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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1104114
審判番号 不服2003-1641  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-31 
確定日 2004-09-30 
事件の表示 平成 7年特許願第320411号「通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月17日出願公開、特開平 8-242323〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年12月8日(優先権主張平成6年12月20日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「通信装置において、
通信を行なうための通信プログラムを含み、前記通信装置を制御するための制御プログラムと、前記制御プログラムに対して所定の演算を行うと得られる第1の情報と、を記憶している第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶されている制御プログラムに対して所定の演算を行う演算手段と、
前記演算手段による演算により得られた第2の情報と前記第1の記憶手段に記憶されている前記第1の情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に応じて、エラーメッセージを表示し、該エラーメッセージを表示した状態で、オペレータの操作を受け付けないようにする制御手段を有することを特徴とする通信装置。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭59-81963号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「特許請求の範囲
予め定められたチェック用データをシステム電源のオフ時に電池によってバックアップされるシステム制御用RAMの特定領域に記憶させる手段と、その同一のチェック用データを固定的に別途記憶させる手段と、システムの電源オン時にシステム制御用RAMに記憶されているチェック用データと固定的に記憶されているチェック用データとを比較させて、両データが一致しないときにエラー警報を発する手段とをとるようにしたシステム制御用RAMのチェック方式。」(1頁左欄4〜14行)
イ 「本発明は、ファクシミリシステムにおける制御用RAMのチェック方式に関する。」(1頁左欄16〜17行)
ウ 「本発明はこのような点を考慮してなされたもので、電池でバックアップされたシステム制御用RAMを用いたファクシミリシステムなどの始動に際して、電池切れなどによってそのRAM内容が変わっているか否かのチェックを行わせるようにしたシステム制御用RAMのチェック方式を提供するものである。」(1頁右欄12〜18行)
エ 「第1図は本発明によるシステム制御用RAMのチェック方式を具体的に実施するための一構成例を示すもので、システムコントローラ用のCPU1の制御バスBUSに、システム制御用のプログラムが格納され、かつ電池BでバックアップされたRAM2と、そのRAM2の内容チェック用のプログラム及びそのチェック用の特定データが格納されているROM3(システム制御用プログラムの一部を必要に応じて格納させるようにしてもよい)と、RAM2の内容チェックの結果、エラーが生じているときに警報を発するエラー警報装置4とが接続されている。」(2頁上左欄1〜12行)
オ 「次に、システムの始動の際、それまでシステム電源がオフされているあいだ電池によってバックアップされていたRAM2の内容にしたがってシステム制御を開始させるに先がけて、システム電源のオンを条件としてROM3のチェック用プログラムによるCPU1の制御下においてシステムをRAM2のチェックモードにさせる。しかして、CPU1において、RAM2の特定領域からのチェック用データの読出しとROM3からのチェック用データの読出しを行なわせ、両データの比較によりそのチェック用データのパターン1からパターン4までが全て一致しているか否かのチェックを行なわせ、そのうちの1つのパターンでも不一致が認められたときには電池切れなどによってRAM2の内容が変化してしまったものと判断して、直ちにエラー警報装置4に警報指令を与えてその旨の警報(エラー表示およびまたは警報音による)を出すとともに、システムを強制的にダウンさせるようにする。」(2頁上右欄16行〜同下左欄14行)

これら記載事項によると、引用刊行物には、「予め定められたチェック用データをシステム制御用のプログラムが格納されたシステム制御用RAMの特定領域に記憶させる手段と、その同一のチェック用データを固定的に別途記憶させる手段と、システムの電源オン時にシステム制御用RAMに記憶されているチェック用データと固定的に記憶されているチェック用データとを比較させて、両データが一致しないときにエラー表示を出すとともに、システムを強制的にダウンさせる手段とをとるようにしたファクシミリシステム」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

5.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ファクシミリシステム」は本願発明でいう「通信装置」の一種であり、また、引用発明の「エラー表示」として本願発明のように「エラーメッセージ」を表示することは慣用されていることであり、さらに前者の「システム制御用RAM」は後者の「第1の記憶手段」に相当するから、両者は
「通信装置において、
前記通信装置を制御するための制御プログラムを記憶している第1の記憶手段と、
制御プログラムをチェックするための比較手段と、
前記比較手段による比較結果に応じて、エラーメッセージを表示する制御手段を有することを特徴とする通信装置。」
である点で一致しているが、下記の点で相違する。

(相違点1)本願発明の制御プログラムは通信を行なうための通信プログラムを含むのに対し、引用発明の制御プログラムが通信プログラムを含むことは明記されていない点。

(相違点2)制御プログラムをチェックするための具体的手段が、本願発明においては、制御プログラムに対して所定の演算を行うと得られる第1の情報を第1の記憶手段に記憶しておき、前記第1の記憶手段に記憶されている制御プログラムに対して所定の演算を行う演算手段と、前記演算手段による演算により得られた第2の情報と前記第1の記憶手段に記憶されている前記第1の情報とを比較する比較手段であるのに対し、引用発明においては、予め定められたチェック用データをシステム制御用のプログラムが格納されたシステム制御用RAMの特定領域に記憶させる手段と、その同一のチェック用データを固定的に別途記憶させる手段と、システムの電源オン時にシステム制御用RAMに記憶されているチェック用データと固定的に記憶されているチェック用データとを比較させる手段である点。

(相違点3)本願発明の制御手段は該エラーメッセージを表示した状態で、オペレータの操作を受け付けないようにするものであるのに対し、引用発明の制御手段では前記特徴が明示されていない点。

6.当審の判断
(相違点1について)引用発明は通信装置であるから当然通信機能を有するのであり、この機能をプログラムを用いて実現することは周知技術であるから、通信プログラムを制御プログラムに含めることは当業者が容易に設計しうることである。

(相違点2について)プログラムをチェックする手段として、プログラムに対して所定の演算を行うと得られる第1の情報を記憶しておき、プログラムに対して所定の演算を行う演算手段と、前記演算手段による演算により得られた第2の情報と前記第1の情報とを比較する比較手段は、いわゆるチェックサム方式として周知であり(例えば、特開平5-324370号公報参照。)、引用発明におけるプログラムチェック方式に代えて前記チェックサム方式を採用することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3について)引用発明ではプログラムチェックの結果エラーが検出されると、「両データが一致しないときにエラー表示を出すとともに、システムを強制的にダウンさせる手段」が働くものであり、ここで「ダウン」とは、「操作不能」(マグローヒル科学技術用語大辞典第3版、なお、同文献は本願優先日後に発行されたものであるが、一般的な技術用語辞典の性格を有するものと認められることにかんがみ、本件につき、同文献によって技術用語としての意義を認定して差し支えないものというべきである。)を意味するから、「強制的にダウン」とは強制的に操作できないように制御することと理解できる。そして、引用発明の通信装置はファクシミリシステムを想定しており、当然正常時にはオペレータの操作を受け付けるものであるから、結局、「エラーメッセージを表示した状態で、オペレータの操作を受け付けないようにする制御手段」は、引用刊行物の記載から当業者が容易に想到し得るものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-21 
結審通知日 2004-07-27 
審決日 2004-08-16 
出願番号 特願平7-320411
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立川 功鶴谷 裕二  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 深沢 正志
江頭 信彦
発明の名称 通信装置  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  

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