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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B27B
管理番号 1103798
審判番号 不服2002-640  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-15 
確定日 2004-09-21 
事件の表示 平成10年特許願第70780号「板材加工機」拒絶査定不服審判事件 〔平成11年10月5日出願公開、特開平11-268002〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年3月19日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年6月25日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認められる。
「板材を所定方向に載置状態で搬送し得る搬送路に前記板材を供給する供給機構と、この供給機構により前記搬送路上に供給した前記板材を前記所定方向に載置状態で搬送させるX軸搬送制御機構と、前記搬送路の途中若しくは末端に前記X軸搬送制御機構により搬送した前記板材が架設状態若しくは突出状態に保持され下方に支承テーブル面を有さない無テーブル加工部を設け、この無テーブル加工部に配設した前記板材の架設部若しくは突出部を加工する加工機構と、前記加工機構の加工具により加工した前記板材を搬出する搬出機構とを備え、前記この加工機構は加工具を少なくとも前記X軸搬送制御機構の搬送方向と交差する方向に移動制御させるY軸移動制御機構と、前記X軸搬送制御機構とによる2軸方向の創成運動によって前記板材を加工し得るように構成すると共に、前記切断加工と板材の所定位置にスタンプ印字を行うスタンプとを切り替え制御できるように構成し、前記搬送路上に供給された前記板材の基端部二カ所に着脱自在に挾着する搬送用チャック装置を前記搬送路に沿って移動自在に設け、この搬送用チャック装置を前記搬送路に沿って移動制御する移動制御装置を設けて前記X軸搬送制御機構を構成し、送り込み搬送部と送り出し搬送部とを延設状態にして且つ離間状態に配設して前記搬送路を構成し、この送り込み搬送部と送り出し搬送部との離間部を前記板材の受け渡し搬送可能な距離に設定して前記板材がこの離間部に架設状態に保持できるように構成し、この離間部を下方に支承テーブル面を有さない前記無テーブル加工部とし、前記無テーブル加工部に配設した前記板材の少なくとも搬送基端側を上下方向に対して押さえ込む上下押さえ込み機構と板材の左右方向の位置ズレを防止すべく板材の側縁に当接して左右方向から押さえ込み保持する左右押さえ込み機構とを備え、前記送り出し搬送部は、加工済の板材とローラを駆動することで搬出できるローラ搬送方式に構成し、前記供給機構により前記搬送路上に前記板材を供給した後、前記X軸搬送制御機構によってこの板材を搬送させる以前に、この搬送路上の板材を所定の適正位置に位置決めする位置決め機構を備え、前記無テーブル加工部に配設した前記板材の架設部若しくは突出部を少なくともこの板材を貫通させて完全に切り離し切断加工若しくは完全に欠き取り加工する加工具を移動制御自在に設けて前記加工機構を構成すると共に、この加工機構の加工具は、前記X軸搬送制御機構と前記Y軸移動制御機構とによる2軸方向の創成運動によって前記板材に対して相対的に移動すると共に、加工具の加工角度を制御する回転制御とあいまって、予めプログラミングされる加工手順に基づいて、前記加工具として設けた回転カッターとエンドミル並びに前記スタンプとを適宜切り替えつつ180度の範囲で切断方向が可変制御される回転カッターによる完全切り離し切断加工と、同様な移動制御がなされるエンドミルによる完全欠き取り切断加工と、スタンプによる所定のスタンプ印字とを切り替え制御できるように構成し、前記上下押さえ込み機構及び前記左右押さえ込み機構は、ローラで板材を押さえ付けて板材を前記X軸搬送制御装置によって加工時においても前記X軸方向に移動可能な状態で板材を上下及び左右方向から押さえ込み保持するように構成したことを特徴とする板材加工機。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成16年4月23日付で通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、いずれも本願の出願前である、平成6年2月1日に頒布された特開平6-23703号公報(以下、「刊行物1」という。)、昭和55年4月9日に頒布された特開昭55-49201号公報(以下、「刊行物2」という。)、平成5年2月19日に頒布された実願平3-41172号(実開平5-12101号)のCD-ROM(以下、「刊行物3」という。)、平成8年6月4日に頒布された特開平8-142009号公報(以下、「刊行物4」という。)及び平成2年5月11日に頒布された特開平2-124216号公報(以下、「刊行物5」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.刊行物に記載された事項
3.1 刊行物1
刊行物1には、
〈イ〉「上下方向移動機構及び旋回機構を備えた丸鋸ユニットと、上下方向移動機構及び旋回機構を備えたジグソーユニットと、上下方向移動機構及び旋回機構を備えた角のみユニットと、前記丸鋸ユニットとジグソーユニット及び角のみユニット全体を横方向に移動させる移動機構と、板材をクランプして送材する送材機構と、予め登録した板材加工用の多種類の切断パターンを表示する陰極線管表示装置と、駆動機構により一定間隔開閉する開閉テーブルと、前記陰極線管表示装置に表示された切断パターンに従って前記丸鋸とジグソー及び角のみの上下移動機構と旋回機構と横方向移動機構及び前記開閉テーブルの駆動機構を駆動制御する中央演算処理装置と、より成るパネルソー。」(請求項2)、
〈ロ〉「そして台座フレーム1Aには固定テーブル2Aと開閉テーブル2B及び2Cとより形成されるテーブル2が配置され、更に固定テーブル2Aの一方の側には板材を当接させ切断加工する際の基準となる定規3が設置されている。」(第3欄第41〜45行)、
〈ハ〉「前記固定テーブル2Aと開閉テーブル2Bとの間には開口溝10aがあり、該開口溝10aを板材端部を当接させロッドレスシリンダ11により作動するローラ12が走行移動する。このローラ12は後述するように加工時板材を押さえるためのものである。また、固定テーブル2Aと定規3との間にも開口溝10bがあり、該開口溝10bを板材の端部を把持したクランプバイス13が走行する。」(第4欄第6〜13行)、
〈ニ〉「57は材料を押さえるための材料押さえであって、シリンダ58により上下に作動する。」(第4欄第30〜32行)、
〈ホ〉「図9は前記材料揃え装置15の正面図である。数枚の板材が固定テーブル2A上に投入されると定規3(図2参照)に当接される。そしてシリンダ15aの作動により当接板15b が二点鎖線で示す位置までレール15c、15c上を降下して来る。そして次にフレーム15d全体がレール15e上を図の矢印方向へ移動し当接板15bが数枚の板材を押しつつ前記クランプバイス13の位置まで移動させる。板材がクランプバイス13に当接すると該クランプバイス13は板材をクランプする。」(第5欄第26〜35行)、
〈ヘ〉「(1)図14(A)は、シリンダA及びシリンダB共に縮んだ状態を示す。この場合、丸鋸刃5aが開閉テーブル2Bと2Cの間に入ることが出来る。即ち、図1に示すように丸鋸を90度旋回し、板材を横方向(矢印R方向)に切断する場合の開度である。
(2)図14(B)は、シリンダAのみが伸び、シリンダBは縮んだ状態の平面図を示し、図14(C)はその正面図を示す。この場合はジグソー刃6aや角のみ刃7aが開閉テーブル2Bと2Cとの間に入ることが出来る。即ち、ジグソー6や角のみ7を使用して板材を加工する場合の開度である。
(3)図14(D)は、シリンダA 及びシリンダB共に伸びた状態を示す。この場合、丸鋸を板材の送材方向(矢印S方向)に向けて開閉テーブル2Bと2Cの間に入ることが出来る。即ち、板材を送材方向に平行に数カ所部分切断する場合の開度である。
(4)図14(E)は、丸鋸刃5aの平面図であり、図14(F)は、シリンダAが縮み、シリンダBのみが延びた状態を示す。この場合、丸鋸5を板材の送材方向に対して所定の角度の斜方向に向けて開閉テーブル2Bと2Cの間に入ることが出来る。即ち、板材を斜方向に切断する場合の開度である。」(第6欄第33行〜第7欄第4行)、
〈ト〉「(1)先ず、1の端材を切断する場合定規3に当接されクランプバイス13でクランプされた板材Wが前進すると同時に丸鋸5は原点位置から図16(A)に示す位置に移動する。板材Wが丸鋸の前まで来ると、材料押さえ57及び丸鋸刃5aが下降し、またローラ(プッシャーとなる)12が前進して板材を押さえる。」(第7欄第20〜25行)
と記載されている。
上記摘記事項(ロ)、(ヘ)及び刊行物1の図14の記載から、開閉テーブル2Bと開閉テーブル2Cとは延設状態にして且つ離間状態に配設して前記テーブル2を構成し、両開閉テーブルの離間部を前記板材の受け渡し搬送可能な距離に設定して前記板材がこの離間部に架設状態に保持できるように構成し、この離間部を下方に支承テーブル面を有さない前記無テーブル加工部を形成していると認められる。してみると、摘記事項(イ)ないし(ト)及び刊行物1の図1,2,17,18の記載からみて、刊行物1には、
「板材を所定方向に載置状態で搬送し得るテーブル2と、前記テーブル2上に供給した前記板材を前記所定方向に載置状態で搬送させる送材機構と、前記テーブル2の途中若しくは末端に前記送材機構により搬送した前記板材が架設状態若しくは突出状態に保持され下方に支承テーブル面を有さない無テーブル加工部を設け、この無テーブル加工部に配設した前記板材の架設部若しくは突出部を加工する丸鋸ユニットとジグソーユニットと角のみユニットとからなる加工ユニットを備え、前記この加工ユニットは丸鋸刃5aとジグソー刃6aと角のみ刃7aとからなる加工具を少なくとも前記送材機構の搬送方向と交差する方向に移動制御させる移動機構と、前記送材機構とによる2軸方向の創成運動によって前記板材を加工し得るように構成すると共に、丸鋸加工とジグソー加工と角のみ加工とを切り替え制御できるように構成し、前記テーブル2上に供給された前記板材の基端部に着脱自在に挾着するクランプバイス13を前記テーブル2に沿って移動自在に設け、このクランプバイス13を前記テーブル2に沿って移動制御する中央演算処理装置を設けて前記送材機構を構成し、開閉テーブル2Bと開閉テーブル2Cとを延設状態にして且つ離間状態に配設して前記テーブル2を構成し、この開閉テーブル2Bと開閉テーブル2Cとの離間部を前記板材の受け渡し搬送可能な距離に設定して前記板材がこの離間部に架設状態に保持できるように構成し、この離間部を下方に支承テーブル面を有さない前記無テーブル加工部とし、前記無テーブル加工部に配設した前記板材の少なくとも搬送基端側を上下方向に対して押さえ込む材料押さえ57と板材の左右方向の位置ズレを防止すべく板材の側縁に当接して左右方向から押さえ込み保持するローラ12とを備え、前記送材機構によってこの板材を搬送させる以前に、このテーブル上の板材を所定の適正位置に位置決めする材料揃え装置15を備え、前記無テーブル加工部に配設した前記板材の架設部若しくは突出部を少なくともこの板材を貫通させて完全に切り離し切断加工若しくは完全に欠き取り加工する加工具を移動制御自在に設けて前記加工ユニットを構成すると共に、この加工ユニットの加工具は、前記送材機構と前記移動機構とによる2軸方向の創成運動によって前記板材に対して相対的に移動すると共に、加工具の加工角度を制御する回転制御とあいまって、加工手順に基づいて、前記加工具として設けた丸鋸とジグソー並びに前記角のみとを適宜切り替えつつ切断方向が可変制御される丸鋸による完全切り離し切断加工と、同様な移動制御がなされるジグソーによる完全欠き取り切断加工と、角のみによる所定の穴明け加工とを切り替え制御できるように構成し、前記材料押さえ57及び前記ローラ12は、板材を押さえ付けて板材を前記送材機構によって加工時においても前記搬送方向に移動可能な状態で板材を上下及び左右方向から押さえ込み保持するように構成したパネルソー」(以下、刊行物1記載の発明」という。)
が記載されていると認められる。

3.2 刊行物2
刊行物2には、
〈チ〉「前記昇降式載置台からこの切断装置へ板材を供給する吸着搬送装置」(第1頁左下欄第7ないし9行)、
と記載されている。
上記摘記事項(チ)及び刊行物2の第2,4図の記載からみて、刊行物2には、
「板材を切断装置に供給する吸着搬送装置」(以下、刊行物2記載の事項」という。)
が記載されていると認められる。

3.3 刊行物3
刊行物3には、
〈リ〉「図中符号1は木製パネル等のパネル状の被処理物Pを搬送する搬送路である。
搬送路1は、脚2に支持された枠体フレーム3に複数の搬送ローラ4…が搬送方向と直交するようにかつ互いに適宜間隔をあけて回転自在に取り付けられた構造になっている。そして、これら搬送ローラ4が、図4にも示すように、その端部に該搬送ローラ4と一体的に回転するように設けられたスプロケット5を、チエーン6を介して図示せぬ駆動手段によって個々に強制回転されることにより、それ自身が回転し、その上部に載置される被処理物Pを前方へ搬送するようになっている。」(明細書の段落【0010】)、
〈ヌ〉「搬送路1の途中には、該搬送路の一部を構成するサイザー架台8が、下方のガイド部材9,9に案内されることにより、搬送路1の搬送方向と直交する方向に移動自在に設けられ、しかも両ガイド部材9,9の間に設けられた駆動チェーン10が駆動用モータによって回転されることにより、同方向に移動操作されるようになっている。」(明細書の段落【0011】)、
〈ル〉「次いで、再び搬送ローラ4…を回転させてこの最初の被処理物Pを前方へ搬送し、該最初の被処理物Pが搬送路1の前段側の連結端部1bの近傍に来た時点で図示せぬ停止手段により、その後端をサイザー架台8上に所定量突出させた状態で停止させた後、固定手段16によってその位置に固定する。また、これと同時にこの最初の被処理物Pに続く2番目の被処理物Pを、前記と同様の手順により、搬送路1の後段側の連結端部1a近傍の所定位置に停止させ、固定手段を駆動させかつ固定手段16によってその位置に固定させる。」(明細書の段落【0019】)、
と記載されている。
上記摘記事項〈リ〉ないし〈ル〉及び刊行物3の図1の記載からみて、刊行物3には、
「サイザー架台8により加工したパネル状の被処理物Pを搬出する前段側の搬送路1を備え、前記搬送路1は、加工済のパネル状の被処理物Pとローラ4を駆動することで搬出できるローラ搬送方式に構成したサイザー加工装置」(以下、刊行物3記載の事項」という。)
が記載されていると認められる。

3.4 刊行物4
刊行物4には、
〈ヲ〉「木材のホゾ等の加工を行う加工機60と、該加工機60のコントローラ65と、加工されたホゾに印字を行うインクジェット式のヘッド72と、該ヘッド72を制御する印字機70とから構成されている。」(第7欄第37〜41行)、
と記載されている。
上記摘記事項〈ヲ〉及び刊行物4の図1の記載からみて、刊行物4には、
「加工機60と木材の所定位置に印字を行う印字機70とを切り替え制御できるように構成した木材加工装置」(以下、刊行物4記載の事項」という。)
が記載されていると認められる。

3.5 刊行物5
刊行物5には、
〈ワ〉「18は板材の端部をチャッキングするクランプバイスであり送材面端部に数個設置してある。」(第3頁左上欄第3〜5行)、
〈カ〉「而して、クランプバイス18で板材を所定距離、即ち第1図に示すように板材揃えローラ13,14の位置(即ち、取付け板15の位置)から鋸7が走行し板材を切断する位置Xまで移動させ一次切断する。」(第3頁右上欄第17行〜同左下欄第1行)、
と記載されている。
上記摘記事項〈ワ〉、〈カ〉及び刊行物5の第1,2図の記載からみて、刊行物5には、
「板材の基端部数カ所に着脱自在に挾着するクランプバイス18」(以下、刊行物5記載の事項」という。)
が記載されていると認められる。

4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「テーブル2」、「送材機構」、「加工ユニット」、「移動機構」、「クランプバイス13」、「開閉テーブル2B」、「開閉テーブル2C」、「材料押さえ57」、「ローラ12」、「材料揃え装置15」、「パネルソー」は、前者の「搬送路」、「X軸搬送制御機構」、「加工機構」、「Y軸移動制御機構」、「搬送用チャック装置」、「送り込み搬送部」、「送り出し搬送部」、「上下押さえ込み機構」、「左右押さえ込み機構」、「位置決め機構」、「板材加工機」にそれぞれ相当するから、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〈一致点〉「板材を所定方向に載置状態で搬送し得る搬送路と、前記搬送路上に供給した前記板材を前記所定方向に載置状態で搬送させるX軸搬送制御機構と、前記搬送路の途中若しくは末端に前記X軸搬送制御機構により搬送した前記板材が架設状態若しくは突出状態に保持され下方に支承テーブル面を有さない無テーブル加工部を設け、この無テーブル加工部に配設した前記板材の架設部若しくは突出部を加工する加工機構を備え、前記この加工機構は加工具を少なくとも前記X軸搬送制御機構の搬送方向と交差する方向に移動制御させるY軸移動制御機構と、前記X軸搬送制御機構とによる2軸方向の創成運動によって前記板材を加工し得るように構成すると共に、切断加工を切り替え制御できるように構成し、前記搬送路上に供給された前記板材の基端部に着脱自在に挾着する搬送用チャック装置を前記搬送路に沿って移動自在に設け、この搬送用チャック装置を前記搬送路に沿って移動制御する中央演算処理装置を設けて前記X軸搬送制御機構を構成し、送り込み搬送部と送り出し搬送部とを延設状態にして且つ離間状態に配設して前記搬送路を構成し、この送り込み搬送部と送り出し搬送部との離間部を前記板材の受け渡し搬送可能な距離に設定して前記板材がこの離間部に架設状態に保持できるように構成し、この離間部を下方に支承テーブル面を有さない前記無テーブル加工部とし、前記無テーブル加工部に配設した前記板材の少なくとも搬送基端側を上下方向に対して押さえ込む上下押さえ込み機構と板材の左右方向の位置ズレを防止すべく板材の側縁に当接して左右方向から押さえ込み保持する左右押さえ込み機構とを備え、前記X軸搬送制御機構によってこの板材を搬送させる以前に、このテーブル上の板材を所定の適正位置に位置決めする位置決め機構を備え、前記無テーブル加工部に配設した前記板材の架設部若しくは突出部を少なくともこの板材を貫通させて完全に切り離し切断加工若しくは完全に欠き取り加工する加工具を移動制御自在に設けて前記加工機構を構成すると共に、この加工機構の加工具は、前記X軸搬送制御機構と前記Y軸移動制御機構とによる2軸方向の創成運動によって前記板材に対して相対的に移動すると共に、加工具の加工角度を制御する回転制御とあいまって、加工手順に基づいて、前記加工具を適宜切り替えつつ切断方向が可変制御される完全切り離し切断加工を切り替え制御できるように構成し、前記上下押さえ込み機構及び前記左右押さえ込み機構は、板材を押さえ付けて板材を前記X軸搬送制御機構によって加工時においても前記搬送方向に移動可能な状態で板材を上下及び左右方向から押さえ込み保持するように構成した板材加工機」である点。
〈相違点1〉前者が「供給機構」を備えるのに対し、後者はこれを備えない点。
〈相違点2〉前者は「搬出機構」を備え、「送り出し搬送部」がローラ搬送方式に構成されているのに対し、後者は「搬出機構」を備えない点。
〈相違点3〉前者は回転カッターによる切り離し切断加工とエンドミルによる欠き取り切断加工とスタンプによるスタンプ印字とを切替え制御できるように構成されるのに対し、後者は丸鋸加工とジグソー加工と角のみ加工とを切替え制御できるように構成される点。
〈相違点4〉前者では「搬送用チャック装置」が板材の基端部二カ所に挟着するのに対し、後者はこのような発明を特定する事項を備えない点。
〈相違点5〉前者では予めプログラミングされた加工手順に基づいて加工機構を制御するのに対し、後者ではプログラミングについて明記されていない点。
〈相違点6〉前者では切断加工における加工具の切断方向が180度の範囲で可変制御されるのに対し、後者では加工具の回転制御の範囲について明記されていない点。
〈相違点7〉前者では「上下押さえ込み機構」がローラで板材を押さえ付けるのに対し、後者ではローラで押さえ付けない点。

5.当審の判断
以下、上記の相違点について検討する。
5.1 〈相違点1〉について
刊行物2記載の事項の「切断装置」、「吸着搬送装置」は、本願発明の「板材加工機」、「供給機構」にそれぞれ相当するから、刊行物2には「板材を板材加工機に供給する供給機構」が記載されている。
刊行物2記載の事項は、刊行物1記載の発明と同様、板材加工機に関するから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して相違点1について本願発明のように事項を特定することは、当業者が容易に想到し得るものである。

5.2 〈相違点2〉について
刊行物3記載の事項の「サイザー架台8」は本願発明の「加工機構」に相当し、同様に前者の「パネル状の被処理物P」は後者の「板材」に、前者の「前段側の搬送路」は後者の「搬出機構」及び「送り出し搬送部」に、前者の「サイザー加工装置」は後者の「板材加工機」に、にそれぞれ相当するから、刊行物3には「加工機構により加工した板材を搬出する搬出機構を備え、送り出し搬送部は、加工済の板材とローラを駆動することで搬出できるローラ搬送方式に構成した板材加工機」が記載されている。
刊行物3記載の事項は、刊行物1記載の発明と同様、板材加工機に関するから、刊行物3記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して相違点2について本願発明のように事項を特定することは、当業者が容易に想到し得るものである。

5.3 〈相違点3〉について
刊行物4には、「加工機60と木材の所定位置に印字を行う印字機70とを切替え制御できるように構成した木材加工機」が記載されている。
刊行物4記載の事項は木材加工機に関し、刊行物1記載の発明も木材を加工する板材加工機に関するから、刊行物1記載の発明において、丸鋸加工とジグソー加工と角のみ加工との切替え制御に代えて、刊行物4に記載された加工と印字との切替え制御をさせることは、当業者が容易に想到し得るものである。
スタンプを用いてスタンプ印字を行うことは、印字技術としては周知である。
また、加工機構の加工具は、施そうとする加工の内容に応じて当業者が適宜選択し得るものであり、刊行物1記載の発明の丸鋸、ジグソー及び角のみに代えて回転カッターとエンドミルを加工具として採用することに困難性はない。

5.4 〈相違点4〉について
刊行物5記載の事項における「クランプバイス18」は、本願発明の「搬送用チャック装置」に相当するから、刊行物5には「板材の基端部数カ所に着脱自在に挟着する搬送用チャック装置」が記載されている。
刊行物5記載の事項は、刊行物1記載の発明と同様、板材加工機に関するから、刊行物5に記載された事項を、刊行物1記載の発明に適用して相違点4について本願発明のように事項を特定することは、当業者が容易に想到し得るものである。搬送用チャック装置が板材基端部を挟着する箇所を2とすることは、板材の幅等の条件に合わせて、当業者が適宜選択することができる事項に過ぎない。

5.5〈相違点5〉について
板材加工機において、予めプログラミングされた加工手順に基づいて加工を行うことは例示するまでもなく従来周知の技術であり、刊行物1記載の発明においてもこの従来周知の技術を適用して相違点5について本願発明のように事項を特定することは、当業者が容易に想到し得る。

5.6〈相違点6〉について
加工具の回転制御の範囲は、施そうとする加工の内容に応じて当業者が適宜選択し得るものであり、刊行物1記載の発明において加工具を180度の範囲で回転制御可能として相違点6について本願発明のように事項を特定することに困難性はない。

5.7〈相違点7〉について
ローラで板材を押さえ付ける押さえ込み機構は、刊行物1記載の発明においても、左右押さえ込み機構に用いられているため、上下押さえ込み機構についても、同様にローラで板材を押さえ付けるようにして相違点7について本願発明のように事項を特定することは、当業者が容易に想到し得る。

6.むすび
以上の通りであるから、本願発明は刊行物1記載の発明、刊行物2ないし5記載の事項及び従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-20 
結審通知日 2004-07-22 
審決日 2004-08-06 
出願番号 特願平10-70780
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B27B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 英行  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 豊原 邦雄
鈴木 孝幸
発明の名称 板材加工機  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 吉井 剛  

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