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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1103794
審判番号 不服2002-19758  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-10 
確定日 2004-09-22 
事件の表示 平成 9年特許願第 61992号「加湿装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月14日出願公開、特開平10-246475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年3月1日の出願であって、平成14年9月17日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月10日に審判請求がなされたものであって、当審から、平成16年4月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年6月25日付けで手続補正がなされるとともに、意見書が提出されたものである。

第2.特許請求の範囲の記載
平成16年6月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲は、次のとおりに記載されている。

「【請求項1】 加湿する機器・函体又は室内の第1空間と水蒸気が存在する第2空間とを周囲が断熱された通路で連絡し、同通路内に一面が撥水性を有し且つ防水性で通気性のある透湿膜を撥水性の面が第2空間側となるように切頭円錐形の底面と側面の位置に配置して透湿膜による大きい切頭円錐体を形成し、しかも同切頭円錐体内に傾斜側面と底面を透湿膜で形成した小さい切頭円錐体を挿入し、これら透湿膜で通路を区画して小室を複数形成し、小室内の空気を第1空間側に従って低温となるように常時温度勾配を与えるペルチェ素子を設け、同ペルチェ素子が加熱・冷却する小室の透湿膜に近接してアースされた導電性多孔体を設け、しかもペルチェ素子の加熱面・冷却面と同導電性多孔体とをそれぞれ伝熱体を介して熱的に接続し、しかも複数の透湿膜の通気度と透湿度との積が第1空間側の透湿膜となるほど小さくなるようにした加湿装置。」

第3.拒絶理由の内容
平成16年4月23日付けで通知された拒絶理由は、次のとおりである。

A.本件出願は、明細書の記載が不明確であり(特に段落【0006】〜段落【0010】)、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

例えば、

1.通気度と透湿度の積の値の違いによって、水蒸気透過速度に差が生じ、その積の値が大きい方から小さい方への水蒸気移動が容易となる理由が不明である(段落【0005】【0015】)。

平成14年4月24日付け意見書の「(3)透湿度*通気度の意味」、「(4)水蒸気の移動方向について」等の記載を参照しても、上記理由は理解できない。

2.水蒸気が温度・圧力の低い方へ移動しようとする理由が不明である(段落【0007】)。

3.透湿膜を円錐体とした理由が不明である(段落【0008】)。

4.プラスチック製函体の場合は大気側に積の値の高い透湿膜を置く理由が不明である(段落【0005】【0010】)。

5.撥水面が相対的に負に帯電する理由が不明である(段落【0005】)。

6.水蒸気の移動が少ないときは対流を生起し易くするとは、どのようなことをいうのか不明である(段落【0006】)。

7.block模式図とは何か不明である(段落【0010】)。

8.「又、201は透湿膜の撥水面となるPE多孔質膜、202は特殊多孔質膜、203はナイロン系不織布、204は透湿膜の撥水面となるPE多孔質膜、205は透湿膜の特殊多孔質膜、206はポリオレフィン系不織布、207は透湿膜3lの撥水面となるPE多孔質膜、208は特殊多孔質膜、209はポリオレフィン系不織布である。」(段落【0013】)と記載されているが、これらの一部は図示されていない。

9.請求項1には、「透湿膜を(中略)切頭円錐体状に設け、」と記載されているが、図2に示された第1の透湿膜4は、切頭円錐体状でない。したがつて、図2に示されたものは、本願発明の実施例ではない(逆に、請求項1には、発明の詳細な説明に記載されていない発明が記載されている。)。

10.請求項1に記載された「断熱された通路」は不明確である(通路の周囲が断熱されているのではないか。)。

B.本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開平7-68124号公報
刊行物2:特開平8-327101号公報

備考
1.本件出願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次の通りに分節できる。

[イ]加湿する機器・函体又は室内の第1空間と水蒸気が存在する第2空間とを断熱された通路で連絡し、

[ロ]同通路内に一面が撥水性を有し且つ防水性で通気性のある透湿膜を撥水性の面が第2空間側となるように

[ハ]且つ切頭円錐体状に設け、同透湿膜で通路を環状に区画して小室を複数形成し、

[ニ]小室内の空気を第1空間側に従って低温となるように常時温度勾配を与えるペルチェ素子を設け、

[ホ]同ペルチェ素子が加熱・冷却する小室の透湿膜に近接してアースされた導電性多孔体を設け、

[ヘ]しかもペルチェ素子の加熱面・冷却面と同導電性多孔体とをそれぞれ伝熱体を介して熱的に接続し、

[ト]しかも複数の透湿膜の通気度と透湿度との積が第1空間側の透湿膜となるほど小さくなるようにした加湿装置。

2.これに対して、刊行物1には、次の事項が記載されている。

[1]「筒状ケーシング1の内部または外部には、蒸気の濃度勾配を大きくするため、適宜断熱壁あるいは保温壁を設けたり、・・・(中略)・・・してもよい。」(段落【0040】)

[2]「有底筒状通気体の外形は、円筒形に限らず、ボックス10と筒状ケーシング1の温度の変動速度や地域により各チャンバーの容積比を調整する目的で、または、筒状ケーシング1の表面積の差をつける目的で円錐状体に形成してもよい。」(段落【0054】)

[3]「前記電子冷却素子6は、室内側に冷却部60を向けると共に外気側10bに発熱部61を向けて配置し、それぞれ膜の一部を切欠して水密性のパッキングを介し取付けられている。各電子冷却素子6には極めて微弱な冷却作用と発熱作用を行わせ、かつボックス10側のチャンバー11aの温度が低く外気側チャンバー11cの温度が高くなるようにコントロールする」(段落【0031】)

[4]「メッシュ筒33,34等の物性を絶縁性材料、または導電性材料を用い、濃度勾配以外の電位傾斜に対して、つまり水蒸気濃度差に伴って発生する電位傾斜(荷電状態の傾斜)を考慮し機器からの悪作用を抑制するようにしてもよい。」(段落【0049】)

[5]「前記電子冷却素子6は、室内側に冷却部60を向けると共に外気側10bに発熱部61を向けて配置し、それぞれ膜の一部を切欠して水密性のパッキングを介し取付けられている。」(段落【0031】)

[6]「前記吸気筒3aとメッシュ状筒33,34には、それぞれ防水膜が装着されて吸気部2aと排気部2bとが形成される。前記排気部2bは、小径側のメッシュ状筒33には透湿度250g/m×m×day通気度18000sec/100ccの第1防水膜4aを、また、大径側のメッシュ状筒34には透湿度380g/m×m×day通気度23000sec/100ccの第2防水膜4bを全面に覆うことにより、二重の筒状通気体として形成したものである。」(段落【0020】)

3.本願発明と刊行物1に記載された事項とを対比する。

刊行物1に記載された事項[1]は、本願発明の事項[イ]に対応し、以下同様に、[2]は[ハ]に、[3]は[ニ]に、[4]は[ホ]に、[5]は[へ]に、また[6]は[ト]に、それぞれ対応する。

したがって、本願発明は、上記事項[ロ]を有する点で、刊行物1に記載された発明と相違する。

4.相違点についての検討
上記相違点について検討する。

刊行物2には次の記載がある。

「前記各防水膜の一側が疎水性または撥水性のある疎水性面から構成され、他側が撥水性を有すると共に前記疎水性面よりも疎水性の低い不織布より構成され、前記小室を形成する外気側防水膜が、函体側防水膜よりも通気度が低く、かつ透湿度が高くなるように配列され、かつ前記防水膜が2枚とも不織布側を函体側に向け、かつ該小室を形成する壁部において函体側の熱伝導速度が早く、反函体側の熱伝導速度が遅い壁部からなり、かつ水蒸気に対して結露しにくい熱量的関係にある複数の材料から構成され、さらに、防水膜に近接して低導電性多孔質体が配置されている構成とした。」(段落【0020】)

そして、刊行物2のこの記載は、本願発明の上記事項[ロ]に対応する。

したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

第4.記載不備
平成16年6月25日付けの手続補正により、上記拒絶理由の内、「A.」の「7.」ないし「10.」、及び「B.」は、解消された。

しかし、上記拒絶理由の内、「A.」の本文、及び例示した「1.」ないし「6.」は、平成16年6月25日付けの意見書を参照しても、解消されない。

したがつて、特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術上の意義が不明である。

なお、例示した「2.」について、上記意見書で、「「水蒸気が温度×圧力の低い方へ移動しようとする」という表現は、エネルギーの高い方からという表現が省略された表現であることを勘案して頂きたい。」と説明するが、そうであったとしても、水蒸気がエネルギーの高い方から低い方へ移動しようとする理由、及び第1空間が加湿される理由が不明である。

第5.まとめ
本願の「発明の詳細な説明」は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

したがつて、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2004-07-27 
結審通知日 2004-07-27 
審決日 2004-08-09 
出願番号 特願平9-61992
審決分類 P 1 8・ 536- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之青木 良憲  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
発明の名称 加湿装置  
代理人 戸島 省四郎  
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