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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1102844
異議申立番号 異議2003-71654  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-05-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-07 
確定日 2004-08-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3361306号「データ記憶媒体処理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3361306号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 本件特許第3361306号(平成14年10月18日設定登録)の請求項1に係る発明は、特許査定時の明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認める。
これに対して、平成16年3月4日付けで下記の備考に記載の如き取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

備考(平成16年3月4日付け取消理由の内容)
1.本件発明
本件特許3361306号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換が可能な貨幣及びデータ記憶媒体を受け入れる夫々の受入部と、上記貨幣の受入部より受け入れた貨幣に対応したデータ記憶媒体を発行するデータ記憶媒体処理手段と、上記データ記憶媒体の受入部から受け入れたデータ記憶媒体に対してデータの読出し或は書き込みが可能なデータ読出し・書き込み手段と、上記データ読出し・書き込み手段によって読出したデータ、もしくは上記データ記憶媒体処理手段によって発行されたデータを記憶データとして内部に記憶すると共に、データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸出す貸出制御装置へ上記記憶データを供給し、実際に遊技媒体の貸出に供されたデータを減算記憶するデータ記憶制御手段とを備え、上記データ記憶制御手段は、外部より受け入れたデータ記憶媒体による遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」以外の時は、受入れたデータ記憶媒体に上記データ記憶制御手段が記憶するデータの残高をデータ読出し・書き込み手段により書き込ませて遊技者に返却するが、上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の時は、受入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず保留待機させ、この保留待機状態においてデータ記憶媒体を新たに外部より受入れられたときは、保留待機状態にあったデータ記憶媒体は回収処分され、上記外部より受け入れた新たなデータ記憶媒体が有する貨幣データを上記データ記憶制御手段に供給する構成としたことを特徴とするデータ記憶媒体処理装置。」

2.本件特許に係る特許出願の出願日について
本件特許3361306号に係る特許出願(特願平11-361746号。以下、「本件特許出願」という)は、平成5年12月28日に特許出願された特願平5-349235号(以下、「原出願」という)の一部を平成11年12月20日に新たな特許出願としようとしたものである。
そして、本件発明のデータ記憶媒体処理装置は、前記1.で認定したように、外部より受け入れたデータ記憶媒体による遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の時は、
(A)「受入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず保留待機させ」、
(B)「この保留待機状態においてデータ記憶媒体を新たに外部より受入れられたときは、保留待機状態にあったデータ記憶媒体は回収処分され」る、
ものであり、本件特許出願の明細書の課題を解決するための手段の欄、及び、発明の効果の欄にも、その旨の記載がなされている。
これに対し、原出願の明細書又は図面には、外部よりデータ記録媒体を受け入れた場合においてデータの残高が「0」になった際の処理内容について、
(a)受け入れたデータ記録媒体に残高「0」を書き込んで遊技者に返却すること(段落【0022】、【0028】、【0042】、【0051】、【0054】、【0060】、【0062】、【0069】、【0071】、及び、図5、8〜12参照)、
あるいは、
(b)受け入れたデータ記録媒体を回収すること(段落【0034】〜【0036】、【0075】参照)、
は記載されているものの、前記(A)のように受け入れたデータ記録媒体を「保留待機」させること、すなわち、前記(a)において受け入れたデータ記録媒体をすぐに返却せず一旦「保留待機」させること、あるいは、前記(b)において受け入れたデータ記録媒体をすぐに回収せず一旦「保留待機」させることは、記載も示唆もされておらず、かつ、原出願の明細書又は図面の記載からみて自明の事項であるとも認められない。さらに、前記(B)のようにすることについても原出願の明細書又は図面には記載も示唆もされておらず、かつ、原出願の明細書又は図面の記載からみて自明の事項であるとも認められない。
したがって、本件発明は原出願に包含された発明ではないから、本件特許出願は、原出願の一部を新たな特許出願としたものであるとは認められない。よって、本件特許出願の出願日は、本件特許出願が現実に出願された平成11年12月20日である。

3.引用刊行物記載の発明
3.1 引用刊行物一覧
引用刊行物1:特開平7-194836号公報(原出願の公開公報)
引用刊行物2:特開平1-293893号公報

3.2 引用刊行物1記載の発明
引用刊行物1には、図面とともに、
(1)「遊技機での遊技に用いる遊技媒体との等価交換が可能な貨幣および有価データ記憶媒体を受け入れる受入部と、上記受入部より受け入れた貨幣と等価な有価データを記憶させた有価データ記憶媒体を発行可能な有価データ記憶媒体処理手段と、有価データ記憶媒体に対して有価データの読出しおよび有価データの書込みが可能な有価データ読出し・書込み手段と、上記有価データ読出し・書込み手段によって読みだした有価データを記憶有価データとして内部に記憶すると共に、有価データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸し出す貸出制御装置へ上記記憶有価データを供給し、実際に遊技媒体の貸出に供された有価データを減算記憶する有価データ記憶制御手段と、を備え、上記有価データ記憶媒体処理手段は、貨幣を受け入れたときは、貨幣価値に対応する有価データを、内部にストックする新規な有価データ記憶媒体に、有価データ読出し・書込み手段により書き込ませて遊技者に供給し、有価データ記憶媒体を外部より受け入れたときは、遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、有価データ記憶制御手段の記憶する有価データを、受け入れた有価データ記憶媒体に、有価データ読出し・書込み手段により書き込ませて遊技者に供給することを特徴とする有価データ記憶媒体処理装置。」(第2頁左欄第2行〜第28行)
(2)「本発明は、遊技店において、パチンコ玉やスロットマシン用メダル等の遊技媒体を遊技者に貸し出す際に用いる有価データ記憶媒体の各種制御処理を行う有価データ記憶媒体処理装置に関する。」(第2頁左欄第39行〜第42行)
(3)「カードユニット3の例えば前面側上部にカード挿排口13を開設してあり、遊技に供し得る遊技媒体たるパチンコ玉と等価交換可能な有価データを予め記憶させた有価データ記憶媒体たるプリペイドカード等を外部より受け入れると共に、当該カードユニット3が発行するプリペイドカード等を排出できるようにしてある。また、カード挿排口13のほかに、硬貨を受け入れる硬貨投入口14、紙幣投入口15、硬貨返却口16を設けてあり、硬貨投入口14や紙幣投入口15から投入された貨幣の金額が、当該カードユニット3で発行するプリペイドカードの金額を越えていれば、当該金額のプリペイドカードを発行する。」(第3頁右欄第24行〜第35行)
(4)「一方、カードユニット3の内部には、カード挿排口13より挿入されたプリペイドカードの残度数を読み出すカードリーダと、該プリペイドカードの度数を書き換えたり、当該カードユニット3が発行するカードに有価データを書き込んだりするカードライタとを一体的に構成したカードリーダライタ20を設けてあり、該カードリーダライタ20へは、カード補給コンベア7から発行用のカードがカードフィーダ21を介して供給されるものとしてある。また、カードユニット3内には、硬貨識別部22や紙幣識別部23で識別された当該カードユニット3への投入金額の総計値を記憶すると共に、パチンコ機2へのカードデータ送信や上記カードリーダライタ20への読出し・書込み等、カードユニット3の動作に関する制御を統括的に司る制御部24を設けてある。」(第3頁右欄第47行〜第4頁左欄第11行)
(5)「カード制御に関連した機能ブロック図を示す図4に基づいて、制御部24の制御動作を詳述する。・・・紙幣投入口15に紙幣が投入された場合には紙幣識別部23が識別した投入金額データが、硬貨投入口14に硬貨が投入された場合には硬貨識別部22が識別した投入金額データが、各々制御部24に供給され、これらの投入金額データを制御部24が計数して、計数金額が当該カードユニット3の発行するカード金額(例えば5000円)に達していれば、当該金額のカードを発行する。」(第4頁左欄第23行〜第33行)
(6)「そこで、遊技者は、カード挿排口13から発行されたカードをそのまま押し込む、または持参したカードをカード挿排口13に挿入する。・・・すると、カードユニット3のカードリーダライタ20に発行済のプリペイドカードが挿入された状態となり、カードリーダ20aが読み出した有価データが制御部24に供給され、受け入れたカードの有価データを記憶する。そして、制御部24より遊技機2の遊技制御機能を統括的に制御すると共に貸出制御装置の機能を有する遊技制御装置28へ有価データが供給され、この有価データを受けることで、パチンコ機2の遊技制御装置28は、玉貸動作の可能な玉貸可能状態(遊技者が玉貸選択スイッチを操作することに基づく玉貸要求を有効に受け入れ得る状態)となる。」(第4頁左欄第39行〜第4頁右欄第2行)
(7)「ここで、遊技者が遊技を終了するためにカード返却スイッチ29を操作すると、制御部24は、パチンコ玉の貸出に供されて減算記憶した有価データを、カードリーダライタ20内に存するカードに書き込んで、当該カードを排出する。・・・ また、遊技者が発行カード金額分の度数を使い尽くした場合(制御部24の内部記憶が「0」になった場合)には、当該カードの残度数を「0」にしてカードを返却する。」(第4頁右欄第17行〜第25行)
(8)「貨幣(紙幣・硬貨)もしくはプリペイドカードを受け入れるまで待機状態にあり、これらを受け入れると、紙幣・硬貨の種別を識別もしくはカードの有価データを読み取る。」(第4頁右欄第36行〜第39行)
(9)「先ず、図5に示す実施例において、カードの有価データを読み取った場合について説明すれば、有価データ(或いは有価データに相当する度数等)を内部に記憶し、この記憶データを表示する。・・・次いで、パチンコ機2の遊技制御装置28へ有価データを送信する。そして、カード返却スイッチ29が操作されたか否かを判定し、返却スイッチ29が操作されていなければ、該有価データに基づく玉貸動作が遊技制御装置28で行われた場合に、遊技制御装置28より玉貸データが送信されるので、この玉貸データを受信し、記憶データより上記受信データを減算し、減算結果を改めて記憶し、新たな記憶データ(残高)を表示する。・・・そして、新たな記憶データ、即ち残高が「0」か否かを判定し、「0」でなければ再び遊技制御装置28へ記憶データを送信する。一方、残高が「0」になった場合、あるいはカード返却スイッチ29が操作された場合には、カードリーダライタ20内のカードのデータを「0」を含む「残高」に書き換えてカード挿排口13より客側へ排出すると共に、内部の記憶データをリセットして待機状態となる。・・・一方、現金を受け入れた場合には、投入された紙幣もしくは硬貨の種別を識別し、カードフィーダ21から新規な生カードをカードリーダライタ20内に取り込み、このカードに発行する有価データを書き込み、当該カードを遊技者に発行する。」(第4頁右欄第40行〜第5頁左欄第15行)
(10)「更に、上記集中式のカード供給にあっては、更にカードの回収経路を併設することもできる。即ち、図7(C)に模式的に示すように、カード補給コンベア7aと平行して逆方向のカード回収コンベア7bを設けると共に、カードリーダライタ20と両コンベア7a,7bとの間にカード待機部21aを形成する。このようにすれば、カードリーダライタ20が、生カードを要求したとき、カード待機部21aから直ちに供給することができ、しかも不用なカードを回収することができる。なお、カード供給コンベア7を逆方向への搬送も可能とすれば、1本のコンベアで補給および回収を行うことができる。・・・一方、不用なカードを回収する。即ち、残高が「0」になって価値の無くなったカードを、遊技者に返却することなく回収してしまうのである。このようにすれば、使用済みのカードが店内に放置されたまま店内に散乱して美観を損ねることを未然に防止できる。また、滑動性の高いカードが床に落ちていると歩行上の危険性につながるが、回収してしまえば安全である。また、閉店時には、カード待機部21aに残っている生カードをカードストッカ11に回収することができる。このように、生カードを回収してしまえば、保安上安全である。・・・そして、無価値になってしまったカードを回収するためには、制御行程にカード残高を判定し、残高が「0」の場合にはカードを回収する行程を加えればよい。」(第5頁左欄第47行〜右欄第23行)
(11)「更に、本発明は、ソフトウエア手段の変更によって、より発展的な実施例とすることができる。・・・一方、紙幣投入口15に紙幣が投入された場合には紙幣識別部23が識別した投入金額データが、硬貨投入口14に硬貨が投入された場合には硬貨識別部22が識別した投入金額データが、各々制御部24に供給され、これらの投入金額データを制御部24が計数して、計数金額が当該カードユニット3の発行するカード金額(例えば5000円)に達していれば、当該金額のカードを発行し、且つ発行したカードを玉貸用にユニット内へ受け入れたものとしてカードデータをパチンコ機2の遊技制御装置28へ供給する。即ち、制御部24は、この段階では発行用カードへの物理的なアクセスを行わずに、内部記憶によって、有効なプリペイドカードを受け入れた場合と同様にカードデータをパチンコ機2の遊技制御装置28へ供給するのである。・・・例えば、遊技客が当該カードユニット3へ一万円を投入したものと仮定すると、5000円に相当する投入金額データが玉貸制御装置24へ供給され、該投入金額が発行カード金額(5000円)に達しているので、カードを一枚発行したものとしてカード残度数=50(1度数は100円)として記憶するのである。」(第6頁左欄第37行〜右欄第20行)
(12)「そこで、上記のような実施例とするためには、遊技者が遊技を終了するためにカード返却スイッチ29を操作したとき、制御部24で、内部記憶のカード残度数が「0」か否かを判定するようにするのである。そして、カード残度数が「0」でなければ、当該カードが外部より受け入れたものであるか当該カードユニット3が発行したものであるかを判定し、カードユニット3が発行したものであれば(カードリーダライタ20内にカードがなければ)、カードフィーダ21からカードリーダライタ20へ発行用のカードを1枚供給させ、制御部24が内部記憶しているカード残度数を発行用のカードへカードライタ20bによって書き込ませ、遊技者に残度数を有した使用可能な新規なカードを供給するのである。即ち、遊技者はこの時点で初めて、カード発行金額から使用分の金額を差し引いた価値のあるプリペイドカードをカードユニット3から受け取るのである。要するに、制御部24においては、「仮想的にカードを発行すること」と「実際にカードを遊技者に供給すること」とを区別して処理すると共に、無駄なカードの発行を抑制するのである。」(第7頁左欄第20行〜第39行)
(13)「なお、前記したカードの供給方法はこれらの実施例に対しても有効である。例えば、図7(C)に示すように回収可能な供給方法を採用した場合には、無駄なカードを発行しないばかりではなく、使用済みの無価値となったカードを回収することができるので、店内に放置されたまま店内に散乱して美観を損ねることを未然に防止できる。」(第9頁左欄第18行〜第24行)
と記載されている。
したがって、以上の記載事項を総合すると、引用刊行物1には、
「遊技機での遊技に用いる遊技媒体と等価交換が可能な貨幣を受け入れる硬貨投入口及び紙幣投入口と、前記遊技媒体と等価交換が可能な有価データ記憶媒体を受け入れるカード挿排口と、上記硬貨投入口及び紙幣投入口より受け入れた貨幣と等価な有価データを記憶させた有価データ記憶媒体を発行する有価データ記憶媒体処理手段と、上記カード挿排口から受け入れた有価データ記憶媒体に対して有価データの読出し或は書き込みが可能な有価データ読出し・書込み手段と、上記有価データ読出し・書込み手段によって読出した有価データ、もしくは上記有価データ記憶媒体処理手段によって発行された有価データを記憶有価データとして内部に記憶すると共に、有価データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸出す貸出制御装置へ上記記憶有価データを供給し、実際に遊技媒体の貸出に供された有価データを減算記憶する有価データ記憶制御手段とを備え、上記有価データ記憶制御手段は、外部より受け入れた有価データ記憶媒体による遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、上記有価データ記憶制御手段の記憶する有価データの残高が「0」以外の時は、受入れた有価データ記憶媒体に上記有価データ記憶制御手段が記憶する有価データの残高を有価データ読出し・書き込み手段により書き込ませて遊技者に返却するが、上記有価データ記憶制御手段の記憶する有価データの残高が「0」の時は、受入れた有価データ記憶媒体を遊技者に返却せず回収させる構成としたことを特徴とする有価データ記憶媒体処理装置。」
という発明(以下、「引用刊行物1記載の発明」という)が記載されている。

3.3 引用刊行物2記載の発明
引用刊行物2には、図面とともに、
(14)「本実施例では遊技機の一例であるパチンコ遊技機について説明する」(第3頁右下欄第13行〜第14行)
(15)「パチンコ遊技機10の下方に設けられている前面装飾板20には、その左隅に記録媒体挿入口の一例であるカード挿入・排出口26が形成されており、記録媒体の一例である磁気カード102(第4図参照)が挿入・排出可能に構成されている。この磁気カード102には、後述するように、遊技者の持玉数が特定できる持玉数特定情報が記録されており、その持玉数特定情報から直接あるいは間接的に導き出される(本実施例では直接導き出される)持玉数データに対応する数だけのパチンコ玉によりパチンコ遊技が可能となる。さらに、前面枠12の左下方部分には、遊技結果を精算させるための操作部材の一例の精算ボタン28・・・を含む操作スイッチ機構27が設けられている。」(第4頁左下欄第19行〜右下欄第14行)
(16)「前面枠12の左部分には、硬貨投入口33と、その硬貨投入口33から投入された硬貨を処理するための硬貨処理部35および所定の場合に投入硬貨を返却するための硬貨返却口34さらには投入硬貨を収容するための硬貨収容部36が設けられている。さらに、前記硬貨投入口33等の下方位置には、紙幣挿入・返却口37が形成されており、この紙幣挿入・返却口37から挿入された紙幣を処理するための紙幣処理部38さらには挿入された紙幣を収容するための紙幣収容部39が設けられている。前記貨幣投入口33と紙幣挿入・返却口37とにより貨幣投入口が構成されている。」(第5頁左上欄第11行〜右上欄第2行)
(17)「前面枠12の裏面側には記録媒体処理装置の一例であるカード処理装置100が設けられている。このカード処理装置100は、前記カード挿入・排出口26(第1図参照)から挿入されたカードを収容するためのカード収容箱136と、そのカード収容箱136を取出してカードを収集するための取手136aと、制御部(マイクロコンピュータ)138とから構成されている。」(第6頁右下欄第7行〜第14行)
(18)「磁気カード102には、持玉数特定情報の一例である遊技者の持玉数データが記録されており、この持玉数データは、たとえば、遊技者が遊技の前に支払った料金に相当する貸玉の数だけ磁気カード102に記録させたものである。」(第7頁左下欄第17行〜右下欄第1行)
(19)「前記カード挿入・排出口26に挿入された磁気カード102・・・が搬送されている途中で、読取手段の一例であるデータ読取器107でカード102のデータが読取られ、そのデータは制御部(マイクロコンピュータ)138(第5図参照)に送られる。」(第7頁右下欄第19行〜第8頁左上欄第13行)
(20)「磁気カード102がこの第3のカード検出器105(SW3)の検出位置に保留されている状態で、パチンコ遊技が可能となる。そして、遊技者がパチンコ遊技を行なって精算ボタン28(第1図参照)を押圧操作することにより、第2の搬送用モータ115(M2)および第1の搬送用モータ110(M1)が逆転し、カード102が図示右方向に搬送され、その搬送途中で、データ消去器109により持玉数データが消去されるとともに、データ書込器108により、遊技によって獲得した持玉数データが新たに書込まれ、カード挿入・排出口26からカード102が遊技者側に排出される。次に、遊技者が遊技を行なうことによって、持玉数データが零になった場合には、カード102はそのまま保留され、貨幣の投入により、持玉数データを更新して再び遊技を行なえるように構成されている。また、新たにカードが挿入された場合には、そのカードが適正である場合に限り、保留されていたカードに代わって新たに挿入されたカードが第3のカード検出器105(SW3)の検出位置に保留され、それまで保留されていたカードはカード収容箱136内に収容される。」(第8頁右上欄第16行〜左下欄第18行)
(21)「なお、本実施例では、カード回収箱136により磁気カードを遊技機毎に収容するよう構成したが、遊技機裏面にベルトコンベア等を設けて設置島の端1カ所で集めるようにしてもよい。」(第8頁右下欄第8行〜第11行)
と記載されている。
したがって、以上の記載事項を総合すると、引用刊行物2には、
「持玉数データが記録された磁気カードが挿入されると、前記磁気カードから読み取られた前記持玉数データに対応する数だけのパチンコ玉により、前記磁気カードを保留した状態でパチンコ遊技機での遊技を可能とするカード処理装置において、前記持玉数データが零になった場合には、前記磁気カードはそのまま保留され、新たに磁気カードが挿入された場合には、それまで保留されていた磁気カードをカード回収箱(カード収容箱)内に収容すること。」
という発明(以下、「引用刊行物2記載の発明」という)が記載されている。

4.対比・判断
4.1 対比
本件発明と引用刊行物1記載の発明を対比する。
(イ)引用刊行物1記載の発明における「遊技媒体と等価交換が可能」であることは、本件発明における「遊技媒体と交換が可能」であることに相当する。そうすると、引用刊行物1記載の発明における「有価データ記憶媒体」は、「遊技媒体と交換が可能な」ものであり、かつ、「受け入れた貨幣と等価な有価データを記憶させた」もの、すなわち「受け入れた貨幣に対応した」ものとして発行されるものであるから、当該「有価データ記憶媒体」は、本件発明における「データ記憶媒体」に相当するとともに、それに記憶された「有価データ」は、本件発明における「データ」に相当する。
(ロ)上記(イ)で検討した事項を考慮すると、引用刊行物1記載の発明おける「有価データ記憶媒体処理手段」、「有価データ読出し・書込み手段」、「有価データ記憶制御手段」、「有価データ記憶媒体処理装置」、「記憶有価データ」は、本件発明における「データ記憶媒体処理手段」、「データ読出し・書き込み手段」、「データ記憶制御手段」、「データ記憶媒体処理装置」、「記憶データ」にそれぞれ相当する。
(ハ)引用刊行物1記載の発明における「硬貨投入口及び紙幣投入口」、「カード挿排口」は、本件発明における「貨幣の受入部」、「データ記憶媒体の受入部」にそれぞれ相当し、また、引用刊行物1記載の発明における「回収」という制御は、本件発明における「回収処分」という制御に相当する。
そうすると、本件発明と引用刊行物1記載の発明は、
「遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換が可能な貨幣及びデータ記憶媒体を受け入れる夫々の受入部と、上記貨幣の受入部より受け入れた貨幣に対応したデータ記憶媒体を発行するデータ記憶媒体処理手段と、上記データ記憶媒体の受入部から受け入れたデータ記憶媒体に対してデータの読出し或は書き込みが可能なデータ読出し・書き込み手段と、上記データ読出し・書き込み手段によって読出したデータ、もしくは上記データ記憶媒体処理手段によって発行されたデータを記憶データとして内部に記憶すると共に、データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸出す貸出制御装置へ上記記憶データを供給し、実際に遊技媒体の貸出に供されたデータを減算記憶するデータ記憶制御手段とを備え、上記データ記憶制御手段は、外部より受け入れたデータ記憶媒体による遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」以外の時は、受入れたデータ記憶媒体に上記データ記憶制御手段が記憶するデータの残高をデータ読出し・書き込み手段により書き込ませて遊技者に返却する構成としたことを特徴とするデータ記憶媒体処理装置。」
である点で一致し、次の点において相違しているものと認められる。
[相違点]
外部より受け入れたデータ記憶媒体による遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の時に、本件発明においては、受入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず保留待機させ、この保留待機状態においてデータ記憶媒体を新たに外部より受入れられたときは、保留待機状態にあったデータ記憶媒体は回収処分され、上記外部より受け入れた新たなデータ記憶媒体が有する貨幣データを上記データ記憶制御手段に供給するのに対し、引用刊行物1記載の発明においては、受入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず、保留待機させることなく回収処分させる点。

4.2 判断
前記相違点について検討する。
(i)引用刊行物2記載の発明においては、磁気カードに記録されている持玉数データに対応する数だけのパチンコ玉によりパチンコ遊技機での遊技が可能となり、かつ、前記「パチンコ遊技機」及び「パチンコ玉」は、それぞれ「遊技機」及び「遊技媒体」の一種であるから、引用刊行物2記載の発明における前記「磁気カード」は、遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換可能な「データ記憶媒体」であると認められる。
また、引用刊行物2記載の発明において、磁気カードを「そのまま保留」させることは、磁気カードを「遊技者に返却せず保留待機」させることを意味し、また、磁気カードを「カード回収箱(カード収容箱)内に収容する」ことは、磁気カードを「回収処分する」ことを意味するものと認められる。
そうすると、引用刊行物2記載の発明における「前記磁気カードはそのまま保留され、新たに磁気カードが挿入された場合には、それまで保留されていた磁気カードをカード回収箱(カード収容箱)内に収容する」ことは、「受入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず保留待機させ、この保留待機状態においてデータ記憶媒体を新たに外部より受入れられたときは、保留待機状態にあったデータ記憶媒体は回収処分され」ることを意味するものと認められる。
(ii)上記(i)で述べたように引用刊行物2記載の発明における「磁気カード」は「データ記録媒体」であるから、引用刊行物2記載の発明における「カード処理装置」は「データ記憶媒体処理装置」であると言うことができる。
そうすると、引用刊行物1記載の発明及び引用刊行物2記載の発明はともに、「データ記憶媒体処理装置」、すなわち、遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換可能なデータ記憶媒体の処理装置に関するものであると認められる。
(iii)引用刊行物1記載の発明における「有価データ記憶制御手段の記憶する有価データの残高が「0」の時」と引用刊行物2記載の発明における「持玉数データが零になった場合」はともに、遊技媒体の貸出しに供することが可能なデータの残高が零になり、遊技媒体を新たに貸出すことができない状態になった場合を意味するものであると認められる。
上記(i)〜(iii)での検討事項を勘案すると、引用刊行物1記載の発明と引用刊行物2記載の発明は、遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換可能なデータ記憶媒体の処理装置において、遊技媒体の貸出しに供することが可能なデータの残高が零になり、遊技媒体を新たに貸出すことができない状態になった場合の処理内容に関する発明である点で共通するから、引用刊行物1記載の発明において、外部より受け入れたデータ記憶媒体による遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の時に、前記受け入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず、保留待機させることなく回収処分させることに代えて、引用刊行物2記載の発明のように、前記受け入れたデータ記憶媒体を遊技者に返却せず保留待機させ、この保留待機状態においてデータ記憶媒体を新たに外部より受入れられたときは、保留待機状態にあったデータ記憶媒体は回収処分されるようにすることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
そして、引用刊行物1記載の発明に引用刊行物2に記載の発明を適用することによって得られるデータ記憶媒体の上記保留待機状態において、上記のようにデータ記憶媒体が新たに外部より受け入れられたときには、引用刊行物1記載の発明のデータ記憶媒体処理装置の動作からみて、外部より受け入れられた新たなデータ記憶媒体が有する貨幣データをデータ記憶制御手段に供給するものと認められる。すなわち、引用刊行物1記載の発明において、上記のようにデータ記憶媒体を遊技者に返却せず保留待機させた後のデータ記憶制御手段の状態は、データ記録媒体を返却した後のデータ記憶制御手段の状態が「待機状態」となる(前記3.2の摘記(9)参照)のと同様に、「待機状態」となるものと認められ、当該「待機状態」において、上記のようにデータ記憶媒体を新たに外部より受入れられたときには、前記新たなデータ記憶媒体から読み取られた有価データがデータ記憶制御手段の内部に記憶される(前記3.2の摘記(8)及び(9)参照)、すなわち、前記新たなデータ記憶媒体が有する貨幣データをデータ記憶制御手段に供給することになるものと認められる。
したがって、引用刊行物1記載の発明において、引用刊行物2記載の発明を適用することによって、上記相違点に係る本件発明を特定する事項とする点に格別の困難性は認められない。
そして、本件発明の効果も、引用刊行物1及び2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものと認められる。

5.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


 
異議決定日 2004-06-10 
出願番号 特願平11-361746
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 白樫 泰子
國分 直樹
登録日 2002-10-18 
登録番号 特許第3361306号(P3361306)
権利者 狭山精密工業株式会社
発明の名称 データ記憶媒体処理装置  

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