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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F25D
管理番号 1102887
異議申立番号 異議2003-71132  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-30 
確定日 2004-08-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3342263号「冷蔵庫等の棚のストッパー装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3342263号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3342263号(以下、「本件特許」という。)は、平成7年10月26日に特許出願され、平成14年8月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、熊田尚代より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内の平成16年4月6日に意見書が提出されたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 貯蔵室内を上下に分け、食品等を載置収納するように設けられる棚を前後方向へ伸縮可能で後端支軸を中心に回動自在な伸縮自在棚にした冷蔵庫において、前記伸縮自在棚は回転支軸を有しこの回転支軸を中心に回動する上面が平坦状の後棚と、この後棚の下に収納自在に前後方向へ摺動可能な上面が平坦状の前棚とで構成し、前記後棚の回転支軸はこの後棚の中央寄りに配置し、前棚の前方下面には前記棚の載置レールに係止される係止爪を設け、この載置レールには前記前棚を最も後方に移動させたときに前記係止爪と一致する切欠を設けたことを特徴とする冷蔵庫等の棚のストッパー装置。

3.取消理由に引用された引用刊行物
刊行物1:特開平7-218116号公報(異議申立人提出の甲第1号証)

4.引用刊行物に記載された事項
本件出願前に頒布された上記刊行物1には、冷凍冷蔵庫の伸縮棚装置に関して、
「なお、引退位置に配置された後棚(8)を水平姿勢に変位するため、支持軸(10)から後棚(8)の前端までの距離を半径とする空所を要し、この空所のために伸縮棚装置(11)の上方に配置される他の棚の設置が制約される。なお、伸縮棚装置(11)とこの伸縮棚装置(11)の上方に配置される他の棚との間隔を少なくするには、支持軸(10)の位置を後棚(8)の前端寄りに配置して回動動作に要する空所を狭くすることができる。しかし、このような構成のときには後棚(8)の後寄りに載置された物品(図示しない)により後棚(8)が回動して転倒状態になるという不具合が生じる。」(段落【0007】)こと、
「【0036】(19)は後棚(8)の後端リブ(8a)に設けられて前棚(7)の後端面に対向して配置された弾性阻止片、(20)は前棚(7)の摺動片(7a)の前端寄りに形成されて下側から上側先端に接近する方向に傾斜した斜面が構成された掛止部である。(21)は弾性阻止片(19)を主要部材として構成された引退用機構で、弾性阻止片(19)が後退した前棚(7)の後端面に押圧されて弾性変形することにより前棚(7)を過後退させて掛止部(20)と前側案内溝(2)の後端部との係合を解消する。
(22)は支持手段(1)の回動支持部(4)よりも下方に構成されて、回動した後棚(8)の後端部が当たる阻止部である。
【0037】上記のように構成された冷凍冷蔵庫の伸縮棚装置において、伸縮棚装置(11)を伸展させて使用する場合は、前棚(7)が前進位置に配置されて前側案内溝(2)縁部に支持され、後棚(8)は支持軸(10)が回動支持部(4)に枢持されると共に後側支持部(3)に支持されて図2及び図5に示す状態に配置される。また、伸縮棚装置(11)を縮小して使用するときは、前棚(7)を前側案内溝(2)を介して後退させて後端面が弾性阻止片(19)当たった状態で、後棚(8)の収容部(9)に収容して、図6に示すように後棚(8)のみによるほぼ半分の広さの棚が構成される。
【0038】なお、後棚(8)のみによるほぼ半分の広さの棚が構成された状態では前棚(7)の掛止部(20)と前側案内溝(2)縁部の後端部とが係合関係にあり、後棚(8)の後寄りに物品(図示しない)が乗った場合の後棚(8)の図6における支持軸(10)を中心とする時計方向の回動が阻止される。
【0039】さらに、伸縮棚装置(11)を使用しないときは、前棚(7)を前側案内溝(2)を介して後退させて後棚(8)の収容部(9)に収容して、後退した前棚(7)の後端面により弾性阻止片(19)を押圧して弾性変形させる。すなわち、引退用機構(21)を動作させる。これにより、前棚(7)を過後退させて掛止部(20)と前側案内溝(2)の後端部との係合を解消して、後棚(8)を図6の状態から支持軸(10)を中心として時計方向に回動する。そして、図7に示すように後棚(8)の後端部の回動が阻止部(22)により阻止されて前棚(7)を収容した後棚(8)が鉛直姿勢、すなわち伸縮棚装置(11)が引退位置に配置される。
【0040】また、引退位置にある伸縮棚装置(11)を水平姿勢に復帰する場合は、伸縮棚装置(11)を水平方向に回動すると、前棚(7)の掛止部(20)が前側案内溝(2)縁部の後端部に対向する。この状態で、掛止部(20)の斜面による案内作用により前棚(7)が弾性阻止片(19)の押圧力に抗して後退し、すなわち引退用機構(21)が動作して掛止部(20)が前側案内溝(2)縁部の後端部に係合し、伸縮棚装置(11)が水平姿勢に保持される。このように煩雑な操作を要せずに伸縮棚装置(11)を所要の状態に配置することができ、伸縮棚装置(11)の状況変更動作を容易化することができる。
【0041】また、前棚(7)の掛止部(20)が前側案内溝(2)縁部の後端部に係合し、伸縮棚装置(11)が水平姿勢に保持される。このため、後棚(8)の支持部(10)を後棚(8)の前寄りに設置しても後棚(8)の後寄りに物品(図示しない)が載った場合に伸縮棚装置(11)が傾く不具合の発生を防止することができる。したがって、引退位置に配置された伸縮棚装置(11)を水平姿勢に変位するために必要な伸縮棚装置(11)上方の空所を狭くすることができ、伸縮棚装置(11)の上方に配置される定置棚(16)等の他の棚の設置制約が少なくなる。したがって、簡易に操作することができ、また上方空所が狭くても状態を変化させることができる伸縮棚装置(11)を得ることができる。」(段落【0036】〜【0041】)こと、
「【0076】これによって、煩雑な操作を要せずに伸縮棚装置を所要の状態に配置することができ、伸縮棚装置の状態変更操作を容易化することができる。また、前側案内溝に係合した前棚の収容部との係合を介して後棚の回動動作が阻止されるので、後棚の支持部を前寄りに設置しても後棚の後寄りに荷重が作用したときに縮小した伸縮棚装置が傾くことを防ぐことができる。したがって、伸縮棚装置を回動させるための上方の空所を狭くすることができ、伸縮棚装置の上方に配置される他の棚の設置制約を少なくする効果がある。」(段落【0076】)ことが、図面(図1〜13)と共に記載されている。

5.対比・判断
(1)刊行物1には、上記摘示したことからみて、
「庫内12を上下に分け、物品を載置収納するように設けられる棚を前後方向へ伸縮可能で後端支持軸を中心に回動自在な伸縮棚にした冷蔵庫において、前記伸縮棚は回転する支持軸10を有しこの支持軸10を中心に回動する上面が平坦状の後棚8と、この後棚8の下に収納自在に前後方向へ摺動可能な上面が平坦状の前棚7とで構成し、前記後棚8の支持軸10はこの後棚8の中央寄りに配置し、前記棚を支持する前側案内溝2及び後側支持部3を設け、前棚7の前方側面には前側案内溝2に係合される掛止部20を設け、前記前棚7を過後退させたときに前記掛止部20と前側案内溝縁部の後端部との係合を解消する冷凍冷蔵庫の棚装置。」が記載されている。
そこで、本件発明と刊行物1に記載された発明との対比すると、刊行物1に記載の「庫内12」は本件発明の「貯蔵室内」に、刊行物1に記載の「物品」は本件発明の「食品等」に、刊行物1に記載の「伸縮棚」は本件発明の「伸縮自在棚」に、刊行物1に記載の「支持軸10」は本件発明の「回転支軸」に、刊行物1に記載の「前棚7」は本件発明の「前棚」に、刊行物1に記載の「後棚8」は本件発明の「後棚」に、刊行物1に記載の「後棚8の前寄り」は本件発明の「後棚の中央寄り」に、刊行物1に記載の「前側案内溝2」及び「後側支持部3」は本件発明の「載置レール」に、刊行物1に記載の「掛止部20」は本件発明の「係止爪」に、刊行物1に記載の「前棚を過後退させたとき」は本件発明の「前棚を最も後方に移動させたとき」に、刊行物1に記載の「冷凍冷蔵庫の棚装置」は本件発明の「冷蔵庫等の棚のストッパー装置」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明と刊行物1とは、「貯蔵室内を上下に分け、食品等を載置収納するように設けられる棚を前後方向へ伸縮可能で後端支軸を中心に回動自在な伸縮自在棚にした冷蔵庫において、前記伸縮自在棚は回転支軸を有しこの回転支軸を中心に回動する上面が平坦状の後棚と、この後棚の下に収納自在に前後方向へ摺動可能な上面が平坦状の前棚とで構成し、前記後棚の回転支軸はこの後棚の中央寄りに配置し、前棚の前方には前記棚の載置レールに係止される係止爪を設け、この載置レールには前記前棚を最も後方に移動させたときに前記係止爪と係止を解消する構造を設けた冷蔵庫等の棚のストッパー装置。」である点で一致し、次のイ、ロの点で相違する。
イ.本件発明が係止爪を前棚の前方下面に設けたのに対し、刊行物1に記載された発明は、掛止部(本件発明の係止爪に相当する)を前棚の前方側面に設けた点。
ロ.前棚を最も後方に移動させたときに前記係止爪と係合を解消する載置レールに設けた構造として、本件発明が「係止爪と一致した切欠」を備えたのに対し、刊行物1に記載された発明は、前側案内溝(載置レールに相当する)縁部の後端部より後方は部材がない切欠であり、掛止部(係止爪に相当する)と一致していない点。

(2)そこで、これらの相違点について検討する。
・相違点イ
冷蔵庫の棚において、棚の移動によって棚と切欠を有するガイド部材とを係止させたり係止を解消したりする係止部材を棚の下面に設けた点は、この本件発明の出願前周知(例えば、特開平3-191286号公報、特開平3-175258号公報、特開平3-170778号公報を参照)であり、係止部材を棚の下面に設けるかあるいは側面に設けるかは単なる設計的事項である。
・相違点ロ
冷蔵庫等の回動可能な伸縮棚装置において、係止部材とほぼ一致した切欠により係止させたり係止を解消したりする係止手段は、この本件発明の出願前周知(例えば、特開昭59-56684号公報、特開昭64-88087号公報、実公昭59-6395号公報(異議申立人提出の甲第3号証))であり、刊行物1に記載された発明において、前記周知技術を適用して、前側案内溝(載置レールに相当する)に係止爪と一致した切欠を設けるようにすることは当業者が容易になし得たことである。

なお、特許権者は、刊行物1に記載の棚は前棚の側方を上下から挟む構造である点で本件発明の前棚と係止爪で載置レールを挟む構成とは相違する旨を主張し、さらに、特許権者は、本件発明は、特許請求の範囲請求項1の構成を採用したことにより、段落番号【0018】に記載の如く、「【0018】伸縮自在棚12は前棚23と係止爪33とで棚レール24を挟持することにより、回転支軸17を支点とする浮き上がりを抑えることができ、従来前棚23を引き出したときに必要であった棚レールの上部分を廃止できるようにされている。そのため、伸縮自在棚12は全開状態のときの食品置きスペースを広くできるようにされている。」という顕著な作用効果を奏する旨を主張している。
しかし、載置レール(棚レール)と係止爪の構成として、「伸縮自在棚は前棚と係止爪とで棚レールを挟持する」こと、及び「棚レールの上部分を廃止」することについては、本件の特許請求の範囲請求項1に記載はなく、特許請求の範囲請求項1の記載から自明のこととも言えないから、この部分についての上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、本件発明の効果とも認められない。
そして、刊行物1に記載された発明も、「前側案内溝に係合した前棚の収容部との係合を介して後棚の回動動作が阻止されるので、後棚の支持部を前寄りに設置しても後棚の後寄りに荷重が作用したときに縮小した伸縮棚装置が傾くことを防ぐことができる。したがって、伸縮棚装置を回動させるための上方の空所を狭くすることができ、伸縮棚装置の上方に配置される他の棚の設置制約を少なくする効果がある。」(段落【0076】)と記載されているように、本件特許明細書の【発明の効果】(段落【0023】)に記載された「前記前棚を後棚に収納したときにこの後棚を回転支軸と係止爪で保持して上面に載っている食品の重さ等で伸縮自在棚が回動しないようにし、かつ、この伸縮自在棚を立てるときに回転支軸を中心に回転半径を小さくできる。」という本件発明の効果と同様な効果を奏するものである。

(3)以上のとおりであるから、相違点イ、ロは格別なものではなく、本件発明は、刊行物1に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである

6.むすび
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第113条第1項第2号により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-07-01 
出願番号 特願平7-279377
審決分類 P 1 651・ 121- Z (F25D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3342263号(P3342263)
権利者 三洋電機株式会社
発明の名称 冷蔵庫等の棚のストッパー装置  
代理人 芝野 正雅  

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