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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1102835
異議申立番号 異議2003-70771  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-24 
確定日 2004-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3326902号「パターン検出方法及びパターン検出装置及びそれを用いた投影露光装置」の請求項1、2、12、23、30に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3326902号の請求項1、2、12、23、30に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3326902号は、平成5年9月10日に特許出願され、平成14年7月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人桑田勉から特許異議の申立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年7月28日に訂正請求(後日取り下げ)がなされ、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月17日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1) 訂正の内容
訂正事項a.
特許明細書中の請求項1において、「波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光源から発射した光」を、「波長幅が400nm〜700nmの光源から発射した光」と訂正し、「上記光源から出射した光を、該光の波長に応じて強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる光を上記被検物体に照射する」を、「上記光源から出射した光を、該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる前記所望の強度分布を有する光を上記被検物体に照射する」と訂正する。
訂正事項b.
特許明細書中の請求項12において、「波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源」を、「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」と訂正し、「上記光源から出射した光を該光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えた」を、「上記光源から出射した光を分光し、該分光した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えた」と訂正する。
訂正事項c.
特許明細書中の請求項23において、「上記パタ-ン検出手段は、波長幅の広い光もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源と、該光源から出射した光を該光の波長に応じて強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部で光の波長に応じて強度を異ならしめた光を層構造を有する被検物体に照射する照明部と、」を、「上記パタ-ン検出手段は、波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源と、該光源から出射した光を該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部で光の波長に応じて強度を異ならしめた前記所望の強度分布を有する光を層構造を有する被検物体に照射する照明部と、」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて
上記訂正事項aについては、本件特許請求の範囲の請求項1中の「波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光源から発射した光」を下位概念である「波長幅が400nm〜700nmの光源から発射した光」と訂正し、請求項1中の「上記光源から出射した光を、該光の波長に応じて強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる光を上記被検物体に照射する」を下位概念である「上記光源から出射した光を、該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる前記所望の強度分布を有する光を上記被検物体に照射する」と訂正するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮に当たる。
また、「波長幅が400nm〜700nmの光源から発射した光」は、願書に添付した明細書又は図面の段落【0069】〜【0071】の記載に基づいている。
また、「上記光源から出射した光を、該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる前記所望の強度分布を有する光を上記被検物体に照射する」ことは、同明細書の段落【0048】の記載に基づいている。
従って、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項bについて
上記訂正事項bについては、特許請求の範囲の請求項12中の「波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源」を下位概念である「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」と訂正し、同項中の「上記光源から出射した光を該光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えた」を、下位概念である「上記光源から出射した光を分光し、該分光した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えた」と訂正するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮に当たる。 また、この訂正後の請求項12の「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」は、願書に添付した明細書又は図面の段落【0069】〜【0071】の記載に基づいている。
また、「上記光源から出射した光を分光し、該分光した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えた」は、願書に添付した明細書又は図面の段落【0031】の記載に基づいている。
従って、上記訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項cについて
上記訂正事項cについては、本件特許請求の範囲の請求項23中の「波長幅の広い光もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源」を、下位概念である「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」と訂正し、「該光源から出射した光を該光の波長に応じて強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部で光の波長に応じて強度を異ならしめた光を層構造を有する被検物体に照射する照明部と、」を、下位概念である「該光源から出射した光を該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部で光の波長に応じて強度を異ならしめた前記所望の強度分布を有する光を層構造を有する被検物体に照射する照明部と、」と訂正するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮に当たる。
また、この訂正後の請求項23の「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」は、願書に添付した明細書又は図面の段落【0069】〜【0071】の記載に基づいている。
また、「該光源から出射した光を該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部で光の波長に応じて強度を異ならしめた前記所望の強度分布を有する光を層構造を有する被検物体に照射する照明部と、」は、願書に添付した明細書又は図面の段落【0048】の記載に基づいている。
従って、上記訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3) むすび
上記訂正事項a〜cは、上記(2)のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合する。
従って、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1) 申立て理由の概要
本件請求項1、2、12、23及び30に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件請求項1、2、12、23及び30に係る特許を取り消すべきと主張している。

(2)本件の請求項1、2、12、23及び30に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、2、12、23及び30に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、12、23及び30に記載されたとおりのものである。

(3)刊行物等
異議申立人桑田勉が証拠として提示した刊行物には、それぞれ、以下のような発明が記載されている。
刊行物1:特開平2-192712号公報(甲第1号証)
甲第1号証の第2頁右下欄20行〜第3頁左上欄11行には、「第1図に示すマスクとウエハの位置ずれ検出方法は、…ウエハ2上に回折格子4を設け、複数の波長の光を同時に発信するレーザ光源5から放射されるレーザ光をダイクロイックミラー16a〜16cで各波長成分に分解し、この分解したレーザ光をNDフィルタ17a〜17cに導き、NDフィルタ17a〜17cを通ったレーザ光をダイクロイックミラー18a〜18cで集め、この集めたレーザ光をLFZP3に照射し、回折格子4からの反射回折光を検出するようにしている。」と記載されており、また、第3頁左下欄第7行〜第10行には、「また、本実施例は、複数の波長の光を同時に発信する1台のレーザ光源を用いた例であるが、単一波長の光を発信する複数台のレーザ光源を用いることもできる。」と記載されている。
刊行物2:特開平3-225815号公報(甲第2号証)
甲第2号証の第3頁右上欄第15行〜左下欄第5行には、「コールドミラー203を通過した非露光光は熱線フィルタ221に入射させている。…、222は円盤状の無段階NDフィルタであり、通過光量の調整を目的としている。226はステッビングモータであり、NDフィルタ222を回転させる。すなわち、ステッピングモータ226に適当なパルスを与えることにより、水銀ランプからの照明光量を任意に可変することが出来る。」と記載されており、また、第3頁左下欄第6行〜第16行には、「223はライトガイドであり、…、入射端から入射させた光束を二肢の射出端より後述する右系と左系の2つの観察系に導光している。
224は、コンデンサーレンズであり、ライトガイド223からの光束を集光している。この光はミラー225、ハーフミラー105を通過しコンデンサレンズ7で集光し、ハーフミラー5を介して対物レンズ4に入射させ、マスク3面上を照明し、さらに投影光学系2を介してウエハ1面上のアライメントマークを照明している。」と記載されており、また、第3頁左下欄第17行〜右下欄5行には、「マスク3およびウエハ1面上のアライメントマークからの光束は対物レンズ4、ミラー5そしてコンデンサーレンズ14を介してハーフミラー15で反射させた後、ダハプリズム20、レンズ21、ハーフミラー22を介してエレクターレンズ23に入射させている。エレクターレンズ23はダハプリズム20からの光束を集光しハーフミラー301、ミラー302を介してTVカメラ303の撮像面に導光している。」と記載されており、また、第3頁右下欄第14行〜第4頁左上欄15行には、「次にHe-Neレーザによる観察照明系の構成について同図を用いて説明する。
同図において、100はHe-Neレーザであり、この光はミラー101を介して106の円盤状の無段階NDフィルタに入射する。…107は、ステッピングモータであり、NDフィルタ106を回転させる。ステッピングモータ107に適当なパルスを与えることことにより、He-Neレーザからの照明光量を任意に可変することが出来る。
…以後、前述の水銀ランプによる観察照明系と同様にマスク3およびウエハ1面のアライメントマークからの光束がTVカメラ303の撮像面に導光される。」と記載されており、また、第4頁左上欄第17行〜右上第14行には、「本グラフは、観察照明光としてHe-Neレーザ光(波長=633nm)と水銀ランプよりの非露光光(波長=546nmおよび578nm)の例である。このグラフから分かるように、水銀ランプからの非露光光とHe-Neレーザ光とを視察光源としてウエハのレジスト膜厚に応じて両光源を切換え、または混合して用いればアライメントマークの検出範囲を非常に広くすることが可能になる。
第4図は、無段階NDフィルタ106、222の回転によるHe-Neレーザ照明と、水銀ランプの非露光光による照明の調光特性の一例を示す。横軸にNDフィルタの回転角、縦軸に光量を示す。
ここで照明方式をHe-Neレーザ照明にする場合は、第4図のA点になるように無段階NDフィル夕106を最大位置へ回転し、逆に、無段階NDフィルタ222を最小位置へ回転すればよい。」と記載さている。
刊行物3:特開平1-109719号公報(甲第3号証)
甲第3号証の第2頁右下欄第1行〜第3頁左上欄第1行には、「第1図に示すように、従来の技術における光学系に加えて、異なる波長のレーザ光を発振するレーザ発振器1〜5を複数用い、波長選択器により所望の走査レーザ光の波長を選択する。…
例えば、レーザ発振器1から発振した波長λ1のレーザ光は6aのミラー、6bのハーフミラーを経て、波長選択器7に入射し、走査系8で走査され、分割プリズム9にて左右それぞれの対物レンズ14a、14bに分割され、片視野毎にマスクおよびプレートを走査する。…、回折光および乱反射光のみを検出して光電変換し、得られた電気信号からマスク・プレート間の相対ズレ量を算出してその情報を機器制御系へ伝達し、マスクアライメントマークとプレートアライメントマークを合致させる。」と記載され、また、第3頁右上第5行〜第8行には、「第7図はプレート上にアライメントマークとフォトレジストがある場合、照射されたレーザ光の反射の様子を示す断面図である。」と記載されている。
刊行物4:特開平5-144704号公報(甲第4号証)
甲第4号証の第2頁【0002】段落には、「光投影露光装置は、マスク上の回路パターンを、投影光学系を介して被露光体であるウエハの表面に塗布された感光剤(レジスト)へ転写し、かつ、ウエハをステップアンドリピートする事により、ウエハ全面に対し正列転写するものである。従ってウエハは、2次元的に移動可能なステージ上に載置されているのが通常である。また、転写の際には、ウエハ上の既存のデバイス構造に対し、正確にマスクの像を重ね合わせる必要があり、0.2μm程度の精度で2次元的にフライメントされる。アライメントに関しては、今迄に様々な方式の検討がなされており、今の所主流になっているのが実際に投影するレンズを介して、ウエハ上のマークを光学的に検出する、いわゆるTTL(スルーザレンズ)方式である。TTL方式の利点は、投影レンズの光学的変化(倍率等)が生じても、投影レンズを介して検出する事により、変化の影響が少ない事である。」と記載され、また、第2頁の【0003】段落に、「アライメントは、ウエハ上の凹凸段差を有する(a)のような構造のアライメントマークの位置を正確に求めるが、上記アライメントマーク上には、1〜2μm程度の厚さのレジストが塗布されている為、マークの段差付近では、レジスト膜厚は局所的に変化する。」と記載されている。

(4) 対比・判断
(4)-1
本件請求項1に係る発明が、「波長幅が400nm〜700nmの光源から発射した光」を、「該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる前記所望の強度分布を有する光を上記被検物体に照射する」構成(以下、「本件請求項1に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、参考文献である甲第3号証及び甲第4号証を参照しても、いずれも本件請求項1に係る発明の特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項1に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、特許明細書の【発明の効果】に記載された、甲第1号証及び甲第2号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
(4)-2
本件請求項12に係る発明が、「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」と、この「光源から出射した光を分光し、」この「分光した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段」からなる構成(以下、「本件請求項12に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、参考文献である甲第3号証及び甲第4号証を参照しても、いずれも本件請求項12に係る発明の特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項12に係る発明は、本件請求項12に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、特許明細書の【発明の効果】に記載された、甲第1号証及び甲第2号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項12に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
(4)-3
本件請求項23に係る発明が、「波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源」と、この「光源から出射した光を該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部での光の波長に応じて強度を異ならしめた前記所望の強度分布を有する光を層構造を有する被検物体に照射する照明部」からなる構成(以下、「本件請求項23に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、参考文献である甲第3号証及び甲第4号証を参照しても、いずれも本件請求項23に係る発明の特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項23に係る発明は、本件請求項23に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、特許明細書の【発明の効果】に記載された、甲第1号証及び甲第2号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項23に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
(4)-4
本件請求項1に係る発明を引用する本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明の特徴的構成を有するから、本件請求項1に係る発明と同様に、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
(4)-5
本件請求項23に係る発明を引用する本件請求項30に係る発明は、本件請求項23に係る発明の特徴的構成を有するから、本件請求項23に係る発明と同様に、本件請求項30に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

(5) むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2、12、23及び30に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、12、23及び30に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
従って、本件請求項1、2、12、23及び30に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パターン検出方法及びパターン検出装置及びそれを用いた投影露光装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長幅が400nm〜700nmの光源から出射した光を、層構造を有する被検物体に照明し、該被検物体で反射した光を用いて該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出する方法であって、上記光源から出射した光を、該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる前記所望の強度分布を有する光を上記被検物体に照射することを特徴とするパタ-ン検出方法。
【請求項2】
上記光源から出射する光を分光手段により波長ごとに光の進行方向が変化するようにした後、分光された光路中に各波長の光の通過する場所ごとに光の透過率を異ならしめる空間光透過率変調器を用いて上記分光照明強度特性(波長強度分布特性)を実効的に変化せしめることを特徴とする請求項1記載のパタ-ン検出方法。
【請求項3】
波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光源から出射した光を、層構造を有する被検物体に照明し、該被検物体で反射した光を用いて該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出する方法であって、上記被検物体で反射した光を、該反射した光の波長に応じて強度を異ならしめ、該波長に応じて強度の異なる光を用いて該被検物体表面のパタ-ンを検出することを特徴とするパタ-ン検出方法。
【請求項4】
上記反射した光の波長に応じて強度を異ならしめることを、上記被検物体で反射した光の光路中にその反射光の波長ごとに透過率を変化せしめる分光透過率可変フィルタを挿入し、上記光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を実効的に変化せしめたことを特徴とする請求項3記載のパタ-ン検出方法。
【請求項5】
上記反射した光の波長に応じて強度を異ならしめることを、上記反射光の各波長ごとに上記パタ-ン検出の開口数(NA)を異ならしめることを特徴とする請求項3記載のパタ-ン検出方法。
【請求項6】
上記各波長ごとのパタ-ン検出の開口数に対し一定の比率を持つ照明のパ-シャルコヒ-レンスになるように照明光の各波長ごとに指向性を持たせることを特徴とする請求項5記載のパタ-ン検出方法。
【請求項7】
上記被検物体の層構造および材質の情報を用いて検出光の各波長における層構造に起因する多重干渉強度を計算し、パタ-ンの構造を反映する検出信号波形が得られる様に上記光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を被検物体の層構造および材質の情報に応じて実効的に変化せしめることを特徴とする請求項1記載のパタ-ン検出方法。
【請求項8】
波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光源から出射した光を、被検物体に照明し、該被検物体で反射した光を用いて該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出するパタ-ン検出方法において、上記光源から出射し上記被検物体で反射した光を格子等の分光手段上にほぼ結像させ、当該分光手段により分光されたパタ-ンの分光方向と直交するパタ-ン検出方向については上記分光手段上のパタ-ンを結像し、分光方向については分光した該被検物体の非結像の状態で分光一次元像として検出することを特徴とするパタ-ン検出方法。
【請求項9】
上記分光一次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、検出光学系による色収差を補正した後、色収差補正された各信号を合成し、当該合成信号によりパタ-ン検出することを特徴とする請求項8記載のパタ-ン検出方法。
【請求項10】
上記分光一次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、各波長の信号全体に各波長ごとに異なる定数を掛けた後、各波長の信号を合成し、当該合成波長によりパタ-ン検出することを特徴とする請求項8記載のパタ-ン検出方法。
【請求項11】
上記分光一次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、各波長の信号の場所により異なる定数を各波長ごとに掛けた後、各波長の信号を合成し、当該合成波長によりパタ-ン検出することを特徴とする請求項8記載のパタ-ン検出方法。
【請求項12】
波長幅が400nm〜700nmの光を出射する光源と、 該光源から出射した光を、層構造を有する被検物体に照射する照明手段と、該被検物体で反射した光を用いて該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出するパタ-ン検出手段とを備えたパタ-ン検出装置であって、上記光源から出射した光を分光し、該分光した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えたことを特徴とするパタ-ン検出装置。
【請求項13】
上記光の波長に応じて強度を異ならしめる手段は、上記光源から出射した光を波長ごとに光の進行方向を変化させる分光器と、該分光器で分光された光の光路中に配置されて分光された各波長の光の通過する場所ごとに光の透過率を異ならしめる空間光透過率変調器とを有することを特徴とする請求項12記載のパタ-ン検出装置。
【請求項14】
波長幅の広い光もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源と、該光源から出射した光を層構造を有する被検物体に照明する照明手段と、該照明手段により照明されて上記被検物体で反射した光を受光して該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出するパターン検出手段とを備えたパターン検出装置であって、上記照明手段により照明されて上記被検物体で反射した光を、該反射した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段を更に備えたことを特徴とするパタ-ン検出装置。
【請求項15】
上記反射した光の波長に応じて強度を異ならしめる手段は、上記被検物体で反射した光の光路中に挿入されて該反射光の波長ごとに透過率を変化せしめる分光透過率可変フィルタであることを特徴とする請求項14記載のパタ-ン検出装置。
【請求項16】
上記パターン検出手段は結像光学系を有し、該結像光学系は、被検物体で反射した反射光の各波長ごとに当該結像光学系の開口数(NA)を異ならしめる手段を具備したことを特徴とする請求項12または14に記載のパタ-ン検出装置。
【請求項17】
上記各波長ごとのパタ-ン検出の開口数に対し一定の比率を持つ照明のパ-シャルコヒ-レンスになるように照明光の各波長ごとに指向性を持たせる手段を具備したことを特徴とする請求項12または14に記載のパタ-ン検出装置。
【請求項18】
上記被検物体の層構造および材質の情報を入力する手段と、当該層構造および材質の情報用いて検出光の各波長における層構造に起因する多重干渉強度を計算する手段と、パタ-ンの構造を反映する検出信号波形を得る上記光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を計算する手段とを更に備えたことを特徴とする請求項12または14に記載のパタ-ン検出装置。
【請求項19】
波長幅の広い光もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源と、該光源から出射した光を、被検物体に照射する照明手段と、該被検物体で反射した光を用いて該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出するパタ-ン検出手段とを備えたパタ-ン検出装置であって、該被検物体で反射した光を結像する光学系と、該結像光学系の該被検物体の像近傍の位置に配置された格子等の分光手段と、該分光手段により分光されたパタ-ンの分光方向と直交するパタ-ン検出方向については上記分光手段上のパタ-ンを結像させ、分光方向については分光した非結像の状態ならしめる非回転対象結像系と、該非回転対象結像系により得られた分光一次元像を検出する二次元撮像装置と、当該二次元撮像装置により得られた像を処理する処理回路系とを更に有することを特徴とするパタ-ン検出装置。
【請求項20】
上記処理回路は、上記二次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、検出光学系による色収差を補正した後、色収差補正された各信号を合成し、該合成信号によりパタ-ン検出することを特徴とする請求項19記載のパタ-ン検出装置。
【請求項21】
上記処理回路は、上記分光一次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、各波長の信号全体に各波長ごとに異なる定数を掛けた後、各波長の信号を合成し、当該合成波長によりパタ-ン検出することを特徴とする請求項19記載のパタ-ン検出方法。
【請求項22】
上記処理回路は、上記分光一次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、各波長の信号の場所により異なる定数を各波長ごとに掛けた後、各波長の信号を合成し、当該合成波長によりパタ-ン検出することを特徴とする請求項19記載のパタ-ン検出装置。
【請求項23】
原画マスクに描画されたパタ-ンを照明する露光照明系と、該露光照明系で照明され上記原画マスクを透過した光を被露光物体に投影露光する投影光学系と、被露光物体を搭載して移動可能なステ-ジと、被露光物体上に既に加工されたパタ-ンの位置を検出するパタ-ン検出手段とを備え、原画マスクの像を被露光物体上に投影露光する投影露光装置であって、上記パタ-ン検出手段は、波長幅が400nmから700nmの光を出射する光源と、該光源から出射した光を該光源の分光強度分布の影響を含めて光の波長に応じて所望の強度分布となるように強度を異ならしめる強度変換部と、強度変換部で光の波長に応じて強度を異ならしめた前記所望の強度分布を有する光を層構造を有する被検物体に照射する照明部と、該被検物体で反射した光を用いて該被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出するパタ-ン検出部とを備えたことを特徴とする投影露光装置。
【請求項24】
上記強度変換部は、上記光源から出射した光を波長ごとに光の進行方向を変化させる分光器と、該分光器で分光された光の光路中に配置されて分光された各波長の光の通過する場所ごとに光の透過率を異ならしめる空間光透過率変調器とを有することを特徴とする請求項23記載の投影露光装置。
【請求項25】
原画マスクに描画されたパタ-ンを照明する露光照明系と、該露光照明系で照明され上記原画マスクを透過した光を被露光物体に投影露光する投影光学系と、被露光物体を搭載して移動可能なステ-ジと、被露光物体上に既に加工されたパタ-ンの位置を検出するパタ-ン検出手段とを備え、原画マスクの像を被露光物体上に投影露光する投影露光装置であって、上記パタ-ン検出手段は、波長幅の広い光もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源と、該光源から出射した光を層構造を有する被検物体に照明する照明部と、該照明部により照明されて上記被検物体で反射した光を該反射光の波長に応じて強度を異ならしめる強度変換部と、該強度変換部で波長に応じて強度を異ならしめられた反射光を受光して上記被検物体に形成されて表面が光学的に透明な膜で覆われたパタ-ンを検出するパターン検出部とを備えたことを特徴とする投影露光装置。
【請求項26】
上記強度変換部は、上記被検物体で反射した光の光路中に挿入されて該反射光の波長ごとに透過率を変化せしめる分光透過率可変フィルタであることを特徴とする請求項25記載の投影露光装置。
【請求項27】
上記パターン検出部は結像光学系を有し、該結像光学系は、被検物体で反射した反射光の各波長ごとに上記結像光学系の開口数(NA)を異ならしめる開口数調整部を具備したことを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【請求項28】
上記パタ-ン検出手段は、上記各波長ごとのパタ-ン検出の開口数に対し一定の比率を持つ照明のパ-シャルコヒ-レンスになるように照明光の各波長ごとに指向性を持たせる指向性付与部を具備したことを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【請求項29】
上記パタ-ン検出手段は、上記被検物体の層構造および材質の情報を入力する入力部と、上記層構造および材質の情報を用いて検出光の各波長における層構造に起因する多重干渉強度を計算する第1の計算部と、パタ-ンの構造を反映する検出信号波形を得る上記光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を計算する第2の計算部とを更に備えたことを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【請求項30】
上記被露光物体上に既に加工されたアライメントパタ-ンの位置を検出するパタ-ン検出手段は、上記光源から出射した光が、上記投影光学系を透過し、層構造を有する被検物体に照射する如く構成し、アライメントパタ-ンで反射して上記投影光学系を透過した光を用いて該被検物体表面のアライメントパタ-ンを検出することを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【請求項31】
上記パタ-ン検出手段は、上記波長幅の広い光もしくは実効的に複数の単波長を含む光を出射する光源から出射し、上記アライメントパタ-ンで反射した光が上記投影光学系を透過する際に発生する色収差を補正する色収差補正部を具備していることを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【請求項32】
上記パタ-ン検出手段を2組備え、各パタ-ン検出手段はそれぞれ上記被検物体表面上の互いに直交する2つのアライメントパタ-ンを検出するごとく構成され、各パタ-ン検出手段は上記投影光学系の光軸を通る放射状の一次元アライメントパタ-ンを検出し、該検出した一次元アライメントパタ-ンの像を色収差補正部で色補正するごとく構成されていることを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【請求項33】
上記一次元アライメントパタ-ンからの反射光のうち実効的に検出される光の主光線は該パタ-ンの方向と上記被検物体の法線を含む面内にあり、各波長ごとに反射角を異ならしめたことを特徴とする請求項23または25に記載の投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体集積回路等層構造からなる被検出物体に形成されたパタ-ンを検出する方法及び装置に関する。特にフォトレジスト等光学的に透明な層で覆われたパタ-ンの位置等の情報を正確に検出する方法及び装置に係り、またこの方法及び装置を用いた投影露光装置並びに露光システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路の高集積化、微細化に伴い、回路パタ-ン線幅は0.5μm以下に成り、回路パタ-ンの露光工程におけるアライメント精度は0.1μm以下が要求されており、今後益々高精度化が必要になる。またアライメントを行い重ね露光を行った結果を評価する場合にも上記の精度あるいは更に精度の高い検出性能が要求されている。
【0003】
高精度の検出を実現する上で最大の障害は露光や検出に用いる検出パタ-ンそのもの、あるいはこのパタ-ンに薄く(1〜2μm厚)塗布されたフォトレジストが対称な形状をしていないことである。パタ-ンの最上層に形成されている光学的に透明な薄膜の厚さがこのように場所により非対称になると、単波長の光で検出した場合、図13に示すように検出波形が非対称に成り、例えばパタ-ンの中心位置を検出しようとすると、検出中心が真の中心から大きくずれてしまう。
【0004】
このような課題に対し、従来、特開昭61-203640、特開平1-227431に示されているように検出波長を多波長にしたり、波長バンド幅を広くして検出する方法が提案されている。このような方法を採用することにより、単波長で検出した場合に比べかなり高い検出精度が得られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに上記の従来法では今後のパタ-ンの微細化に対応できる程度の精度を確保することが困難である。これは上記の多波長あるいは波長バンド幅を広くした検出法では検出波長は固定であるため、どのような検出対象に対しても高い精度で検出できる分けではないことによる。即ち検出しようとする対象の層構造によって、最も検出精度が高くなる検出波長の強度分布(光の分光照明強度特性)は異なってくる。従来の技術はこの検出波長の強度分布はあくまでも固定であるか、せいぜいあらかじめ用意された複数の検出光の何れかを用いる、またはすべてを用いることに留まっていた。またこの選択は各光での検出結果、または露光した後にアライメント精度を評価することにより行っていた。このため0.5μm以下のパタ-ン線幅の集積回路では充分な精度が得られないばかりでなく、波長の選択に多大の時間を要していた。
【0006】
このことを更に詳しく説明する。話を分かり易くするため図13に示した単純な構造を考える。ただし下地は波長により反射率が図14(A)に示すように異なるとする。このような例は多層構造からなる被検物体の場合一般に生じている。また下地が層構造でなくても、下地の材質の分光反射率特性に波長依存性が強い被検物体もこのような例に該当する。層構造物体を検出するには図14(B)に示すような分光照度分布を有する白色光を用いると、膜厚の影響を受けにくいことは良く知られているが、ここで示した様に下地の反射率が図14(A)に示すように波長により異なると反射率の低い波長の検出波形に及ぼす寄与が小さくなり、実効的に図14(C)に示すように狭い波長で検出したのと変わらなくなる。この結果膜厚の影響をより多く受け、検出波形が図14(D)に示すように非対称性の強い歪の大きな波形となる。
【0007】
さらに従来の多波長あるいは波長バンド幅を広くした検出法では検出に用いる各波長には関係無く一定の検出光学系の開口数を用いていた。しかし各波長で得られる検出波形の合成が最終的に得られる波形であることに着目すれば、検出像の解像度Lが次式で与えられることから、
【0008】

【0009】
波長により解像度が異なってしまうことになる。この結果波長に比例して解像度が変わり、解像度の異なる各波長での波形の合成が検出されることになり、波長合成の効果が低減されることになる。
【0010】
さらに従来波長バンド幅の広い波長で検出しようとすると、検出光学系に含まれる色収差、特に横色収差の影響を受けて例えばパタ-ンのエッジを検出しようとすると波長ごとにエッジ位置が変わり、アライメント検出や寸法検出、位置検出の誤差となってしまう。このような誤差は検出制度が0.1μm程度ではあまり問題にならなかったが、0.05μm以下の精度が要求される今後の計測技術では大いに問題となるところである。しかしながらこのような精度を満足する検出光学系、即ち顕微鏡対物レンズや、縮小レンズの製作は困難を極めている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は以下に示す手段を用いる。光源として波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光源を用い、この光源から出射した光を、層構造から成りその表面の最上層の少なくとも一部が光学的に透明な被検物体に照明する。そしてこの被検物体で反射した光を用いてこの被検物体表面のパタ-ンを検出する分けであるが、この際この被検物体の層構造および材質の情報に応じて上記の光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を実効的に変化させ、この変化により得られた所望の分光照明強度で照射された被検物体のパタ-ン像を一次元もしくは二次元の像として検出する。
【0012】
上に述べた検出法の更に具体的な手段としては、例えば、上記の光源から出射する光を分光手段により波長ごとに光の進行方向が変化するようにした後、分光された光路中に各波長の光の通過する場所ごとに光の透過率を異ならしめる空間光透過率変調器を配置して、上記分光照明強度特性(波長強度分布特性)を実効的に変化させればよい。
【0013】
また別の具体例として、照射された被検物体のパタ-ン像を一次元もしくは二次元の像として検出する際に、被検物体で反射した光の光路中にその反射光の波長ごとに透過率を変化せしめる分光透過率可変フィルタを挿入し、検出光の分光透過率を変えることにより、最適な分光強度の照明をしていることに成り、上記光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を実効的に変化させていることになる。
【0014】
本発明は更に前述の波長ごとに解像度が異なる従来技術の課題を解決するために、上記所望の分光照明強度で照射された被検物体のパタ-ン像を一次元もしくは二次元の像として検出する際に、被検物体で反射した反射光の各波長ごとに上記パタ-ン検出の開口数(NA)を異ならしめる。
【0015】
更にこの際、上記各波長ごとのパタ-ン検出の開口数に対し一定の比率を持つ照明のパ-シャルコヒ-レンスになるように照明光の各波長ごとに指向性を持たせている。
【0016】
上記の色収差に対する課題を解決するため、本発明では波長幅の広い光源もしくは実効的に複数の単波長を含む光源から出射した光を、被検物体に照明し、被検物体で反射した光を用いて該被検物体表面のパタ-ン検出する。この際、光源から出射し、被検物体で反射した光を格子等の分光手段上にほぼ結像させ、この分光手段により分光されたパタ-ンの分光方向と直交するパタ-ン検出方向については分光手段上のパタ-ンを結像し、分光方向については分光した非結像の状態で分光一次元像として二次元撮像手段により検出する。しかも分光一次元像の各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、検出光学系による色収差を信号処理により補正した後、色収差補正されたこれら各信号を合成し、この合成信号によりパタ-ン検出する。
【0017】
上記の分光一次元像を検出する方法を用いれば、各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、各波長の信号全体に各波長ごとに異なる定数を掛けた後、各波長の信号を合成し、当該合成波長によりパタ-ン検出すれば上記の照明光の分光特性を変化させ所望の分光照明強度で照射された被検物体のパタ-ン像を検出した場合と同一の効果がある。
【0018】
また上記分光一次元像を用いる方法を用いれば、各分光波長に対応するパタ-ン検出方向の各信号に対し、各波長の信号の場所により異なる定数を各波長ごとに掛けた後、各波長の信号を合成し、当該合成波長によりパタ-ン検出れば、各場所ごとに異なる層構造および材質に応じて、各場所ごとに最適な分光照明強度を与えて検出したことになる。
【0019】
上記分光照明強度を所望なもの、すなわち最適なものにするため、本発明は、上記被検物体の層構造および材質の情報を用いて検出光の各波長における層構造に起因する多重干渉強度を計算し、パタ-ンの構造を忠実に反映する検出信号波形が得られる様に上記光源から出射する光の分光照明強度特性(波長強度分布特性)を被検物体の層構造および材質の情報に応じて実効的に変化させる。
【0020】
以上に説明したパタ-ン検出手段は単なるパタ-ン検出或いはパタ-ン位置検出装置にのみ有効な手段ではなく、投影露光装置のアライメントに必要なアライメントパタ-ン検出系の手段ともなる。
【0021】
ウエハに塗布されたレジストの下に形成されているアライメントパタ-ン、或いはこのウエハを露光後のアライメントパタ-ン、或いは現像後さらにはエッチング後のアライメントパタ-ンを上記のパタ-ン検出手段を用いてそのパタ-ン位置を正確に計測し、この結果をレジスト塗布機、露光装置、現像装置、或いはエッチング装置にフィ-ドバック、或いはフィ-ドフォワ-ドする様に露光システムを構成することにより、より高い精度で重ね露光が実現する。
【0022】
とりわけこの露光システムでは露光装置内のパタ-ン検出系、即ちアライメントパタ-ン検出系の分光照度(水銀ランプの輝線スペクトル、或いはレ-ザ光等の単色光でも、多色光でも良い)や照明の指向性或いは検出光学系の開口数等の光学条件と同一の条件にパタ-ン位置検出系を設定し、露光装置で露光する前のアライメントパタ-ンの位置を検出し、得られたこの第一のパタ-ン位置情報と、検出しているアライメントパタ-ンに対する最適な検出光学系条件で、かつ第一のパタ-ン位置情報を得たときと同一のウエハ位置で検出し、得られた第二のパタ-ン位置情報との差を求め、この差を露光装置のアライメントオフセットとして、露光装置にフィ-ドフォワ-ドすれば、露光装置のアライメント検出系が例えウエハのアライメントパタ-ンに対し最適な条件に成っていなくとも、正しいオフセット補正が成され、精度の高い重ね露光を実現することができる。
【0023】
【作用】
前に示した図14を例にとって本発明の作用を説明する。下地が図14(A)のように波長により反射率が異なっていれば図15(A)に示すような分光透過率を有するフィルタ-を通して照明すれば、図15(B)のように下地の反射率が一定で完全な白色照明をしたのと同等になり、即ち、多重干渉の条件が波長依存性がなくなり、図15(C)に示すように検出波形は対称になり、多重干渉による検出誤差が小さくなる。
【0024】
一般には下地の反射率は上記のような単純な反射率ではなく、特に下地が多層構造の場合複素反射率となる。このような場合でも複素反射率を下地の層構造および材質の特性(分光複素屈折率)から計算によりもとめることができるし、光学的に計測することも可能であるので、このようにして得られた複素反射率と下地の上に乗る薄膜の膜厚と屈折率から照明光の最適分光強度を求め、このような分光特性の照明を上記の手段で実現して検出すれば、精度の高い検出を行うことができる。
【0025】
また本発明では検出波長により異なる検出光学系の開口数を各波長にたいし同一になるようにすることにより、理想光学系においても発生するパタ-ンエッジ部での色ずれ(色にじみ)がまったくなくなり、完壁な検出が可能となる。
【0026】
また理想的でない色収差のある光学系に対しても、被検出物で反射した光を一旦格子等の分光手段上に結像後に分光した光をパタ-ンの検出方向には結像し、これと直交する方向には分光した状態で二次元撮像装置に結像することにより、各波長での像を別々に検出することが可能となる。この結果、色収差のある光学系で検出され、色ずれを持ったまま結像している像を各波長ごとに色ずれを画像処理により補正してやることが可能となる。
【0027】
さらに各波長での像が別々に検出されているため、上記の例のように照明光の分光照度特性が所望のものになるようにハ-ド的に補正する必要がなくなる。即ち、検出された各波長の画像に上記の所望の分光特性で照明したのと同等の結果が得られるように各波長の信号にそれぞれ異なる定数を掛けあわせて得られた信号を合成すれば良い。
【0028】
各波長での像が別々に検出できる方式を用いれば、パタ-ンの部分ごとに異なる薄膜の厚さに応じて、その部分ごとに検出光に用いる波長を選ぶことが可能になるため、最も検出誤差の小さくなる検出が実現できる。
【0029】
【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明のパタ-ン検出方法をステッパ(投影露光装置)に適用した実施例である。レチクル3に露光照明系6からi線、あるいはエキシマレ-ザ光を照射し、レチクルを透過した光を縮小レンズ5によりレチクル描画パタ-ンをxyz方向に移動可能なウエハステ-ジ7上のウエハ4の露光領域40に投影露光する。ウエハステ-ジをxy方向にステップ移動することにより、図2に示すようにウエハ2上には露光された回路パタ-ンの領域が配列される。隣合う各露光回路パタ-ンの領域の間には次の露光プロセスの際に既に露光形成されている回路パタ-ンとの重ね合わせを高精度に実現するためにアライメントパタ-ン41が形成されている。このアライメントパタ-ン41は図3に示すように凹部411のある下地パタ-ンの上にフォトレジスト412が塗布されている。このパタ-ンを縮小レンズ5を通して精度良く、位置検出する必要がある。
【0031】
アライメントパタ-ン41のx方向の位置を検出する検出系は点線10xである。図には示されていないが、y方向の位置用のアライメントパタ-ンを検出する検出系10yは紙面と垂直な方向にある。検出系10xにはパタ-ン検出用の例えばハロゲンランプやキセノンランプ等からなる照明光源11がある。照明光源11を出射した光は所望のビ-ム径と指向性にするレンズ101を透過し、ミラ-102で反射後、分光強度および指向性調整照明手段12を透過する。この分光強度および指向性調整照明手段12は照明光を最適な分光照度分布にすると共に、それぞれの波長の光を所望の指向性となるようにする。ここを透過した光は、ビ-ムスプリッタ103で反射し、レンズ104、ミラ-105を通過し、縮小レンズ5を透過した後、ウエハ4上のアライメントパタ-ン41を照明する。アライメントパタ-ン41で反射した光は再び縮小レンズ5を通過した後、ミラ-105で反射し、検出系10xに入る。入ってきた検出光はレンズ104、ビ-ムスプリッタ103を通過後波長選択ビ-ムスプリッタ106で2分される。
【0032】
このビ-ムスプリッタは波長がλ1からλ2までの光を反射し、λ2からλ3までの光を透過する。このように検出光を2つの波長帯域に分離し、検出するのは縮小レンズ5が露光光で最高の解像度が得られるように設計、製作されているため、λ1からλ3までの広い波長幅の光に対し、大きな色収差を持ってしまい、これを補正する色補正レンズの製作が困難となるためである。即ち図1に示すように2つの波長帯域に分離しておけばλ1からλ2までの光はレンズ104と108により色補正でき、λ2からλ3までの光は104と108’により色補正できる。波長選択ビ-ムスプリッタ106で分離されたλ1からλ2までの光は分光透過率および開口数調整検出手段13を透過する。この分光透過率および開口数調整検出手段13は各検出波長に対し、最適な検出開口数で検出することを可能とする。波長選択ビ-ムスプリッタ106で分離さえた他方の波長がλ2からλ3までの光はミラ-107で反射され分光透過率および開口数調整検出手段13’により同様に各波長で最適な検出開口数で検出される。このようにして各検出波長帯の検出光は色補正レンズ108および108’により色ずれのない像を一次元又は二次元撮像装置14および14’の撮像面に結ぶ。
【0033】
撮像装置14、14’で検出されたアライメントパタ-ンは信号処理回路2に送られ、パタ-ンの位置が検出される。このようにしてウエハ上のアライメントパタ-ンの位置が検出されれば、この情報と各パタ-ンを検出したときのウエハテ-ブルの位置(図示されていないが通常レ-ザ測長器により計測される)の情報から正しく重ね露光されるようにウエハステ-ジを微動調整し、重ね露光が実行される。上記の分光強度および指向性調整照明手段12および分光透過率および開口数調整検出手段13は後に実施例を用いて詳細を説明するが、これら手段により調整される照明光の分光強度および指向性、並びに検出の分光透過率及び開口数は検出する対象のウエハパタ-ンの構造や材質特性により一般に最適値が異なる。これら最適値は予めオフラインで計算し、その値を入力端末22から入力しても良いし、図1に示すように構造や材質の特性値を端末22から入力して最適値演算回路21で最適値を演算しても良い。
【0034】
なお、図1の実施例では分光強度および指向性調整照明手段12と分光透過率および開口数調整検出手段13とを同時に使用しているが、12における分光強度の調整と13における分光透過率の調整はいずれか一方を行えば十分である。
【0035】
図4は本発明のパタ-ン検出方法をアライメント評価装置に適用したものである。図1と同一部品番号は同一物を表わす。ウエハテ-ブル7の上のウエハには既に重ね露光、現像された例えばレジストパタ-ン412が図5のように形成されている。即ち、412は重ね露光することにより形成されたパタ-ンである。他方パタ-ン411は重ね露光される前に形成されていたパタ-ンである。x方向の重ね合わせ精度を評価するには、図5のXX’断面を示した図6の左右のパタ-ン411の検出中心Cpと左右のパタ-ン412の検出中心Crのずれを求めれば良い。しかしながら図6に示したように通常のパタ-ンは多層構造になっており特に最上層が光学的に透明な層であると、多重干渉の影響を受け最適な波長分光特性を持った光で照明しないと、検出波形が歪み誤検出する。この実施例ではパタ-ン411とパタ-ン412は異なる層構造であるから、両者に対し総合的に最適となる波長を選ぶ。
【0036】
図4で11’は照明系であり、ここを出射した光は分光強度および指向性調整照明手段12で所望の分光強度と、各波長に応じた指向性を持っている。即ち後に説明するように、波長ごとに大きさと強度が異なる2次光源を分光強度および指向性調整照明手段12で作る。このような光がレンズ101’を通り、ビ-ムスプリッタで反射後、対物レンズの瞳にこの2次光源の像を結ぶ。対物レンズの瞳を通過した光はウエハ上のパタ-ンをテレセントリックに照明する。ウエハから反射した光は対物レンズ5’ビ-ムスプリッタ105’結像レンズ109を通り、2次元撮像装置14’に結像される。結像レンズ109と2次元撮像装置14’の間には分光透過率および開口数調整検出手段13が配置されており、検出光の波長に応じた開口数で検出するようになっている。
【0037】
上記実施例では分光強度および指向性調整照明手段12および分光透過率および開口数調整検出手段13でともに分光強度を変化させているが、一方のみで十分である。即ち例えば分光強度および指向性調整照明手段12で照明光の分光強度を最適に調整すれば、分光透過率および開口数調整検出手段13は各波長にたいし同一の透過率で良い。
【0038】
本実施例で示す方法により検出された2次元パタ-ンを2次元撮像装置で検出し、x方向とy方向のパタ-ン411とパタ-ン412のそれぞれの中心のずれを求めれば、アライメント精度が求まる。ウエハの層構造や材質に依存して最適な照明光分光強度及び検出時の光学系の開口数、或いは照明光の指向性は異なるため、入力端末22からこれら条件を入力すると、処理回路2’で最適な照明光分光強度及び検出時の光学系の開口数、或いは照明光の指向性が計算され分光強度および指向性調整照明手段12、および分光透過率および開口数調整検出手段13を駆動し、そのような照明光分光強度及び検出時の光学系の開口数、或いは照明光の指向性が実現する。
【0039】
図7は本発明のパタ-ン検出装置の分光強度および指向性調整照明手段12の具体的実施例を示したものである。また、図7は後述するように一部の構成を変えることにより、本発明の分光透過率および開口数調整検出手段13の一実施例にもなりえる。121は回折格子或いはプリズム(図示せず)等の分光手段である。検出用照明光源11(11’)からの出射光は図のy方向には指向性をある程度高めた状態の光1010となり、分光手段121に入射する。検出用照明光源は検出波長域を総て含む分光強度を持っているが、検出に最適な分光強度特性を持っていない。そこで分光手段121で分光されたビ-ム1011Aから1011Nを集光レンズ123により空間光透過率変調器125上に各分光光を集光するように分離する。回折格子を用いた場合、1012Aには最も波長の短い光が、1012Nには最も波長の長い光が集光する。なお分光手段121に照射された光の0次透過光は用いないので遮光板126により遮光する。この遮光板は図7に示すようにレンズ123の前に配置しても良いし、空間光透過率変調器125上に配置しても良い。
【0040】
そこで空間光透過率変調器125を図8(A)に示すように遮光部1252に透過部1251を設けた構造で、透過部1252は各波長の光の強度がここを通過後最適な強度になるよう、図8(B)に示すように透過率T(λ)を変化させる。このように部分的に光の強度を変化させる方法としては、例えば液晶シャッタマトリックスや、PZT、フォトクトミック材料等がある。またもっと簡単な物として、y方向の変化をステップ的に変えても本発明の目的が達成できるため、図19(B)に示すようにx方向に透過率が少しずつ変化するx方向に長い短冊状のNDフィルタ-をX方向に移動可能な構造にし、図19(A)に示すようにy方向に並んだ沢山の短冊をそれぞれx方向に制御し、図8(B)に示すような所望の透過率になるようにしても良い。
【0041】
次に式(1)を用いて前述したように各検出光に対し同一の解像度で検出させるための照明光の指向性を最適化する実施例について図9を用いて説明する。即ち各検出光に対し同一の解像度で検出させるには、各検出波長λに比例した検出光学系の開口数NAにし、さらにこのNAに対し各波長での照明光のパ-シャルコヒ-レンシ-が一致するようする。図9(A)に示す空間光透過率変調器125’の空間光透過率変調領域1253の内1252を光遮光領域1251を光透過領域にし、波長の長いλBでは波長の短いλAに比べ像検出のNAが大きく、またこのNAに比例し照明のパ-シャルコヒ-レンスが大きくなるように、図9(A)に示す照明用の空間光透過率変調器125’透過領域の幅を広くしている。この幅の比はほぼ波長の比に等しくしている。液晶シャッタマトリックスや、PZT等を用いることにより空間光透過率変調領域1253の領域内を電気信号で駆動することにより各波長ごとに所望のNA(後述)とこれに比例した照明のパ-シャルコヒ-レンスで検出することを可能にする。
【0042】
空間光透過率変調器125、或いは125’を透過した光は図7の集光レンズ124により回折格子或いはプリズム(図示せず)等の分光手段122に入射する。分光手段122の面はレンズ123と124により分光手段121の面と共役な関係にあるので、分光手段121に入射する光、即ち上記図のy方向には指向性をある程度高めた状態の光1010の強度分布が分光手段122上に再現される。但し、空間光透過率変調器125で変調されたことによる各波長ごとに強度のの変化を受けている。その結果分光手段122を透過し、回折する光は所望の照明のパ-シャルコヒ-レンスと分光照度分布を持ってウエハ4を照明することになる。
【0043】
図7では12を照明系に用いる場合について説明したが、図7の12と同じ構成で13を検出系に用いることにより、上記の各波長に対し所望の検出NAを与え、各波長での検出像の解像度を同一にすることを可能にする。即ちこの場合には図7の13は例えば図1の実施例の13及び13’の位置に配置され、ウエハ上のパタ-ン41で反射した光が縮小レンズ5、ミラ-105、ビ-ムスプリッタ103を通り、ビ-ムスプリッタ106またはミラ-107で反射し、図7の分光手段121上に結像し、各波長ごとに異なる回折角で回折した後、レンズ123、空間光透過率変調器125を通り、レンズ124で分光手段122上にパタ-ン41の像を再び結像する。
【0044】
空間光透過率変調器125は図9(A)に示すように光透過領域1251の幅が各波長ごとに、即ち高さ方向yに沿って式(1)を満たすように変化している。但し照明系内で図8(B)や図9(B)に示すように各波長ごとに透過率を変化させている場合には、検出系内の空間光透過率変調器125’は波長ごとの透過率変化は必ずしも必要でない。上記レンズ124で分光手段122上に再結像されたパタ-ンは各波長で異なる入射角で分光手段122に入射、結像するがここを透過する回折光1020は各波長の光が同一の光路を進む。この回折透過光は図1の色補正レンズ108または108’により一次元又は二次元撮像装置14及び14’の撮像面に分光手段122上の像を再結像する。
【0045】
色補正レンズ108または108’はそれぞれの波長バンド幅内の光にたいし色収差を含む各種収差が補正されており、それぞれのバンド幅の光の像が一次元又は二次元撮像装置14及び14’の撮像面に歪及び色ずれなく結像する。
【0046】
次に、上記に説明したパタ-ン検出装置の実施例の構成を用いて、具体的にパタ-ン検出する方法を示す。パタ-ン検出する対象は図3に示すような層構造を持っているため、このパタ-ンの最上層がフォトレジストの場合、フォトレジストの厚さは図10に示すようになっている。
【0047】
フォトレジストは通常スピンコ-タ-で塗布されるため、図3の左上にウエ-ハの中心があればフォトレジストの流れは左から右に向かう。その結果フォトレジストの厚さは図10(A)に示すように、パタ-ンエッジの左端に比べ右端の方が厚くなる。この結果フォトレジストの厚さの範囲は図10(A)に示すようにtB1からtB2までの厚さと、tT1からtT2までの厚さの範囲が存在することになる。
【0048】
このようなレジスト構造、層構造、およびレジストや下地のパタ-ンの材質の光学的定数(複素屈折率等)が分かれば、図12に示すようにこれら条件をパラメ-タにして干渉計算を行う。即ち上記のパラメ-タに対して波長を変えたときに、干渉強度がどのようになるか計算する。得られた結果から、如何なる分光照明強度分布で照明すればず10(A)のレジスト厚の範囲、即ちtB1からtB2までと、tT1からtT2までで干渉強度の変化が小さく、一定値に近づくかを計算により求めることにより、分光照明強度を決定する。このように決定された分光照明強度の分布Ii(λ)は例えば図11の(A)に示すようになっている。この分布はあくまでもウエハを照明する光の分光照度分布であり、実際には光源の分光強度分布や、光学系の分光透過率分布は一定でないため、その補正をする必要がある。
【0049】
即ち例えば光源の分光強度分布Iiil(λ)が図11(B)のようになっており、光学系の分光透過率分布Ios(λ)が図11(C)のようになっていれば、空間光透過率変調器125の各波長ごとの透過率I(λ)は図11(D)に示すように次式で求まる値にする必要がある。
【0050】

【0051】
このようにして決定されたI(λ)になるように空間光透過率変調器125を駆動すれば図10(B)に示すようにレジスト厚の範囲、即ちtB1からtB2までと、tT1からtT2までで干渉強度の変化が小さくなり、検出パタ-ンの波形はレジストの塗布むらの影響を受けず、対称になり、精度の高いパタ-ン位置検出が実現する。
【0052】
本発明のパタ-ン検出法をパタ-ン位置検出装置に実施した例を図16を用いて説明する。本実施例のパタ-ン位置検出装置はステッパのオフアクシスアライメント検出系、あるいはアライメント評価用の検出系に適用される。ウエハ4の上にある検出マ-ク41は図16(B)に示すような構造になっている。検出用の対物レンズ5’には照明光1100がビ-ムスプリッタ51、結像レンズ51および対物レンズ5’を通して照明される。反射光は照明の光路を逆に戻りビ-ムスプリッタで反射されて検出光1200となる。検出光は分光手段121の上に検出パタ-ンの像を結ぶ。分光手段をまっすぐ通過する光は遮光版126で遮光される。
【0053】
一方分光手段で回折された光は波長ごとに回折角度が変わり集光レンズ123上では短い波長の光はDλlに、長い波長の光はDλnに集光する。集光レンズ123を透過した各波長の光は互いに平行になり、開口数決定開口1151を通過する。これにより前述のとおり波長に応じてNAが変わるようになる。開口数決定開口1151通過した光はシリンドリカルレンズ124’に入射する。この非回転対称結像系であるシリンドリカルレンズ124’はパタ-ン位置検出方向xに対しては結像作用を持ち、それと直角の方向は結像作用を持たない。従って、撮像装置14”の撮像面140上にはy方向は分光されたままの状態の分光一次元像、即ち、x方向はウエハ上のパタ-ンが拡大された結像状態で像が形成され、この像が各色ごとに縦方向yに並んで結像されている。
【0054】
即ち波長λlからλnまでの各波長の光による像が撮像面上に140上PλlからPλnの位置に形成されている。従って、信号処理装置21のテレビモニタ-210上には各波長に応じてPλl’……、Pλi’……、Pλn’の位置に各波長の像が形成され、各波長での検出信号が得られている。
【0055】
このように各波長ごとに分離検出された信号を用いて信号処理回路21でパタ-ン検出する方法を以下に示す。撮像装置14”で検出された各波長の検出波形のうちλl、λi、およびλnの各波長での検出波形は例えば図17(A)に示すIλl(x)、Iλi(x)、Iλn(x)のようになっている。これらの検出波形のレベルは光源の分光強度分布Iill(λi)や、光学系の分光透過率分布Ios(λi)の影響を受けている。更にパタ-ン各部のレジスト膜厚や下地の構造、材質から前述したように最適な分光照明強度Ii(λi)になるようにするには上記の各波長の検出波形Iλl(x)、Iλi(x)、Iλn(x)に次に示す補正値α(λi)を掛けたものを最適な検出波形とすればよい。
【0056】

【0057】
従って、最終的に得られる最適な検出波形I(x)は次式で求まる。
【0058】

【0059】
このようにして求まった検出波形は図17(C)に示すようになる。
【0060】
次に本発明の信号処理に関する他の実施例を説明する。図16の検出光学系は検出光に対し、色収差補正された光学系を用いているが、通常の顕微鏡対物レンズでは目視観察用に用いるため、対象物を目視観察したときに色のにじみが出なければ十分仕様に耐える。しかしアライメントの評価ではアライメントの精度を10nm程度の精度で評価する必要がある。そのため目視では分からない程度の色収差でも評価精度に影響を与える。そこで図16の光学系が組立られた状態で色収差がどの程度残っているかを評価し、アライメントの精度評価のときに、この残存色収差を補正し、色収差が0の状態で検出評価することが重要になる。
【0061】
本実施例ではこれを実現している。即ち図16の光学系が組立られた状態で、照明光源、又は撮像装置の撮像面の前に干渉フィルタ-等を入れ単波長で検出したときの色収差をを評価しておく。例えば、Siウエハに決まった寸法の凹パタ-ンを形成しておき、これをいろいろな単波長、またはバンド幅の狭い光で検出し、検出位置とパタ-ン幅或いはパタ-ン間隔を計測しておく。図18(A)はこのようにして色収差を評価した結果の例である。即ち横軸は波長、縦軸は横倍率を表わしている。このように波長λl、λi、およびλn等の波長で横倍率が異なっていると、図16の実施例で検出される各波長での検出信号は,図18(B)に示すようにパタ-ン幅がWλ1、Wλi、およびWλnのように異なってくる。
【0062】
しかしこれら各波長での波形は独立に得られているから、上記方法で求められている横色倍率M(λl)、M(λi)、M(λn)等を用いて倍率の補正を行うことができる。図18(C)はこの補正の結果を表わしている。即ち補正された結果はどの波長においてもパタ-ンの幅もしくは間隔は等しく、検出位置も一致させるようにすることが可能になる。
【0063】
このように倍率の補正を行った後、図17で説明した分光照明強度等の補正を行えば、図18(D)に示すように理想的なパタ-ン検出が実現する。即ち本実施例では光学系では完全に取り除くことが不可能な色収差を、分光検出することにより各波長での波形を分離検出し、各波長の波形に対し、検出位置座標対応の補正(色倍率補正、検出中心の色ごとのオフセット(位置ずれ)、色ごとの像歪等に起因する色ごとの位置ずれの補正)を行い、更に各検出信号毎にレベル補正を行うことが可能になった。
【0064】
また図16のパタ-ン検出装置は上記の補正のほかに、例えば照明光の波長ごとに照明むらが発生しているような場合でも、各波長ごとに検出波形が得られるため、各波長ごとにこの照明むらを補正することが容易にできる。
【0065】
更に図16のパタ-ン検出装置の優れている点を説明する。図16(B)や図10に示すように凹パタ-ンの周辺とパタ-ン部(凹んだ部分)では図10(A)に示すようにレジストの厚さが異なっている。周辺部のレジスト厚に対し最適な照明の分光強度があり、これはパタ-ン部のそれとは必ずしも一致しない。このような場合、本実施例では各波長ごとに検出波形が得られているため、各波長のそれぞれの部分で異なる上記(3)式のα(λi)を用いる。即ちα(λi)を座標xの関数として扱えば、レジストの場所による厚さの違いに応じてα(λi)を最適な値にでき、歪みのない検出波形を得ることができるようになり、最も高い精度で検出することが可能となる。なおこのようにα(λi)を座標xの関数α(λi,x)にする場合、例えば図10(A)に示すようにパタ-ンエッジ部xL、xRにおいて不連続になる。このような不連続部が生じると検出波形に不連続部や歪みが発生するため、不連続部でスム-ズに連続化する処理を行う。
【0066】
図16の実施例ではx方向のパタ-ンを検出する光学系しか表示されていないが、xy2軸を検出する場合には分光手段121と結像レンズ51の間にビ-ムスプリッタを挿入し、x方向と同様の(ただしy方向を検出する構成である)検出系を設ければよい。
【0067】
上記の図7で本発明のパタ-ン検出装置の分光強度および指向性調整照明手段12と分光透過率および開口数調整検出手段13を説明し、また図16では分光透過率および開口数調整検出手段13を説明したが、分光透過率および開口数調整検出手段で設定された各波長に対する最適な分光指向性が存在する。即ち、上記したようにどの検出波長に対しても同一の解像度を持たせるため(1)式に示した解像度Lが検出する総ての波長にたいしほぼ同一の値になるように、NAを波長ごとに変え、このNA(λ)に対して決まる照明のパ-シャルコヒ-レンスσ(被検物体が平坦な時に、検出の開口数を決定する開口、即ち、1251の上での被検物体の反射光の広がりとこの開口の幅の比)が波長によらずほぼ一定にする。このようにすれば、どの波長に対しても、MTF(Moduration Transfer Function)が同じになり、歪みの少ない波長合成波形が得られることになる。
【0068】
次に本発明で2次元的なパタ-ンをxy分離してそれぞれの方向を独立に検出するのではなく、2次元的にxy同時に検出する実施例を図20を用いて示す。
【0069】
図20は2次元同時検出に用いる照明系の実施例である。検出用光源11’は水銀ランプ或いはキセノンランプ111から出射する光を楕円面鏡112でミラ-113を通過させ光ファイバ-121の入射端に集光させる。光ファイバ-121はその途中で複数のファイバ-束に分岐している。複数の分岐ファイバ-の光出射端1211、1212、1213、1214、1215は図示するように光軸方向の位置がずれるようにしている。このファイバ-の光出射端の直後に波長選択フィルタ-および指向性調整照明手段1221、1222、1223、1224、1225が設置されている。
【0070】
即ち1221は波長が640nmから700nmの光を通すとともにNDフィルタ等を重ねて用いることにより所望の光強度にする。波長選択フィルタ-および指向性調整照明手段1221等は図20(B)に示すように遮光部1220の内側に実線で示した開口1221Aが開いている。
【0071】
同様に1212は580nmから640nmの光を通す。以下1213は520nmから580nm、1214は460nmから520nm、1215は400nmから460nmの光を通すとともにNDフィルタ或いは電気信号で透過率を変化させることができる液晶シャッタ等を重ねて用いることにより所望の光強度にする。また例えば1215では図20(B)の点線で示した開口1225Aが開いている。この各波長選択フィルタ-および指向性調整照明手段を通過した光は波長選択ビ-ムスプリッタ123に入射する。
【0072】
反射面1231は全反射であるが、例えば1233面は580nm以下の波長の光を反射し、580nm以上の波長の光を透過する。このような波長選択ビ-ムスプリッタ123を通ってきた光を検出光学系の照明光に用いる。例えばこの照明系12’を図4の実施例に用いる場合を例に採ると、開口1221A〜1225Aがレンズ101’によりパタ-ン検出レンズ5’の入射瞳に結像され、この像の径に比例した照明指向性を持ったケ-ラ照明光を被検出パタ-ンに照射できる。
【0073】
このようにして各波長帯の光に分離し、各波長帯の光を所望の強度比にし、かつ各波長帯の光を所望の照明指向性にして被検物に照射することが可能になる。本実施例では照明の指向性が光軸に回転対称性を有しているため、被検物のパタ-ンが一次元的であっても二次元的であっても、関係無く、望ましい照明を実現することが可能である。
【0074】
次に2次元同時検出に用いる検出光学系の実施例を図21に示す。
【0075】
図20の実施例の分光強度および指向性調整手段12’を用いて照明されたウエハのパタ-ンからの反射光は図4等で示されている検出用対物レンズを通り、拡大結像される。この像を2次元撮像装置14’で検出する前に図21に示した分光透過率および開口数調整検出手段13”を通す。この分光透過率および開口数調整検出手段13”を図4の実施例に適用する場合には結像レンズ109のほぼ後側焦点位置に上記の各波長帯の分光透過率および開口数調整検出手段1331、1332、1333、1334、および1335が来るように配置する。ここに至るまでに、ビ-ムスプリッタ131により各波長を分離する。このビ-ムスプリッタは基本的に上記図20の123と同じである。
【0076】
上記の各波長帯の分光透過率および開口数調整検出手段1331、1332、1333、1334、および1335には図21(B)に示すように遮光部1330の中央部に開口1331A(〜1335A)が開いており、この開口径で検出の開口数NAが決まる。ここを透過した各光は再びビ-ムスプリッタ132で合成され、二次元撮像装置14’に像を結ぶ。なおビ-ムスプリッタ132はビ-ムスプリッタ131や123とは異なり、例えば1323面は520nm以下の波長の光を透過し、520nm以上の波長の光を反射する。開口1331A(〜1335A)は各波長帯での解像度がほぼ等しくなるように、例えば数式1に示される解像度Lが各波長帯の中心でほぼ等しくなるように、その径が決定されている。このようにすることにより各波長でほぼ同一の解像度で、また被検出物の構造、材質に応じて最適な分光照明特性でパタ-ンを検出することが可能になる。
【0077】
図22(A)は本発明の実施例で、図21に示した実施例とは異なり各波長帯に分離し、被検出パタ-ンから反射した検出光を各波長帯に分離したまま別々に二次元撮像装置で検出するものである。ビ-ムスプリッタ131で各波長帯に分離された光は開口数調整検出手段1331’、1332’、1333’、1334’、および1335’で各波長帯ごとに所望の検出開口数NAされた後結像レンズ1091、1092、1093、1094、および1095により二次元撮像装置141’、142’143’、144’、及び145’上に結像される。各二次元撮像装置で得られた各波長帯の検出信号は信号処理回路2’に入力される。
【0078】
図22(B)に示す各撮像装置の撮像面上の任意の点Pの座標(x’,y’)は検出光学系の持っている色収差等の収差の影響を受け、検出光学系が無収差の理想的な光学系の場合の結像点P0(x,y)とは異なっている。いまi番目の波長帯をλiで表し、波長帯λiの結像系での上記点P(x’,y’)と点P0(x,y)の関係が数式5で表せるとする。
(x,y)=Pλi(x’,y’) ‥‥‥‥(数5)
【0080】
ここで(x,y)(x’,y’)は二次元座標上の位置ベクトルであり、pλiは波長帯λiごとに異なる座標変換の関数、即ち収差による歪を表す関数である。関数pλi(x’,y’)は例えばウエハ上に規則正しい碁盤目のパタ-ンを形成し、このパタ-ンを用いて検出し、検出像の位置信号から求めることができる。
【0081】
図23は二次元パタ-ンを検出する他の実施例である。図20で示した照明光源を用い(図示せず)、ファイバ121’の出射端は図10の実施例のように分岐せず、照明光を出射させる。出射光は図23(B)に示す指向性調整手段122’を通り、波長選択手段1255を通過する。指向性調整手段122’は前述した照明の指向性を各波長ごとに所望の値にする。このため図23(B)に示すように液晶等の透過率可変領域1220’の内所望の領域1221A’(波長がλiの場合)の内側を所望の透過率にし、外側を透過率0にする。
【0082】
波長選択手段1255には図23(D)に示すように透過波長帯が少しずつ異なっているバンドパスフィルタ12551〜12558が円盤上に円周方向に配列されている。例えば400nm〜700nmを8等分した波長帯λ1〜λ8の光が円盤を回転することにより得られる。このようにして得られた照明光を上記の実施例と同じようにウエハ等の被検物に照射し、得られた反射光を上述の122’と同じ機能を持つ開口数調整検出手段133’に導く。133’は検出光学系の瞳と共役な位置にあり、光透過領域1330’中の1331A’内を透過状態、外を遮光状態にすることにより、所望の検出開口数NAを得ることができる。
【0083】
波長帯λ1での検出が完了し検出情報Iλi(x’,y’)を信号処理回路2”に記憶したならば、波長選択手段1255の円盤を回転し、波長帯λ2の検出ができるようにし、指向性調整手段122’および開口数調整検出手段133’を駆動し、この波長帯での決められた条件に設定し、検出、記憶する。以上の動作を順次波長帯λ8まで行い、総べての波長帯での検出信号の記憶が終了する。得られた信号を如何に用いるかの具体的な実施例を次に説明する。
【0084】
図20から図23を用いて説明した方法により得られた例えば前述の図5に示す2次元パタ-ン41’の411と412のx方向およびy方向のずれΔxおよびΔyを求める方法を図24を用いて説明する。図24は検出信号の処理の流れを表すと共に、処理の内容を表している。各ブロックは総べて個別に専用の電子回路で実現することもできるが、処理時間が短い部分は共通のマイコンで処理する。波長帯λiの検出で得られた検出信号をIλi(x’,y’)とする。パタ-ン411と412は前述したように構造及び材質が異なっているため、検出の最適分光照度分布は異なる。
【0085】
実施例図20、22、23では各波長帯で独立に検出波形が得られるので、上記最適分光照度分布に成るように、得られている信号にパタ-ン411と412ごとに、及び検出波長帯λiごとに定数α1λi、α2λiを掛けるとともに、前述の収差の補正を221および221’で行う。得られた補正後の波形は図24の221および221’にそれぞれI1λi’(x,y)およびI2λi’(x,y)の式でで示されている。各波長で得られた補正後の波形を222および222’で総べての波長にわたりパタ-ン411と412に対し、それぞれ位置座標ごとに強度波形を足し合わせ理想的なI1(x,y)およびI2(x,y)を得る。
【0086】
この得られた波形を用いて例えば対称性パタ-ンマッチングのアルゴリズムを用いてパタ-ン411および412のそれぞれのxおよびy方向の中心位置C1x、C1y、C2xおよびC2yを223および223’で求める。図24でfxおよびfyはパタ-ン中心を求める演算関数(例えば対称性パタ-ンマッチングの演算関数)を表す。このようにして得られたパタ-ン411と412のx及びy方向の中心から、両パタ-ンのx、y方向の位置ずれΔx、Δyは224で求められる。次にこのようにして得られる位置ずれ情報を如何に用いるかについての実施例を示す。
【0087】
図25は本発明の露光システムを示す実施例図である。1は露光装置であり、例えば図1で示される縮小露光装置である。2はこの露光装置を制御する制御回路である。10は例えば図4で示したパタ-ン検出装置或いはアライメント評価装置である。2’はこの装置の制御回路である。91、92、93はそれぞれレジスト塗布装置、現像装置、およびエッチング装置である。8はこれらフォトリソグラフィシステムを制御する制御回路である。図中点線で示した流れはウエハの流れ、実線で示した流れは信号の流れである。
【0088】
レジスト塗布装置91でレジストを塗布されたウエハは露光装置1に搬入される。搬入されたウエハには露光チップ毎に図2に示すようにアライメントパタ-ンが記録されているので、このアライメントパタ-ン41(41’)を縮小レンズ5を通して検出系10X(10Y)で検出する。このようにして検出した位置情報とウエハステ-ジのレ-ザ-測長機(図1に図示せず)の位置情報ならびにレチクル3の位置情報を基にウエハステ-ジ7を駆動し、アライメントを行った後露光を行う。
【0089】
このような露光をウエハ全面にわたりステップアンドリピ-トで行い、ウエハ全面にレチクル3に描画された回路パタ-ンを露光する。図1及び検出系10Xの実施例に付いて既に説明したように、本発明のパタ-ン検出方法を搭載している露光装置では、正しいアライメントパタ-ン検出が行われ、正確な重ね露光が実現されている。露光されたウエハは現像装置92に送られ、現像される。現像されたウエハには予め重ね露光の評価をするためにウエハ上に例えば図5の411のパタ-ンが露光前に記録されている。このパタ-ン411に新たなレジストパタ-ン412が露光されているため、これら411と412のパタ-ンの相対的な位置を10のアライメント評価装置を用いて前述の実施例で説明したように検出することにより、重ね露光の精度が評価される。評価結果は制御回路2’から出力され、この出力23は制御回路8に送られる。
【0090】
制御回路8はレジスト塗布機91及び露光装置1につながっており、重ね露光の評価結果が目標の精度に入っていなければ、その原因を分析する。その原因がレジスト塗布機にある場合にはレジスト塗布条件、例えばスピンコ-トの回転速度、回転の加減速条件、塗布機のレジスト溶媒蒸気圧或いは温度等の条件を最適になるように制御する。また重ね評価結果の悪い原因が露光装置にあるならば、露光装置内のどこに原因があるかを判断する。
【0091】
もともと露光装置内に異常チェック機能や、アライメント検出結果や露光時の位置情報等が記録され、装置の状態が常時モニタ-、記録されている。これらの情報を制御回路8に送り、この情報とアライメント評価装置10から送られてきた情報を用いて、露光装置1のアライメント検出系に原因があるか否かを判断する。この判断は学習機能のある制御回路8で大方の判断が可能である。本実施例のように露光装置のアライメント検出系の中に前述したような照明手段及び検出手段を具備していれば、かなりの精度の重ね露光が実現されているはずであるが、さらに高い精度の重ね露光が要求されていたり、露光装置に前述したような照明手段及び検出手段を具備していない場合には、アライメント評価結果を基に露光装置にフィ-ドバックし、以降の露光では高いアライメント精度が得られるようにする必要がある。このフィ-ドバックの方法としては2つの方法が有効である。
【0092】
第一の方法はアライメント評価の結果得られたx、y及びθ(θは露光チップのr離れた2か所にある2個のx方向検出パタ-ンの位置x1、x2を検出し次式でもとまる、θ=(x1-x2)/r)方向の重ね誤差の値Δx、Δy、Δθを次回の露光時にオフセット値として与え、ソフト的に補正を掛ける。即ち、このウエハを露光したときのオフセット値が例えばΔx0、Δy0、Δθ0であったとすると、このフィ-ドバックを掛けて次回に露光するときのオフセット値Δx1、Δy1、Δθ1をΔx1=Δx0-Δx、Δy1=Δy0-Δy、Δθ1=Δθ0-Δθにして露光する。このようにすることによりフィ-ドバック後の重ね合わせ精度は大幅に向上する。
【0093】
第二の方法は露光装置のアライメント検出系の前述の照明系の分光照度分布及び照明の指向性、並びに検出光学系の各波長ごとの検出の開口数等の条件をさらに最適になるように変える。以上のいずれかの方法を用いてアライメント評価結果を露光装置、或いはレジスト塗布装置にフィ-ドバックすることにより、重ね合わせ露光精度は大幅に向上する。
【0094】
次に本発明の露光システムの実施例を図26を用いて説明する。本図と図25が同一番号は同一物を表している。図中の点線の矢印はウエハの流れを表しているが、ほぼ総べてのケ-スに付いて併記しているため、後の説明を判り易くするため各流れにFで始まる番号を付けている。実線の矢印は信号情報の流れを表している。以下にこの図を用いて複数の実施例(A)〜(E)について説明する。
【0095】
(実施例A)
ウエハの流れ:F11→F12→F21→F22→F3→F4→F5
前の露光、現像エッチング工程で形成されたウエハアライメントパタ-ン(レジスト未塗布)をアライメント評価装置10で評価し、ウエハパタ-ンの対称性等を評価する。通常は対称性が良いので、この場合は以降のレジストが塗布された状態で再びアライメント評価装置10で評価する。このアライメントパタ-ンを検出した結果が非対称であれば、レジストの塗布が非対称に成されていると判断できる。
【0096】
即ち、この場合は、前述したようにレジスト塗布の非対称に対して検出波形が対称になるように、前述の露光装置1のアライメント検出系の分光照度および指向性調整照明手段12及び分光透過率および開口数調整検出手段13を用いて、最適な条件で検出する様に露光装置1にフィ-ドフォワ-ドする。このようにすれば露光装置1で露光に先だって行われるアライメント検出はレジスト塗布むらの影響を受けること無く、正確な重ね合わせ露光が実現される。
【0097】
この場合には露光現像後に再びアライメント評価装置を用いて、アライメント結果を評価する必要はない。しかし確認の意味でF4の代わりにアライメント結果の評価F41→F42を行っても良い。前述のF11の後でアライメント評価装置10で評価した結果ウエハパタ-ンの対称性が悪い場合はその結果を制御装置8に送り、エッチング装置にフィ-ドバックする(図示せず)か、この非対称性を評価しアライメントのオフセット値を決定し露光装置1にフィ-ドフォワ-ドする。
【0098】
(実施例A’)
ウエハの流れ:F11→F12→F21→F22→F3→F4→F5
ウエハの流れは実施例Aと同一である。
【0099】
本実施例では露光装置1のアライメント検出系には上記の本発明の手段が施されておらず、例えば水銀ランプやレ-ザ光でえられる単色光を照明光源として検出しているとする。このような場合でも本実施例を用いれば、高いアライメント精度で露光することが可能である。
【0100】
以下にこれを実現する方法を示す。
【0101】
先ず、アライメント評価装置10検出系の条件を露光装置のアライメント検出系と同一の条件となる様にする。これはアライメント評価装置10には分光照度、照明の指向性、検出の開口数がすべてコントロ-ルできるようになっているため、露光装置のアライメント検出系と同一条件にすることは容易に実現できる。このような状態(露光装置のアライメント検出系と同一条件)でウエハのアライメントパタ-ンの位置検出を行う。
【0102】
この結果を例えば(x1,y1)次にウエハの位置は固定にしたまま、前述の検出の最適条件に成る様にアライメント評価装置の光学系を変え、ウエハのアライメントパタ-ンの位置検出を行う。この結果を(x0,y0)とする。
【0103】
これら検出結果を用いてオフセット値Δx=x0-x1,Δy=y0-y1を求め、この値を次に行う露光の際のアライメント検出結果に加えることにより、高い精度で重ね露光を行うことができる。露光後のフロ-は実施例Aと同一である。
【0104】
(実施例B)
ウエハの流れ:F1→F21→F12→F21→F22→F3→F4→F5
ウエハ上に形成されているパタ-ンの対称性が安定に保たれている場合には、レジストを塗布する前にアライメントパタ-ンを評価する必要がない。この場合はレジスト塗布後の評価をアライメント評価装置で行い、前述したように露光装置のアライメント検出系の照明、検出条件を最適化する。以降のフロ-は実施例Aと同じである。
【0105】
(実施例B’)
ウエハの流れ:F1→F21→F12→F21→F22→F3→F4→F5
ウエハの流れは実施例Bと同一である。
【0106】
本実施例では実施例A’同様に、露光装置1のアライメント検出系には上記の本発明の手段が施されておらず、例えば水銀ランプやレ-ザ光でえられる単色光を照明光源として検出している。実施例A’同様にアライメント評価装置10で露光装置のアライメント検出系と同一の検出条件で検出した結果と、最適条件で検出した結果から露光装置のアライメント検出のオフセットを求め重ね露光を行う。
【0107】
(実施例C)
ウエハの流れ:F1→F2→F3→F41→F32→F4→F5
本実施例は図25と同一であるので、説明を省略する。
【0108】
(実施例D)
ウエハの流れ:F1→F2→F3→F41→F42→F51→F52
露光後に現像し、図5に示すように露光前に形成されていたパタ-ン411と露光により形成されたレジストパタ-ン412の合わせ精度をアライメント評価装置10で評価する。評価後エッチングを行い、412のレジストマスクで形成されたエッチングパタ-ンと411のパタ-ンの合わせ精度を評価する。これら2回の評価結果が一致していれば、問題にならないが、一致していなければこの不一致量を次のウエハの露光時にアライメントのオフセット値として加えることにより、エッチングに伴い発生したアライメントオフセットを補正することが可能になり、次のウエハのパタ-ンの重ね合わせ露光を高精度に実現する。
【0109】
(実施例E)
ウエハの流れ:F1→F2→F31→F32→F41→F42→F5
露光後で現像する前のウエハをアライメント評価装置で評価する。この評価は露光後にレジストパタ-ンに形成されている潜像と既に形成されている下地のパタ-ンの合わせ精度を評価することになる。この評価で得られたずれ量はこのウエハを現像する前に得られるので、この結果を即座に次のウエハの露光時のアライメントオフセット値として活かすことができるため、スル-プットを落すこと無く、重ね合わせ露光を高精度に実現する。
【0110】
【発明の効果】
本発明により、半導体回路の露光におけるアライメントがウエハ上に塗布されたレジストの塗布むらや、下地パタ-ンの膜構造に依存せず高精度に行えるようになり、実装密度の高い回路を高い歩留で生産することが可能になった。また半導体回路の生産において実施される、形成パタ-ンの寸法、間隔等の計測が高精度に実行できるようになり、生産歩留の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のパタ-ン検出方法および装置及びそれを用いた投影露光装置を示すブロック図。
【図2】
被検物体であるウエハ上の回路及び検出パタ-ンの平面図。
【図3】
検出パタ-ンの構造を示す斜視図。
【図4】
本発明のパタ-ン検出方法および装置のブロック図。
【図5】
被検物体のパタ-ンの平面図。
【図6】
被検物体のパタ-ンの断面図。
【図7】
本発明の分光強度および指向性調整照明手段および分光透過率および開口数調整検出手段を示す断面図。
【図8】
本発明の第1の空間光透過率変調器の平面図及びその透過率を示すグラフ。
【図9】
本発明の第2の空間光透過率変調器の平面図及びその透過率を示すグラフ。
【図10】
(A)スピンコ-タで塗布されたレジストの膜厚
(B)レジスト厚に対する多重干渉強度
(C)所望の分光照明強度の例
【図11】
(A)所望の分光照明強度の例
(B)光源の分光強度
(C)光学系の分光透過率
(D)分光強度および指向性調整照明手段(または分光透過率および開口数調整検出手段)の空間光透過率変調器の透過率
【図12】
本発明における分光透過率を決定する過程を示すブロック図。
【図13】
レジスト塗むらがある場合の断面構造と従来の単波長光で検出したときの検出波形を示す図。
【図14】
下地の材質の分光反射率に波長依存性が強い場合の従来の白色光検出で検出したときの検出波形を示す図。
【図15】
本発明の作用を示す図。
【図16】
本発明のパタ-ン検出方法および装置を示すブロック図。
【図17】
検出波形を示す図。
【図18】
本発明における色収差補正を示す図。
【図19】
本発明による短冊上のNDフィルタにより構成した空間光透過率変調器を示す平面図及びその透過率を示すグラフ。
【図20】
二次元パタ-ンを検出する場合の本発明の照明系を示すブロック図。
【図21】
二次元パタ-ンを検出する場合の本発明の検出系を示すブロック図。
【図22】
二次元パタ-ンを検出する場合の本発明の検出系を示すブロック図。
【図23】
二次元パタ-ンの検出系を示すブロック図。
【図24】
二次元パタ-ンを検出する場合の本発明の処理フロ-を示す図。
【図25】
本発明の露光システムを示すブロック図。
【図26】
本発明の露光システムを示すブロック図。
【符号の説明】
1…露光装置、2…信号処理回路、4…ウエハ、5…縮小投影レンズ、5’…対物レンズ、8…制御装置、10…パタ-ン検出装置、11…光源、14…パタ-ン検出手段、22…信号入力端末、41…検出パタ-ン、91…レジスト塗布装置、92…現像装置、93…エッチング装置、121…分光手段、124’…シリンドリカルレンズ、1151…空間光透過率変調器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-14 
出願番号 特願平5-225432
審決分類 P 1 652・ 534- YA (H01L)
P 1 652・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 辻 徹二
瀬川 勝久
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3326902号(P3326902)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 パターン検出方法及びパターン検出装置及びそれを用いた投影露光装置  
代理人 作田 康夫  
代理人 栗原 浩之  
代理人 作田 康夫  

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