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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1103906
審判番号 不服2003-1827  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-06 
確定日 2004-09-24 
事件の表示 平成 9年特許願第175410号「画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月29日出願公開、特開平11- 27452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年7月1日の出願であって、平成14年6月3日付で手続補正がなされ、平成14年12月19日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年2月6日付で審判請求がなされた後、平成15年3月10日付で手続補正がなされ、前置審査でした拒絶理由の通知に対して平成15年6月16日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年6月3日、平成15年3月10日、及び平成15年6月16日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 原稿の画像を読み取る読取センサと、
前記読取センサによる画像の読み取り時に、前記読取センサと前記原稿の画像との相対位置を、前記原稿を搬送させることによって第1の速度で変化させる原稿搬送手段と、
前記読取センサによる画像の読み取り時に、前記読取センサと前記原稿の画像との相対位置を、前記原稿を走査することによって第2の速度で変化させる原稿走査手段と、
前記第1の速度が前記第2の速度よりも速くなるよう設定する設定手段と、
前記読取センサによって前記原稿の画像をカラー情報として読み取るかモノクロ情報として読み取るかを決定する決定手段と、
前記決定手段によりモノクロ情報として読み取ると決定された場合に前記設定手段の設定が有効となるように制御するとともに、前記決定手段によりカラー情報として読み取ると決定された場合に、前記設定手段を無効とし、前記第1の速度と前記第2の速度を等しく設定し、該速度は前記決定手段によってモノクロ情報として決定された場合における第1の速度よりも遅くなるように制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。」

3.引用例
(1)引用例1
これに対して、前置審査で引用文献1として引用した特開平7-236034号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の各記載がある。
ア.「【産業上の利用分野】本発明は自動原稿供給装置を備えたスキャナ,複写機等の画像読み取り装置に関するものである。」(2頁右欄36〜38行)
イ.「【0030】以上のように構成された画像読み取り装置について以下図1,図2および図6を用いてその動作を説明する。
(中略)
・・・本方式ではキャリッジ3の位置を固定し、ADFユニット51による
原稿の搬送により画像を読み取る。
【0032】この状態で外部ホスト(図示せず)より原稿の読み取り命令が出されると、キャリッジ3内部の光源ランプ22及びADFユニット51内部の光源28を点灯させると共に、ADFユニット51に独立して設けられたADF用駆動モータ(図示せず)を回転させる。起動時点のADF用駆動モータの回転速度は、カラー原稿の読み取り速度より約2倍高速の画像読み取り速度で原稿の搬送が行われるように設定されている。搬送ローラ18とガイドローラ19は減速機構(図示せず)を介してADF用駆動モータと結合されておりADF用駆動モータの回転と共に搬送ローラ18とガイドローラ19は回転を開始する。ADF用駆動モータの回転が一定速度に達すると、クラッチ機構(図示せず)を制御して、搬送ローラ15およびリバースローラ16を回転させ、原稿トレイ13にセットされた原稿の搬送を1枚ずつ開始する。リバースローラ16はローラと原稿面の摩擦の違いを利用して、原稿が複数枚同時に搬送される、いわゆる重送を抑制する。
(中略)
【0034】また、原稿の先端が原稿端部検出センサ17によって検出されると、これを起点としてイメージセンサ27による読み取り、即ち原稿属性検出の開始タイミングが設定され、同時にキャリッジ3内部のカラーイメージセンサ25による画像の読み取り開始のタイミングが設定される。
【0035】イメージセンサ27によって読み取られた原稿のイメージは、原稿属性判定部によってカラー(多値画像)/モノクロ(多値画像)/モノクロ(2値画像)のいずれであるかが判定される。」(5頁左欄38行〜同頁右欄44行)
ウ.「【0048】ところで、一般にカラースキャナでモノクロ(2値画像)のイメージを読み取る場合は、モノクロ(2値画像)のイメージは階調再現性を必要としないため、カラーイメージセンサ25の電荷蓄積時間を短く設定し、更にカラーイメージセンサ25に結像されたイメージのうち、特定色(例えばグリーン信号)を選択的に2値化処理等するだけでよく、カラー原稿に比べ高速に読み取ることができる。
【0049】ADFユニット51の原稿の搬送速度の初期設定値はモノクロ原稿に対する読み取り速度であり、例えば50mm/s程度の速度で原稿を搬送している。もし、CPU37による原稿属性の判定結果がモノクロ(2値画像)であれば、ADFユニット51の搬送速度は変化せず、原稿は原稿読み取り位置30aにおいて読み取られる。一方、CPU37による原稿属性の判定結果がカラー(多値画像)であれば、ADFユニット51の搬送速度は25mm/s程度の速度に減速され、定速に達した後に原稿は原稿読み取り位置30aを通過する。このようにADFユニット51の搬送速度を遅くし、更にカラーイメージセンサ25の電荷蓄積時間をモノクロ原稿の約2倍に設定することで、カラー原稿では階調性に優れた画像を読み取ることができる。読み取りが終了した原稿は原稿排出部31から排出される。」(7頁左欄13〜35行)
エ.「【0052】以上、本発明の画像読み取り装置の基本動作モードについて述べた。次に、本発明の画像読み取り装置において、外部から読み取りモードを指定した場合の動作について図3および図4を用いて説明する。
【0053】画像読み取り装置は外部のホストコンピュータ等に接続されており、インタフェースを通じて読み取った画像データをホストに転送するだけでなく、ホストコンピュータから動作モードの指示、解像度や読み取り範囲等の読み取り条件、及び原稿属性の指定等を直接を受け取ることができる。
(中略)
【0055】外部ホスト(図示せず)から画像読み取りモードと、以降の動作における原稿属性を示すデータが転送され、画像読み取り装置のモード指定が第二の動作モードである場合、ADFユニット51の原稿トレイ13に原稿がセットされ、原稿検出センサ14が原稿を検出すると、画像読み取り装置本体50の駆動モータ9が回転し、駆動プーリ7,駆動ワイヤ6及び従動プーリ8を介して駆動力がキャリッジ3に伝達され、キャリッジ3の原稿読み取り部23が原稿読み取り位置30bの直下となるようキャリッジ3の位置が制御される。本方式ではキャリッジ3の位置を固定し、ADFユニット51による原稿の搬送により画像を読み取る。
【0056】この状態で外部ホストより原稿の読み取り命令が出されると、キャリッジ3内部の光源ランプ22を点灯させると共に、ADFユニット51に独立して設けられたADF用駆動モータ(図示せず)を回転させる。起動時点のADF用駆動モータの回転速度は、ADFユニット51が起動される前にホストコンピュータ等によって指示された原稿属性に従った搬送速度に設定されている。
(中略)
【0060】以上述べてきたように、第二の動作モードでは、イメージセンサ27による原稿属性の判定は実行されない。従って原稿属性は予めユーザがホストコンピュータ等から指定することになる。」(7頁左欄46行〜8頁左欄11行)
オ.「【0064】外部ホスト(図示せず)から、予め定められた標準値とは異なる解像度で読み取りが要求された場合、及び直接画像読み取り装置のモードとして第三のモードが指定された場合は、画像読み取り装置のモードは第三の動作モードに設定される。
【0065】第三の動作モードでは、ADFユニット51の原稿トレイ13に原稿がセットされ、原稿検出センサ14が原稿を検出すると、画像読み取り装置本体50の駆動モータ9が回転し、駆動プーリ7,駆動ワイヤ6及び従動プーリ8を介して駆動力がキャリッジ3に伝達され、キャリッジ3の原稿読み取り部23が原稿読み取り開始位置30cの直下となるようキャリッジ3の位置が制御される。
【0066】この状態で外部ホストより原稿の読み取り命令が出されると、キャリッジ3内部の光源ランプ22及びADFユニット51内部の光源28を点灯させると共に、ADFユニット51に独立して設けられたADF用駆動モータ(図示せず)を回転させる。起動時点のADF用駆動モータの回転速度は、カラー原稿の読み取り速度より約2倍高速の画像読み取り速度で原稿の搬送が行われるように設定されている。搬送ローラ18とガイドローラ19は減速機構(図示せず)を介してADF用駆動モータと結合されておりADF用駆動モータの回転と共に搬送ローラ18とガイドローラ19は回転を開始する。ADF用駆動モータの回転が一定速度に達すると、クラッチ機構(図示せず)を制御して、搬送ローラ15およびリバースローラ16を回転させ、原稿トレイ13にセットされた原稿の搬送を1枚ずつ開始する。リバースローラ16はローラと原稿面の摩擦の違いを利用して、原稿が複数枚同時に搬送される、いわゆる重送を抑制する。
(中略)
【0069】原稿端部検出センサ17を通過した原稿の先端部は原稿搬送ベルト29へ搬送される。原稿搬送ベルト29は、クラッチ機構で駆動が制御される構成となっており、原稿が原稿搬送ベルト29に突入する直前に原稿搬送ベルト29は駆動され、この原稿搬送ベルト29により原稿は原稿ガラス2aに沿って搬送される。この搬送により原稿ガラス2a上に原稿の全体が配置されると、即ち原稿の後端が原稿端部検出センサ17を通過して規定時間経過すると、原稿搬送ベルト29は駆動が停止される。
【0070】原稿の搬送が完全に停止すると、画像読み取り装置本体50の駆動モータ9を回転し、駆動プーリ7,駆動ワイヤ6及び従動プーリ8介して駆動力をキャリッジ3に伝達し、キャリッジ3の原稿読み取り部23を原稿読み取り開始位置30cから原稿読み取り終了位置30dへと移動させながら、原稿を読み取っていく。このキャリッジ3の移動速度は、原稿の読み取り開始時点で原稿属性が既にCPU37で判定され、また解像度等の読み取り条件がADFユニット51の起動前に外部ホストから指定されているため、一意に定まっている。原稿全面の読み取りが終了すると、キャリッジ3は原稿読み取り開始位置30cの方向へリターン動作を開始する。また、同時に読み取りが終了した原稿は、原稿搬送ベルト29がクラッチ機構により再度駆動され原稿排出部31から排出される。
【0071】以上述べてきたように第三の動作モードでは、イメージセンサ27で原稿を読み取り、CPU37により原稿属性の判定を実行すると共に、解像度等の読み取り条件によりキャリッジ3の駆動速度、即ち読み取り速度が決定される構成となっている。一般にコスト等の制約からADFユニット51に搭載されるADF用駆動モータは、画像読み取り装置本体50に搭載される駆動モータ9に対して駆動精度が低いので読み取り解像度を高解像度化したい場合のように、原稿をより低速で搬送する必要がある場合は、画像読み取り装置本体50に搭載される駆動モータ9を用いて、キャリッジ3を駆動し、原稿を読み取ることにより、高解像度で精度良く原稿を読み取ることができる。」(8頁左欄41行〜9頁左欄24行)
カ.「【0072】以上述べてきたように、本発明の画像読み取り装置は、基本動作モードの他に、外部ホストコンピュータの指示に基づき複数の動作モードを切り換えることができる。このためユーザのあらゆる使用形態においても、常に高速で良好な画質を得ることができる。
【0073】なお、以上の説明では原稿属性としてカラー(多値画像)/モノクロ(多値画像)/モノクロ(2値画像)を判定する場合について説明したが、多値画像/2値画像、またはカラー/モノクロを判定し上記したような制御を行っても同様の効果が得られる。」(9頁左欄25〜34行)
これらの記載からみて、引用例1には、
「キャリッジ3内に設けられて原稿の画像を読み取るカラーイメージセンサ25と、
原稿を所定の搬送速度で搬送するADFユニット51と、
外部ホストから指定される画像読み取りモードであって、前記ADFユニット51による原稿の搬送速度を外部ホストによって指定される原稿属性に従った搬送速度に設定するとともに、前記キャリッジ3の位置を固定し、前記ADFユニット51により原稿を原稿属性に従った搬送速度で搬送させて、前記キャリッジ3内のカラーイメージセンサ25により画像を読み取る第二の動作モードと、
画像読み取り装置本体50に搭載されて前記キャリッジ3を駆動する駆動モータ9等と、
読み取り解像度を高解像度化したい場合のように原稿をより低速で搬送する必要がある場合に、外部ホストから指定される画像読み取りモードであって、原稿ガラス2a上に原稿の全体が配置された状態で前記駆動モータ9により前記キャリッジ3を原稿読み取り開始位置30cから原稿読み取り終了位置30dへと原稿属性、解像度等の読み取り条件に応じた移動速度で移動させながら、前記キャリッジ3内のカラーイメージセンサ25により画像を読み取る第三の動作モードと、
外部ホストからインターフェースを通じて、原稿属性がカラーであるかモノクロであるかを指定し、
原稿属性がモノクロと指定された場合には前記ADFユニット51による原稿の搬送速度をモノクロ原稿に対する読み取り速度(例えば50mm/s程度の速度)とし、原稿属性がカラーと指定された場合には前記ADFユニット51による原稿の搬送速度を、カラー原稿では階調性に優れた画像を読み取ることができるようにモノクロ時よりも遅い速度(例えば25mm/s程度の速度)とするようにした画像読み取り装置。」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。

(2)引用例2
同じく、前置審査で引用文献2として引用した特開平1-321771号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の各記載がある。
ア.「この種の画像読取り装置は、読取りの高速化が望まれている。
ところで、前述した2つの読取りモードを比較すると、原稿台読取りモードにおいては、光学系が副走査方向に移動し、自動原稿給送読取りモードにおいては、原稿が搬送され、この原稿の搬送により副走査する点においての相違がある。
このうち、光学系を移動するためには、光学系を形成する各部品の重量が大きく、慣性が大きいので、その慣性の影響を考慮して、例えば特公昭62-33790号に開示される如く、光学系の駆動源のモータが安定走行するまでの助走区間を設ける等の配慮がなされている。また停止時にも停止区間が必要である。従って、原稿台読取りモードで、高速読取りの要求にこたえようとすると、この助走区間,停止区間が増大し、高出力モータの開発等多大な変更労力が必要となる。また助走区間,停止区間の増大で装置を拡大しなければならなかった。
一方、従来の自動原稿給送読取りモードにおいても、画像読取りの高速化について充分な配慮がなされていなかった。
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置を大型化することなく、画像読取り速度を向上させることにある。」(2頁上左欄5行〜同頁上右欄9行)
イ.「本発明は、従来、自動原稿給送読取りモードの原稿搬送速度が原稿台読取りモードの光学系移動速度と同等であったものを、読取り速度の高速化に着目して、この原稿搬送速度を光学系移動速度よりも大となるように副走査制御する。すなわち、原稿搬送速度を速くすることで、その分自動原稿給送読取りモード時の画像読取り速度が向上する。
このような副走査制御方式を採用した場合、自動原稿給送読取りモードにおいては、原稿が専ら搬送されるため、搬送時の移動は、搬送ローラの回転と原稿の移動時の慣性力のみであり、これらの慣性が光学系に比べて極めて小さいので、原稿搬送速度の向上が技術的に容易なので、高速読取りの要求にこたえ易い。」(2頁上右欄20行〜同頁下左欄13行)
ウ.「しかして、本実施例では、自動原稿給送読取りモードにおいて、光学系のデータ取り込み速度は不変とし、原稿搬送速度のみを必要に応じて向上する。すなわち、原稿の高速読取りを可能にするため、原稿搬送速度を光学系の移動速度よりも大となるように設定してある。
ところで、光学系のデータ取り込み速度は不変としつつ、例えば、原稿搬送速度を2倍にすれば、解像度を半分となる。いいかえれば、解像度を半分にして読取りを行う場合は、原稿搬送を2倍とすることも可能であり、その結果読取り時間も半分に短縮することができる。
すなわち、低解像度でも良い場合、自動原稿給送読取りモードの原稿搬送速度を大とし、読取り時間の短縮を図る。
なお、原稿読取りの短縮化よりも、設定された最高解像度を得たい場合は、自動原稿給送読取りモードの原稿搬送速度を従来同様に原稿台読取りモードの光学系速度と同じ速度にして読取りを行う。」(4頁上左欄13行〜同頁上右欄12行)
エ.「原稿台読取りモードの場合は、解像度にかかわらず、光学系移動速度を一定とし、読取ったデータに基づき、データの間引き等のデータ処理により解像度の決定とする。つまり原稿台読取りの場合、読取り時間は解像度にかかわらずほぼ一定時間を要する。」(4頁上右欄17行〜同頁下左欄2行)

4.対比
そこで、本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、
引用例1記載の発明の「カラーイメージセンサ25」は、本願発明の「読取センサ」に相当することは明らかである。
引用例1記載の発明の原稿を搬送する「ADFユニット51」は、特に画像読み取りモードが第二の動作モードの場合、キャリッジ3の位置が固定すなわちカラーイメージセンサ25の位置が固定されている状態で、原稿を搬送させることによって、カラーイメージセンサ25と原稿の画像との相対位置を所定の搬送速度(第1の速度)で変化させるものである点で、本願発明の「原稿搬送手段」に相当する。
引用例1記載の発明のキャリッジ3を駆動する「駆動モータ9等」は、画像読み取りモードが第三の動作モードの場合、原稿全体が原稿ガラス2a上に配置されている状態で、キャリッジ3を駆動すなわちカラーイメージセンサ25を移動させ原稿を走査することによって、カラーイメージセンサ25と原稿との相対位置を所定の移動速度(第2の速度)で変化させるものである点で、本願発明の「原稿走査手段」に相当する。
引用例1記載の発明も、「前記ADFユニット51による原稿の搬送速度を外部ホストによって指定される原稿属性に従った搬送速度に設定する」ことができるものであり、ADFユニット51による原稿の搬送速度(第1の速度)が所定の速度となるように設定するものである点で、以下の相違点はあるが、本願発明の「設定手段」に相当するものを有しているといえる。
また、引用例1記載の発明も、「外部ホストからインターフェースを通じて、原稿属性がカラーであるかモノクロであるかを指定」することができるものであり、当然に、本願発明の「決定手段」に相当するものを有しているといえる。
さらに、引用例1記載の発明においても、「原稿属性がモノクロと指定された場合には前記ADFユニット51による原稿の搬送速度をモノクロ原稿に対する読み取り速度(例えば50mm/s程度の速度)とし、原稿属性がカラーと指定された場合には前記ADFユニット51による原稿の搬送速度を、カラー原稿では階調性に優れた画像を読み取ることができるようにモノクロ時よりも遅い速度(例えば25mm/s程度の速度)とする」ものであり、原稿の画像をモノクロ情報として読み取ると決定された場合に、原稿の搬送速度(第1の速度)の設定がモノクロ情報読み取り用の所定の速度となるように制御するとともに、原稿の画像をカラー情報として読み取ると決定された場合に、前記搬送速度(第1の速度)の設定を、モノクロ情報として決定された場合における搬送速度(第1の速度)よりも遅くなるように制御する点で、以下の相違点はあるが、本願発明の「制御手段」に相当するものを有しているということができる。
そして、引用例1記載の発明の「画像読み取り装置」は、本願発明の「画像読取装置」に相当するから、両者は、
「原稿の画像を読み取る読取センサと、
前記読取センサによる画像の読み取り時に、前記読取センサと前記原稿の画像との相対位置を、前記原稿を搬送させることによって第1の速度で変化させる原稿搬送手段と、
前記読取センサによる画像の読み取り時に、前記読取センサと前記原稿の画像との相対位置を、前記原稿を走査することによって第2の速度で変化させる原稿走査手段と、
前記第1の速度が所定の速度となるよう設定する設定手段と、
前記読取センサによって前記原稿の画像をカラー情報として読み取るかモノクロ情報として読み取るかを決定する決定手段と、
前記決定手段によりモノクロ情報として読み取ると決定された場合に前記設定手段の設定によって前記第1の速度がモノクロ情報読み取り用の所定の速度となるように制御するとともに、前記決定手段によりカラー情報として読み取ると決定された場合に、前記第1の速度の設定を、前記決定手段によってモノクロ情報として決定された場合における第1の速度よりも遅くなるように制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。」
である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
(相違点1)
原稿走査手段による第2の速度が、本願発明では、原稿の画像をカラー情報として読み取るかモノクロ情報として読み取るか等にかかわらず一定の速度であると思われるのに対し、引用例1記載の発明では、原稿属性、解像度等の読み取り条件に応じた移動速度とされる点。
(なお、本願請求項1の記載では必ずしも、原稿走査手段による第2の速度が原稿の画像をカラー情報として読み取るかモノクロ情報として読み取るか等にかかわらず一定の速度であることを明確に理解することはできないが、一応、相違点として掲げておく。)
(相違点2)
設定手段が、本願発明では、第1の速度が第2の速度よりも速くなるように設定するものであるのに対し、引用例1記載の発明では、原稿の搬送速度(第1の速度)を外部ホストによって指定される原稿属性すなわちカラーであるかモノクロであるかに従った搬送速度に設定するものである点。
(相違点3)
制御手段が、本願発明では、決定手段によりモノクロ情報として読み取ると決定された場合に設定設定の設定が有効となるように制御するとともに、前記決定手段によりカラー情報として読み取ると決定された場合に、前記設定手段を無効とし、第1の速度と第2の速度を等しく設定し、該速度は前記決定手段によってモノクロ情報として決定された場合における第1の速度よりも遅くなるように制御するものであるのに対し、引用例1記載の発明では、原稿属性がモノクロと指定された場合には前記ADFユニット51による原稿の搬送速度をモノクロ原稿に対する読み取り速度(例えば50mm/s程度の速度)とし、原稿属性がカラーと指定された場合にはADFユニット51による原稿の搬送速度を、カラー原稿では階調性に優れた画像を読み取ることができるようにモノクロ時よりも遅い速度(例えば25mm/s程度の速度)とするものである点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1)について
一般に、いわゆるプラテンスキャンモードは、いわゆるCVTモードに比べて、光学系などを搭載したキャリッジの助走・停止区間の短縮や駆動モータの高出力化などの対応が必要なことから、特に高速での制御には技術的な問題点が多々存在することは、例えば引用例2に記載(特に前記3.(2)ア.を参照)されているように当業者において周知の事項であり、また、引用例1においても、段落【0071】に「・・・原稿をより低速で搬送する必要がある場合は、画像読み取り装置本体50に搭載される駆動モータ9を用いて、キャリッジ3を駆動し、原稿を読み取る」と記載されていることからすれば、引用例1記載の発明では、プラテンスキャンモード(第三の動作モード)の場合にもあえて原稿属性等に応じて速度を変更する制御を行っているが、このような制御を簡略化し、すなわち原稿属性等にかかわらず比較的遅い一定の速度とすることは当業者が容易に考えられることである。
(相違点2)ないし(相違点3)について
本願請求項1の「設定手段」及び「制御手段」に関する記載によれば、結局、本願発明では、設定手段によって設定される第1の速度が、いわゆるデフォルトとして第2の速度に等しい速度が設定され、該設定手段の設定が有効とされると第1の速度はデフォルトとは異なる、第2の速度よりも速い速度とされ、該設定手段が無効とされると第1の速度はデフォルトである第2の速度とされるものであると解されるが、技術分野を問わず、何らかの設定値を設定する手段において、設定頻度が高いような値を予めデフォルトとして設定しておくことは普通に行われていることであり、引用例1記載の発明においても、例えば原稿属性がカラーである場合に設定されるべき遅い方の速度であって、引用例2に記載(特に前記3.(2)ウ.を参照。いわゆるCVTモードの遅くした場合の速度を、いわゆるプラテンスキャンモードの速度と等しいものとする点が記載されている。)のようにいわゆるプラテンスキャンモードの速度と等しい速度をデフォルトとして設定しておくようにすることにより、本願発明のように、設定手段を「第1の速度が第2の速度よりも速くなるように設定する」ものとし、制御手段を「決定手段によりモノクロ情報として読み取ると決定された場合に設定設定の設定が有効となるように制御するとともに、前記決定手段によりカラー情報として読み取ると決定された場合に、前記設定手段を無効とし、第1の速度と第2の速度を等しく設定し、該速度は前記決定手段によってモノクロ情報として決定された場合における第1の速度よりも遅くなるように制御する」ものとすることは当業者であれば容易になし得ることと認められる。
そして、本願発明の発明特定事項に基づく作用効果についてみても当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-21 
結審通知日 2004-07-27 
審決日 2004-08-09 
出願番号 特願平9-175410
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 手島 聖治  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 井上 信一
加藤 恵一
発明の名称 画像読取装置  
代理人 船橋 國則  

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