• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1103627
審判番号 不服2002-16690  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2004-09-17 
事件の表示 平成 8年特許願第137505号「光ピックアップ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月18日出願公開、特開平 9-297935〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要

本願は、平成8年5月8日の出願であって、平成13年9月14日付け拒絶理由通知に対して、平成13年12月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成14年7月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年8月29日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、平成14年9月30日に明細書について手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成14年9月30日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
(1)本件手続補正前及び本件手続補正後の本願発明
本件手続補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、そのうち特許請求の範囲については、本件手続補正前は、
「【請求項1】光ディスクの表面に表出させた記録層からの反射光の強度を、3ビーム法と非点収差法を用いて測定し、光ピックアップの位置調整と光ディスクの記録内容を検知する光ピックアップ装置において、
前記光ディスク表面に光ビームを照射するためのレーザ発生器と、前記レーザ発生器から発する光ビームを回折する回折格子を有する回折格子形成部とこの回折格子形成部を一体に担持する第1の屈折率を持つ硝子材からなる低屈折率部と該低屈折率部よりも屈折率が高い第2の屈折率を有し該低屈折率部と密接する硝子材からなる高屈折率部とこれら低屈折率部と高屈折率部が密接した部分に形成され回折格子を通過した光ビームの一部を透過させ残りを反射させる半反射面とを一体に形成した多機能プリズムと、を具備することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】 前記回折格子形成部の回折格子は、低屈折率部と回折格子形成部の境界面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】 前記回折格子形成部の回折格子は、低屈折率部と回折格子形成部の境界面から離れた回折格子形成部の表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】前記多機能プリズムの高屈折率部において半反射面を通過した光ビームが抜け出る面に、該高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部を密接配置しこれらの間に透過面を一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】 前記多機能プリズムの高屈折率部において半反射面を通過した光ビームが突当たる面に、該光ビームをフォトダイオード方向に導く全反射面を該高屈折率部と一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】前記反射光ビームをフォトダイオード近傍に結像させるとともに半導体レーザとフォトダイオードとを1チップ上に形成したことを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】前記透過面は前記半反射面と平行に配置されることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】前記多機能プリズムにおいて、一方の低屈折率部における光ディスク記録層からの戻り光が入射する面と、もう一方の低屈折率部における光が抜け出る面が平行であることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】前記全反射面は前記半反射面と略平行に配置されることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。」
とあったものを、

「【請求項1】光ディスクの表面に表出させた記録層からの反射光の強度を、3ビーム法と非点収差法を用いて測定し、光ピックアップの位置調整と光ディスクの記録内容を検知する光ピックアップ装置において、
前記光ディスク表面に光ビームを照射するためのレーザ発生器と、該レーザ発生器から発する光ビームを回折する回折格子を有する回折格子形成部と、該回折格子形成部を一体に担持する第1の屈折率を持つ硝子材からなる低屈折率部と、該低屈折率よりも屈折率が高い第2の屈折率を有し前記低屈折率部と密接する硝子材からなる高屈折率部とこれら低屈折率部と高屈折率部が密接した部分に形成され回折格子を通過した光ビームの一部を通過させ残りを反射させる半反射面とを一体に形成し、前記半反射面を通過した光ビームが抜け出る面に前記高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部を密接配置してこれらの間に透過面を一体に形成して、前記高屈折率部が前記低屈折率部にて挟まれてなり、前記回折格子形成部の回折格子は前記回折格子形成部と前記低屈折率部の境界面に形成されてなる構成の多機能プリズムと、該低屈折率部を透過した前記光ビームの集光位置に受光器を具備してなることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】前記透過面は前記半反射面と平行に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】前記多機能プリズムにおいて、一方の低屈折率部における光ディスク記録層からの戻り光が入射する面と、もう一方の低屈折率部における光が抜け出る面が平行であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】前記低屈折率部は断面形状が正直角三角形からなることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】前記回折格子形成部が前記半反射面に対して45度の角度で低屈折率部に一体で配設してなることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。」
と補正しようとするものである。

両者を比較検討すると、本件手続補正前の請求項3,5,6、及び9については、各請求項に記載された発明特定事項が本件手続補正後のいずれの請求項にも反映されていないので、削除されたものとすることができる。
また、本件手続補正後の請求項1,2及び3は、「該」を「前記」とする軽微な文言の修正の他、概略、それぞれ本件手続補正前の請求項1,7及び8に「前記半反射面を通過した光ビームが抜け出る面に前記高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部を密接配置してこれらの間に透過面を一体に形成して、前記高屈折率部が前記低屈折率部にて挟まれてなり、前記回折格子形成部の回折格子は前記回折格子形成部と前記低屈折率部の境界面に形成されてなる構成の多機能プリズムと、該低屈折率部を透過した前記光ビームの集光位置に受光器を具備してなる」との技術事項により多機能プリズム及び反射光強度の測定手段について限定を付したものである。
同様に、本件手続補正後の請求項4及び5についても、それぞれ本件手続補正前の請求項2または4を、本件手続補正後の請求項1と等しくなるように限定を加えた上でさらに多機能プリズムについて限定を付したものと解することができるから、本件手続補正後の請求項1乃至5についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件手続補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)否かを、本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

(2)引用例
1)第1引用例
原審で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-315721号公報(以下、「第1引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(a)
「〔従来の技術〕
従来、非点収差法によるフォーカス誤差検出においては、例えば特開昭50-99561 号公報に記載のように、光学式情報記録媒体からの反射光束中に、円柱面を有する円柱レンズを配置し、前記光学式情報記録媒体からの反射光に非点収差を生じせしめ、光検出器によりその反射光の集束形状を検出してフォーカス誤差信号を得るようにしていた。また、特開昭58-143443号公報に記載のように、光学式情報記録媒体からの反射光束中に、透明な平行平板を光軸に対して傾斜させて配置し、その反射光束に非点収差を発生させ、フォー力ス誤差信号を得るようにしていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記従来技術において、非点収差を発生させるために円柱面を有するレンズを使用する場合コスト高になるという問題があった。これに対して、透明平行平板を用いて非点収差を発生させればコスト安になるが、この場合、透明平行平板を45度光軸に対して傾斜させる必要があるため、取り付けが難しくなるという問題かあった。
本発明の目的は、上記問題点を解決し、コスト安で、かつ取り付けが簡単で非点収差を発生させることのできる光学部品を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、透明平行平板を、その透明平行平板と異なる屈折率で、かつ光軸に対して傾斜した面を有する部材の傾斜面に一体的に設けることにより達成される。
〔作用〕
本発明の作用を第2図を用いて説明する。
第2図において、100は屈折率n2、板厚tの透明平行平板であり、光軸l01に対して傾斜角度θだけ傾斜している。また、102a、bは透明平行平板l00と異なる屈折率n1のプリズムであり、透明平行平板100を両側からはさみ込んでおり、プリズム102aの面103aとプリズム102bの面103bは光軸101に対して垂直である。すなわち、面103aおよび面103bは平行である。この光学部品100を集束光中に配置した場合、その透過屈折光に非点収差が発生する。第2図の条件で発生する非点隔差ΔZは、(1)式で与えられる。
(中略)一般的に入射可能な厚さ1mm程度のガラス平行平板が使用可能である。」
(3頁左上欄第4行〜同頁右下欄第19行))
(b)
「例えば、平行四辺形プリズム15bをSF11(屈折率n1=1.765)、透明平行板15fをBK7(屈折率n2=1.51)、板厚t2を0.63mm、検出レンズの焦点距離fDET(凸レンズ12と凹レンズ13の合成焦点距離)を25mm、対物レンズの焦点距離fobjを4mmとすれば、縦倍率KはK=6.25(25/4=fDET/fobj)となり、フォーカス検出範囲ΔDが11μmとなる非点隔差ΔZ≒860μmがP偏光14a、S偏光14bにそれぞれ与えられる。
ここで、本実施例では、平行四辺形プリズム15bをSF11、透明平行平板15fをBK7としたが、平行四辺形プリズムをBK7、透明平行平板15fをSF11と逆転、または他の材料としてもよい。要するに、光を透過し屈折率の異なる材料の組合せであればよい。」
(4頁左下欄第17行〜同頁右下欄第11行)
(c)
「光検出器16は、第5図に示すように、P偏光14aを受光する受光領域16aと、S偏光14bを受光する田の字状の4分割受光領域16b、16c,16d,16eと、未使用の受光領域16fとを含み、かつ各受光領域16a〜16fが同一平面上に一体的に形成された6分割受光素子である。このような分割受光素子は、広くコンパクトディスクプレーヤ用に量産されており、安価で容易に入手可能である。なお、受光領域16fを省略したものを用いてもよい。
(中略)
受光領域16b,16dの出力信号18と受光領域16c,16eの出力信号17は、加算器19により加算され信号20となる。受光領域16aの出力信号21と信号20は、減算器22により減算され差動再生法による再生信号23が検出される。一方、出力信号17と出力信号18は、減算器24により減算されフォーカス誤差信号25が検出される。さらに、信号20と出力信号21は、加算器26により加算され、和信号27が検出される。和信号27からは、トラッキング誤差信号等が検出されるが、本発明の主旨とは関係ないので説明は省略する。」
(5頁左上欄第15行〜同頁左下欄第5行)
(d)
「第14 図は本発明の第9の実施例である再生専用の光学ヘッドを示す図である。
第14図において、第12図と同一番号を付したものは同一部品である。また43は、ハーフミラー膜43eを有する屈折率n1の部材43a、43bおよび43dと、異なる屈折率n2の透明平行平板43c、および反射防止膜43f,43gを一体的に設けた光学部品である。
このような構成において本実施例では、半導体レ一ザ光源1を出射した発散光束2は、光学部品43へ入射し、ハーフミラー面43eで光量の1/2が反射されて、有限系対物レンス33によりディスク8へ集光される。ディスク8を反射した光束9は、対物レンズ33により集束光36とされ光学部品43に入射する。光束はハーフミラー面43eで1/2 が透過し、さらに屈折率の異なる傾斜した透明平行平板43cを透過する 。 このとき前記の実施例と同様にして非点収差を与えられ、光検出器16へ入射する。
本実施例のように、ハ-フミラー面を一体に設けることにより、本発明を再生専用形の光学ヘッドに応用することかできる。」
(8頁左上欄第6行〜同頁右上欄第7行)
(e)
「第18図および第19図は、第14図の変形例であって、本発明の第11の実施例である再生専用の光学ヘッドを示す図である 。第18図において、直線偏光光源である半導体レーザ光源1から発射された発散光束2は、本発明の一実施例である光学部品37に入射する。
ここで、光学部品37について第19図を用いて説明する。第19図は光学部品37の第18図のA方向からの側面図である。光学部品37に人射した発散光束2は、プリズム37aを透過した後、プリズム37aの傾斜面37bに設けてある入射光量の約50%を透過し、残りの約50%を反射するハーフミラー膜37cで反射され、再びプリズム37aを透過し、プリズム37aの傾斜面37dで全反射された後、有限系対物レンズ33により絞り込まれて、光学式情報記録体であるディスク8(例えば、コンパクトディスク)の情報記録面8a上に照射される.
ディスク8からの反射光束9は、有限系対物レンズ33により発散光束2と同じ発散角の収束角をもつ収束光束38に変換され、再びプリズム37aに入射し、傾斜面37dで全反射された後、プリズム37aと反射膜37cを透過し、屈折率がプリズム37aと異なる材質の透明平行平板35fを透過後、屈折率が透明平行平板35fと異なるプリズム35gに入射する。そして、光学部品37を透過した収束光束38には非点収差が与えられる。
ここで、収束光束38に与えられる非点収差は、前記に述べたと同様に、(1)ない(3)式に従って、任意に設定することか可能である。
非点収差が与えられた収束光束38は、光検出器16に入射する。なお本実施例の信号検出法、およびフォーカス誤差信号などの項目は、本発明の主旨とは直接関係ないので説明は省略する。
以上、本発明の実施例において、非点収差を発生させるために、主として透明平行平板を使用したが、これに限るものでなく、第10図に示すように、略平行平板、すなわちくさび状の平板でもよい。」
(8頁右下欄第10行〜9頁右上欄第6行)

上記第1引用例記載事項及び図面を総合勘案〔特に上記(e)に摘記事項と第18図及び第19図に示された光学ヘッドの例を中心に、後に付記するように、(a)〜(d)の摘記事項を参酌〕すると、第1引用例には、結局、次の発明が記載されている。
「直線偏光光源である半導体レーザ光源1から発射された発散光束2が、ハーフミラー膜37cを設けたガラス材からなるプリズム37a及び37gと、前記プリズムより高い屈折率のガラス材からなる透明平行平板35fを一体的に設けた光学部品37に入射し、
光学部品37に人射した発散光束2は、所定の屈折率のプリズム37aを透過した後、プリズム37aの傾斜面37bに設けてある入射光量の約50%を透過し、残りの約50%を反射するハーフミラー膜37cで反射され、再びプリズム37aを透過し、プリズム37aの傾斜面37dで全反射された後、有限系対物レンズ33により絞り込まれて、光学式情報記録体であるティスク8(例えば、コンパクトディスク)の情報記録面8a上に照射され、
ディスク8からの反射光束9は、有限系対物レンズ33により発散光束2と同じ発散角の収束角をもつ収束光束38に変換され、再びプリズム37aに入射し、傾斜面37dで全反射された後、プリズム37aと反射膜37cを透過し、非点収差を発生させるために屈折率がプリズム37aより高い屈折率の透明平行平板35fを透過後、屈折率が透明平行平板35fより低い屈折率のプリズム35gに入射し、光学部品37を透過した収束光束38には非点収差が与えられ、非点収差が与えられた収束光束38は、光検出器16に入射してフォーカス誤差信号25,トラッキング誤差信号及び再生信号23を得る、
再生専用の光学ヘッド」

(付記)
ここにおいて、光学部品37を構成するプリズム37a、37g、及び透明平行平板35fの屈折率については、第18図の実施例が第14図の実施例の変形であるとされている点(上記摘記部分(e)参照)、当該第14図の実施例において、屈折率n2の透明平行平板を屈折率n1のプリズムが挟み込む構造となっている点(上記摘記部分(d)参照)、及びn1とn2の屈折率の設定について記載した上記摘記部分(b)の「平行四辺形プリズムをBK7、透明平行平板15fをSF11」としてもよいとの記載を参酌して認定したものである。また、前記光学部品の各部分がガラス材であることは、上記摘記部分(a)の記載、及び上記摘記部分(b)に例示された材料のBK7及びSF11が周知の光学ガラスに付けられた識別のための記号であることが光学技術における技術常識であることから明らかである。「フォーカス誤差信号25,トラッキング誤差信号及び再生信号23を得る」点については、上記摘記部分(c)を参酌した。

2)第2引用例
また、同じく原審で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-55378号公報(以下、「第2引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(f)
「【0021】
【実施例】図1は、この発明の第1実施例を示すものである。この光ヘッドは、半導体レーザ1、複合プリズム2、集光手段を構成するコリメータレンズ6および対物レンズ7、収差制御手段9、第1の光検出器11、第2の光検出器12およびサブマウント15を有する。第1,第2の光検出器11,12は、同一の半導体基板10に形成し、この半導体基板10にサブマウント15を介して半導体レーザ1を固定すると共に、収差制御手段9を介して複合プリズム2を固定する。」
(g)
「【0033】上述したように、第1の光検出器11に入射する常光束は、収差制御手段9によりコマ収差が抑制され、非点収差が増加しているので、この常光束を用いてフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を検出する場合には、第1の検出器11を4つの受光領域11a〜11dに分割して、それぞれの出力をIa〜Idとすれば、フォーカスエラー信号FES1は、非点収差法により、
FES1=Ia-Ib+Ic-Id
から得ることができる。また、トラッキングエラー信号TES1は、プッシュプル法により、
TESS1=Ia+Ib-Ic-Id
から得ることができる。」
(h)
「【0044】図6は、この発明の第3実施例を示すものである。この実施例は、図1に示す構成において、半導体レーザ1と複合プリズム2との間に、半導体レーザ1からの出射光を1本のメインビームと2本のサブビームとに分割する回折素子17を設ける。また、半導体基板10には、図7に平面図を示すように、第1の光検出器11を、メインビームの戻り光の常光束(スポット13)を受光する3分割受光領域11k,11l,11mと、一方のサブビームの戻り光の常光束(スポット18)を受光する受光領域11nと、他方のサブビームの戻り光の常光束(スポット19)を受光する受光領域11oとをもって構成し、第2の光検出器12を、メインビームの戻り光の異常光束(スポット14)を受光する3分割受光領域12g,12h,12iと、一方のサブビームの戻り光の異常光束(スポット20)を受光する受光領域12jと、他方のサブビームの戻り光の異常光束(スポット21)を受光する受光領域12kとをもって構成する。その他の構成は、図1と同様であり、図1と同じ作用を有するものには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】このようにして、回折素子17で分割される1本のメインビームおよび2本のサブビームを、複合プリズム2、コリメータレンズ6および対物レンズ7を経て、光磁気記録媒体8の情報トラックに対して所定の角度を成して並ぶように、光磁気記録媒体8にスポットとして照射する。また、光磁気記録媒体8で反射される3本の戻り光は、対物レンズ7およびコリメータレンズ6を経て複合プリズム2によりそれぞれ常光束および異常光束に分離し、これら3本の常光束および異常光束を収差制御手段9を経て、第1,第2の光検出器11,12の対応する受光領域でそれぞれ受光する。
【0046】このようにして、この実施例では、第1の光検出器11の受光領域11k〜11oの出力をIk〜Ioとし、第2の光検出器12の受光領域12g〜12kの出力をJg〜Jkとして、フォーカスエラー信号FESを、第2実施例におけると同様にして、
FES=(Ik-Il+Im)-(Jg-Jh+Ji)
から得る。また、トラッキングエラー信号TESは、3ビーム法より、
TES=(In+Jj)-(Io+Jk)
から得、情報の再生信号Sは、
S=(Ik+Il+Im)-(Jg+Jh+Ji)
から得る。
【0047】この実施例によれば、3ビーム法によってトラッキングエラー信号TESを検出するので、プッシュプル法に比べ、安定してトラッキングエラー信号TESを得ることができる利点がある。
【0048】なお、この実施例では、回折素子17を1つの独立した素子としたが、ガラスプリズム3の半導体レーザ1側の面に一体に形成して、複合プリズム2と兼ねて構成することもできる。また、トラッキングエラー信号TESは、第1の光検出器11または第2の光検出器12のいずれか一方のみで検出するよう構成することもできる。」

(3)対比
本願補正発明を、第1引用例に記載された発明と比較する。
第1引用例に記載された発明における「光学式情報記録体であるディスク8(例えば、コンパクトディスク)」及び「情報記録面8a」は、本願補正発明における「光ディスク」及び「記録層」に相当する。
第1引用例に記載された発明における「再生専用の光学ヘッド」は、本願補正発明における「光ピックアップ装置」に相当する。
第1引用例に記載された発明において、反射光束9集束光束38に変換され、「光学部品37を透過した集束光束38には非点収差が与えられ、非点収差が与えられた収束光束38は、光検出器16に入射」する点は、本願補正発明において「反射光の強度を、」「非点収差法を用いて測定」することに相当し、「フォーカス誤差信号25,トラッキング誤差信号及び再生信号23を得る」点は、「光ピックアップの位置調整と光ディスクの記録内容を検知する」ことに相当する。
第1引用例に記載された発明における「半導体レーザ光源1」は、本願補正発明における「レーザ発生器」に相当する。
第1引用例に記載された発明における「光検出器16」は、本願補正発明における「受光器」に相当する。
第1引用例に記載された発明における「光学部品37」は、明らかに本願補正発明の「多機能プリズム」に対応する発明特定事項であり、さらに以下の点で一致している。
第1引用例に記載された発明における「プリズム37a」は、所定の屈折率の硝子材で成るプリズムである点に限り、本願補正発明の「低屈折率部」に相当する。また、第1引用例に記載された発明における「透明平行平板35f」、「プリズム35g」及び「ハーフミラー膜37c」は、それぞれ本願補正発明における「高屈折率部」、「前記高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部」及び「半反射面」に相当する。
また、第1引用例に記載された発明においてディスク8からの反射光束9が、「透明平行平板35fを透過後、屈折率が透明平行平板35fより低い屈折率のプリズム35gに入射」する点は、透明平行平板35fとプリズム35gとが一体に設けられているので、本願補正発明において「前記半反射面を通過した光ビームが抜け出る面に前記高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部を密接配置してこれらの間に透過面を形成」することに相当する。
また、第1引用例に記載された発明において、透明平行平板35fがプリズム35aと同35gに挟まれた状態にあることは、本願補正発明の「前記高屈折率部が前記低屈折率部にて挟まれて」いる点に相当する。

すると、本願補正発明と、第1引用例に記載された発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「光ディスクの表面に表出させた記録層からの反射光の強度を、非点収差法を用いて測定し、光ピックアップの位置調整と光ディスクの記録内容を検知する光ピックアップ装置において、
前記光ディスク表面に光ビームを照射するためのレーザ発生器と、第1の屈折率を持つ硝子材からなる低屈折率部と、該低屈折率よりも屈折率が高い第2の屈折率を有し前記低屈折率部と密接する硝子材からなる高屈折率部とこれら低屈折率部と高屈折率部が密接した部分に形成され回折格子を通過した光ビームの一部を通過させ残りを反射させる半反射面とを一体に形成し、前記半反射面を通過した光ビームが抜け出る面に前記高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部を密接配置してこれらの間に透過面を一体に形成して、前記高屈折率部が前記低屈折率部にて挟まれてなる構成の多機能プリズムと、該低屈折率部を透過した前記光ビームの集光位置に受光器を具備してなることを特徴とする光ピックアップ装置。」

一方で、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明では、非点収差法に加え、「3ビーム法」を用いているのに対して、第1引用例に記載された発明では、3ビーム法について特に言及がない点。
(相違点2)
本願補正発明では、「該レーザ発生器から発する光ビームを回折する回折格子を有する回折格子形成部」を備えているのに対して、第1引用例に記載された発明では、回折格子は備えていない点。
(相違点3)
本願補正発明では、低屈折率部が「該回折格子形成部を一体に担持する」のに対し、第1引用例に記載された発明では、そのような事項が記載されていない点。
(相違点4)
本願補正発明では、半反射面が「回折格子を通過した」ビームの一部を通過させるものであるのに対し、第1引用例に記載された発明ではそのように形成されていない点。
(相違点5)
本願補正発明では、「前記回折格子形成部の回折格子は前記回折格子形成部と前記低屈折率部の境界面に形成されてなる」のに対し、第1引用例に記載された発明では、そのような事項が記載されていない点。

(4)判断
1)相違点1について
第2引用例には、3ビーム法を用いることが記載されている。さらに、上記(f)(g)の摘記事項と併せれば、非点収差法と3ビーム法を併せて用い得ることが明らかであるから、第1引用例記載の光ヘッドに3ビーム法を併せて用いることは当業者が容易に想到しうるものである。なお、フォーカスエラー信号を非点収差法、トラッキングエラー信号を3ビーム法によりそれぞれ得るようにした光ピックアップは、例えば、特開昭64-55752号公報(以下「周知例1」という。特に第4図、第5図及び関連説明を参照)に従来例として紹介されているように、本願出願当時既に周知の事項にすぎない。
2)相違点2について
3ビーム法を用いる場合、当該3ビームは回折格子により1本のビームを回折により作り出すことが普通に行われていることにすぎない。第2引用例及び周知例1においても、それぞれ回折素子17,回折格子12が本願補正発明の「回折格子を有する回折格子形成部」に相当するものであり、3ビーム法を用いることが容易に想到される以上、第1引用例記載の光学ヘッドに回折格子を用いることは当業者が当然想到しうるものである。
3)相違点3及び相違点4について
第2引用例に記載された複合プリズム2は、屈折率の異なる3つの部分、すなわち硝子プリズム3、複屈折性プリズム4,及び収差制御手段9を組合せ、半導体レーザ1からの光束を入射して、当該光束を部分的に反射又は透過する誘電体膜5を一体に備える点で、明らかに第1引用例の光学部品37に対応するものであるから、第2引用例に記載された回折素子17を前記複合プリズム2に一体的に設ける構造を第1引用例に記載された発明の光学ヘッドに用いることは当業者が容易に想到しうるものである。そして、そのように回折格子を備えることで、ハーフミラー膜では回折格子を通過した光ビームの一部が通過し残りが反射することとなるのは当然のことである。
4)相違点5について
第2引用例に記載された回折素子17では、回折格子が半導体レーザ1の側に面しているか、ガラスプリズム3の側に面しているかについては言及がないが、もともと、その何れかの配置しかないので単なる二者択一の選択事項にすぎないものであるが、例えば特開平7-92319号公報(以下、「周知例2」という)を参照すると、回折格子としてのフレネルゾーンプレート81が、図1、図5の例では複屈折回折格子75に対して反対側を向くように配置され、図7ではフレネルゾーンプレート81が複屈折回折格子75側を向くように配置されるとともに、第41段落に「このように構成しても先の実施例と同様な効果を得ることができるというのはいうまでもなく、先の第3の実施例と比較すると、複屈折回折格子75aの凹凸部への塵芥の付着を防止できるというさらなる効果がある。」と記載されている。したがって、第2引用例の回折素子17についても、回折格子をガラスプリズム3の側に面するように配置する程度のことは、その作用効果も含め、当業者が容易に想到しうることであるから、第2引用例に記載された回折素子17を前記複合プリズム2に一体的に設ける構造を第1引用例に記載された発明の光学ヘッドに適用するに際し、上記周知例2に記載された事項を参考にして、相違点5について本願補正発明のようにすることは当業者が容易に想到しうるものである。

以上の検討を総合すると、本願補正発明は、第1及び第2引用例に記載された発明、並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件手続補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年9月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至9に係る発明は、平成13年12月17日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「2.〔理 由〕」の項の「(1)本件手続補正前及び本件手続補正後の本願発明」に、本件手続補正前の特許請求の範囲の請求項1として掲げたとおりのものである。

(2)引用例
原査定で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)引用例」に、1)第1引用例、及び2)第2引用例の各項目において記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.平成14年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明から、「前記」が「該」に戻る軽微な文言の修正の他、概略、本件手続補正後の請求項1から、多機能プリズムについて「前記半反射面を通過した光ビームが抜け出る面に前記高屈折率部よりも屈折率が低い低屈折率部を密接配置してこれらの間に透過面を一体に形成して、前記高屈折率部が前記低屈折率部にて挟まれてなり、前記回折格子形成部の回折格子は前記回折格子形成部と前記低屈折率部の境界面に形成されてなる」点及び「該低屈折率部を透過した前記光ビームの集光位置に受光器を具備してなる」点の技術事項による多機能プリズムについて限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明と第1引用例とを比較したとき、相違点は、前記「2.(3)対比」に記載した(相違点1)乃至(相違点4)となる。そして、これらの相違点についての判断は、前記「2.(4)判断」に記載したとおりであり、結局、本願発明は、第1及び第2引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-26 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-07-15 
出願番号 特願平8-137505
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 潤  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 片岡 栄一
川上 美秀
発明の名称 光ピックアップ装置  
代理人 辻 実  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ