ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
---|---|
管理番号 | 1104198 |
審判番号 | 不服2002-5293 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-12-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-03-28 |
確定日 | 2004-10-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第145897号「ネットワーク監視方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月10日出願公開、特開平11-340978〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年5月27日の出願であって、平成14年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年3月28日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 2.本願発明 請求項5に記載された発明は、平成14年1月17日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項5に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項5】 ルータによって互いに接続されたネットワークを監視するネットワーク監視方法において、 前記各ネットワークに接続されているサーバと交信して当該サーバの性能、通信速度、アドレスを含む設定情報の読み出しおよび更新を行い、前記設定情報を基にネットワークの稼働状態のシミュレーションを行うことを特徴とするネットワーク監視方法。」(以下、「本願発明」という。) 3.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由で用いられた特開平8-328984号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。 (1)「【目的】 ネットワークシミュレーション装置による仮想ネットワークでの検証に際して、コンフィグレーション情報の入力における人為的なミスの発生を削減できるネットワーク管理システムを提供する。 【構成】 ネットワーク管理装置1により、ネットワーク4に接続されるネットワーク機器の構成及び動作状態のデータを取り込み、ネットワークデータベース3にこれらのデータを蓄積しておく。ネットワークシミュレーション装置2では、ネットワークデータベース3に蓄積されたデータに基づいて、実際のネットワークの状態に対応したコンフィグレーションを記述するとともに、仮想ネットワーク5を構築するために、前記実際のネットワーク4からの変更点を入力することにより仮想ネットワーク5の記述を完成させ、検証を行うようにしている。」(1頁要約) (2)「【請求項1】 ネットワークに接続されるネットワーク機器の構成及び動作状態を管理するとともに前記ネットワーク機器の構成要領を変更することのできるネットワーク管理装置と、仮想ネットワークを用いて前記ネットワークの特性、性能を検証するネットワークシミュレーション装置とをネットワークデータベースを介して接続し、前記ネットワーク管理装置によりネットワーク機器の構成及び動作状態に関する情報を前記ネットワークデータベースに取り込み、前記ネットワークシミュレーション装置では、前記ネットワークデータベースからのネットワーク機器の情報に基づいて、前記仮想ネットワークのコンフィグレーションが記述されるようにしたことを特徴とするネットワーク管理システム。」(2頁1欄2行〜14行) (3)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ネットワークに接続されるネットワーク機器の構成及び動作状態の管理、変更を行うネットワーク管理装置と、ネットワークの検証(シミュレーション)を行うネットワークシミュレーション装置とを有してなるネットワーク管理システムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、ネットワーク管理装置は、ネットワークの稼働状態をモニターしたり、ネットワークに接続されるブリッジやルータ等のネットワーク機器の設定を変更したりする機能を有している。一方、ネットワークシミュレーション装置は、検証(シミュレーション)の対象となるネットワークのコンフィグレーション情報を使用者が入力し、仮想ネットワークを構築し、トラフィックデータを定義して検証を行うものであり、ネットワーク管理者は、この検証結果から、予想した性能を満足するか否かを判断するようにしている。」(2頁1欄42行〜2欄9行) (4)「【0015】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明する。図1は、本発明に係るネットワーク管理システムの一実施例を示すシステム構成図である。1はネットワーク管理装置であり、実際のネットワーク4を構成するネットワーク機器、これらの動作状況や構成要領等に関する情報をSNMP等の管理プロトコルを用いて収集したり、ネットワーク4のネットワーク機器の設定を行ったりするものである。2はネットワークシミュレーション装置であり、現在のネットワーク4の構成やネットワーク機器の機能の変更等を行うに際して、事前に変更内容がネットワーク管理者の意図した通りにコンフィグレーションが記述されているか否かを検証するための検証(シミュレーション)を行うものである。3はネットワークデータベースであり、ネットワーク管理装置1で収集したネットワーク4の情報を蓄積しておくものである。ネットワークシミュレーション装置2では、ネットワークデータベース3に蓄積された情報を用いて、実際のネットワーク4を仮想ネットワーク5の形式に変換する。次に、新しいコンフィグレーション6に基づき前記仮想ネットワーク5の変更部分の入力だけを行い、仮想ネットワークの検証を行う。ネットワーク管理者は、検証結果をみて、意図した通りの動作が行われているか否かを、実際のネットワークの設定の前に検証することができる。」(3頁4欄11行〜35行) 上記記載および図1とこの分野の技術常識によれば、「ネットワーク機器」の動作状況や構成要領に関する情報をSNMP等の管理プロトコルを用いて収集するためには、当該ネットワーク機器と交信を行う必要があることが明らかである。 また、「新しいコンフィグレーション6に基づき前記仮想ネットワーク5の変更部分の入力だけを行い」という動作は、「更新する」ことに他ならない。 したがって、引用例1には、「ブリッジやルータ等のネットワーク機器が接続されているネットワークの稼働状態をモニターする方法において、 ネットワーク機器と交信して、ネットワーク機器、その動作状況や構成要領等に関する情報を収集して蓄積し、更新し、前記ネットワーク機器、その動作状況や構成要領等に関する情報を基に、ネットワークシミュレーション装置においてネットワークの動作を検証する方法。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。 また、特開平8-163132号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の記載がある。 (1)「図2及び図3にあるように、FDDIリングの各接続箇所はIEEE 802.3ブリッジであり、マルチポートトランシーバー(MPT)、10-Base-Tハブ、またはイーサネットバックボーンのいずれかに接続されている。これらすべてのイーサネットサブネットは、エンジニアリングワークステーション(EWS, W/S)、パーソナルコンピュータ(PC)、及びファイルサーバ(FS, F/S)等の装置への最大10個までの接続をサポートし、これら数百の装置は、最終的には数千に達する。」(3頁3欄34行〜43行) (2)「【0013】図2に絵画的に示し、図3に模式的に示したCANの例のようなネットワークアーキテクチャの動作をシミュレートするために、このネットワークを完全に表すようにモデルを規定しなければならない。」(4頁5欄7行〜10行) (3)「ネットワークの実際の運用の最中に起き得るイベント(到着、転送、ルーティング及びメッセージの発信;メッセージの損失または変化などのエラー状態;リンク/ノード障害及び回復)は実際にモデルを実行するプログラムの実行中に模倣される。」(4頁5欄22行〜26行) (4)図3にはサーバを含む各イーサネットサブネットが接続されている図が記載されている。 上記(3)には、ネットワークの実際の運用の最中に起き得るイベント、すなわちネットワークの稼働状態を模倣していることが記載されている。 したがって、上記周知例1には、「各ネットワークにはサーバが接続されており、ネットワークの稼働状態のシミュレーションを行うにあたって、各ネットワークに接続されているサーバも含めてネットワークを完全に表すようにモデルを規定しなければならない。」ことが記載されている。 また、特開平9-223092号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の記載がある。 (1)「【0024】ネットワーク接続機器情報記憶部9は、ネットワークに接続されている接続機器の識別子、接続機器間の接続関係や、クライアント、サーバ、ブリッジ、ルータ等の種別等の情報を保持する接続機器リスト10と、機器毎のMIB情報、性能情報、設定情報等からなる接続機器オブジェクト11を有し、ネットワーク接続機器の設定情報、稼働情報を保持する。」(4頁6欄42行〜48行) (2)「【0043】同図(H)は、「回線が輻輳し、なかなか通信できない。」ことを表す。同図(I)は、「回線の負荷が限界を越えた」ことを表す。図7は、本発明の一実施例のネットワーク管理システムの具体的な動作を示すフローチャートである。図8、図9は、本発明の一実施例のネットワーク管理システムの表示部の表示例を示す。以下では、図5における「サーバ名1」のサーバが当初“最大150単位のパケット転送速度に対して現在45単位のパケットの転送速度”である点に注目して説明する。 【0044】ステップ201) ネットワーク管理システム1は、イベント待ちになっている。ここで、図5における「サーバ名1」のサーバが負荷オーバーとなったため、「サーバ名1」のサーバが障害発生のメッセージをネットワーク管理システムに送信する。このとき、「サーバ名1」のサーバがネットワーク管理システムに送信したメッセージは、『最大150単位のパケット転送速度に対して現在140単位速度となり、トラヒックが渋滞状態にある』ことを示すものである。」(6頁9欄26行〜44行) したがって、上記周知例2には、「サーバに関する情報として、機器の識別子、性能情報、最大パケット転送速度等」があることが記載されている。 また、メリリー・フォード他著,阿瀬はる美訳「インターネットワーキング技術ハンドブック」(1997年12月20日発行)プレンティスホール出版(以下、「周知例3」という。)には、以下の記載がある。 「インターネットワークのアドレス インターネットワークアドレスは、個々のデバイスやグループのメンバーを識別するのに使われる。」(19頁4行〜5行) したがって、上記周知例3には、「アドレスは、個々のデバイスを識別するのに使われる。」ことが記載されている。 また、Douglas Comer著、村井純・楠本博之訳「第2版 TCP/IPによるネットワーク構築 Vol.I-原理・プロトコル・アーキテクチャ-」(1993年8月30日発行)協立出版(以下、「周知例4」という。)には、以下の記載がある。 「4.2 統一的な識別子 コミュニケーションシステムは,どのホストもほかのどのホストとでもコミュニケーションできるようになっているとき,統一的なコミュニケーションサービスを提供していると言われる。我々のコミュニケーションシステムを統一的なものにするためには,計算機を識別する全体に受け入れられる方法を確立しなければならない。 しばしばホスト識別子はネーム,アドレス,経路に分類される。・・・ネーム,アドレス,経路は実際のところホストを識別するための連続的な低レベルの表現のことを言っている。」(50頁6行〜14行) したがって、上記周知例4には、「ホスト識別子には、ネーム,アドレス,経路がある。」ことが記載されている。 4.比較・検討 引用例1記載の発明の「ブリッジやルータ等のネットワーク機器が接続されているネットワークの稼働状態をモニターする方法」と、本願発明の「ルータによって互いに接続されたネットワークを監視するネットワーク監視方法」とは、「モニター」は「監視」のことであるから、「ネットワークを監視するネットワーク監視方法」である点で同じである。 引用例1記載の発明の「ネットワークシミュレーション装置においてネットワークの動作を検証する」、「収集して蓄積し、更新し」は、それぞれ本願発明の「ネットワークの稼働状態のシミュレーションを行う」、「読み出しおよび更新を行い」に相当する。 本願発明の「サーバ」、引用例1記載の発明の「ブリッジやルータ等のネットワーク機器」は、いずれも「ネットワークに接続された機器」の1つであることはこの分野の技術常識である。 引用例1記載の発明の「ネットワーク機器、その動作状況や構成要領等に関する情報」は、ネットワーク機器の設定に使用する情報であるから、「設定情報」であり、引用例1記載の発明の「ネットワーク機器、その動作状況や構成要領等に関する情報」と本願発明の「当該サーバの性能、通信速度、アドレスを含む設定情報」とは共に「ネットワークに接続された機器の設定情報」である点で共通している。 したがって、本願発明と引用例1記載の発明とは、 「ネットワークを監視するネットワーク監視方法において、 ネットワークに接続された機器と交信して、ネットワークに接続された機器の設定情報の読み出しおよび更新を行い、前記ネットワークに接続された機器の設定情報を基にネットワークの稼働状態のシミュレーションを行う方法。」で一致し、以下の点で相違する。 (ア)「ネットワーク」に関し、引用例1記載の発明は「ブリッジやルータ等のネットワーク機器が接続されているネットワーク」であるのに対し、本願発明は「ルータによって互いに接続されたネットワーク」である点。 (イ)「ネットワークに接続された機器」に関し、本願発明では、「各ネットワークに接続されているサーバ」であるのに対し、引用例1記載の発明では、「ブリッジやルータ等のネットワーク機器」である点。 (ウ)「ネットワークに接続された機器の設定情報」に関し、本願発明では、「サーバの性能、通信速度、アドレスを含む設定情報」であるのに対し、引用例1記載の発明では、「前記ネットワーク機器、その動作状況や構成要領等に関する情報」である点。 上記相違点について検討すると、 相違点(ア)(イ)について、 一般に、「ブリッジやルータ」はいずれもネットワークを互いに接続する機器であるから、引用例1記載の発明の「ブリッジやルータ等のネットワーク機器が接続されたネットワーク」を、「ルータによって互いに接続されたネットワーク」とすること(相違点ア)は設計的事項である。 また、「各ネットワークにはサーバが接続されており、ネットワークの稼働状態のシミュレーションを行うにあたって、各ネットワークに接続されているサーバも含めて完全に表すようにモデルを規定しなければならない。」ことは周知例1に記載されるように周知であるから、監視対象の「各ネットワークに接続された機器」を「各ネットワークに接続されたサーバ」とする程度のこと(相違点イ)は容易なことである。 相違点(ウ)について、 「機器の設定情報」に関し、「サーバに関する情報として、機器の識別子、性能情報、最大パケット転送速度等」があることは周知例2に記載されているように周知であり、ここで「機器の識別子」として「アドレス」は代表的なものであり(周知例3,4を参照)、「性能情報」とは「性能」に関する情報であることは明らかであり、「最大パケット転送速度」は「通信速度」の一つであるから、「ネットワークに接続された機器の設定情報」として、引用例1記載の発明の「前記ネットワーク機器、その動作状況や構成要領等に関する情報」を本願発明のような「サーバの性能、通信速度、アドレスを含む設定情報」とすることは設計的事項である。 5.まとめ 以上のとおりであるから、請求項5記載の発明は引用例1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-06 |
結審通知日 | 2004-08-10 |
審決日 | 2004-08-24 |
出願番号 | 特願平10-145897 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中元 淳二、中木 努 |
特許庁審判長 |
大日方 和幸 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 浜野 友茂 |
発明の名称 | ネットワーク監視方法及びその装置 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 机 昌彦 |