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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1103830
審判番号 不服2003-14171  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-24 
確定日 2004-10-06 
事件の表示 平成 7年特許願第 28786号「メモリ管理方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月 9日出願公開、特開平 8-202611、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明
本願は平成7年1月24日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に係る各発明は、平成16年8月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、それぞれ請求項1ないし2に記載されるとおりのものと認める。

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平2-79138号公報(以下、引用例1という)、前置審査によって報告された特開昭60-252968号公報(以下、引用例2という)には、次のことが記載されている。

(1)引用例1
機械語などの再配置が難しい可変長データを扱うのに有益な記憶域管理方式であって、記憶域を一時的使用のデータを格納するバンク領域と長時間にわたる使用データを格納する連続割り付け領域とに分け、バンク領域についてはバンク領域管理手段が記憶域の先頭からバンクの確保、割り付け解放を行い、連続割り付け領域については連続割り付け手段がバンク領域と反対側から割り付けていく記憶域管理方式。

(2)引用例2
記憶領域を動的データ記憶域と固定データ専用エリアにわけ、データ構造が固定的に使用されるとみなされるデータ(リスト構造)については、動的データ記憶域から固定データ専用エリアに移動し、ガーベジコレクション負荷を軽減するメモリ管理方式。

3.対比、判断
引用例1のものは、機械語などの再配置が難しい可変長データを扱うのに有益な記憶域管理方式に関するものであって、バンク領域についてはバンク領域管理手段がバンクの確保、割り付け解放を行っていくものであるが、このバンク領域管理手段が一旦割り付けた領域を再配置するものであるかどうかについて検討する。
引用例1には、具体的な記憶管理手順に関して次の記載がある。

(ア)「先ず、データD1とデータD3を格納するためのm1+m3の大きさのバンクB1を確保して、データD1をバンクB1に格納し、m2の大きさをもつバンクB2を確保してデータD2をバンクB2へ格納する。データD3は先に確保したバンクB1へ格納し、(中略)この間再びデータ2を格納する必要が生じた場合は、バンクB2を初期化し、常にバンクB2へ格納するようにする。図中、BRはバンク領域を、NRは未使用領域を示す。次にm1+m3の大きさをもつデータD5を格納する場合は、不要となったデータD1とデータD3が割り付けられているバンクB1とB2を使用すればよいので、バンクB1とB2の初期化処理を行い、バンク領域B10に格納する。」(公報2頁右下欄18行〜3頁左上欄13行)

(イ)「以上説明したように本発明は、記憶域中にバンク領域を設け、任意の大きさのバンクの確保、バンクへのデータの格納、初期化、解放を管理しているので、処理を行った後不要となったデータを格納してある記憶域を再び利用可能とすることができるためメモリ使用効率を向上することができる。」(公報3頁左上欄18行〜右上欄4行)

(ウ)「更に、後に不要となるゴミのデータが多く出されるシステムに適用される場合においては、ゴミ集め(ガーベージコレクション)を行い、不必要なデータだけを記憶域上に集め直す方式が考えられるが、記憶域上のアドレスをデータとしてもっているような場合(例えば機械語等)はそのデータを記憶域上の他の場所へ移動することは難しいためガーベージコレクションを行うことができず、本発明が特に有効となる。」(公報3頁右上欄13行〜左下欄1行)

上述の記載から検討するに、引用例1のものは(イ)には、バンクの確保やデータの格納、初期化、解放は行うものと記載されているが、領域の再配置を行うとは記載されていない。(ア)の動作を見ても、領域の再配置は行われていない。そして、(ウ)をみると、引用例1のものは、そもそもデータの移動が難しいものを前提としているのであるから、上記の(ア)(イ)の記載と併せて考えると、引用例1のバンク領域管理手段は再配置を行うものではないと考えるのが至当である。

引用例2には、固定データ専用エリアにおける処理に関して次の記載がある。

(エ)「一旦固定化してしまったリスト構造を再編集したい場合が発生する可能性があるので、固定化を解くための、
(UNFIXQ 変数)
という関数を用意しておく。これにより、固定リスト領域からヒープ領域にリスト構造が複写され、その変更が可能となる。この場合、固定リスト領域にあった分はゴミとなるので、UNFIXQが実行される度に、固定リスト領域のガーベジコレクションを行っておく。再定義などによってリスト構造の変更が起こるヒープ領域では、複写を行うためにはリスト構造を順次辿っていく必要があるが、固定リスト領域では、完成した状態のリスト構造がヒープ領域から複写され、累積されていくだけのため、領域内のリスト構造は順番に並んで配置されている。したがって、ガーベジコレクションに際してリスト構造を辿る必要はなく、シフト操作によって空き領域を埋めるだけでよい。」(公報4頁左上欄14行〜右上欄11行)

上述の記載によれば、固定データ専用エリア内においても空き領域を埋め、領域の再配置を行っている。つまり、引用例2のものでは、固定化されるのは、データ構造であり、領域内での配置が固定化されるわけではない。

以上のとおり、引用例1のものでは、バンク領域管理手段、連続割り付け手段のいずれも領域の再配置を行うものでないから、本願発明における動的なメモリ管理行う第2のメモリ管理方式を有していない。また、引用例2のものは、動的データ記憶域、固定データ専用エリアともに領域の再配置を行っているから、本願発明の静的なメモリ管理を行う第1のメモリ管理方式を有していない。
よって、引用例1,2のいずれにも本願発明の構成要素である静的メモリ管理と動的メモリ管理を併用する点は記載されてなく、また、この点を引用例1,2より容易に想到できるということもできない。
従って、他の引用文献については検討するまでもなく、本願発明が引用例1,2より容易に発明することができたものということはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、請求項1ないし2に係る発明を特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとした原査定の判断は妥当ではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2004-08-27 
出願番号 特願平7-28786
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 滝谷 亮一須原 宏光堀江 義隆  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 山中 実
小田 浩
発明の名称 メモリ管理方法及び装置  
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