現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1104369
異議申立番号 異議2003-70417  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-10 
確定日 2004-07-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3314611号「アルカリ蓄電池用ニッケル電極」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3314611号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3314611号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成8年3月29日になされ、平成14年6月7日に、その発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について三洋電機株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年11月25日に訂正請求がなされ、さらに、取消理由通知の手交がなされると同時に、平成16年6月25日に訂正請求がなされたものである。(なお、平成15年11月25日付けの訂正請求は取り下げられた。)

2.訂正請求の訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物」を、「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物」に訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の「前記Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yの元素の化合物」を、「前記Ho、Er、Tm、Yb、Luの元素の化合物」に訂正する。
(3)訂正事項c
【0006】、【0007】、【0010】の「Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y」を、「Ho、Er、Tm、Yb、Lu」に訂正する。
(4)訂正事項d
【0009】の「Ho、Er、Tm、Yb、Lu又はY」を、「Ho、Er、Tm、Yb、Lu」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載された「Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物」から、「Yの元素の単体またはその化合物」を削除するものであり、また、訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項2に記載された「前記Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yの元素の化合物」から「Yの元素の化合物」を削除するものであるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項c及びdは、特許請求の範囲の請求項1及び2の上記訂正事項a及びbに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な記載との整合をとるための訂正であるから、これらの訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a〜dは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
3-1.異議申立人の申立ての理由、及び、取消理由の概要
(1)特許異議申立人は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証〜甲第6号証を提出して、請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、請求項3に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。さらに、本件明細書には記載不備があるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第36条第4項及び第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨、主張している。
当審による2回にわたる取消理由の概要は、特許異議申立人の上記主張と同趣旨のものである。

3-2.本件発明
上記訂正は、上記2で示したとおりこれを認めることができるから、請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 Co、Zn、Cd、Mgのうち少なくとも1種類以上を固溶状態で含む水酸化ニッケルを主成分とする活物質と、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物を含有するアルカリ蓄電池用ニッケル電極において、該単体またはその化合物と前記活物質が遊離していることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル電極。
【請求項2】 前記Ho、Er、Tm、Yb、Luの元素の化合物が、酸化物、水酸化物またはフッ化物である請求項1記載のアルカリ蓄電池用ニッケル電極。
【請求項3】 前記水酸化ニッケルを主成分とする活物質の内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にある請求項1または請求項2記載のアルカリ蓄電池用ニッケル電極。」

3-3.引用刊行物に記載された事項
当審が通知した取消理由において引用した刊行物1〜6、及び、同じく2回目の取消理由において追加して引用した周知技術文献1〜4(以下、「追加文献1〜4」という。)には、次のとおりの事項が記載されている。
刊行物1:特開平5-28992号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証と同じ)
(摘示1-1)「【請求項1】ニッケル酸化物を主成分とする活物質を導電性芯材で支持してなるニッケル正極において、前記活物質にイットリウム、インジウム、アンチモン、バリウム、カルシウムおよびベリリウムの化合物のうち少なくとも一種を添加したことを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル正極。」(特許請求の範囲の請求項1)
(摘示1-2)「【請求項2】イットリウム、インジウム、アンチモン、バリウム、カルシウムおよびベリリウムの化合物が、Y2O3、Y(OH)3、In2O3、In2O、In2O3・H2O、Sb2O3、Sb2O4、Ba(OH)2、CaO、Ca(OH)2、BeOおよびBe(OH)2である請求項1のアルカリ蓄電池用ニッケル正極。」(特許請求の範囲の請求項2)
(摘示1-3)「【請求項10】ニッケル酸化物が、カドミウム、亜鉛・・・マグネシウム・・・コバルト・・・のうち少なくとも一種を結晶内部に固溶体として・・・含有した水酸化ニッケルである請求項1のアルカリ蓄電池用ニッケル正極。」(特許請求の範囲の請求項10)
(摘示1-4)「実施例1 まず、正極を次のようにして作成した。正極活物質であるニッケル酸化物として、内部にコバルトおよびカドミウムがそれぞれ・・・固溶体として含有した球状水酸化ニッケル粉末を用意した。・・・添加剤粉末としてのY2O3、In2O3、Sb2O3、Ca(OH)2とを・・・混合した。こうしてできた混合物に水を加えて混合し、ペースト状にした後、支持体である・・・発泡状ニッケル多孔体へ充填し・・・ニッケル正極を作成した。」(【0026】〜【0028】)
刊行物2:特開平4-349353号公報(同じく甲第2号証と同じ)
刊行物3:特開平2-30061号公報(同じく甲第3号証と同じ)
刊行物4:特開平3-46758号公報(同じく甲第4号証と同じ)
刊行物5:特開平5-74450号公報(同じく甲第5号証と同じ)
刊行物6:特開平8-17434号公報(同じく甲第6号証と同じ)
追加文献1:特開平5-21064号公報
追加文献2:特開平5-41212号公報
追加文献3:特開平7-153464号公報
追加文献4:特開平7-245104号公報
刊行物2〜6、及び、追加文献1〜4には、アルカリ蓄電池用ニッケル電極の水酸化ニッケルを主成分とする活物質は、その内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にあることが記載されている。

3-5.取消理由についての当審の判断
(1)明細書の記載不備について
記載不備に係る取消理由は、以下の(イ)、(ロ)のとおりのものである。
(イ)請求項1には、「Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物」と記載され、請求項2には、「前記Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yの元素の化合物」と記載されているが、「Yの元素」について、発明の詳細な説明には、【0009】に「重希土類元素のHo、Er、Tm、Yb、Lu又はY」と記載されているものの、「Yの元素」の場合の実施例は記載されていない。「Y」は、「La、Ce、Gd」及び「Ho、Er、Tm、Yb、Lu」と同様に希土類元素に属するものではあるが、重希土類元素といえるものではなく、「La、Ce、Gd」が比較例であることを勘案すると(【0013】参照)、「La、Ce、Gd」よりもはるかに軽い「Y」において、重希土類元素である「Ho、Er、Tm、Yb、Lu」と同様な作用、効果を奏することは、予測可能な範囲のことではない。よって、「Yの元素の単体またはその化合物」について、発明の詳細な説明には当業者が容易にその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとすることはできず、また、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。
したがって、請求項1〜4に係る特許は、特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ロ)請求項1には、「該単体またはその化合物と前記活物質が遊離している」と記載されているが、「遊離」について発明の詳細な説明には、【0010】に「これらの希土類元素を水酸化ニッケルと遊離した状態で添加することにより・・・」と記載され、【0011】には、「希土類元素の添加方法としては、水酸化ニッケルを主体とする正極活物質に上記希土類元素の単体又はその化合物の粉末等を混合したものをニッケル多孔体の基板等に充填する方法や、水酸化ニッケルを主体とする活物質を基板に充填した後に上記希土類元素の単体または化合物をその基板の一部や表面等に塗布するなどの方法があり、正極に接するセパレータ等に予め塗布しておくことなどによっても同様の効果が得られる。」と記載されている。しかしながら、このような製造方法による規定では、請求項1に記載される「遊離」状態とは如何なる状態を含み、如何なる状態を含まないかは依然として不明であるから、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、また、発明の詳細な説明は、その発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
したがって、請求項1〜4に係る特許は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
そこで、検討すると、(イ)は、上記2.2-1の訂正事項a〜dにより、特許請求の範囲の請求項1、2及び発明の詳細な説明から「Y」が削除され、訂正後の特許請求の範囲の範囲外であることが明確となったから、記載不備は解消したといえる。
また、(ロ)について、平成16年6月25日付け特許異議意見書には、『「遊離」とは、広辞苑に「[化]単体または他の物と化合しないで存在すること。」と、その一般的意味が記載されているが、請求項1に記載される「遊離」も同様な意味であって、「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物」と「水酸化ニッケルを主成分とする活物質」が化合しないで存在すること、すなわち、「化合している状態を含まない」ことである』旨、記載されてされている(特許異議意見書第2〜3頁)。
この特許異議意見書の記載を参酌すると、「遊離」状態とは如何なる状態を含み、如何なる状態を含まないかは、明確であるといえるから、(ロ)の記載不備は解消したといえる。

(2)新規性進歩性について
(2-1)本件発明1について
刊行物1の摘示1-1には、ニッケル酸化物を主成分とする活物質を導電性芯材で支持してなるニッケル正極において、前記活物質にY、In、Sb、Ba、Ca、Beの化合物のうち少なくとも一種を添加したアルカリ蓄電池用ニッケル正極が記載され、摘示1-3によると、ニッケル酸化物は、Cd、Zn、Mg、Coのうち少なくとも一種を結晶内部に固溶体として含有した水酸化ニッケルである。
また、摘示1-2によると、活物質に添加される「Y、In、Sb、Ba、Ca、Beの化合物」は、酸化物あるいは水酸化物であり、摘示1-4には、添加剤粉末としてのY2O3、In2O3、Sb2O3、Ca(OH)2を、内部にCo及びCdを固溶体として含有した球状水酸化ニッケル粉末に混合してペースト状にした後、支持体である発泡状ニッケル多孔体へ充填して、実施例のニッケル正極を作成したことが記載されている。そうすると、活物質に添加する「Y、In、Sb、Ba、Ca、Beの化合物」は、粉末として、「Cd、Zn、Mg、Coのうち少なくとも一種を結晶内部に固溶体として含有した水酸化ニッケル」に添加混合されるものであるといえ、この「Y、In、Sb、Ba、Ca、Beの化合物」の添加方法は、本件発明1の「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」の粉末を、水酸化ニッケルを主体とする正極活物質に混合することによる添加方法と異なるところはないから(本件明細書の【0010】、【0011】参照)、「Y、In、Sb、Ba、Ca、Beの化合物」は、本件発明1の「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」と同様に、活物質とは遊離していることは明かである。
これら摘示1-1〜1-4に記載される事項を、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、「Co、Zn、Cd、Mgのうち少なくとも1種類以上を固溶体として含有した水酸化ニッケルを主成分とする活物質と、該活物質に、Y、In、Sb、Ba、Ca、Beの少なくとも一種類以上の化合物を添加したアルカリ蓄電池用ニッケル正極において、該化合物と前記活物質が遊離しているアルカリ蓄電池用ニッケル正極」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。
本件発明1と刊行物1発明を対比すると、刊行物1発明の「ニッケル正極」は、本件発明1の「ニッケル電極」に相当するから、両者は、「Co、Zn、Cd、Mgのうち少なくとも1種類以上を固溶状態で含む水酸化ニッケルを主成分とする活物質と、化合物を含有するアルカリ蓄電池用ニッケル電極において、該化合物と前記活物質が遊離しているアルカリ蓄電池用ニッケル電極」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:化合物が、本件発明1は、「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」であるのに対し、刊行物1発明は、Y、In、Sb、Ba、Ca、Beの少なくとも一種類以上の化合物である点。

上記相違点について検討すると、刊行物1には、活物質とは遊離している化合物として「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」は記載も示唆もされておらず、また自明な事項でもないから、上記相違点は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではない。

(2-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、Ho、Er、Tm、Yb、Luの元素の化合物が、酸化物、水酸化物またはフッ化物であることを規定したものであって、「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」を含有するという発明特定事項を、本件発明1と共通に備えるものである。
よって、本件発明2は、「(2-1)本件発明1について」に記載したと同様の理由により、刊行物1に記載された発明ではない。

(2-3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2において、水酸化ニッケルを主成分とする活物質の内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にあることを規定したものである。
これに対し、刊行物2〜6、及び、追加文献1〜4には、アルカリ蓄電池用ニッケル電極の水酸化ニッケルを主成分とする活物質は、その内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にあることが記載され、内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にある水酸化ニッケルを主成分とする活物質は周知であるといえるから、刊行物1発明においても、水酸化ニッケルを主成分とする活物質の内部細孔容積は、0.1ml/g以下の範囲にあるものと認められる。
しかしながら、本件発明3は、「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」を含有するという発明特定事項を、本件発明1あるいは本件発明2と共通に備えるものであるから、「(2-1)本件発明1について」あるいは「(2-2)本件発明2について」に記載したと同様の理由により、刊行物1に記載された発明ではない。
さらに、刊行物2〜6には、ニッケル電極が「Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の化合物」を含有することは、記載も示唆もされていないから、本件発明3は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては訂正後の本件発明1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件発明1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルカリ蓄電池用ニッケル電極
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 Co、Zn、Cd、Mgのうち少なくとも1種類以上を固溶状態で含む水酸化ニッケルを主成分とする活物質と、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物を含有するアルカリ蓄電池用ニッケル電極において、該単体またはその化合物と前記活物質が遊離していることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル電極。
【請求項2】 前記Ho、Er、Tm、Yb、Luの元素の化合物が、酸化物、水酸化物またはフッ化物である請求項1記載のアルカリ蓄電池用ニッケル電極。
【請求項3】 前記水酸化ニッケルを主成分とする活物質の内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にある請求項1または請求項2記載のアルカリ蓄電池用ニッケル電極。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ニッケル・金属水素化物蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル・亜鉛蓄電池などのアルカリ蓄電池に用いられるニッケル電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年のポータブルエレクトロニクス機器の小型軽量化に伴い、その携帯電源である電池にも高エネルギー密度化が求められている。その要求に対処するために、ニッケル・水素化物蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル・亜鉛蓄電池などのアルカリ蓄電池が開発実用化されている。また、そのエネルギー密度や寿命などの点から、特にニッケル・水素化物蓄電池は、電気自動車用電源としても有望視されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これらの蓄電池は、特に機器内などに設置されるため、高温での使用になり易い。そのために高温での活物質利用率の向上が要求される。しかし、高温になるとニッケル電極の充電効率が低くなるために活物質利用率は低下し、ガス発生による電解液の枯渇により、電池寿命が短くなる。
【0004】一般に高温の活物質利用率を向上させるためには、電解液組成を変化させる方法や、正極に用いられる水酸化ニッケルの結晶中に存在する固溶状態のCoの量を増加させるなどの方法がとられている。しかし、電解液組成を変化させると低温での活物質利用率の低下・高率放電性能の低下、Co量を極端に増加させると放電電圧の低下・高コスト、などの問題が生ずる。
【0005】本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、高温性能に優れ、長寿命のアルカリ蓄電池用ニッケル電極を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】アルカリ蓄電池用ニッケル電極を、Co、Zn、Cd、Mgのうちの少なくとも1種類以上を固溶状態で含む水酸化ニッケルを主成分とする活物質と、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素の単体またはその化合物を含有し、該単体またはその化合物と前記活物質が遊離した電極とする。
【0007】本発明に於いては、前記Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち少なくとも1種類以上の元素を含む化合物が、酸化物、水酸化物またはフッ化物であることが望ましい。また、前記水酸化ニッケルを主成分とする活物質の内部細孔容積が、0.1ml/g以下の範囲にあることが望ましい。
【0008】水酸化ニッケル中にCd、Zn又はMgを固溶状態で添加すると、電極膨潤が抑制され、電極膨潤によりセパレータが圧迫されることによるセパレータ内の電解液枯渇現象を生じにくいため、電池長寿命が期待される。また、水酸化ニッケル中にCoが固溶状態で含まれていると、水酸化ニッケルの酸化電位を卑にシフトさせる効果があり、充電効率が高くなる。即ち、水酸化ニッケルの酸化電位と酸素発生電位の差(以下、過電圧と略す)は充電効率と相関性があり、過電圧が大きくなると充電効率が高くなる傾向がある。特に高温では水酸化ニッケルの充電において過電圧が低くなるため、Coが固溶状態で含まれている水酸化ニッケルを正極活物質として使用した場合に充電効率を高める著しい効果が得られる。
【0009】しかし、50℃以上の雰囲気温度においてはその充電効率を高めるCoの効果が薄くなることが分かっている。そこで、酸素発生電位を引き上げる効果のある重希土類元素のHo,Er,Tm,Yb,Luの元素のうちの少なくとも1種類以上の元素の単体又は化合物を添加することにより、さらに充電効率を良くすることができる。これはCoによる効果と上記希土類元素による相乗効果によって達成されるものである。LaやCeなどの希土類元素に比べて、上記希土類元素は高温での充電効率を顕著に引き上げる効果を持っており、特にYb酸化物やEr酸化物などを添加した場合にその効果は大きい。また、Coを固溶状態で含んでいない水酸化ニッケルを用いた場合(極板の膨潤を抑えるため、Zn,Cd,Mgの中の少なくとも1種類以上は含む)においても、上記希土類元素の添加により充電効率は高くなる。
【0010】Ho,Er,Tm,Yb,Luの希土類元素は、単体元素として使用するとコストのかかるものもあるため、これら希土類元素化合物の混合粉末等を用いることにより、コストの低減を図ることができる。これらの希土類元素を水酸化ニッケルと遊離した状態で添加することにより、希土類元素の特性が持続することは言うまでもなく、製造上の簡便さも図ることができる。
【0011】希土類元素の添加方法としては、水酸化ニッケルを主体とする正極活物質に上記希土類元素の単体又はその化合物の粉末等を混合したものをニッケル多孔体の基板等に充填する方法や、水酸化ニッケルを主体とする活物質を基板に充填した後に上記希土類元素の単体または化合物をその基板の一部や表面等に塗布するなどの方法があり、正極に接するセパレータ等に予め塗布しておくことなどによっても同様の効果が得られる。
【0012】また、上記希土類元素の化合物を酸化物、水酸化物、フッ化物とすることによりアルカリ中での安定性が得られる。更に、内部細孔容積が0.1ml/g以下の範囲にある高密度の水酸化ニッケルを用いることにより、高率放電特性を向上させ、高温で安定かつ高容量な電極を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に即して説明する。Znを5重量%固溶状態で含む高密度球状水酸化ニッケル粉末と、10重量%の一酸化コバルト粉末とを混合し(この混合粉末をAとする)、これに2.5重量%の酸化ホルミウム粉末を加えてよく混合した後に、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填した。この電極を本発明電極Bとする。また、混合粉末Aに2.5重量%の酸化エルビウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、本発明電極Cを得た。また、混合粉末Aに2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、本発明電極Dを得た。比較のため、混合粉末Aに2.5重量%の酸化ランタン粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Eを得た。また、同様に混合粉末Aに2.5重量%の酸化セリウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Fを得た。また、同様に混合粉末Aに2.5重量%の酸化ガドリニウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Gを得た。また、混合粉末Aに増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Hを得た。
【0014】上記のようにして作製したそれぞれのニッケル電極をナイロンセパレータで包み、水素吸蔵電極を負極として電池を作製し、比重1.28の水酸化カリウム水溶液内で、負極容量よりも正極容量を小さくして充放電試験を行った。充電は30mA(0.1C相当)で15時間、放電は60mAでHg/HgO参照極に対して0Vで終了する条件で行った。
【0015】図1に、温度変化と正極の容量の利用率(正極の理論容量に対する比率)との関係を示す。温度の上昇に伴い、比較電極E,F,G,Hでは極端に利用率が低下するのに対し、本発明電極B,C,Dは容量の低下が小さい。特に本発明電極Dにおける低下率は小さく、低温においても安定な容量を維持している。
【0016】次に、Znを3重量%固溶状態で含む高密度球状水酸化ニッケル粉末と、10重量%の一酸化コバルト粉末とを混合し(この混合粉末をIとする)、これに2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えてよく混合した後に、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填した。この電極を本発明電極Jとする。比較のため、混合粉末Iに増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Kを得た。また、Zn,Coをそれぞれ3重量%固溶状態で含む高密度球状水酸化ニッケル粉末と、10重量%の一酸化コバルト粉末とを混合し、これに2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えてよく混合した後に、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填した。この電極を本発明電極Lとする。また、Zn,Coをそれぞれ3重量%,5重量%固溶状態で含む高密度球状水酸化ニッケル粉末と、10重量%の一酸化コバルト粉末とを混合し、これに2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えてよく混合した後に、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填した。この電極を本発明電極Mとする。
【0017】上記のようにして作製したそれぞれのニッケル電極を用いて、公知の方法で容量1100mAhのAAサイズのニッケル水素蓄電池を作製した。充電は100mAで15時間、放電は200mAで電池電圧1.0Vで終了する条件で行った。
【0018】図2に、試験温度と電池容量との関係を示す。図から明らかなように、本発明電極J,L,Mを用いた電池は、比較電極Kを用いた電池に比べ温度変化による低下が小さい。比較電極Kを用いた電池は、40℃以上の高温においては、20℃の場合に比べて容量は50%以下となるのに対して、特に本発明電極Mを用いた電池においては、60℃の高温時においても、20℃の場合に比べて70%の容量が得られている。本発明電極Jを用いた電池と本発明電極Lを用いた電池の容量の差は、後者においては希土類元素と固溶状態のCoによる相乗効果のために、より充電効率が高くなったことを示している。
【0019】更に、Znを5重量%固溶状態で含む高密度球状水酸化ニッケル粉末と、10重量%の一酸化コバルト粉末とを混合し(この混合粉末をAとする)、これに市販の硝酸イッテルビウム溶液をアルカリで中和して得られた水酸化物の粉末を2.5重量%加えてよく混合した後に、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填した。この電極を本発明電極Nとする。また、混合粉末Aに2.5重量%の市販のフッ化イッテルビウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、本発明電極Oを得た。また、混合粉末Aに2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填し、本発明電極Dを得た。比較のため、混合粉末Aに増粘剤を加えてペーストとしニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Hを得た。
【0020】上記のようにして作製したそれぞれのニッケル電極をナイロンセパレータで包み、水素吸蔵電極を負極として電池を作製し、比重1.28の水酸化カリウム水溶液内で、負極容量よりも正極容量を小さくして充放電試験を行った。充電は30mA(0.1C相当)で15時間、放電は60mAでHg/HgO参照極に対して0Vで終了する条件で行った。
【0021】図3に、温度変化と正極の容量の利用率(正極の理論容量に対する比率)の関係を示す。温度の上昇に伴い、比較電極Hは極端に利用率が低下するのに対し、本発明電極D,N,Oは50℃においても高容量が得られている。
【0022】また、Znを5重量%固溶状態で含み内部細孔容積が0.03ml/gの高密度球状水酸化ニッケル粉末と、10重量%の一酸化コバルト粉末とを混合し、これに2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えてよく混合した後に、増粘剤を加えてペースト状としてニッケル多孔体基板に充填した。この電極を本発明電極Pとする。また、Znを5重量%固溶状態で含み内部細孔容積が0.14ml/gの中和水酸化ニッケル粉末に、2.5重量%の酸化イッテルビウム粉末を加えて混合した後、増粘剤を加えてペーストとしニッケル多孔体基板に充填し、比較電極Qを得た。
【0023】上記のようにして作製したそれぞれのニッケル電極をナイロンセパレータで包み、水素吸蔵電極を負極として電池を作製し、比重1.28の水酸化カリウム水溶液内で、負極容量より正極容量を小さくして充放電試験を行った。充電は30mA(0.1C相当)で15時間、放電は60mAでHg/HgO参照極に対して0Vで終了する条件で行った。
【0024】20℃で充放電を行った結果、正極利用率は本発明電極Pは100%の利用率が得られたのに対して、比較電極Qは96%の利用率であった。50℃における充放電を行った結果、本発明電極Pは72%の利用率が得られたのに対し、比較電極Qは61%の利用率であった。1800mAの放電(3C相当)を行った結果、比較電極Qは極端に利用率が低下したのに対し、本発明電極Pは高容量が得られた。
【0025】本実施例においては希土類化合物の添加量を2.5重量%で行ったが、これよりも少ない添加量においても十分な高温での利用率が得られている。また、2.5重量%以上の添加により高温時の利用率は更に増加する。ただし、コストの点から考えると、20重量%までの添加が望ましい。
【0026】
【発明の効果】本発明により、低温から高温の幅広い温度域において容量増減の少ない安定なニッケル電極を提供することができるため、そのニッケル電極を用いたアルカリ蓄電池の産業上の利用価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】温度と利用率との関係図である。
【図2】温度と電池容量の関係図である。
【図3】温度と利用率との関係図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-29 
出願番号 特願平8-75519
審決分類 P 1 651・ 536- YA (H01M)
P 1 651・ 113- YA (H01M)
P 1 651・ 121- YA (H01M)
P 1 651・ 537- YA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 正博  
特許庁審判長 奥井 正樹
特許庁審判官 吉水 純子
酒井 美知子
登録日 2002-06-07 
登録番号 特許第3314611号(P3314611)
権利者 株式会社ユアサコーポレーション
発明の名称 アルカリ蓄電池用ニッケル電極  
代理人 松本 悟  
代理人 小田 富士雄  
代理人 能美 知康  
代理人 松本 悟  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ