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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02F
管理番号 1102836
異議申立番号 異議2003-71746  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-09 
確定日 2004-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3365563号「液晶セル用配向処理剤」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3365563号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3365563号の請求項1に係る発明は、平成5年1月22日に出願され、平成14年11月1日にその設定登録がなされ、その後、JSR株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年11月26日に意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否について
2.1 訂正の内容
平成15年11月26日付けの訂正請求書による訂正事項は、下記のとおりである。
a.特許請求の範囲の【請求項1】に記載の
「(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミンを構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)」を、
「(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミン(ただし、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンを除く)を構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)」と訂正する。

b.特許請求の範囲の【請求項1】に記載の
「【化3】

」を、
「【化3】

」と訂正する。
c.明細書の【0016】に記載の
「(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミンを構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)」を、
「(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミン(ただし、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンを除く)を構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)」と訂正する。

d.明細書の【0019】に記載の
「【化6】

」を、
「【化6】

」と訂正する。
e.明細書の【0022】に記載の
「【化7】

」を、
「【化7】

」と訂正する。

f.明細書の【0025】に記載の
「ジアミン-Aの具体例としては、
p-フェニレンジアミン
1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン
4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル
等を挙げることができる。」を
「ジアミン-Aの具体例としては、
1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン
4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル
等を挙げることができる。」と訂正する。

2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記訂正事項aは、特許請求の範囲の【請求項1】の記載において、一般式[I]で表されるポリイミド樹脂のうち、R2が「1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンを構成する2価の有機基」であるものを本件特許の請求の範囲から除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

上記訂正事項bは、特許請求の範囲の【請求項1】の記載において、一般式[II]のR4の選択肢の削減により、

で示される構造を包含しないことを規定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

上記訂正事項cは、訂正事項aに係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

上記訂正事項dは、訂正事項bに係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

上記訂正事項eは、訂正事項bに係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

上記訂正事項fは、訂正事項b及びeに係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載、あるいは発明の詳細な説明の記載同士、を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

2.3 結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3.1 特許異議の申立の概要
特許異議申立人 JSR 株式会社は、証拠として甲第1号証(特開平2-176631号公報)及び甲第2号証(特開平4-30122号公報)を提出し、本件の訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一であるか、又は甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するにも拘わらず、又は同条第2項の規定に違反して、特許されたものである、と主張している。

3.2 本件発明
本件の訂正後の請求項1に係る発明は、訂正された特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、「本件発明」という。)

「【請求項1】 一般式[I]
【化1】

(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミン(ただし、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンを除く)を構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)で表されるポリイミド樹脂が一般式[II]
【化2】

(式中 R3はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R4は
【化3】

より選ばれるジアミンを構成する2価の有機基であり、XはH、OH、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%以上含有し、且つ該ポリイミドの前駆体溶液を基板に塗布したのち、加熱することにより有機溶剤に不溶となるポリイミド樹脂であることを特徴とする液晶セル用配向処理剤。」
3.3 甲第1号証(特開平2-176631号公報)に記載された発明
甲第1号証(以下、「刊行物1」という。)には、

「1.(1)一般式(I)で示されるジアミン(R1,R2,R3およびR4は 炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示す)・・・
(2)テトラカルボン酸二無水物ならびに必要に応じて
(3)(1)以外の芳香族ジアミンおよび/または脂肪族ジアミンを反応させて得られるポリアミド酸を含有してなる液晶配向膜用組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、

「本発明は、・・・プレチルト角が4°以上の液晶配向膜組成物を提供するものである。」(第2頁左上欄第6行〜第9行)、

「本発明に用いられる一般式(I)で示されるジアミン以外の芳香族ジアミンおよび/または脂肪族ジアミンとしては、・・・,4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル,・・・,パラフェニレンジアミン,・・・などが挙げられ,」(第2頁左下欄第19行〜同頁右下欄第20行)、

「実施例3
1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン11.5gおよび4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル6.4gに・・・ピロメリット酸二無水物21.8gを加えて・・・反応した・・・250℃で1時間加熱し,・・・ポリイミド層を形成した。・・・液晶表示素子用配向膜の必要条件を満たしていた。」(第4頁左下欄第1行〜第20行)、

と記載されている。

3.4 甲第2号証(特開平4-30122号公報)に記載された発明
甲第2号証(以下、「刊行物2」という。)には、

「(1)一般式(I)・・・
(式中、R1は脂環式構造を有する4価の有機基を示す)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、
一般式(II)・・・
(式中、R2は、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子、aは0〜4の整数を示す)で表されるジアミン化合物および一般式(III)・・・
(式中、R3は、フッ素原子を含有する2価の有機基を示す)で表されるジアミン化合物・・・とを反応させて得られる重合体および/または該重合体をイミド化した重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。」(特許請求の範囲の請求項1)、

「本発明の目的は、・・・、液晶の配向性が良好で、かつ3〜5°のプレチルト角を示す液晶配向剤を提供することにある。」(第2頁左上欄第9行〜第11行)、

「一般式(II)で表される具体的なジアミン化合物・・・としては、・・・1,4-フェニレンジアミン、2-メチル-1,4-フェニレンジアミン、・・・、2-エチル-1,4-フェニレンジアミン、・・・などが挙げられる。」(第2頁右下欄第1行〜第3頁右上欄第4行)、

「合成例1
1,4-フェニレンジアミン2.7gと2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン25.1gを・・・2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4gを加えて・・・反応させた。・・・重合体(Ia)35.0gを得た。」(第6頁左上欄第17行〜同頁右上欄第7行)、

「合成例5
合成例1において、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.6gに変えた以外は合成例1と同様にして・・・重合体(Id)30.8gを得た。」(第6頁左下欄第12行〜第17行)、

「実施例1 合成例1で得られた重合体(Ia)3gを・・・ITO膜からなる透明電極付きガラス基板上の透明電極面に、・・・塗布し、180℃で1時間乾燥し、・・・塗膜を形成した。」(第6頁右下欄第11行〜第20行)、

「実施例2〜5
実施例1において、合成例2〜5で得られた重合体(IIa)、(IId)、(IIc)および(Id)(註;IIdの誤記。)を用いた以外は実施例1と同様にして液晶表示素子を作製し、その液晶配向性およびプレチルト角を測定し、結果を第1表に示した。」(第7頁右上欄第2行〜第7行)、

と記載されている。

3.5 対比・判断
(1)特許法第29条第1項第3号について
特許異議申立人は、
a.刊行物1の実施例3において、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン0.072モル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル0.0302モルおよびピロメリット酸二無水物0.1モルからポリアミド酸(ポリイミドの前駆体)を製造し、その溶液をITO透明電極付ガラス基板に塗布し250℃で1時間加熱してポリイミド層を形成したことが記載されており、当該ポリイミドは、「本件発明における、一般式[I]のR1がピロメリット酸を構成する4価の有機基であり、R2がジアミンを構成する2価の有機基を表し、mが正の整数であるポリイミド樹脂が、一般式[II]のR3がピロメリット酸を構成する4価の有機基であり、R4が

(Xはメチル基を表す。)
で表されるジアミンを構成する2価の有機基であり、nが正の整数である、繰り返し単位を、約30モル%含有するもの」であるから、訂正前の発明に係るポリイミド樹脂に該当することは明白であり、

また、刊行物1には、「4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル」と同様に用いられるジアミンとして「パラフェニレンジアミン」が記載されており(刊行物1の第2頁右下欄第4行〜第6行)、その実施例3において、「4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル」に代えて「パラフェニレンジアミン」を用いた場合のポリイミドは、本件発明に係るポリイミド樹脂に該当するから、
結局、訂正前の発明は、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に実質的に記載された発明である、と主張し(特許異議申立書第6頁〜第7頁)、

b.刊行物2の実施例5において、1,4-フェニレンジアミン0.025モル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.064モルおよび1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物0.1モルから得た重合体Id(ポリイミドの前駆体)の溶液をITO透明電極付ガラス基板に塗布し180℃で1時間加熱して得たポリイミド重合体IIdが記載されており、当該ポリイミドは、「本件発明における、一般式[I]のR1がシクロブタンテトラカルボン酸を構成する4価の有機基であり、R2がジアミンを構成する2価の有機基を表し、mが正の整数であるポリイミド樹脂が、一般式[II]のR3がシクロブタンテトラカルボン酸を構成する4価の有機基であり、R4が

(XはHを表す。)
で表されるジアミンを構成する2価の有機基であり、nが正の整数である、繰り返し単位を約28モル%含有するもの」であるから、訂正前の発明に係るポリイミド樹脂に該当することは明白であり、

また、刊行物2には、「1,4-フェニレンジアミン」と同様に用いられるジアミンとして「メチル、メトキシ、エトキシ、クロロで置換された1,4-フェニレンジアミン」が記載されており(刊行物2の第2頁右下欄第1行〜第3頁右上欄第4行)、その実施例5において、「1,4-フェニレンジアミン」に代えて「メチル、メトキシ、エトキシ、クロロで置換された1,4-フェニレンジアミン」を用いた場合のポリイミドは、本件発明に係るポリイミド樹脂に該当するから、
結局、訂正前の発明は、刊行物2に記載された発明であるか、刊行物2に実質的に記載された発明である、と主張する(特許異議申立書第8頁〜第9頁)。

そこで以下、検討する。
(上記aの点について)
訂正後の本件発明では、一般式[I]のR2に関して、「1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン」を構成する2価の有機基を除いており、他方、一般式[II]のR4に関して、その選択肢から「1,4-フェニレン構造:


を除いているので(訂正後の【請求項1】参照)、本件発明に係るポリイミド樹脂は、刊行物1の実施例3における、「4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル」を用いた場合のポリイミドではなく、また、「4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル」に代えて「パラフェニレンジアミン」を用いた場合のポリイミドでもない。

(上記bの点について)
前述したように、訂正後の本件発明では、一般式[II]のR4に関して、その選択肢から「1,4-フェニレン構造」を除いているので、本件発明に係るポリイミド樹脂は、刊行物2の実施例5における、「1,4-フェニレンジアミン」を用いた場合のポリイミドではなく、また、「1,4-フェニレンジアミン」に代えて「メチル、メトキシ、エトキシ、クロロで置換された1,4-フェニレンジアミン」を用いた場合のポリイミドでもない。

したがって、本件発明は刊行物1又は2に記載された発明ではない。

(2)特許法第29条第2項の違反について
特許異議申立人は、
a.刊行物1には、「4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル」と同様に用いられるジアミンとして「パラフェニレンジアミン」が記載されているから(刊行物1の第2頁右下欄第4行〜第6行)、実施例3において、「4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル」に代えて「パラフェニレンジアミン」を用いてなる訂正前の発明のポリイミド樹脂からなる配向剤は、刊行物1に記載された発明から容易に発明をすることができたものであり(特許異議申立書第7頁)、

b.刊行物2には、「1,4-フェニレンジアミン」と同様に用いられるジアミンとして「メチル、メトキシ、エトキシ、クロロで置換された1,4-フェニレンジアミン」が記載されているから(刊行物2の第2頁右下欄第1行〜第3頁右上欄第4行)、実施例5において、「1,4-フェニレンジアミン」に代えて「メチル、メトキシ、エトキシ、クロロで置換された1,4-フェニレンジアミン」を用いてなる訂正前の発明のポリイミド樹脂からなる配向剤は、刊行物2に記載された発明から容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書第9頁)、と主張する。

そこで以下検討する。
(上記a、bの点について)
前述したように、訂正後の本件発明は、一般式[II]のR4に関して、その選択肢から「1,4-フェニレン構造」を除いており、上記特許異議申立人の主張は、もはや理由がないものとなった。
また、刊行物1、2の発明の目的・課題は、「高いプレチルト角を示す液晶配向剤の提供」であるのに対して(刊行物1の2頁左上欄6〜9行、刊行物2の2頁左上欄9〜11行参照)、本件発明の目的・課題は、「ラビング処理条件による配向角の変化の低減、若しくは、強いラビング条件での配向角の低下の防止」である点でも明確に相違し、本件発明では、上記(3.2参照)の構成により明細書記載の顕著な効果が奏されていると認められる(本件明細書の【実施例】、【発明の効果】)。

したがって、本件発明は、刊行物1又は2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の訂正後の請求項1に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件の訂正後の請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶セル用配向処理剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I]
【化1】

(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミン(ただし、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンを除く)を構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)
で表されるポリイミド樹脂が一般式[II]
【化2】

(式中 R3はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R4は
【化3】


より選ばれるジアミンを構成する2価の有機基であり、XはH、OH、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%以上含有し、且つ該ポリイミドの前駆体溶液を基板に塗布したのち、加熱することにより有機溶剤に不溶となるポリイミド樹脂であることを特徴とする液晶セル用配向処理剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶セル用配向処理剤に関するものであり、更に詳しくは液晶分子の基板に対する傾斜配向角がラビング条件に対してより安定化された液晶セル用配向処理剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ネマティック液晶分子を透明電極の付いたガラス或いはプラスティックフィルム等の透明基板にほぼ平行配向させる為の基板処理剤としては、従来よりポリイミド樹脂膜をはじめとする有機樹脂膜が最も一般的に使用されている。又液晶分子を一定方向に配向させるための配向処理方法としては、基板上に形成された有機樹脂膜を布で一定方向にラビングする、いわゆるラビング法が工業的配向処理方法として最も一般的である。
【0003】
この場合、ラビング処理された基板で液晶を狭持する事で、液晶分子がラビング方向に配向し、同時に基板表面に対して傾斜配向角を生ずる事が知られている。この傾斜配向角は液晶表示を均一に行う上で極めて重要であり、その大きさは特にポリイミド等の配向処理剤の性質により左右されることが知られている。
【0004】
又液晶表示方式の中でも、一般にSTNと呼ばれる液晶表示方式に於いては、基板面に対して少なくとも数度以上の高い傾斜配向角を必要とされる。
【0005】
ポリイミド等の有機樹脂膜により液晶分子を大きく傾斜配向させる方法としては、従来からポリイミド中に長鎖のアルキル基を導入する方法、或いはパーフルオロ基を有するジアミンを使用する方法などが知られており、例えば特開昭62-142099号、特開昭63-259515号、特開平1-262527号等に開示されたもの等を挙げることができる。これらの方法による液晶セル用配向処理剤を使用する事により、液晶分子を基板面に対して大きな傾斜配向角を持たせて配向させることが可能である。
【0006】
更に、均一な表示を得る上で基板面内での傾斜配向角の均一性、安定性を高めることが重要である。特に傾斜配向角の熱的安定性或いはラビング処理によるによる傾斜配向角の均一性を向上させることは実用上極めて重要性が高い。一般に配向処理剤として用いられるポリイミド樹脂は、ポリイミド自体が有機溶剤に不溶であり、該前駆体溶液を基板に塗布した後脱水閉環してポリイミド樹脂膜と為すものと、ポリイミド自体が有機溶剤に可溶な、いわゆる溶剤可溶性ポリイミドに大別される。
【0007】
従来からSTN表示方式などに使用されているポリイミド樹脂は有機溶剤に溶解しないものが一般的であり、このためポリイミド樹脂の前駆体溶液を基板上に塗布し、これを加熱焼成することでポリイミド樹脂膜を形成する方法が一般に採用されている。またこの様な有機溶剤に不溶なポリイミド樹脂では、一般に傾斜配向角の熱的安定性が高く、液晶を注入したのちに加熱しても高い傾斜配向角を保持することが知られている。
【0008】
一方、有機溶剤に可溶なポリイミドに於ける傾斜配向角は、熱的な安定性の面で必ずしも十分とは言えず、液晶注入後の加熱により傾斜配向角が大きく低下してしまうという問題を有している。この様な有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の課題を改善する為には特願平3-202917号に示されるような方法を挙げることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一方、一定のラビング条件で処理したときの傾斜配向角が熱的に安定であっても、その傾斜配向角はラビング条件を変えることによって変化することがあり、傾斜配向角の熱的な安定性とラビングによる変化は必ずしも同じ要因に基づくものとは言い難い。このためラビングによる液晶傾斜角の安定性は、単に熱的な安定性の良否から判定し得るものではない。即ち、より均一な液晶表示を得るために、傾斜配向角の熱的な安定性とは別に、ラビングに対して安定で、均一な傾斜配向角を発現し得る手段が必要とされる。
【0010】
一般に基板表面に形成されたポリイミド等の有機樹脂膜により液晶分子を一定方向に配向させるためには、樹脂膜面を布等で一定方向にラビングする事がなされている。このラビングによる配向処理方法は基板上に形成された樹脂膜面を布で擦る操作である事から、局部的には強く擦られた所と弱く擦られた所が生じ易いことが知られている。
【0011】
ポリイミドをはじめとする従来の配向処理剤では、ラビング強さにより傾斜配向角が変化することが知られており、特に数度以上の大きな傾斜配向角を発生させる樹脂膜では、弱くラビングした場合と強くラビングした場合で傾斜配向角が大きく異なったり、或いは強いラビングで傾斜配向角が低下してしまうという問題があった。
【0012】
即ち、STN(スーパーツイステッドネマティック)表示方式などに代表される高い傾斜配向角を必要とする表示方式の場合には、ラビングにより基板面内での傾斜配向角の不均一が生じ易く、表示の均一性を従来以上に向上させる場合などに於いて改善が望まれていた。更には基板面内での傾斜配向角の均一性を高めるため、ラビングを強く十分に行うことがなされるが、従来の高い傾斜配向角を発生させ得る配向処理剤では、強くラビングする事により傾斜配向角が低下してしまい、液晶表示素子として必要な十分な傾斜配向角を得られないという問題があった。
【0013】
このため、従来からラビング強さによる傾斜配向角の変化を低減させた液晶セル用配向処理剤、もしくは強くラビング処理した際にでも傾斜配向角の低下しない配向処理剤の開発が強く望まれていた。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意努力検討した結果本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、一般式[I]
【0015】
【化4】

【0016】
(式中 R1はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R2はジアミン(ただし、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンを除く)を構成する2価の有機基を表し、mは正の整数を表す。)
で表されるポリイミド樹脂が一般式[II]
【0017】
【化5】

【0018】
(式中 R3はシクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種類の酸または其の誘導体を構成する4価の有機基であり、R4は
【0019】
【化6】

【0020】
より選ばれるジアミンを構成する2価の有機基であり、XはH、OH、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲンを表し、nは正の整数を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%以上含有し、且つ該ポリイミドの前駆体溶液を基板に塗布したのち、加熱することにより有機溶剤に不溶となるポリイミド樹脂であることを特徴とする液晶セル用配向処理剤に関するものである。
【0021】
本発明の液晶セル用配向処理剤に使用される一般式[I]のポリイミドに於いて、ジアミンを構成するR2の少なくとも10モル%以上は
【0022】
【化7】

【0023】
から選ばれたジアミン(以下ジアミン-Aと略称する)であることが必須である。ジアミン-Aが、全ジアミンの10モル%未満では、ラビング処理に対する傾斜配向角の安定性を得る上で必ずしも十分ではない。
【0024】
また本発明は、一般式[I]で表されるポリイミド樹脂の前駆体溶液を基板に塗布した後、加熱することにより有機溶剤に不溶となるポリイミド樹脂に関して為されたものである。即ち、本発明は、一般式[I]で表されるポリイミド樹脂の前駆体溶液を、透明電極の付いたガラス又はプラスチックフィルム等の透明基板上にスピンコートもしくは印刷法等により塗布した後、加熱により有機溶剤に不溶なポリイミド樹脂膜とし、次いで該樹脂膜をラビング処理を施して液晶セル用配向処理剤として使用するものである。
【0025】
ジアミン-Aの具体例としては、
1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン
4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル
3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノビフェニル
4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル
等を挙げることができる。
【0026】
本発明の液晶セル用配向処理剤に使用されるジアミンのうち、ジアミン-A以外のジアミンの具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジ(4-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルエーテル、ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ジアミン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0027】
更には、
【0028】
【化8】

【0029】
(1は1〜10の整数を表わす)等のジアミノシロキサンが挙げられる。
【0030】
又液晶傾斜配向角を高める目的で、4,4’-ジアミノ-3-ドデシルジフェニルエーテル、1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス[4-(4ーアミノフェノキシ)フェニル]オクタン等に代表される長鎖アルキル基を有するジアミンを使用することが出きる。また、これらジアミンの1種または2種以上を混合して使用することもできる。
【0031】
本発明の液晶セル用配向処理剤に使用されるテトラカルボン酸及びその誘導体は、シクロブタンテトラカルボン酸及びピロメリット酸のテトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0032】
又、これらのテトラカルボン酸及びその誘導体は1種であっても2種混合して使用しても良い。
【0033】
本発明のポリイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、一般的には1種もしくは2種以上のテトラカルボン酸及びその誘導体とジアミンをモル比0.50〜1.00または2.00〜1.01の範囲で有機溶剤中で反応重合させて還元粘度が0.05〜3.0dl/g(温度30°CのN-メチル-2-ピロリドン中、濃度0.5g/dl)のポリイミド樹脂前駆体を得、次いで脱水閉環させてポリイミド樹脂とする方法を採用することができる。
【0034】
この場合、テトラカルボン酸及びその誘導体とジアミンの反応重合温度は-20〜150°Cの任意の温度を採用することが出来るが、特に-5〜100°Cの範囲が好ましい。
【0035】
更に、ポリイミド樹脂前駆体の重合法としては通常は溶液法が好適である。溶液重合法に使用される溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、及びブチルラクトン等を挙げることが出来る。これらは単独でも、また混合して使用しても良い。更に、ポリイミド樹脂前駆体を溶解しない溶剤であっても、その溶剤を均一溶液が得られる範囲内で上記溶剤に加えて使用しても良い。
【0036】
更に、ポリイミド樹脂前駆体をポリイミド樹脂に転化するには、加熱により脱水閉環する方法が採用される。この加熱脱水閉環温度は、150〜450℃、好ましくは170〜350℃の任意の温度を選択することができる。この脱水閉環に要する時間は、反応温度にもよるが30秒〜10時間、好ましくは5分〜5時間が適当である。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン32.841g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル4.256gをN-メチル-2-ピロリドン321.35g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0038】
この溶液をNMPにより総固形分4重量%に希釈後、透明電極付きガラス基板に3500rpmでスピンコートし、次いで250℃で60分間熱処理して厚さ1000オングストロームのポリイミド樹脂膜を形成した。次にラビング強さに対する液晶傾斜配向角の変化を評価するため、形成されたポリイミド樹脂膜を布でラビングする際、ポリイミド膜面へのラビング布(吉川化工株式会社製:YO-15N)の毛先の押し込み長さを0.15mm及び0.6mmに変えてラビングした。このようにラビング処理された各々の基板を50μmのスペーサーを挟んでラビング方向を反平行にして組立て、次いで液晶(メルク社製:ZLI-2293)を注入して基板に対して平行配向したセルを作成した。
【0039】
ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで5.1°、0.6mmと強くラビングしたセルでは5.4°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の変化が極めて小さいものであった。又これらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0040】
実施例2
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン4.10gをN-メチル-2-ピロリドン200.0gに加え、攪拌して均一溶液とした後、n-ヘキサデシル無水コハク酸6.48gを加えて室温で4時間攪拌を続けた。この溶液を大量の水中に投入し、析出した白色沈澱物をろ過後、30℃で8時間減圧乾燥し、炭素数16のアルキル鎖を有するジイミド化合物前駆体を調整した。 次に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン32.841g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル4.256gをN-メチル-2-ピロリドン321.35g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0041】
このポリイミド樹脂前駆体30gにN-メチル-2-ピロリドン70gと前期ジイミド化合物0.3gを添加し、十分攪拌して均一溶液とした。以下、実施例1と同様にして、液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで5.8°、0.6mmと強くラビングしたセルでは6.0°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の低下は見られなかった。
【0042】
またこれらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0043】
実施例3
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン29.557g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル3.821g、n-ヘキサデシルアミン4.829gをN-メチル-2-ピロリドン327.64g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0044】
以下、実施例1と同様にして、液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで12.1°、0.6mmと強くラビングしたセルでは10.9°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の変化が小さいものであった。
【0045】
またこれらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0046】
実施例4
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン41.477g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル4.246gをN-メチル-2-ピロリドン370.23g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0047】
以下、実施例1と同様にして、液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで9.3°、0.6mmと強くラビングしたセルでは8.0°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の変化は小さいものであった。
【0048】
又これらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0049】
実施例5
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン24.631g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル4.246g、及び1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849gをN-メチル-2-ピロリドン320.39g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0050】
以下実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで5.5°、0.6mmと強くラビングしたセルでは5.6°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の変化が極めて小さいものであった。
【0051】
またこれらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0052】
実施例6
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン28.736g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル2.123g、及び1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849gをN-メチル-2-ピロリドン319.15g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0053】
以下実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで6.3°、0.6mmと強くラビングしたセルでは5.6°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の変化が小さいものであった。
【0054】
又これらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0055】
実施例7
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン24.631g、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル4.246g、及び1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849gをN-メチル-2-ピロリドン320.39g中に溶解させ、これにピロメリット酸二無水物21.590gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。以下実施例1と同様にして液晶セルを作成した。
【0056】
ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで7.2°、0.6mmと強くラビングしたセルでは6.0°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の変化が小さいものであった。又これらのセルをクロスニコル中で回転したところ明瞭な明暗が見られ、ラビング方向に良好に配向していることを確認した。
【0057】
実施例8
3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル16.984g、1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849をN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略称する。)251.75g中に溶解させ、これにピロメリット酸二無水物21.594gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0058】
以下実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで4°、0.6mmと強くラビングしたセルでは5.4°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の低下は見られなかった。
【0059】
実施例9
3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル17.296g、1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849をN-メチル-2-ピロリドン253.52g中に溶解させ、これにピロメリット酸2無水物21.594gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0060】
以下実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで5°、0.6mmと強くラビングしたセルでは6.3°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の低下は見られなかった。
【0061】
実施例10
4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル29.475g、1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849gをN-メチル-2-ピロリドン323.77g中に溶解させ、これにピロメリット酸二無水物21.594gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0062】
以下実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで3.9°、0.6mmと強くラビングしたセルでは4.4°であり、ラビング強さによる液晶傾斜配向角の低下は見られなかった。
【0063】
比較例1
実施例1に於いて、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルを使用せず、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン41.052g、をN-メチル-2-ピロリドン343.76g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.415gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0064】
以下、実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで5.1°、0.6mmと強くラビングしたセルでは3.8°であり、強くラビングすることにより液晶傾斜配向角の低下が見られた。
【0065】
比較例 2
比較例1と同様に、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルを使用せず、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン41.052g、をN-メチル-2-ピロリドン343.76g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.415gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0066】
このポリイミド樹脂前駆体30gにN-メチル-2-ピロリドン70gと前期実施例2と同様にして調製した炭素数16のアルキル鎖を有するジイミド化合物0.3gを添加し、十分攪拌して均一溶液とした。以下、実施例1と同様にして、液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで6.5°、0.6mmと強くラビングしたセルでは4.8°であり、、強くラビングすることにより液晶傾斜配向角の低下が見られた。
【0067】
比較例3
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン36.947g、n-ヘキサデシルアミン4.829gをN-メチル-2-ピロリドン347.87g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0068】
以下、実施例1と同様にして、液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで10.0°、0.6mmと強くラビングしたセルでは5.7°であり、ラビング強さにより液晶傾斜配向角は大きく低下するものであった。
【0069】
比較例4
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン51.846gをN-メチル-2-ピロリドン429.05g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0070】
以下、実施例1と同様にして、液晶セルを作成した。ラビング強さを変えて作成したセルについて結晶回転法により液晶傾斜配向角を測定したところ、ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで10.3°、0.6mmと強くラビングしたセルでは4.2°であり、ラビング強さにより晶傾斜配向角は大きく低下するものであった。
【0071】
比較例5
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン32.841gと1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849gとをN-メチル-2-ピロリドン329.27g中に溶解させ、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.416gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0072】
以下、実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで7.3°、0.6mmと強くラビングしたセルでは5.1°であり、液晶傾斜配向角はラビング強さにより低下した。
【0073】
比較例6
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン32.841g、1-ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン5.849gをN-メチル-2-ピロリドン341.61g中に溶解させ、これにピロメリット酸二無水物21.594gを加えて、室温で3時間攪拌して反応させ、ポリイミド樹脂前駆体を調製した。
【0074】
以下、実施例1と同様にして液晶セルを作成した。ラビング布の毛先押し込み長さが0.15mmで弱くラビングしたセルで8.0°、0.6mmと強くラビングしたセルでは4.1°であり、液晶傾斜配向角はラビング強さにより大きく低下した。
【0075】
【発明の効果】
本発明の液晶配向処理剤を使用することにより、ラビング処理条件による液晶傾斜配向角の変化を低減させより均一な液晶傾斜配向角を得ることが可能である。また更には強いラビング条件でも高い液晶傾斜配向角を得ることが可能である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-21 
出願番号 特願平5-9488
審決分類 P 1 651・ 113- YA (G02F)
P 1 651・ 121- YA (G02F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 吉田 禎治
町田 光信
登録日 2002-11-01 
登録番号 特許第3365563号(P3365563)
権利者 日産化学工業株式会社
発明の名称 液晶セル用配向処理剤  
代理人 大島 正孝  

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