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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B24B |
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管理番号 | 1102860 |
異議申立番号 | 異議2003-72095 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-02-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-13 |
確定日 | 2004-08-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3389014号「円盤状半導体ウェーハ面取部のミラー面取加工方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3389014号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3389014号の請求項1に係る発明は、平成8年7月15日に特許出願され、平成15年1月17日にその発明について特許権の設定登録がなされた後、その特許について平成15年8月13日に特許異議申立人株式会社ビービーエス金明より特許異議の申立てがなされたものである。 第2 特許異議申立てについて 1.本件発明 本件特許第3389014号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 凹形状をなす研磨面に対して、円盤状半導体ウェーハの外周の面取部をほぼ全周において押し当てた状態で、この研磨面と円盤状半導体ウェーハとの相対的回転を与えることにより、円盤状半導体ウェーハの外周の面取部のミラー面取加工を行うようにしたミラー面取加工方法であって、 前記凹形状をなす研磨面が、円盤状半導体ウェーハの外周面取部をほぼ全周において押し当て可能な曲率半径の球内面形状であり、この球内面の中心点に円盤状半導体ウェーハの回転軸を一致させ、かつ研磨面の回転軸と前記円盤状半導体ウェーハの回転軸とを不一致とさせ、少なくとも前記研磨面をその回転軸で強制的に回転させるようにしたことを特徴とする円盤状半導体ウェーハ面取部のミラー面取加工方法。」 2.異議申立の理由の概要 特許異議申立人は、以下に示す甲第1ないし4号証を提示し、本件発明は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は取り消すべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開平7-148654号公報 甲第2号証:特開昭57-96766号公報 甲第3号証:実公昭50-6296号公報 甲第4号証:特公昭50-20314号公報 3.各甲号証記載の発明 (1) 甲第1号証 甲第1号証には、第3欄第3行〜第4欄第10行の記載からみて、「凹形状をなす研磨面(7a)に対して、レンズの一方面を全面において押し当てた状態で、この研磨面(7a)とレンズとの相対的回転を与えることにより、レンズの一方面の球面研磨加工を行う方法であって、凹形状をなす研磨面(7a)が、レンズの一方面を全面において押し当て可能な曲率半径の球内面形状であり、この球内面の中心点にレンズの回転軸を一致させ、かつ研磨面(7a)の回転軸とレンズの回転軸とを不一致させ、研磨面(7a)をその回転軸で回転させるレンズ研磨方法。」の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されている。 (2) 甲第2号証 甲第2号証には次の事項が記載されている。 ア 「第1図は表面に球面加工されたラツプ皿(2)を示す図であり、従来はこのラツプ皿にラツピングパウダーを流し、その上に半導体ウエハ(1)を載せて手で動かして研磨していた。・・・この発明は・・・簡単かつ均一に半導体ウエハが研磨され、同時にラツプ皿の削れも均一になるようにした自動研磨装置を提供するものである。」(第1頁右下欄第4行〜第2頁左上欄第2行) イ 「第4図はこの発明の一実施例を示す図であり、(1)は半導体ウエハ、(2)はモータで回転させられるラツプ皿、(3)は半導体ウエハ(1)を保持し、シリンダで上下動するホルダー、(4)はこのホルダー(3)を回転可能に取付けたアーム、(5)はこのアームを矢印方向に往復運動させるスライド機構、・・・である。・・・ラツプ皿(2)はモータ(図示しない)で回転し、一方ホルダー(3)に保持された半導体ウエハ(1)はシリンダ(図示しない)で加圧され、・・・研磨される。同時にホルダー(3)はスライド機構(5)によりアーム(4)を介して往復運動が与えられ、ラツプ皿(2)に均一に半導体ウエハ(1)が接触するようになつている。又、ホルダー(3)は回転できるようになつているため、ラツプ皿(2)の回転により自転運動も行う。」(第2頁左上欄第3行〜同頁右上欄第1行) これらの記載によれば、第4図に示される実施例においては、研磨面であるラツプ皿に対して、半導体ウエハは、上下動しつつ水平方向に往復移動するものの、甲第2号証の記載全般を参酌しても、往復移動におけるどの位置でも、ラツプ皿に対して、ウエハの外周面取部をほぼ全周において押し当てた状態で面取加工を行うことについて記載されておらず、示唆もされていないことからみて、上記記載における「ラツプ皿(2)に均一に半導体ウエハ(1)が接触する」は、ラツプ皿に対して半導体ウエハの全周を接触させることを意味するのではなく、ラツプ皿の全体に亘って半導体ウエハが移動して接触することを意味すると解釈するのが相当である。 したがって、甲第2号証には、「凹形状をなす研磨面であるラツプ皿(2)に対して、半導体ウエハ(1)の外周の面取部を押し当てた状態で、このラツプ皿(2)と半導体ウエハ(1)との相対的回転を与えることにより、半導体ウエハ(1)の外周の面取部の面取加工を行う面取加工方法であって、前記凹形状をなすラツプ皿(2)が球内面形状であり、ラツプ皿(2)の回転軸と前記半導体ウエハ(1)の回転軸とを不一致とさせ、ラツプ皿(2)をその回転軸で強制的に回転させる半導体ウエハ面取部の面取加工方法。」の発明(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)が記載されている。 (3) 甲第3号証 甲第3号証には次の事項が記載されている。 ア 「第2図に示如く、円錐状の研磨面2を有する研磨治具の中心にウエハー3を当てがつて上方より押圧し、研磨治具又はウエハー保持具4を回転させてベベリングを行なうものであるが・・・研磨治具の研磨面を回転円弧状とすることも考えられる・・・ウエハーのサイズは通常、ほぼ一定しているため、研磨治具は局部的にのみウエハーに接触しそこだけが摩耗するため、ベベル形状が不揃いになったりベベル部に段がついたりするからである。」(第2欄第2〜17行) イ 「研磨治具6は上面に逆円錐状の研磨面6´を有しており、回転台7上に載置固定されて、軸8を中心としてゆるやかに回転する。9は歳差軸を示し、仮想軸10のまわりを歳差運動しながら自転する。・・・歳差軸9は途中にスプリング機構11を有しており、また、下端はボールソケツト12によりウエハー保持板13に取付けられている。・・・ウエハー14は自転しながら第4図の軌跡15に沿って公転し、エツジ部分にベベリングを施される。而して、ウエハー14は研磨治具6の中央部近傍ではきついベベル角度を与えられ、周辺部ではゆるやかになるので、ベベル形状は第1図イに示す如き形状となる。」(第2欄第27行〜第3欄第6行) 上記アの記載において、第2欄第13〜17行における、「研磨治具は局所的にのみウエハーに接触しそこだけが摩耗する」の記載からみれば、研磨治具の回転軸と半導体ウエハー(3)の回転軸は常に一致していると解釈するのが相当である。 したがって、甲第3号証には、「凹形状をなす研磨面に対して、半導体ウエハー(3)の外周の面取部ほぼ全周においてを押し当てた状態で、この研磨面と半導体ウエハー(3)との相対的回転を与えることにより、半導体ウエハー(3)の外周の面取部の面取加工を行う面取加工方法であって、前記凹形状をなす研磨面が回転円弧状であり、研磨面の回転軸と半導体ウエハー(3)の回転軸は常に一致し、研磨面をその回転軸で強制的に回転させる半導体ウエハー面取部の面取加工方法。」の発明(以下、「甲第3号証記載の発明1」という。)が記載されている。 また、上記イの記載によれば、研磨面が円錐面であることから、歳差軸9が研磨面の回転軸と一致する箇所以外の箇所では、研磨面に対して半導体ウエハーの外周の全周が接触しないこと明かである。また、円錐面の内面には、「球内面の中心点」に相当する「点」は存在しない。 したがって、甲第3号証には、「凹形状をなす研磨面(6´)に対して、半導体ウエハー(14)の外周の面取部を押し当てた状態で、この研磨面(6´)と半導体ウエハー(14)との相対的回転を与えることにより、半導体ウエハー(14)の外周の面取部の面取加工を行う面取加工方法であって、前記凹形状をなす研磨面(6´)が円錐内面形状であり、研磨面(6´)の回転軸8とは不一致の仮想軸10の周りを歳差運動しながら自転する歳差軸9を設け、前記歳差軸9の下端に前記半導体ウエハー(14)が固定され、研磨面(6´)をその回転軸で強制的に回転させる半導体ウエハー面取部の面取加工方法。」の発明(以下、「甲第3号証記載の発明2」という。)が記載されている。 (4) 甲第4号証 甲第4号証には次の事項が記載されている。 「保持された半導体基板と接するように円錐状で中心に向つて凹なる研摩面8を有する研摩体9が保持体1に対設されている。また、上記研摩体はその研摩面の円錐の中心軸を中心に回転する。そして研摩体の円錐面の一部の母線に半導体基板の周縁の直線部を含む円部を当接せしめる。」(第2欄第27〜32行) 上記記載によれば、研摩面8が円錐面であることから、半導体基板(2)の保持軸(4)が研摩面の回転軸と一致しない状態では研摩面に対して半導体ウエハーの外周の全周が接触しないこと、また、円錐面の内面には、「球内面の中心点」に相当する「点」は存在しないことは、上記甲第3号証記載の発明2と同様である。 したがって、甲第4号証には、「凹形状をなす研摩面(8)に対して、半導体基板(2)の外周の面取部を押し当てた状態で、この研摩面(8)と半導体基板(2)との相対的回転を与えることにより、半導体基板(2)の外周の面取部の面取加工を行う面取加工方法であって、前記凹形状をなす研摩面(8)が円錐内面形状であり、研摩面(8)の回転軸と半導体基板(2)の保持軸(4)を不一致とさせ、研摩面(8)をその回転軸で強制的に回転させる半導体基板面取部の面取加工方法。」の発明(以下、「甲第4号証記載の発明」という。)が記載されている。 4.対比・判断 本件発明と甲第各号証記載の発明を対比する。 甲第1号証記載の発明は、レンズ面の研磨に係る発明であることから、研磨面に対してレンズ面の全面が常に接触していることが前提となるものであり、その結果として、レンズの外周部の全周において研磨面に接触しているのである。これに対し、本件発明においては、研磨面に対して、円盤状半導体ウェーハの外周の面取部のみをほぼ全周において押し当てた状態で加工している。すなわち、本件発明と甲第1号証記載の発明においては、研磨面に対して、研磨対象物の外周を全周において押し当てた状態で加工することの技術的意義が異なる。 したがって、研磨面に対して常にウエーハ外周の面取部を全周において接触させる必然性のない円盤状半導体ウエーハの外周の面取加工技術に対して、甲第1号証記載の発明を適用することが容易であるとすることはできない。更に、これら技術分野の相違に起因する技術の相違からみて、同甲第1号証記載の発明において、研磨対象であるレンズを円盤状半導体ウエーハに置き換えることが容易であるとすることもできない。 また、甲第2号証記載の発明、甲第3号証記載の発明1ないし2、甲第4号証記載の発明は、いづれも、本件発明を特定する事項のうち、「研磨面の球内面の中心点に円盤状半導体ウェーハの回転軸を一致させ、かつ研磨面の回転軸と前記円盤状半導体ウェーハの回転軸とを不一致」とさせた事項を欠いており、これら甲第2ないし4号証記載の発明を組み合わせても本件発明を得ることはできない。 そして、本件発明は、「円盤状半導体ウェーハの外周の面取部をほぼ全周において押し当てた状態で」面取加工を行うに際し、「研磨面の球内面の中心点に円盤状半導体ウェーハの回転軸を一致させ、かつ研磨面の回転軸と前記円盤状半導体ウェーハの回転軸とを不一致」とすることで、本件特許明細書【0021】ないし【0022】に記載の、面取加工に供される研磨パッドの面積が広がり、研磨パッドの寿命を格段に延ばすことができる。円盤状半導体ウェーハに局所的な荷重が加わらず、加工時の局所欠損を防止できる。セット時もしくは面取研磨中に円盤状半導体ウェーハの位置がずれたとしても、面取加工には影響がなく、常時面取部の傾斜角を維持した面取加工が可能となるという作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明は、甲第1ないし4号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-08-02 |
出願番号 | 特願平8-184714 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B24B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡野 卓也 |
特許庁審判長 |
宮崎 侑久 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 上原 徹 |
登録日 | 2003-01-17 |
登録番号 | 特許第3389014号(P3389014) |
権利者 | 旭栄研磨加工株式会社 ニトマック・イーアール株式会社 |
発明の名称 | 円盤状半導体ウェーハ面取部のミラー面取加工方法 |
代理人 | 小塚 善高 |
代理人 | 筒井 大和 |