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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41L
管理番号 1104098
審判番号 不服2000-10163  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-11-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-06 
確定日 2004-09-30 
事件の表示 平成 3年特許願第 99063号「多色刷り印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 4年11月17日出願公開、特開平 4-329175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年4月30日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年5月28日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「ドット状に配列された発熱素子によりドット状の穿孔を形成される感熱性孔版原紙を用いて複数の色画像の重合による多色刷りを行う多色刷り印刷装置において、
上記感熱性孔版原紙の移動方向下流側に配置されていて、周面には上記感熱性孔版原紙を保持する保持機構をそして内部にはインク供給機構を装備している回転自在な2つの版胴と、
上記各版胴と略同径で且つそれぞれの版胴と対向する位置に配置されており、周面に印刷用紙を保持する保持機構を装備している回転自在な1つの印刷胴と、
上記版胴のいずれかを選択的に上記印刷胴に接離させる押圧機構と、
前記版胴と前記印刷用紙の位置関係を調整可能な調整機構を
備えた多色刷り印刷装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の昭和59年6月28日に頒布された特開昭59-111886号公報(以下、「引用例」という。)には、本願発明に関連する事項として、以下の事項が図示(第1,2図)と共に記載されている。
ア.「色分解された記録信号に応じて穿孔出力を発生する記録出力部材を設け、この記録出力部材により記録孔が形成された各色毎の原版を形成し、各色毎のこの原版を各々別個に保持する保持体を設け、これらの原版と記録紙との押圧接触状態でその記録孔からインクを記録紙に供給させるインク供給手段を設けたことを特徴とするカラープリンタ。」(特許請求の範囲)
イ.「本発明の第一の実施例を第1図および第2図に基づいて説明する。まず、色分解された記録信号に応じて穿孔出力を発生する記録出力部材となるサーマルヘッド(1)がプラテン(2)に対向して設けられている。そして、カセット(3)内に収納され給紙ローラ(4)、搬送ローラ(5)によりサーマルヘッド(1)・プラテン(2)間に給紙される熱孔版原紙(6)が設けられている。したがって、この熱孔版原紙(6)がサーマルヘッド(1)部に給紙され、このサーマルヘッド(1)の記録信号に応じた熱信号で熱孔版原紙(6)に記録孔(図示せず)が形成され、原版(図示せず)が形成される。ここで、記録信号はイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)用の3種類あるので、3枚の熱孔版原紙(6)が順次給紙されて各色毎の3種類の原版が形成される。そして、サーマルヘッド(1)の後段には搬送路に従い保持体となるローラ(7C)(7M)(7Y)が順次設けられている。これらのローラ(7C)(7M)(7Y)は記録信号の種類に応じて選択されて対応する原版を巻付け保持するものである。・・・ローラ(7)は・・・原版をクランプするクランパ(11)も設けられている。このようなローラ(7)は・・・インク供給ローラ(13)と・・・インク供給ローラ(14)とが内蔵され、インク供給手段(15)が構成されている。」(1頁右下欄10行〜2頁左上欄20行)、
ウ.「これらのローラ(7C)(7M)(7Y)の下方には給紙搬送ベルト(16)が配置され、カセット(17)に収納されこの給紙搬送ベルト(16)により給紙搬送される記録紙(18)が設けられている。また、給紙搬送ベルト(16)の左方には排紙トレイ(19)が設けられ、内周側にはローラ(7C)(7M)(7Y)に対応させて押圧ローラ(20C)(20M)(20Y)が設けられている。そして、前記ローラ(7C)(7M)(7Y)は給紙搬送ベルト(16)に対し押圧接触するよう上下動自在とされている。・・・給紙搬送ベルト(16)が駆動して記録紙が(18)がローラ(7C)(7M)(7Y)の下を通過する。このとき、ローラ(7Y)(7M)(7C)が記録紙(18)の先端検知に応じて順次下降して給紙搬送ベルト(16)に押圧接触して回転する。このような押圧接触状態でインク供給ローラ(13)に含有されたインクが・・・記録紙(18)に供給され記録される。このような動作が一枚の記録紙(18)に対し3種類の原版で行われるためカラー記録となる。ローラ(7Y)(7M)(7C)は記録紙(18)の後端検知により順次上昇復帰する。」(第2頁右上欄7行〜左下欄第12行)
上記記載事項を対比のためにまとめると、上記引用例には、
「サーマルヘッド(1)により記録孔が形成されてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3種類の原版が形成される熱孔版原紙(6)を用いてカラー記録を行うカラープリンタにおいて、
上記熱孔版原紙(6)の移動方向下流側に配置されていて、周面には上記イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3種類の原版をクランプするクランパそして内部にはインク供給手段(15)を装備している回転自在な3つのローラ(7C)(7M)(7Y)と、
上記各ローラ(7C)(7M)(7Y)の下方の対向する位置に配置される、記録紙(18)を給紙搬送する給紙搬送ベルト(16)を備え、上記各ローラ(7Y)(7M)(7C)は、給紙搬送ベルト(16)により給紙搬送される記録紙(18)の先端検知に応じて順次下降し後端検知により順次上昇復帰することにより、給紙搬送ベルト(16)に対して押圧接触するよう上下動自在とされているカラープリンタ。」(以下、「引用例発明」という。)
が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と上記引用例発明とを対比する。
(1)引用例発明の「カラープリンタ」は、熱孔版原紙(6)にサーマルヘッド(1)により各色の画像に対応した記録孔が形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3種類の原版を用いてカラー記録を行うものであるから、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3種類の原版は、ドット状に配列された発熱素子によりドット状の穿孔を形成される「熱孔版原紙(6)」(感熱性孔版原紙)ということができ、また、引用例発明の「カラープリンタ」は、複数の色画像の重合による多色刷りを行う多色刷り印刷装置ということができる。
(2)引用例発明の「インク供給手段(15)」及び「記録紙(18)」は、それぞれ、本願発明の「インク供給機構」及び「印刷用紙」に対応している。
(3)引用例発明の「周面には上記イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3種類の原版をそれぞれクランプするクランパそして内部にはインク供給手段(15)をそれぞれ装備している回転自在な3つのローラ(7C)(7M)(7Y)」のそれぞれは、周面には上記感熱性孔版原紙を保持する保持機構をそして内部にはインク供給機構を装備している回転自在な版胴ということができ、したがって、両者は、感熱性孔版原紙の移動方向下流側に配置されていて、周面には上記感熱性孔版原紙を保持する保持機構をそして内部にはインク供給機構を装備している回転自在な複数の版胴を備えているといえる点で共通している。
(4)引用例発明において、ローラ(7Y)(7M)(7C)(版胴)は、給紙搬送ベルト(16)により給紙搬送される記録紙(18)(印刷用紙)の先端検知に応じて順次下降し後端検知により順次上昇復帰することにより、給紙搬送ベルト(16)に対して押圧接触するよう上下動自在とされているものであるから、給紙搬送ベルト(16)が記録紙(18)(印刷用紙)を保持する機能も有していることは明らかで、したがって、引用例発明の「給紙搬送ベルト(16)」と本願発明の「印刷胴」とは、印刷用紙搬送保持部材として共通しており、また、引用例発明がローラ(7Y)(7M)(7C)(版胴)のいずれかを選択的に給紙搬送ベルト(16)(印刷用紙搬送保持部材)に接離させる押圧機構を備えていることも明らかである。
以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
ドット状に配列された発熱素子によりドット状の穿孔を形成される感熱性孔版原紙を用いて複数の色画像の重合による多色刷りを行う多色刷り印刷装置において、
上記感熱性孔版原紙の移動方向下流側に配置されていて、周面には上記感熱性孔版原紙を保持する保持機構をそして内部にはインク供給機構を装備している回転自在な複数の版胴と、
それぞれの版胴と対向する位置に配置されており、印刷用紙を保持する保持機構を装備している印刷用紙搬送保持部材と、
上記版胴のいずれかを選択的に上記印刷用紙搬送保持部材に接離させる押圧機構を
備えた多色刷り印刷装置。
[相違点]
A.印刷用紙搬送保持部材が、本願発明では、各版胴と略同径で且つそれぞれの版胴と対向する位置に配置されており、周面に印刷用紙を保持する保持機構を装備している回転自在な1つの印刷胴であるのに対して、引用例発明では、各ローラ(7C)(7M)(7Y)の下方の対向する位置に配置される、記録紙(18)を給紙搬送する給紙搬送ベルト(16)である点、
B.本願発明が、版胴と印刷用紙の位置関係を調整可能な調整機構を備えているのに対して、引用例発明では、そのような調整機構を備えていない点、
C.版胴の数が、本願発明では2つであるのに対して、引用例発明では、3つである点。
[相違点の判断]
以下相違点について検討するに、
複数の色画像の重合による多色刷りを行う多色刷り印刷装置一般において、各インク供給装置からの複数の版胴周面のインクまたは各版胴から転写される複数の転写胴周面のインクを印刷用紙に転写するために、印刷用紙搬送保持部材として、版胴あるいは転写胴と同径で且つそれぞれの版胴あるいは転写胴と対向する位置に配置されており、周面に印刷用紙を保持する保持機構を装備している回転自在な1つの胴(この胴は印刷に関与するものであるから、「印刷胴」と称することも適宜であり、以下、本願発明に倣って、「印刷胴」という。)を使用することは、例えば、実用新案公告第5224号公報、特開昭55-140556号公報及び特開昭61-144353号公報にみられるように周知であること及びインクが外側から供給される版胴であるか内部からインクが供給される版胴であるかの違いは、それに対向する印刷用紙を保持する印刷胴自体の構成やそれに伴う関連構成ついての当業者が通常考える以上の違いを引き起こすものでないことから、上記周知の印刷胴の構成を、引用例発明において、その給紙搬送ベルト(16)に替えて使用して相違点Aに係る構成を採用することは、格別阻害要因がなく、当業者が適宜想起できることであり、その作用効果も格別でない。
また、その際に、相違点Bに係る構成の如く、版胴と印刷用紙の位置関係を調整可能な調整機構を備えるようになすことも、印刷装置一般において、版胴と印刷用紙の位置関係を調整可能な調整機構を備えることが、例えば、実公昭48-13274号公報にみられるように、周知であり、これを備えることにも格別阻害要因がないから、当業者が適宜なす程度のことであり、その作用効果も格別でない。
さらに、2色の色画像の重合による多色刷りを行う多色刷り印刷装置も、例を挙げるまでもなく周知であるから、引用例発明において、2色の色画像の重合による多色刷りを行う多色刷り印刷装置とすることも、当業者が適宜想起できることであり、そうすれば、相違点Cに係る構成の如く、版胴の数が2つとなることは当然である。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-29 
結審通知日 2004-08-03 
審決日 2004-08-16 
出願番号 特願平3-99063
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑井 順一南 宏輔  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 津田 俊明
清水 康司
発明の名称 多色刷り印刷装置  
代理人 本多 章悟  
代理人 樺山 亨  

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