長部とからなり、該延長部がプレート長手方向直線シール部と接合していること、が窺われる。
また、タイトルの下に、「For Continuous Heating,Cooling,Pasteurizing and Heat Recovery 」との記載があり、また、右中程の図には、「MODEL SLAS PRESS For High Capacity Operations」と説明がされ、その図の下の写真には、「MODEL EIS PRESS For Small Plants or Exra Capacity Jobs in Large Plans」と説明がされている。
上記刊行物3には、ノブタイププレート(”Knob-Type”Plates)が右上に図示されている。この図示されたノブタイププレートから、伝熱面側を画定するガスケットが実線で示されていること、この伝熱面側のガスケットにおいて、プレート長手方向直線シール部と開口部近傍の2重シール部の曲線部の延長部との交差部の内角が140度以上(実測値は約160度)であること、が窺われる。
さらに、この頁には、「SUPERPLATE INDUSTRY’S MOST ADANCED PLATE HEAT EXCHANGER」、「For Continuous Heating,Cooling,Pasteurizing and General Heat Recovery Operations」と記載されており、また、上中央図には、「MODEL SLASPRESS For High Capacity Operations」と説明が、右下写真には、「MODEL EIS PRESS For Small Heating and Cooling Applications」と説明が、記載されている。

(4)対比・判断
そこで、本件発明1乃至3と上記刊行物1乃至3に記載されたものとを対比し、検討する。

・本件発明1について
上記刊行物1のFIG.3に記載されたプレート型熱交換器は、FIG.1を参照すれば、伝熱面の長手方向一側縁両端隅部に流通通路を有するプレート型熱交換器であって、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13の近傍において、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13周囲を画定するガスケット部と伝熱面側を画定するガスケット部とによって2重シール部を形成し、また、伝熱面側を画定するガスケット部は、2重シール部とプレート長手方向直線シール部とが所定の交差角で交差するように接合すると共に、2重シール部においては、外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13側に屈曲した屈曲点を有する二つの直線シール部で形成されているといえるから、上記刊行物1のFIG.3に記載された、「外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13」、「熱交換板10」、「伝熱面側を画定するガスケット14」、「外方円形開口部11および内方三角形開口部12、13周囲を画定するガスケット」は、その表現上に差異があるものの、それぞれ本件発明1の「流体通路孔」、「伝熱プレート」、「ガスケット本体部」、「通路孔ガスケット部」に相当し、両者は、
「伝熱面側の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路側シール部との流体通路内側での交差角を所定角とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する複数の直線部で形成したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」
において一致しているものといえる。

しかし、次の点で相違している。
(イ)前記交差角の所定角が、本件発明1は、「140度以上とし」ているのに対して、上記刊行物1のFIG.3に記載されたものは、鈍角(実測値で約133度)であることは明らかであるが角度の明示はない点。

そこで、この相違点(イ)を検討すると、
本件発明1の出願日前に頒布されたことが明らかな上記刊行物2には、プレート式熱交換器である、ノブタイププレート(”Knob-Type”plate)が示されている。この図示されたノブタイププレートは、図面が小さいので上記刊行物3を斟酌する。
上記刊行物3に記載されている事項と、上記刊行物2に記載されている事項とを対比すると、上記3.(3)に示したように、その記載事項が極めて類似し、図面に示されたガスケット(実線で示された部分)のパターンも大きさが異なるだけといえるから、上記刊行物3に示されたノブタイププレートは、上記刊行物2に記載されたノブタイププレートと同一のものということができる。
そこで、この刊行物3に図示されたノブタイププレートを精査すると、伝熱面側を画定するガスケットの通路孔側シール部は、伝熱面側に曲率中心を有する曲線部と、その延長部とからなり、該延長部と長手方向直線シール部とが、所定の交差角で交差していることが分かる。しかし、その交差角についての具体的数値の記載はされていない。しかしながら、図示されたものは、プレート面を実写したものと解することができるから、実際のガスケットパターンであり、該交差角が140度以上(実測値で約160度)であることは容易に推測し得る。
そうすると、上記刊行物2に記載されたノブタイブプレートにおいても前記交差角が140度以上であるということができる。そして、上記刊行物2に記載されプレート式熱交換器は流体通路孔が対角位置にあるとしても、そこに用いられているガスケットの交差角部の構造が、流体通路孔が一側縁両端隅部にあるプレート式熱交換器に適用できないという阻害要因も見いだすことができないから、前記交差角を「140度以上」とすることは、上記刊行物2および3に示されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得るものと認められる。

なお、特許権者は、この点について、平成14年4月15日付け特許異議意見書において、本件発明1と刊行物2,3に記載されたものとは、「流れ方向が相違します。」(第5頁第6行)、「刊行物2および刊行物3に記載のタイプの伝熱プレートは、…(中略)…斜め方向に流れて…(中略)…液溜まりによるスケールが付着することに格段の注意は必要ではありません。…(中略)…長手方向直線シール部と通路孔側シール部との交差角は液の滞留にほとんど影響を与えないといえます。…(中略)…交差角を約160度にしているのは、液の滞留を防止することを目的としたものではないといえます。」(第5頁第7行〜同第28行)と主張しているが、流路中に角部がある場合、流体通路孔の位置がどこにあるかに拘わらず、その角部において流体の滞留が発生することは周知であり、角部での流れをスムーズにするために曲線形状とすることも流体技術における常套手段であるし、その形状をどのようにするかは、流速、流量、流体の種類等の条件によって当業者が適宜決定し得るものと認められるところ、プレート式熱交換器である上記刊行物2、3には、角部に相当している前記交差角について140度以上(実測値で約160度)のものが示されており、また、対角位置に流体通路孔を有するタイプの伝熱プレートのガスケットの構造も、実願昭58-150864号(実開昭60-60593号)のマイクロフィルム、特開昭61-500626号公報、特開平4-73594号公報、実願平3-31146号(実開平4-122955号)のマイクロフィルムに示されているように周知なものであって、特殊な構造のものということもできないから、上記刊行物2、3に示されたガスケットの交差角部の構造を、一側縁両端隅部に各々流体通路孔を有する上記刊行物1に示されるような伝熱プレートに適用することは、当業者が容易なし得るものと認められ、特許権者の主張は採用することができない。

そして、本件発明1についての効果は、前記交差角の数値について臨界的な意義があるわけではないから、上記刊行物1乃至3に記載された構成から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本件発明1は、上記刊行物1乃至3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

・本件発明2について
本件発明2と上記刊行物1に記載されたものとを対比し、検討する。

上記本件発明1において検討したことを斟酌すると、本件発明2と上記刊行物1に記載されたものとは、次の点で一致しているものといえる。
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路側シール部との流体通路内側での交差角を所定角とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、ガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。」
において一致しているものといえる。

しかし、次の点で相違している。
(ロ)前記交差角の所定角が、本件発明2では「140度以上とし」ているのに対して、上記刊行物1のFIG.3に記載されたものは、鈍角(実測値で約133度)であることは明らかであるが角度の明示はない点。
(ハ)ガスケット本体部の通路孔側シール部を、ガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合した構成が、本件発明2は、「ガスケット本体部の通路孔側シール部を直線部と伝熱面側に曲率中心を有する曲線部とで構成し、上記直線部もしくは曲線部のいずれか一方をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合した」ものであるのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、FIG.3の図面に示されたものから、ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する二つの直線部で形成し、その一方の直線部をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合した点。
で相違している。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点(ロ)について
上記本件発明1における相違点(イ)おいて検討したこと斟酌すれば、本件発明2のように交差角を「140度以上」とすることは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
・相違点(ハ)について
上記刊行物2および3に記載されたノブタイププレートにおいて、2重にシールされた隅部開口近傍における伝熱面側のガスケットのシール部は、伝熱面側に曲率中心を有する開口近くの曲線部と、その延長部とからなり、該延長部がプレート長手方向直線シール部に接合されていることが分かる。そして、該延長部がほぼ直線であることも分かる。
そうすると、ガスケット本体部の通路側シール部を直線部と曲線部とで構成し、この直線部もしくは曲線部のいずれかがガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合するようにすることは、上記刊行物2および3に図示されたものから、当業者が容易に想到し得るものということができる。

そして、本件発明2の効果も、上記刊行物1乃至3に記載されたものから、当業者が容易に予測し得る程度のものと認められる。

したがって、本件発明2は、上記刊行物1乃至3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

・本件発明3について
本件発明3と上記刊行物1に記載されたものと対比し、検討する。

上記本件発明1において検討したことを斟酌すると、本件発明3と上記刊行物1に記載されたものとは、次の点で一致しているものといえる。
「伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路側シール部との流体通路内側での交差角を所定角とするプレート式熱交換器用ガスケット。」
において一致しているものといえる。

しかし、次の点で相違している。
(ニ)前記交差角の所定角が、本件発明3では「140度以上とし」ているのに対して、上記刊行物1のFIG.3に記載されたものは、鈍角(実測値で約133度)であることは明らかであるが角度の明示はない点。
(ホ)前記ガスケット本体部の通路孔側シール部が、本件発明3は、「伝熱面側に曲率中心を有する曲線形状とした」ものであるのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、FIG.3の図面に示されたものから、ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する二つの直線部で形成し、その一方の直線部をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合した点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点(ニ)について
上記本件発明1における相違点(イ)おいて検討したこと斟酌すれば、本件発明3のように交差角を「140度以上」とすることは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
・相違点(ホ)について
上記刊行物2および3に記載されたノブタイププレートには、2重にシールされた隅部開口近傍における伝熱面側のガスケットの通路孔側シール部は、伝熱面側に曲率中心を有する開口近くの曲線部と、その延長部とからなり、該延長部がプレート長手方向直線シール部に接合されていることが分かる。そして、このシール部の図示されたパターンから、該延長部をも含み通路側シール部全体を伝熱面側に曲率中心を有する曲線形状のみで構成することも、格別工夫を必要とすることなく、当業者が容易に推考し得る程度のものといえる。

そして、本件発明3の効果についても、上記刊行物1乃至3に記載されたものから、当業者が容易に予測し得る程度のものであって、格別なものが認められない。

したがって、本件発明3は、上記刊行物1乃至3に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1乃至3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1乃至3についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プレート式熱交換器用ガスケット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する複数の直線部で形成したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。
【請求項2】 伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を、直線部と伝熱面側に曲率中心を有する曲線部とで構成し、上記直線部もしくは曲線部のいずれか一方をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合したことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。
【請求項3】 伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、
伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、
ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、
ガスケット本体部の通路孔側シール部を伝熱面側に曲率中心を有する曲線形状としたことを特徴とするプレート式熱交換器用ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、プレート式熱交換器の伝熱プレートに装着されるガスケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プレート式熱交換器は、図5に示すように、伝熱面(1)の四隅に流体通路孔(2)を設けた伝熱プレート(3)を、その周縁部の全周に亘って設けたガスケット溝(4)に装着したガスケット(5)を介して交互に上下に反転させて所要枚数積層し、その隣接する伝熱プレート(3)間に異種の熱媒体が流れる第1流路と第2流路とを交互に配置したものである。
【0003】
上記ガスケット(5)は、伝熱面(1)をシールするガスケット本体部(6)と伝熱プレート(3)の一側縁両端隅部の所定の流体通路孔(2)をシールする通路孔ガスケット部(7)とで構成されており、所定の流体通路孔(2)と伝熱面(1)とをガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)と通路孔ガスケット部(7)の伝熱面側シール部(9)とでシールして2重シール部(10)を形成すると共に、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)と通路孔ガスケット部側に位置する長手方向直線シール部(11)とを一体に接合したものである。
【0004】
ところで、通常、プレート式熱交換器においては、伝熱面積収率(プレート伝熱面積/プレート素材面積)を向上させることにより、伝熱プレート(3)の枚数を減少させて製作コストの低減化を図っている。この伝熱面積収率を向上させるため、ガスケットの第1の従来例は、図6に示すように、上記2重シール部(10)を構成するガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)を、通路孔ガスケット部(7)側に曲率中心を有する曲線形状に形成すると共に、通路孔側シール部(8)と長手方向直線シール部(11)との交差角を120度前後にしてある。また、ガスケットの第2の従来例は、図7に示すように、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)を直線形状にすると共に、通路孔側シール部(8)と長手方向直線シール部(11)との交差角を120度前後にしてある。尚、上記第1及び第2の従来例のガスケットにおいては、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)と長手方向直線シール部(11)との交差部(12)のコーナ部(13)に、伝熱面(1)側に曲率中心を有するアール部が形成されるが、このアール部は、プレート金型の製作上から形成されるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記伝熱プレート(3)の所定の流体通路孔(2)から流入した流体が伝熱面(1)上に分散し、あるいは流体が伝熱面(1)から流体通路孔(2)へ集合する場合、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(8)と長手方向直線シール部(11)との交差部(12)の近傍部(16)や上記通路孔側シール部(8)の近傍においては、通路孔側シール部(8)と長手方向直線シール部(11)との流体流路内側での交差角が小さいため、流体の流れが悪くなり、あるいは流体が滞留したりする。このように流体の流れが悪くなったり、滞留したりすると、交差部(12)の近傍部(16)等にスケールが溜まり、あるいは流体が濃縮されたりし、このため食品用途等では、衛生上の問題が発生し、又他の分野で使用される場合は、伝熱プレート(3)が腐食して損傷するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み提案されたもので、伝熱プレートの伝熱面上を流れる流体の流れを良好にすることが可能で、かつ、流体の滞留を確実に防止し得るガスケットを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、伝熱面の四隅に流体通路孔を設けた伝熱プレートの周縁部のガスケット溝に装着固定され、伝熱面と、上記四隅の流体通路孔のうち伝熱面と連通される一側縁両端隅部の2つの流体通路孔をシールするガスケット本体部と、上記ガスケット本体部に含まれない2つの流体通路孔をそれぞれシールする通路孔ガスケット部とを備え、ガスケット本体部と通路孔ガスケット部とで2重シール部を形成し、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と上記2重シール部を構成するガスケット本体部の通路孔側シール部とを所定の交差角で一体に接合したプレート式熱交換器用ガスケットにおいて、
【0008】
ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、ガスケット本体部の通路孔側シール部を、通路孔側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点を有する複数の直線部で形成したものである。
【0009】
第2の発明は、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、ガスケット本体部の通路孔側シール部を、直線部と伝熱面側に曲率中心を有する曲線部とで構成し、上記直線部もしくは曲線部のいずれか一方をガスケット本体部の長手方向直線シール部に一体に接合したものである。
【0010】
第3の発明は、ガスケット本体部の長手方向直線シール部と通路孔側シール部との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、ガスケット本体部の通路孔側シール部を伝熱面側に曲率中心を有する曲線形状としたものである。
【0011】
【作用】
上記構成のガスケットを伝熱プレートに装着することにより、伝熱面積収率の減少を抑制しつつガスケット本体部の通路孔側シール部と長手方向直線シール部との交差角を大きくすることができ、両シール部の交差部の近傍における流体の流れが良好となり、流体が滞留したりするのを確実に防止することができる。
【0012】
【実施例】
以下本発明に係るプレート式熱交換器用ガスケットの実施例を図1乃至図4を参照しながら説明すると次の通りである。尚、図5乃至図7に示したものと同一物には同一符号を付して説明を省略する。
【0013】
[実施例1]
【0014】
本実施例は、図1に示すように、ガスケット本体部(6)の長手方向直線シール部(11)と通路孔側シール部(21)との交差角を140度以上とし、かつ、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(21)を、通路孔(2)側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点(26)を有する複数の直線部、図1は、第1直線部(27)と第2直線部(28)とで形成したものである。
【0015】
このように、ガスケット本体部(6)の長手方向直線シール部(11)と通路孔側シール部(21)との流体流路内側での交差角を140度以上とし、かつ、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(21)を、通路孔(2)側に屈曲した少なくとも一つの屈曲点(26)を有する複数の直線部、例えば、第1直線部(27)と第2直線部(28)とで形成することにより、伝熱面積収率の減少を少なくしつつ長手方向直線シール部(11)と通路孔側シール部(21)との交差角を大きくすることができる。したがって、伝熱プレート(3)の所定の流体通路孔(2)から流入した流体は、上記両シール部(21)(11)の交差部(12)の近傍部(16において両シール部(21)(11)にそって円滑に流れ、従来のように上記近傍部(16)等で流体の流れが悪くなったり、流体が滞留したりすることがない。
【0016】
[実施例2]
【0017】
本実施例は、図2に示すように、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(21)を、直線部(31)と、この直線部(31)に一連に連接され、かつ、伝熱面(1)側に曲率中心を有する曲線部(32)とで構成し、上記曲線部(32)を長手方向直線シール部(11)に一体に接合して、その交差角を略180度としたものである。
【0018】
[実施例3]
【0019】
本実施例は、図3に示すように、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(21)を、第1及び第2直線部(36)(37)と伝熱面(1)側に曲率中心を有する曲線部(38)とで構成したもので、第1直線部(36)と第2直線部(37)とを上記曲線部(38)を介して一体に連接し、かつ、第2直線部(37)を長手方向直線シール部(11)に一体に接合すると共に、上記第2直線部(37)と長手方向直線シール部(11)との流体流路内側での交差角を140度以上としたものである。
【0020】
[実施例4]
【0021】
本実施例は、図4に示すように、ガスケット本体部(6)の通路孔側シール部(21)を、伝熱面(1)側に曲率中心を有する曲線形状とし、上記曲線形状の通路孔側シール部(21)を、長手方向直線シール部(11)に一体に接合して、その交差角を略180度としたものである。
【0022】
【発明の効果】
本発明に係るガスケットは、伝熱面積収率の減少を抑制しつつガスケット本体部の通路孔側シール部と長手方向直線シール部との交差角を大きくできるため、ガスケット本体部の通路孔側シール部と長手方向直線シール部との交差部の近傍部等における流体の流れが良好となり、上記近傍部等に流体が滞留するのを確実に防止することができる。したがって、伝熱面上にスケールが溜まったり、あるいは流体が濃縮されたりすることがなく、その結果、食品用途等ではきわめて衛生的であり、又その他の用途では、伝熱プレートが腐食して損傷したりするのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るガスケットの実施例1を示す要部平面図。
【図2】
実施例2を示す要部平面図。
【図3】
実施例3を示す要部平面図。
【図4】
実施例4を示す要部平面図。
【図5】
ガスケットを装着した伝熱プレートを示す平面図。
【図6】
ガスケットの第1従来例を示す要部平面図。
【図7】
ガスケットの第2従来例を示す要部平面図。
【符号の説明】
1 伝熱面
2 流体通路孔
3 伝熱プレート
4 ガスケット溝
6 ガスケット本体部
7 通路孔ガスケット部
10 2重シール部
11 長手方向直線シール部
21 通路孔側シール部
26 屈曲点
27,28,31、36,37 直線部
32,38 曲線部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2002-08-22 
出願番号 特願平5-69551
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (F28F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 尾家 英樹  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
登録日 2001-01-12 
登録番号 特許第3146298号(P3146298)
権利者 株式会社日阪製作所
発明の名称 プレート式熱交換器用ガスケット  
代理人 杉山 泰三  
代理人 山根 広昭  
代理人 山根 広昭  
代理人 田中 秀佳  
代理人 熊野 剛  
代理人 江原 省吾  
代理人 城村 邦彦  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  
代理人 白石 吉之  
代理人 江原 省吾  
代理人 白石 吉之  
代理人 田中 秀佳  

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