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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1103682
審判番号 不服2003-19986  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-10 
確定日 2004-09-16 
事件の表示 平成10年特許願第 76520号「護岸覆工」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月21日出願公開、特開平11-256546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年3月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年6月3日付の手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、
「【請求項1】 自然石を2つに切断して成る石塊を、平面である切断面を下にして、水分は通過するが土砂は通過しない程度の目の粗さを持ったベースマットの上面に密に配置して接着した護岸覆工。」
にあるものと認める。
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-151620号公報(以下「引用例」という)には、図面とともに、
「【請求項1】 不織布上に複数の自然石を敷き並べるとともに、同各自然石の下部に接着材を層着し、同接着材を介して前記自然石と不織布とを一体形成してなることを特徴とする生態系保護用自然石シート。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は河川護岸工、海岸堤防工、道路法面保護工などに使用される生態系保護用自然石シートに係るものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし前記生態系保護用自然石金網における自然石は、その表面が一般に長年の河川の流れによって研摩状態にあるため、その自然石の下面に層着される接着材と自然石との接着が不安定となる惧れがあった。本発明は、かかる問題点に対処するため開発されたものであってその目的とする処は自然石と基材となる不織布とが強固に接着され、吸い出しが防止された生態系保護用自然石シートを提供する点にある。」
「【0009】
【発明の効果】本発明に係る生態系保護用自然石シートは前記したよう不織布上に複数の自然石を敷き並べるとともに、同自然石の下部に接着材を層着し、同接着材を介して前記自然石と基材となる不織布とを一体成型したことにより、シート表面が自然石で仕上り、自然にマッチした美しい景観を呈し、自然石が不織布に一体に接着されているので、河川においても自然石が流失する惧れがない。また自然石の空隙部に覆土することによって水棲生物や植物、蛍等の棲息が可能となる。
【0010】
また予め不織布に接着されているので現場での施工が迅速、簡単に行われ施工性が著しく向上される。更に不織布の大きさも自由に変えることができるのでカーブ部分等の施工が自由に且つ簡単に行われる。更に本発明によれば、生態系保護用自然石の自然石が不織布に層着されているので、シートに透水性が賦与されるとともに、土砂の吸い出し防止効果が発揮される。」
と記載されている。
よって、引用例には、
「自然石を、透水性が賦与されるとともに土砂の吸い出し防止効果が発揮される不織布上に敷き並べて接着した河川護岸工などに使用される生態系保護用自然石シート」
の発明が記載されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、
本願発明の「水分は通過するが土砂は通過しない程度の目の粗さを持ったベースマット」、「配置して」、「護岸覆工」は、それぞれ、引用例に記載された発明の「透水性が賦与されるとともに土砂の吸い出し防止効果が発揮される不織布」、「敷き並べて」、「河川護岸工などに使用される生態系保護用自然石シート」に相当するから、
両者は、
「自然石を水分は通過するが土砂は通過しない程度の目の粗さを持ったベースマットの上面に密に配置して接着した護岸覆工。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本願発明では、自然石を2つに切断して成る石塊を、平面である切断面を下にして、ベースマットの上面に配置して接着しているのに対して、引用例に記載された発明では、自然石を切断せずにベースマットの上面に配置して接着している点。
相違点2:
本願発明においては、石塊を密に配置して接着しているのに対し、引用例に記載された発明では、特にそのように限定がされていない点。

4.当審の判断
上記相違点1について検討する。
本願発明は、相違点1に係る構成としたことによって、接着剤がマットの中に滲み込み、石塊の保持に対して充分な強度を持つこと(段落0007)、マットとの高い接着強度が得られること(段落0011)という作用効果を奏するものである。一方、引用例に記載された発明は、従来の金網と自然石との接着は不安定となりやすいことから、自然石と不織布との接着とすることにより、強固な接着を得ようとするものであり、自然石とマット状の物との接着強度をあげようとする課題において共通するものである。
ここで、接着するに当たり平面と曲面よりも、平面同士の方が接着強度があがることはよく知られた事項であることから、自然石とマット状の物との接着強度をあげるために、自然石の接着面を平らにしょうと考えることはごく自然なことである。
そして、護岸工事において自然石を用いる場合に、自然石を2つに切ったり割って用いることが本願発明出願前に周知の事項であり(必要であれば、登録実用新案第3027154号公報(段落0001、段落0006、図8)、特開昭64-80611号公報(第1頁右下欄第1行〜第6行)等参照)、2つに切ったり割った面は平らになることを考慮すると、自然石のマットへの接着に当たって、本願発明の上記相違点1に係る構成のようにすることは当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
上記相違点2について検討する。
明細書には、石塊を密に配置することの技術的意義について何ら記載されておらず、また、その程度も不明であることから、この点において、両者に実質的な差異があるとは認められない。
さらに、本願発明の奏する作用効果も、引用例に記載された発明および技術常識から普通に予測できる範囲内のものであって、格別なものがあるとは認められないから、本願発明は、引用例に記載された発明および技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明および技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-13 
結審通知日 2004-07-20 
審決日 2004-08-02 
出願番号 特願平10-76520
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志摩 美裕貴河本 明彦  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山田 忠夫
▲高▼橋 祐介
発明の名称 護岸覆工  
代理人 佐竹 良明  

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