• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1102911
異議申立番号 異議2003-72698  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2004-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-06 
確定日 2004-09-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第3403416号「改質装置」の請求項1ないし19、24ないし28、30に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3403416号の請求項1ないし19、24ないし28、30に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件請求項1〜30に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜30に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明1〜30という)。
「【請求項1】燃料ガスの燃焼により発熱する熱源を含み、この熱源から直接反応熱を得て改質原料を水蒸気改質し水素を主成分とする改質ガスを生成させる原料改質部と、この原料改質部で生成した改質ガス中に含まれるCOを水性シフト反応により低減させるシフト反応部と、このシフト反応部にて処理した後の改質ガス中に含まれるCOを酸化してさらに低減させるCO酸化部とをそれぞれ独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成されており、少なくとも上記原料改質部とシフト反応部とは異なった触媒を備え、上記シフト反応部とCO酸化部は、上記原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置され、しかも上記CO酸化部は上記原料改質部位置より外周側に位置している、改質装置。
【請求項2】上記原料改質部とシフト反応部とCO酸化部は、同心状に配置されており、少なくとも上記CO酸化部が外周側に配置されている、請求項1記載の改質装置。
【請求項3】上記原料改質部が、上記熱源として略筒状の燃焼室と、改質原料を水蒸気改質して水素を主成分とする改質ガスを生成させる改質反応部とを備えて構成されており、上記改質反応部、上記シフト反応部、及び上記CO酸化部が、上記燃焼室と同心状に配置されている、請求項2記載の改質装置。
【請求項4】上記改質反応部が上記燃焼室内に導入されて同心状に配置されている、請求項3記載の改質装置。
【請求項5】上記改質反応部が上記燃焼室の外周に接して周設されている、請求項3記載の改質装置。
【請求項6】上記燃焼室の中心に不燃性のコアが設けられている、請求項3乃至5のいずれかに記載の改質装置。
【請求項7】上記改質反応部の外周に上記シフト反応部及びCO酸化部が周設されている、請求項5又は6記載の改質装置。
【請求項8】上記改質反応部と上記シフト反応部及びCO酸化部との間に、伝熱調節機能を有する隔壁が設けられている、請求項7記載の改質装置。
【請求項9】上記改質反応部と上記シフト反応部とを接続する流路が上記シフト反応部及び上記CO酸化部の外側に迂回している、請求項7又は8記載の改質装置。
【請求項10】上記改質反応部の温度分布に対応させて、該改質反応部の高温側に上記シフト反応部が配置され、低温側に上記CO酸化部が配置されている、請求項7乃至9のいずれかに記載の改質装置。
【請求項11】上記原料改質部の熱源から出る燃焼排ガスにより加熱される位置に、上記シフト反応部とCO酸化部とがそれぞれ配置されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の改質装置。
【請求項12】上記燃焼室から出る燃焼排ガスが直接流れる排気空間を上記燃焼室の同軸上方に隣接して備えており、この排気空間の周囲に上記シフト反応部が周設され、このシフト反応部の周囲に上記CO酸化部が周設されている、請求項3乃至6のいずれかに記載の改質装置。
【請求項13】上記燃焼室と上記排気空間との間に外気を取り込むための空気取込部が設けられている、請求項12記載の改質装置。
【請求項14】上記排気空間を加熱する補助加熱手段が設けられている、請求項12又は13記載の改質装置。
【請求項15】上記排気空間内の燃焼排ガスを外部に排出する排気口とこの排気口を開閉する開閉手段が設けられる一方、上記排気空間から分岐してシフト反応部とCO酸化部の間に介在する第1のダクトと、この第1のダクトと連通し上記CO酸化部の周囲に周設された第2のダクトとを備えている、請求項12乃至14のいずれかに記載の改質装置。
【請求項16】上記第2のダクトに外気を取り込むための空気取込部が設けられている、請求項15記載の改質装置。
【請求項17】上記排気空間の中心に不燃性のコアが設けられている、請求項12乃至16のいずれかに記載の改質装置。
【請求項18】上記改質反応部、シフト反応部、CO酸化部のうちの少なくともいずれかの表面に、該表面を構成する材料よりも熱伝導率が高い伝熱材が設けられている、請求項3乃至17のいずれかに記載の改質装置。
【請求項19】上記CO酸化部の外表面に放熱フィンが設けられている、請求項3乃至18のいずれかに記載の改質装置。
【請求項20】上記燃焼室から出る燃焼排ガスが直接流れるメイン排気空間と、このメイン排気空間内の燃焼排ガスを外部に直接排出するメイン排気口と、このメイン排気口を開閉する開閉手段を備える一方、このメイン排気空間と分岐して連通し該メイン排気空間の周囲に周設された第1のダクトと、この第1のダクトと連通しその周囲に周設された第2のダクトとを備えており、上記第1のダクト内には上記シフト反応部が配置され、上記第2のダクト内には上記CO酸化部が配置されている、請求項3乃至6のいずれかに記載の改質装置。
【請求項21】上記第1のダクトに内部の燃焼排ガスを外部に排出するサブ排気口とこのサブ排気口を開閉する開閉手段が設けられている、請求項20記載の改質装置。
【請求項22】上記改質反応部、シフト反応部、CO酸化部の少なくとも1つはコイル状に形成されている、請求項20又は21記載の改質装置。
【請求項23】上記第2のダクトに外気を取り込むための空気供給路が設けられている、請求項20乃至22のいずれかに記載の改質装置。
【請求項24】上記原料改質部に改質原料及び水蒸気を供給する原料供給路の少なくとも一部が、上記原料改質部の熱源からの熱により予熱される位置に配置されている、請求項1乃至23のいずれかに記載の改質装置。
【請求項25】上記原料供給路の少なくとも一部が、上記原料改質部、シフト反応部、CO酸化部の少なくともいずれかの表面に接して配置されている、請求項24記載の改質装置。
【請求項26】上記原料供給路の少なくとも一部が、上記原料改質部の熱源からの燃焼排ガスと接する位置に配置されている、請求項24記載の改質装置。
【請求項27】上記原料供給路の少なくとも一部が、上記原料改質部の熱源により直接加熱される位置に配置されている、請求項24記載の改質装置。
【請求項28】上記原料改質部の熱源に燃料を供給する燃料供給路の少なくとも一部は、該熱源の熱により予熱される位置に配置されている、請求項1乃至27のいずれかに記載の改質装置。
【請求項29】上記原料改質部の熱源が触媒燃焼により発熱するものであって、該熱源の燃焼触媒を予熱するための予熱手段が設けられている、請求頃1乃至28のいずれかに記載の改質装置。
【請求項30】燃料ガスの燃焼により発熱する燃焼部と、改質原料を水蒸気改質し水素を主成分とする改質ガスを生成させる改質反応部と、この原料改質部で生成した改質ガス中に含まれるCOを水性シフト反応により低減させるシフト反応部と、このシフト反応部にて処理した後の改質ガス中に含まれるCOを酸化してさらに低減させるCO酸化部と、をそれぞれ独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成されており、少なくとも上記原料改質部とシフト反応部とは異なった触媒を備え、上記シフト反応部とCO酸化部は、上記原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置され、しかも上記CO酸化部は上記原料改質部位置より外周側に位置しており、上記燃焼部の直接加熱により上記改質反応部が400〜1000℃となるように加熱制御され、一方、上記燃焼部からの伝熱による間接加熱により上記シフト反応部は200〜350℃となるように加熱制御され、上記CO酸化部は100〜250℃となるように加熱制御される、改質装置。」

2.特許異議申立てについて
2-1.取消理由通知の概要
当審の取消理由通知の概要は、請求項1〜19、24〜28、30に係る発明は刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから請求項1〜19、24〜28、30に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきものであるというものである。
2-2.刊行物の記載内容
(1)刊行物1:米国特許第3909299号明細書:特許異議申立人吉田春男(以下、「申立人」という)が提出した甲第1号証
(a)「図を参照すると、本願発明の自己起動転化器の1実施例は、一般的に円筒形である炭化水素蒸気改質装置14に周設された環状チャンバー12からなる転化器10を有する。チャンバー12は、環状の仕切りまたは格子16上に配置された商標名G-66としてGirdler Catalyst社により販売されているような適当な水/ガス転化触媒層を包含する。転化器10は、燃料電池の水素入口に接続される出口18を備えている。転化器10は、適当な管22により改質装置14の出口24に接続された入口20を備えており、また、炭化水素燃料源34より供給される燃料中の硫黄の大部分を除去する脱硫器33からの炭化水素燃料に蒸気源32からの蒸気を混入するエジェクターまたは他の適当なミキサー30に、適当な管28により接続される入口26を有する。入口26は、空間36を通して、炭化水素燃料(メタン、ブタン、その他の燃料)と水蒸気との反応を起こして水素、二酸化炭素、一酸化炭素、少量の炭化水素燃料及び水の混合ガスを微量の他の炭化水素と共に生成するGirdlerにより販売されている商標名G-56のような改質触媒を備えた複数のチャンバー38,40に接続されている。例えば、メタンについては、その反応は、
CH4+H2O+Q→H2+CO2+CO+CH4+H2O+Traces
ここでQは、約1400°〜1600°Fの適切な温度でエネルギーを与えることによってのみ反応が起きることを示している。」(第3欄第14〜52行、訳文、以下同じ)
(b)「容器38,40の底は網又は格子42,44になっており、その上に触媒が備えられている。それ故、転化ガス流がそこを通って熱交換部50,52へと流れる空間46、48が作られる。熱交換部50,52はガス流の温度を約1200°から出口24において600°Fまで低下させる。反応は、水素入り口56と、複数のノズル60に水素を導入する燃料室58と、燃焼容器66への空気の流入を許す通路64を有する空気室62とを備えるバーナーからの熱により促進される。燃焼容器66は、改質反応容器38,40を完全に囲み、かつ適当な熱交換に用いるために高温の排ガスを排出口68へと供給する。大気を運ぶブロワー78に接続されるバルブ76から導管74経由で入口72を通して供給された空気は、環状ダクト70により空気室62に到達する。バルブ76は、定常運転時は通常導管74に接続されているが、装置の起動時には、空気を入口82を通して直接空気室62に供給するためのダクト80に接続するために切り替えられる。環状ダクト70を通過する空気通路においては、水/ガス転化反応(CO+H2O→CO2+H2+Q)によりチャンバー12中で発生する熱によって加熱される。水/ガス転化反応による熱(Q)は一酸化炭素1mol当たり約17000BTU’sである。この反応は約450°〜650°Fで起こる。」(第3欄第53行〜第4欄第18行)
(c)「この実施例では、環状空気ダクト70は転化器10を冷却する主な手段である。それは、環状チャンバー84中の小さな寸法の断熱材により、改質反応燃焼容器66中の高温からは部分的に熱的に独立している。しかしながら、転化器10は、そこからの熱を周囲に放熱し得る大きな表面積を有しているので、環状ダクト70中のバーナー用空気による除熱に依存しない。小さな寸法の断熱材86(Carborundum社からFiber Fraxの商標名で売られている約1/4インチの厚さの断熱材から成る)を備えることにより、周囲への熱の損失を最小限にし、また同時に、転化器10の高反応率時における過熱を避けることの両方を可能にする。」(第4欄第19〜35行)
(d)「通常の運転時、入口72からの大気は約70〜110°Fで、これが通常は(転化器10からの熱により)約300°Fに加熱されて空気室62に入る。これはバーナーの効率を向上し、それにより電気発生過程全般の効率も向上させる。バーナーフレームは通常約2700°Fであり、改質反応器38,40の下端を約1600°Fにする。改質反応器38,40中の触媒層の最上部に入った燃料/蒸気混合物は約500°Fであり、触媒層の下部で約1450°Fに到達する。これは(改質反応器38,40へ熱を供給することにより)出口24で約700°Fまで冷却され、さらに導管22(より熱エネルギーの有効利用の為に熱交換器を備えてもよい)中で転化器10へ入る時の温度が約500°Fになるまで冷却される。転化反応発生熱は導管70中でバーナー入口空気に与えられて、メイン燃料流が出口18を通って転化器10の外へと通流する際に約550°Fになるように除かれる。これは本願発明の一面であるが、発熱転化反応はバーナー入口空気に熱を与えて、吸熱水蒸気改質反応の効率を向上させる。」(第4欄第36〜63行)
(e)「本願発明の重要な点に従って、バルブ76は起動時に、導管70を空気が通らないように、ポンプ78からの大気を入口82を通じて直接バーナーの空気室62へ供給するためのスタートポジションに操作される。導管70中の空気は実質的に流れていないので、導管70と断熱材84とを通した実質的な熱の流れは、バーナーの熱を転化器10の触媒層中に直接適用し、転化触媒を好ましい運転温度(200°〜600°F)に上げて蒸気/ガス転化反応を促進する。このことは、起動時から転化器を起動温度にするための外部ヒーター無しで、改質反応/転化反応結合装置の運転を可能にする。本願発明の別の面は、ここで示される実施例を構成する時に、断熱材84,86の正確な量が用いられているが、これは過度の熱量が周囲に失われることなく、また同時に、一つのチャンバーから他のチャンバーへの熱移動を許し、改質反応バーナーからの直接的な起動熱の供給と合わせて発熱転化反応熱を吸熱改質反応に与えて釣り合いのとれた運転を達成し、それ故、転化器の運転温度に到達させる為の起動ヒーターの必要をなくす。本願発明は、ここで燃料電池発電装置用の水蒸気改質反応器/自己起動転化器の結合が成し遂げられたことを開示している。しかしながら、発明の重要な点は,組み合わせから改質反応器を外して、自己起動転化器により囲まれた脱硫器など、他の組み合わにも同様に置き換えられることである。この場合、脱硫過程の起動に利用される熱もまた転化触媒を起動温度にまで上昇させる。同様に本実施例ではバーナーが記載されているが、発明が自己起動転化器と脱硫器の組み合わせで実施される場合のように、特に離れた場所に設置されたバーナーが吸熱反応のために好ましい場合は、転化器の起動に利用される熱を離れた場所に設置したバーナーからの高温空気流により供給することとしてもよい。」(第4欄第64行〜第5欄第43行)
(2)刊行物2:特開平7-232901号公報:申立人の提出した甲第2号証
(a)「改質原料と水とから成る液体燃料を、水蒸気改質によって水素リッチな改質ガスに変換する燃料改質装置において、熱源ガスを発生する燃焼部と、上記燃焼部からの熱源ガスを通す加熱層と、該加熱層を通る熱源ガスの熱により、液体燃料マニホールドを通して導入される液体燃料を加熱気化させて改質原料ガスを生成する気化層と、から積層体を成す気化部と、上記燃焼部からの熱源ガスを通す加熱層と、該加熱層を通る熱源ガスの熱により上記気化部の気化層からの改質原料ガスを加熱して改質ガスに変換する改質層と、から積層体を成す改質部と、上記改質部の改質層から改質ガス通路を通して導入される改質ガス中の一酸化炭素濃度を変成触媒によって低減させる第一変成層を有し、かつ該第一変成層が上記気化部の加熱層と熱的に接合された状態で上記気化部の各層と共に積層して気化・変成部複合体を成す第一変成部と、上記第一変成部の第一変成層から改質ガス通路を通して導入される改質ガス中の残存一酸化炭素濃度を一酸化炭素選択酸化触媒によって低減させる第二変成層と、該第二変成層を冷却する冷媒を通す冷却層と、から積層体を成す第二変成部と、上記第二変成部からの改質ガスを加湿および加熱する加湿器と、上記第一変成層と第二変成層間の改質ガス通路と熱的に接合された状態で設けられ、上記第二変成部の冷却層を通過した冷媒を上記気化部の液体燃料マニホールドへ導く冷媒通路と、を備えたことを特徴とする燃料改質装置。」(請求項1)
(b)「上記第二変成部7は、冷媒を通す複数の冷却層71の間に、第二変成層72を挟んだ形で縦にして並べることにより構成されている。つまりこの第二変成部7も積層体を成している。その第二変成層72は、一酸化炭素選択酸化触媒が、その内壁に含浸,溶射,電着,スパッタ塗付等により付着、あるいは層内に充填されたものであり、上記第一変成層30から第一変成ガスマニホールド31と改質ガス通路100と第一変成ガスマニホールド70とを通して送られてきた高温の第一変成ガスが、ブロワ(図示せず)からの加圧空気と共に通されて、その第一変成ガス中の残存一酸化炭素濃度を低減させる。この第二変成層72内の一酸化炭素選択酸化触媒は、温度コントロールにより水素を酸化させずに、つまり水が生成する反応を抑制して、一酸化炭素との酸化反応を選択的に推進する機能を有する触媒であり、この一酸化炭素選択酸化触媒としては、Au/α-Fe2O3/γ-Al2O3が専ら用いられる。またこの一酸化炭素選択酸化反応が活性化される温度範囲は、室温〜100℃程度であり、その一酸化炭素選択酸化反応は発熱反応である。このように、第二変成層72は、導入される第一変成ガスが高温であり、しかも一酸化炭素選択酸化触媒が発熱することによって温度が相当に上昇するが、冷却層71を通過する冷媒によって冷却されるため、その第二変成層72内の一酸化炭素選択酸化触媒の温度は、活性温度域である100℃以下に保持される。従って、第一変成ガス中の残存一酸化炭素濃度を、100ppm程度にまで低減させることができる。」(第4頁第5欄第13〜41行)
(c)「ところで、上記冷媒としては、液体燃料を用いることができる。即ち、燃料タンク(図示せず)から送液ポンプで送られてきた液体燃料を、第二変成部7の上部から冷却層71へ導入する。この場合、冷却層71内を下降する液体燃料(冷媒)と、第二変成層72内を上昇する第一変成ガスとは、対向流を成すことになる。そして冷却層71を通過した液体燃料は、上述のように冷媒通路10を流下して液体燃料マニホールド22に入り、そこに一旦滞留してから気化部2の気化層21に流入する。」(第4頁第6欄第41〜50行)
(d)「以上説明したように、本発明に係る燃料改質装置によれば、第二変成部の一酸化炭素選択酸化触媒の温度を、その反応温度である100℃以下に保持することができ、このため、生成した改質ガス中の一酸化炭素濃度を、電池の性能を低下させない100ppm程度にまで確実に低減させることができる。」(第5頁第8欄第22〜37行)
(3)刊行物3:特開平7-240224号公報:申立人の提出した甲第3号証
(a)「水素主成分の燃料ガスを生成する改質装置と、改質装置により生成された燃料ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転化する転化器とを有する燃料電池用改質システムにおいて、上記改質装置内の主たる熱流れの周囲に設けられた改質装置の壁面の外周に沿って上記転化器が周設されていることを特徴する燃料電池用改質システム。」(請求項1)
(b)「さらに、図2、3に示されるように、転化器4は、改質装置3の主たる熱の流れ(矢印A)を囲むように設けられた壁面外周に断熱材9を介して周設され、さらにその外表面は、断熱材10によって覆われている。このとき、転化器4の触媒部分4aは改質装置3の触媒層3a部分に対向するように設けることが好ましく、また、転化器4の触媒部分4aのm方向の厚みは、転化器4の触媒内部4aに温度勾配が生じない程度の厚さとするのが好ましい。さらに改質装置3と転化器4との間の断熱材9は転化器4が180℃〜200℃を保つことができる熱が改質装置3から伝わる厚みと素材を用いることが好ましい。」(第3頁第3欄第16〜27行)
(4)刊行物4:特開平5-303972号公報:申立人の提出した甲第4号証
(a)「改質触媒が充填されている二重円筒構造の改質管と、この改質管の内側に設置され前記改質管を加熱するための熱媒体を供給するバーナと、この熱媒体の経路を形成し少なくとも前記改質管の下部を包囲するよう構成された炉容器とからなり、炭化水素系の原燃料を改質管に通流し、この原燃料を改質触媒により水蒸気改質して水素に富む改質ガスに改質する燃料改質器において、前記改質管内の改質触媒層に、改質管の熱変形により前記改質触媒に生じる応力を吸収する可撓性の応力吸収体の層を、原料ガスの通流方向に対して直角な面に設けたことを特徴とする燃料改質器。」(請求項1)
(b)「図3において1はその少なくとも下部を炉容器3で覆われている改質管であり、その内側にバーナ2が配設されている。改質管1は直立した仕切円筒4と、これを挟んでこの内外に同心円状に配設され下部を仕切円筒4の下端から離してリング状の底板7で接続された内筒5と外筒6とで形成されている。このような構成により改質管1には下端部で通じる内側環状空間8および外側環状空間9の二重環状空間が形成される。外側環状空間9の上部には原料ガスマニホールド10を介して原料ガス入口11が形成され、また内側環状空間8の上部には改質ガスマニホールド12を介して改質ガス出口13が形成されている。改質管1には改質ガスマニホールド12を除く内側環状空間8の全部に粒状改質触媒14が充填される。バーナ2は改質管1の内側に配設されている。改質管1の下方および周囲には改質管と間隔を置いて耐火断熱材15が配置され、改質管1との間にバーナ2からの熱媒体を導く熱媒体通路16が形成されている。この熱媒体通路16の上部には熱媒体出口マニホールド17を介して熱媒体出口18が形成されている。」(第2頁第1欄第42行〜第2欄第10行)
(5)刊行物5:特開平7-232902号公報:申立人の提出した甲第5号証
(a)「缶体内に複数のバヨネット型二重管式触媒管を有する多管式熱交換器型改質器を用い、天然ガスとスチームとを該改質器に供給して水素および一酸化炭素を主成分とする燃料電池用改質ガスを得る方法において、該改質器内部シェル側燃焼ガス入口部にセラミック製の通気性固体を配置し、該通気性固体により該触媒管先端部を包囲することを特徴とする方法。」(請求項1)
(b)「改質器内部シェル側燃焼ガス入口部に配置する通気性固体は、シェル側を流れる高温の燃焼ガスと接触して加熱され、高温の燃焼ガスが有する熱エネルギーを蓄積する役割と、かくして蓄積された熱エネルギーを放射する役割を演ずる。」(第3頁第4欄第25〜29行)
(6)刊行物6:特開平6-239601号公報:申立人の提出した甲第6号証
(a)「改質触媒を含む少なくとも1つの改質室、炭化水素含有材料を少なくとも1つの改質室へと供給する手段、酸素含有ガスを改質室へと供給する手段、水を少なくとも1つの改質室へと供給する手段、低温転化反応触媒を含む少なくとも1つの低温転化反応室、少なくとも1つの改質室からの生成ガスを少なくとも1つの低温転化反応室へと移動させる手段、少なくとも1つの低温転化反応室からの水素流及び二酸化炭素流のための出口手段、及び少なくとも1つの改質室の中に水を供給する前に、該水へと少なくとも1つの低温転化反応室から熱を移動させる熱交換器手段を含む組合わされた改質装置と低温転化反応器。」(請求項1)
(b)「運転時には、メタンと空気を、それぞれ管368及び370から供給する。管368及び370をそれぞれ通るメタン及び空気は、上部室362にある改質室322生成ガスによって予熱される。蒸気発生器316で生成され、且つ管372を通して供給される水蒸気を、管368の中を流れている予熱されたメタンと混合する。水蒸気をメタンと混合する前にメタンを予熱することによって、水蒸気の急冷が防止される。それぞれ管368及び370の螺旋状に巻かれた部分を流れているメタン/水蒸気混合物と空気とを、第二環状通路360の中を流れている改質室322生成ガスによって、更に予熱する。次に、メタン/水蒸気混合物と空気とを、改質室322の中へ、その下端346から供給する。混合室374では、改質室322の中に入れる前に、メタン/水蒸気混合物と空気とが混合される。」(第6頁第10欄第16〜31行)
(7)刊行物7:特公平7-101614号公報:申立人の提出した甲第7号証
(a)「第6図において、統合した加熱改質装置102は、中心導管に通じる内部に形成させた燃焼室を有する第2図及び第5図に示した統合改質装置実質的に同様である。燃焼室202内に配置した過熱器蛇管208は、中心管206内に配置したメタノール供給/加熱管に動作的に結合し且つ改質管214によって凝縮器241に導く水素排気室218に結合されたメタノール取り入れ室212に開いている。・・・燃焼室202内に配置した、空気予備蛇管224は、管256に接続した入口254を通じて入る空気を加熱し、次いでそれを熱交換器360及び図中に示していない手段を通じて燃料電池224の陰極室258に戻す。熱交換基260もまた管286及びバーナー227を通過する燃焼空気を予熱するために働く。」(第7頁第13欄第47行〜第14欄第16行)
2-3.対比・判断
(1)本件発明1について
刊行物1の上記(1)(a)には、「円筒形である炭化水素蒸気改質装置が周設された環状チャンバーからなる転化器を有し、該チャンバーは、環状の仕切り上に配置された水/ガス転化触媒(商標名G-66)層を包含し、上記転化器は、燃料電池の水素入口に接続される出口を備え、また上記転化器は、適当な管により改質装置の出口に接続された入口を備えており、また上記改質装置は炭化水素燃料に蒸気を混入するエジェクターに、適当な管により接続される入口を有し、該入口は、炭化水素燃料と水蒸気との反応を起こして水素、二酸化炭素、一酸化炭素、少量の炭化水素燃料及び水の混合ガスを微量の他の炭化水素と共に生成する改質触媒(商標名G-56)を備えた複数のチャンバーに接続されている」ことが記載されていると云える。
また上記(1)(b)には、「(改質装置の改質触媒を入れた)容器の底は網になっており、その上に触媒が備えられ、(網の下には)ガス流がそこを通って熱交換部へと流れる空間が作られ、上記熱交換部はガス流の温度を低下させる、また、複数のノズルに水素を導入する燃料室と、空気室とを備えるバーナーからの熱により反応は促進され、(バーナーのある)燃焼容器は、改質反応容器を完全に囲み、また、空気は環状ダクトにより空気室に到達する」ことや、転化器での「水/ガス転化反応(CO+H2O→CO2+H2+Q)」が記載されていると云える。
また上記(1)(e)には、「起動時に、導管(環状ダクト)を空気が通らないようにして、ポンプからの大気を直接バーナーの空気室へ供給するスタートポジションで操作すると、導管中の空気は流れていないので、導管と断熱材とを通して、バーナーの熱は転化器の触媒層中に伝熱し、転化触媒を好ましい運転温度に上げて水/ガス転化反応を促進する」ということが記載されていると云える。
これらの記載を、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、「水素の燃焼により発熱する熱源を含み、この熱源から、直接反応熱を得て炭化水素燃料を水蒸気改質し水素を主成分とする改質ガスを生成させる炭化水素蒸気改質装置と、この炭化水素蒸気改質装置で生成した改質ガス中に含まれるCOを水/ガス転化反応により低減させる転化器とを、それぞれ独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成されており、炭化水素蒸気改質装置と転化器とはそれぞれ改質触媒と水/ガス転化触媒とを備え、上記転化器は炭化水素蒸気改質装置の熱源からの伝熱により間接加熱されるよう配置された水蒸気改質反応器/自己起動転化器」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「水素の燃焼」、「炭化水素燃料」、「炭化水素蒸気改質装置」、「水/ガス転化反応」、「転化器」、「水蒸気改質反応器/自己起動転化器」は、本件発明1の「燃料ガスの燃焼」、「改質原料」、「原料改質部」、「水性シフト反応」、「シフト反応部」、「改質装置」にそれぞれ相当し、刊行物1発明の「改質触媒」と「水/ガス転化触媒」とは商標名からみて異なっているのは明白であるから、両者は「燃料ガスの燃焼により発熱する熱源を含み、この熱源から直接反応熱を得て改質原料を水蒸気改質し水素を主成分とする改質ガスを生成させる原料改質部と、この原料改質部で生成した改質ガス中に含まれるCOを水性シフト反応により低減させるシフト反応部とをそれぞれ独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成されており、少なくとも上記原料改質部とシフト反応部とは異なった触媒を備え、上記シフト反応部は、上記原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置されている改質装置」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点(イ):本件発明1では、シフト反応部にて処理した後の改質ガス中に含まれるCOを酸化してさらに低減させるCO酸化部を独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成しているのに対して、刊行物1発明では、CO酸化部を有していない点
相違点(ロ):本件発明1では、CO酸化部は原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置され、しかもCO酸化部は原料改質部位置より外周側に位置しているのに対して、刊行物1発明では、CO酸化部の配置や位置について何も記載されていない点
次に、これら相違点のうち特に相違点(ロ)について検討する。
刊行物2には、本件発明1の原料改質部、シフト反応部、CO酸化部にそれぞれ相当する改質部、第一変性部、第二変性部を一つの積層体として構成した、すなわち改質部、第一変性部、第二変性部がそれぞれ独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成された燃料改質装置が記載されている。
しかしながら、刊行物2には、CO酸化部に相当する第二変性部については、「上記第二変成部は、冷媒を通す複数の冷却層の間に、第二変成層を挟んだ形で縦にして並べることにより構成されている。」(上記(2)(b))、「またこの一酸化炭素選択酸化反応が活性化される温度範囲は、室温〜100℃程度であり、その一酸化炭素選択酸化反応は発熱反応である。このように、第二変成層は、導入される第一変成ガスが高温であり、しかも一酸化炭素選択酸化触媒が発熱することによって温度が相当に上昇するが、冷却層を通過する冷媒によって冷却されるため、その第二変成層内の一酸化炭素選択酸化触媒の温度は、活性温度域である100℃以下に保持される。」(上記(2)(b))、「ところで、上記冷媒としては、液体燃料を用いることができる。即ち、燃料タンクから送液ポンプで送られてきた液体燃料を、第二変成部の上部から冷却層へ導入する。」(上記(2)(c))、「以上説明したように、本発明に係る燃料改質装置によれば、第二変成部の一酸化炭素選択酸化触媒の温度を、その反応温度である100℃以下に保持することができ、このため、生成した改質ガス中の一酸化炭素濃度を、電池の性能を低下させない100ppm程度にまで確実に低減させることができる。」(上記(2)(d))と記載されており、刊行物2において、CO酸化部に相当する第二変性部は、該第二変性部内の一酸化炭素選択酸化触媒の温度を室温〜100℃とするために液体燃料によって冷却される冷却層で挟んだ構造になっていることがわかる。
してみると、刊行物2では、触媒を室温〜100℃となるように冷却しているのであるから、「CO酸化部は原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置」されることが記載も示唆もされておらず、ましてや熱源から間接加熱されやすい「CO酸化部は原料改質部位置より外周側に位置している」ことは記載も示唆もされていないことが明らかである。
また、刊行物3には、本件発明1の原料改質部、シフト反応部にそれぞれ相当する改質装置、転化器が、刊行物4には、二重円筒構造の改質管とその中に配置されたバーナーが、刊行物5には、改質器内部シェル側燃焼ガス入口部にセラミック製通気性固体を配置することが、刊行物6には、メタンを改質室の外側の螺旋状の管を通すことによって予熱することが、刊行物7には、燃焼空気を予熱することが、それぞれ記載されているが、どれにもCO酸化部については何も記載されていない。してみると、刊行物3〜7には、「CO酸化部は原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置」されることや「しかもCO酸化部は原料改質部位置より外周側に位置している」ことは記載も示唆もされていないと云える。
そして、本件発明1は、上記相違点により「各反応部の温度制御が良好に行えることからCO濃度が十分に低減された良質な改質ガスを製造できる」(本件特許掲載公報第13頁第26欄第48、49行)という明細書記載の効果を奏すると云える。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
(2)本件発明2〜19、24〜28について
本件発明2〜19、24〜28は、少なくとも請求項1を引用しさらに限定したものであるから、上記(1)と同じ理由により、刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
(3)本件発明30について
刊行物1には、上記(1)で述べた以外に、改質装置では1400〜1600°F(上記(1)(a))、転化器では200〜600°F(上記(1)(e)で反応させていることがそれぞれ記載されている。
これら記載を本件発明30の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、「水素の燃焼により発熱する熱源と、炭化水素燃料を水蒸気改質し水素を主成分とする改質ガスを生成させる炭化水素蒸気改質装置と、この炭化水素蒸気改質装置で生成した改質ガス中に含まれるCOを水/ガス転化反応により低減させる転化器とを、それぞれ独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成されており、炭化水素蒸気改質装置と転化器とはそれぞれ改質触媒と水/ガス転化触媒とを備え、上記転化器は炭化水素蒸気改質装置の熱源からの伝熱により間接加熱されるよう配置され、上記熱源の直接加熱により上記炭化水素蒸気改質装置が1400〜1600°F(760〜871℃)となるように加熱制御され、一方、熱源からの伝熱による間接加熱により上記転化器は200〜600°F(93〜315℃)となるよう加熱制御される、水蒸気改質反応器/自己起動転化器」という発明(以下、「刊行物1’発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明30と刊行物1’発明とを対比すると、両者は次の点で相違していると云える。
相違点(イ):本件発明30では、シフト反応部にて処理した後の改質ガス中に含まれるCOを酸化してさらに低減させるCO酸化部を独立したセクションとして区分されるとともに一体的に構成しているのに対して、刊行物1’発明では、CO酸化部を有していない点
相違点(ロ):本件発明30では、CO酸化部は原料改質部の熱源からの伝熱により間接加熱されるように配置され、しかもCO酸化部は原料改質部位置より外周側に位置しており、CO酸化部は100〜250℃となるように加熱制御されるのに対して、刊行物1’発明では、CO酸化部の配置や位置や温度について何も記載されていない点
次に、これら相違点のうち特に相違点(ロ)について検討すると、上記(1)で述べたことと同じことが云えるが、加えて刊行物2では、CO酸化部に相当する第二変性部では常温から100℃となるように冷却されているのであるから、CO酸化部が「100〜250℃」となるよう加熱制御されることは記載も示唆もされていないと云える。
したがって、本件発明30は、刊行物1〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。

また、特許法第36条についての特許異議申立理由は、本件発明1〜19、24〜28、30の特許を取り消すべき理由として採用することができない。

3.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜19、24〜28、30に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜19、24〜28、30に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-08-17 
出願番号 特願平10-503990
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平塚 政宏  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 野田 直人
金 公彦
登録日 2003-02-28 
登録番号 特許第3403416号(P3403416)
権利者 松下電工株式会社
発明の名称 改質装置  
代理人 亀井 克基  
代理人 中川 文貴  
代理人 鎗居 龍太  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ