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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D03D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D03D |
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管理番号 | 1103876 |
審判番号 | 不服2002-4550 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-03-15 |
確定日 | 2004-09-24 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第142257号「サブノズルの噴射方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月25日出願公開、特開平 9-302556〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成8年5月13日の出願であって、平成14年2月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月9日に手続補正がなされたものである。 II.平成14年4月9日の手続補正についての却下の決定 [補正却下の結論] 平成14年4月9日の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「圧力空気源(16、17)とメインノズル(10)および複数のサブノズル(11)との間に設けられた電磁弁(18、19)を駆動して、圧力空気源(16、17)の圧力空気(12、13)をメインノズル(10)およびサブノズル(11)から噴射することによって、よこ糸(3)をたて糸(14)の開口(15)内によこ入れする空気噴射織機のよこ入れ装置(1)において、よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間(T4)で、いずれかのサブノズル(11)の電磁弁(19)に対してパルス列状の駆動信号を出力して、パルス毎に電磁弁(19)を開閉させ、よこ入れ時の圧力空気(13)と異なる低い圧力の圧力空気(13)をサブノズル(11)に供給し、このサブノズル(11)からよこ入れ時よりも低い圧力空気(13)をよこ糸牽引用空気として噴射させることを特徴とするサブノズルの噴射方法。」と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間の圧力について、「低い」(圧力)、「よこ入れ時よりも低い」(圧力空気)との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-108345号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 ・記載1(2頁1欄2〜10行目) 「所定の長さのよこ糸が糸ストッパからの釈放後に主ノズルによっておさのよこ糸通し通路の中に通され、織物幅にわたって配置されたリレーノズルによって、その都度よこ糸の先端範囲を空気搬送媒体で前進する方向によこ糸搬送進行域の形で付勢し、これによってよこ糸をよこ糸通し通路を通して糸引張り力を形成する空気流速で搬送し、そのよこ糸が織物に突き当たる前に伸張されるような空気ノズル式織機の空気式よこ糸通し方法」 ・記載2(2頁1欄13ないし14行目) 「空気流速(VL)の新たな発生によって通し済みよこ糸によこ糸伸張進行域が作用する」 ・記載3(3頁3欄10〜14行目) 「このよこ糸伸長進行域は、搬送進行域に対して必要とされるよりも非常に少ない数のリレーノズルで発生される。従ってよこ糸に第1の引張り力(FG)と相違しているか又は同じである引っ張り力があらためて与えられる。」 ・記載4(3頁3欄17〜21行目) 「もっとも実際には、よこ糸伸張進行域が織物幅にわたって分布されている進行領域セグメントに分割されていることが有利であることが分かっている。これによってよこ糸の優しい伸張が達成され、よこ糸破断は完全に防止される。」 同じく引用された、特開平3-206149号公報(以下「引用例2」という。)には、ジェットルームにおける緯入れ制御装置に関し、概略、元圧エア源と、メインノズル用タンクと補助ノズル用タンクとの間に電磁切り換え弁を介在させ、該電磁切り換え弁にパルス状の電気信号を与えて、電磁切り換え弁をパルス毎に開閉させることにより、下流側の空気圧を変圧することが記載されている。(3頁右上欄10行目ないし左下欄6行目参照。) 3.対比 引用例1の記載1の「主ノズル」は、本願補正発明の「メインノズル」に相当し、同様に、「リレーノズル」は「サブノズル」に、「空気ノズル式織機」は「空気噴射織機」に、「よこ糸通し」は「よこ入れ」にそれぞれ相当しているので、引用例1には、本願補正発明の「圧力空気をメインノズルおよびサブノズルから噴射することによって、よこ糸をたて糸の開口内によこ入れする空気噴射織機のよこ入れ装置」が開示されている。 また、記載2の「通し済みよこ糸」に設定した「よこ糸伸張進行域」は、本願補正発明の「よこ糸牽引用空気」が作用する「よこ入れ終了から筬打ちまでの間」に相当しているので、引用例には、本願補正発明の「よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間」「このサブノズルから」圧力空気を「よこ糸牽引用空気として噴射させることを特徴とするサブノズルの噴射方法」が開示されている。 そこで、本願補正発明の用語を用いて対比すると、両者は次の点で一致し、次の相違点1〜3で相違する。 [一致点] 「圧力空気をメインノズルおよびサブノズルから噴射することによって、よこ糸をたて糸の開口内によこ入れする空気噴射織機のよこ入れ装置において、よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間、このサブノズルから、圧縮空気をよこ糸牽引用空気として噴射させることを特徴とするサブノズルの噴射方法」が開示されている。 [相違点1] 圧力空気をメインノズル(主ノズル)とサブノズル(リレーノズル)から噴射するための構成に関して、本願補正発明は、「圧力空気源とメインノズルおよび複数のサブノズルとの間に設けられた電磁弁を駆動して、」圧力空気を噴射する構成を備えているのに対して、引用例1記載のものはこれらの構成が明らかでない点。 [相違点2] よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間の噴射空気圧に関して、本願補正発明は、よこ入れ時よりも低い圧力である、即ち、「よこ入れ時の圧力空気と異なる低い圧力の圧力空気をサブノズルに供給し、このサブノズルからよこ入れ時よりも低い圧力空気をよこ糸牽引用空気として噴射させる」との構成を備えているのに対し、引用例1記載のものは、具体的噴射空気圧が明らかでない点。 [相違点3] 本願補正発明は、圧力空気の変圧手段として、「電磁弁に対してパルス列状の駆動信号を出力して、パルス毎に電磁弁を開閉させ」る構成を備えているのに対し、引用例1記載のものは、かかる手段を備えていない点。 4.相違点の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 空気噴射織機において、圧力空気源とノズルの間の経路に電磁弁を設け、該電磁弁を開閉駆動して空気を噴射することは、例えば引用例2(2頁左下欄10行〜右下欄1行参照)にも記載されているように、周知の技術手段である。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用例発明に上記周知の技術手段を単に適用したにすぎず、当業者が適宜なしえたものである。 [相違点2]について 引用例1の記載3,4を検討すると、よこ糸伸長進行域では、よこ糸破断を防止するため、よこ糸を優しく伸張させる必要があることが読み取れる。 そこで、これを勘案すると、記載1の「このよこ糸伸長進行域は、搬送進行域に対して必要とされるよりも非常に少ない数のリレーノズルで発生される。」との記載は、このよこ糸伸長進行域では、搬送進行域に対して必要とされるよりも少ない空気噴射量により、より少ない引張り力をよこ糸に作用させることを示唆するものと解することができる。 また、緯入れが終了して停止した緯糸を単に引きのばすために必要な牽引力は、緯入れ中に高速で緯糸を前進させるために必要な牽引力よりも弱くて良いであろうことも、技術常識から当業者が容易に予測し得ることでもあるので、よこ入れ終了後の牽引期間に、よこ入れ時よりも弱い牽引力をよこ糸に作用させることは、引用例1の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと言える。 そして、牽引力を弱くする手段として、リレーノズルの空気圧を減らすことは、例えば、特開平1-207440号公報、特開昭56-343号公報に示すように周知の技術手段なので、作用するリレーノズルの数を減らして空気噴射量を減らすことに代えて、このような手段を採用することは、当業者が適宜選択できた程度の事項にすぎない。 なお、引用例1には、よこ糸伸長進行域の後半で、牽引力を減らすため、低減された流速の空気を作用させる旨の記載があるが、流速の高低は、気圧の高低に対応するので、間接的に、牽引力を減らすため、低圧の空気を作用させることが、引用例1にも開示されていると認めることもできる。 してみると、本願補正発明が、相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しえたものである。 [相違点3]について 前項(2)で述べたように、引用例2には、電磁弁にパルス列状の駆動信号を出力して、電磁弁をパルス毎に開閉させ、ノズルに供給する空気圧を変圧することが記載されている。 そこで、引用例2記載の技術手段を、引用例1記載のものに適用し、相違点3に係る本願補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到しえたものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 平成14年4月9日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成14年1月16日の手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「圧力空気源(16、17)とメインノズル(10)および複数のサブノズル(11)との間に設けられた電磁弁(18、19)を駆動して、圧力空気源(16、17)の圧力空気(12、13)をメインノズル(10)およびサブノズル(11)から噴射することによって、よこ糸(3)をたて糸(14)の開口(15)内によこ入れする空気噴射織機のよこ入れ装置(1)において、 よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間(T4)で、いずれかのサブノズル(11)の電磁弁(19)に対してパルス列状の駆動信号を出力して、パルス毎に電磁弁(19)を開閉させ、よこ入れ時の圧力空気(13)と異なる圧力の圧力空気(13)をサブノズル(11)に供給し、このサブノズル(11)から圧力空気(13)をよこ糸牽引用空気として噴射させることを特徴とするサブノズルの噴射方法。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.2に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明から「よこ入れ終了から筬打ちまでの間の所定の牽引期間の圧力」を限定する事項である「低い」(圧力)、「よこ入れ時よりも低い」(圧力空気)との構成を有さないものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-07-28 |
結審通知日 | 2004-08-02 |
審決日 | 2004-08-16 |
出願番号 | 特願平8-142257 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(D03D)
P 1 8・ 121- Z (D03D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西藤 直人、水谷 万司、中村 則夫 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
山崎 豊 中西 一友 |
発明の名称 | サブノズルの噴射方法 |
代理人 | 中川 國男 |