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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C02F |
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管理番号 | 1104387 |
異議申立番号 | 異議2002-72378 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-05-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-10-02 |
確定日 | 2004-07-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3269951号「難分解性有機物の除去方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3269951号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許3269951号の請求項1〜3に係る発明(以下、夫々「本件発明1」〜「本件発明3」という。)についての出願は、平成7年10月27日に特許出願され、平成14年1月18日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、伊藤廣美(以下、「申立人」という)より特許異議の申立てがなされたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 本件訂正の内容は、本件特許明細書及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおりに、すなわち訂正事項a〜dのとおりに訂正しようとするものである。 訂正事項a 明細書の【特許請求の範囲】を次のとおりに訂正する。 「【請求項1】生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン接触塔から流出するオゾン酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【請求項2】生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をUV照射装置を備えたオゾンUV接触塔に導入してオゾンUV酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾンUV接触塔から流出するオゾンUV酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾンUV接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾンUV接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【請求項3】生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾンラジカル発生触媒を充填したオゾン触媒接触塔に導入してオゾン触媒酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン触媒接触塔から流出するオゾン触媒酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン触媒接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン触媒接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。」 訂正事項b 明細書の段落【0010】を次のとおりに訂正する。 「【課題を解決するための手段】 本発明の難分解性有機物の除去方法は、生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン接触塔から流出するオゾン酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくするものである。」 訂正事項c 明細書の段落【0011】を次のとおりに訂正する。 「また本発明の難分解性有機物の除去方法は、生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をUV照射装置を備えたオゾンUV接触塔に導入してオゾンUV酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾンUV接触塔から流出するオゾンUV酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾンUV接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾンUV接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくするものである。」 訂正事項d 明細書の段落【0012】を次のとおりに訂正する。 「また本発明の難分解性有機物の除去方法は、生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾンラジカル発生触媒を充填したオゾン触媒接触塔に導入してオゾン触媒酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン触媒接触塔から流出するオゾン触媒酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン触媒接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン触媒接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくするものである。」 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、訂正前の請求項1、2及び3において(a-1)「難分解性有機物」を「生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物」に、(a-2)「酸化処理し」を「酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し」に、(a-3)「スカベンジャー」を「ラジカルスカベンジャー物質」に、また(a-4)「濃度を低下させる」を「濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくする」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項aの(a-1)は、特許明細書の段落【0016】【0017】に、(a-2)は段落【0017】【0022】に、(a-3)は段落【0005】【0019】〜【0022】に、また(a-4)は段落【0005】【0009】【0022】【9925】に記載されているから、訂正事項aは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。なお、上記(a-4)については、摘記した段落の記載からスカベンジャー物質の低下によってラジカル誘発物質との反応により発生するOHラジカルを難分解性有機物の酸化に最大限利用できる、つまりラジカル誘発物質として効果を発揮させるものとみれることは明らかである。 また訂正事項b〜dは、訂正事項aと整合を図るとともに、特許請求の範囲の記載と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、訂正事項aで見たとおり願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立についての判断 2-1.本件発明 上記のとおり、訂正は認められるから、本件発明は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン接触塔から流出するオゾン酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【請求項2】生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をUV照射装置を備えたオゾンUV接触塔に導入してオゾンUV酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾンUV接触塔から流出するオゾンUV酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾンUV接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾンUV接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【請求項3】生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾンラジカル発生触媒を充填したオゾン触媒接触塔に導入してオゾン触媒酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン触媒接触塔から流出するオゾン触媒酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン触媒接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン触媒接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 2-2.取消理由 本件特許の請求項1〜3に係る発明は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2-3.取消理由で引用された刊行物の記載事項 上記各刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。 (1)刊行物1:特開平2-303598号公報(申立人が提示した甲第3号証) (ア)「有機物を含有する原水を生物処理した後にオゾン酸化処理するか、又はオゾン酸化処理した後に生物処理する方法において、生物処理工程の流出水の少なくとも一部をオゾン酸化工程に導入すると共に、オゾン酸化工程の流出水の少なくとも一部を生物処理工程に導入することを特徴とする有機物含水の処理方法。」(特許請求の範囲) (イ)「オゾン処理を適用することにより、生物的に難分解性の有機物(・・)は酸化されてその生物分解性は高められるが、一方、生物分解性の高い有機物(・・)はオゾンにより無機化され易い。そして、生物易分解性有機物が被処理水に多量に含まれている場合にあっては、オゾンが生物易分解性有機物の無機化反応に徒に消費されてしまい、相対的に生物難分解性有機物の酸化に利用されるオゾンの割合が少なくなる。」(第1頁右欄13行〜第2頁左上欄2行) (ウ)「本発明の方法では、オゾン処理工程の流出水の少なくとも一部を生物処理工程に導入すると共に、生物処理工程の流出水の少なくとも一部をオゾン処理工程に導入する。このため、・・・生物易分解性有機物が予め生物処理により分解されて除去された被処理水がオゾン処理工程に供給されることとなるため、オゾンの酸化は生物難分解性有機物にのみ作用するようになる。」(第2頁左下欄8行〜同頁右下欄1行) (2)刊行物2:特開昭53-2944号公報(申立人が提示した甲第1号証) (ア)「有機汚水を生物処理し、その処理水を低pHにおいて重金属を触媒として酸化剤で酸化処理したのち凝集沈殿処理し、さらに生物処理することを特徴とする有機性汚水の処理方法。」(特許請求の範囲) (イ)「酸化処理において使用する酸化剤としては、・・・オゾン等があり」(第2頁左上欄16〜18行) (3)刊行物3:特開昭55-44361号公報(申立人が提示した甲第2号証) (ア)「廃水を生物処理する装置(2)、その生物処理装置(2)からの処理水を凝集沈殿させる装置(3)、及び、その凝集沈殿装置(3)からの処理水を光酸化させる装置(4)を設けた廃水処理装置であって、前記光酸化装置(4)からの処理水の一部を前記生物処理装置(2)に返送する流路(R)を設けてあることを特徴とする廃水処理装置。」(特許請求の範囲請求項1) (イ)「前記光酸化装置(4)においては、紫外線とオゾン、・・・又は、紫外線とオゾンと塩素等の酸化剤の併用により・・・被処理物質を分解除去するものである。」(第2頁左上欄17行〜同頁右上欄1行) (4)刊行物4:特開平5-228496号公報(申立人が提示した甲第4号証) (ア)「過酸化水素の注入、紫外線照射、超音波発射、触媒の使用の少なくとも1つを併用したオゾンリアクターによってオゾン反応およびオゾンラジカル反応で処理水中の生物難分解性物質を酸化分解して生物易分解性物質に換えた後、生物処理リアクターで前記生物易分解性物質を微生物によってさらに分解することを特徴とする生物難分解性物質の処理方法。」(【特許請求の範囲】) (イ)「UVランプ7のさらに上部には触媒充填槽8が設けられ、触媒が充填されている。この触媒は・・オゾンのOHラジカル反応を促進すると共に、残存溶解オゾンと過酸化水素を分解除去する働きがある。」(段落【0013】) 4.当審の判断 4-1.本件発明1について (1)一致点・相違点 刊行物1には、上記記載事項(ア)〜(ウ)からみて「生物的に難分解性の有機物を含有する原水を生物処理した後にオゾン酸化処理するか、又はオゾン酸化処理した後に生物処理する方法において、生物処理工程の流出水の少なくとも一部をオゾン酸化工程に導入すると共に、オゾン酸化工程の流出水の少なくとも一部を生物処理工程に導入して、生物易分解性有機物が予め生物処理により分解されて除去された被処理水がオゾン処理工程に供給されることとなり、オゾンの酸化は生物難分解性有機物にのみ作用するようにした有機物含水の処理方法。」の発明(以下、「刊行1発明」という)が記載されている。 本件発明1と刊行1発明とを対比すると、刊行1発明における「オゾン酸化」が、本件発明1の「オゾン直接酸化」に相当することから、両者は、「生物難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、オゾン接触塔から流出するオゾン酸化処理水を生物ろ床に導入して生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、生物ろ床の処理水をオゾン接触塔の流入部へ返流した有機物の除去方法」で一致するものの、両者は次の点で相違している。 相違点a:本件発明1が「オゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理して」いるのに対し、刊行1発明では「オゾン難分解性の有機物を含んだ原水」であるのか不明である点 相違点b:本件発明1が「ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し」ているのに対し、刊行1発明では「ラジカル酸化」については不明である点 相違点c:本件発明1が「オゾン酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して」いるのに対し、刊行1発明では「オゾン酸化処理した後に生物処理」する点 相違点d:本件発明1が「オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくする」のに対し、刊行1発明では「生物易分解性有機物が予め生物処理により分解されて除去された被処理水がオゾン処理工程に供給されることとなり、オゾンの酸化は生物難分解性有機物にのみ作用するようにし」ている点 (2)相違点の判断 そこで、上記相違点a〜dについて他の証拠を検討するに、刊行物2には、上記記載事項(ア)(イ)から「オゾン酸化処理したのち凝集沈殿処理し、さらに生物処理する」ことが記載されている。しかしながら、この「凝集沈殿」は本件発明1の「凝集濾過」とは異なり、しかも返送するものではない。そして、刊行物2には相違点a,b及びdに係る本件発明1の技術的事項については何ら記載されていない。また、刊行物3には、上記記載事項(ア)(イ)から「廃水を生物処理し、その処理水を凝集沈殿させ、その処理水を紫外線とオゾンにより光酸化させ、その処理水の一部を前記生物処理に返送する」ことが記載されているが、相違点a〜dに係る本件発明1の技術的事項については記載されていない。また、刊行物4には、上記記載事項(ア)(イ)からみて「過酸化水素の注入、紫外線照射、超音波発射、触媒の使用の少なくとも1つを併用したオゾンリアクターによってオゾン反応およびオゾンラジカル反応で処理水中の生物難分解性物質を酸化分解して生物易分解性物質に換えた後、生物処理リアクターで前記生物易分解性物質を微生物によってさらに分解する」ことが記載されている。ここでは「オゾンラジカル反応」が開示されているが、この「ラジカル反応」は「生物難分解生物質の酸化分解処理」であって、相違点bに係る本件発明1の「ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解」と同じとすることはできない。そして、他の相違点a,c及びdに係る本件発明1の技術的事項については何ら記載されていない。 以上みたように、刊行物2〜4には「凝集沈殿」や「ラジカル反応」の記載がみられるが、本件発明1の「凝集濾過」や「ラジカル酸化」とは意図する技術内容が異なるものであるから、刊行物2〜4に上記相違点a〜dに係る本件発明1の技術的事項をどこにも見出すことはできない。 そして、本件発明1は上記相違点a〜dの構成を採ることにより、「ラジカルスカベンジャー物質を低濃度としてその悪影響を低減することができ、これにより発生したOHラジカルをオゾン難分解性通気物のラジカル酸化反応に利用できる」などの本件特許明細書記載の効果を奏するものである。 してみると、本件発明1は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4-2.本件発明2について 本件発明2は本件発明1において「オゾン酸化」を「オゾンUV酸化」にしたもので、そのこと以外本件発明1の構成と同じであるから、上記した「4-1.本件発明1について」でみたと同じ理由により、本件発明2は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4-3.本件発明3について 本件発明3は本件発明1において「オゾン酸化」を「オゾン触媒酸化」にしたもので、そのこと以外本件発明1の構成と同じであるから、上記した「4-1.本件発明1について」でみたと同じ理由により、本件発明3は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 5結論 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すことができない。 また、他に本件訂正後の請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 難分解性有機物の除去方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン接触塔から流出するオゾン酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【請求項2】 生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をUV照射装置を備えたオゾンUV接触塔に導入してオゾンUV酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾンUV接触塔から流出するオゾンUV酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾンUV接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾンUV接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【請求項3】 生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾンラジカル発生触媒を充填したオゾン触媒接触塔に導入してオゾン触媒酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン触媒接触塔から流出するオゾン触媒酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン触媒接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン触媒接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくすることを特徴とする難分解性有機物の除去方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は排水などに含まれる難分解性有機物の除去方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 COD等の難分解性有機物を含む排水などは、たとえば図8に示したように、オゾン接触塔1と生物ろ床2に順次導入することにより処理している。すなわち、原水をオゾン接触塔1へ導入して、原水中の難分解性有機物をオゾン化ガスによりオゾン酸化処理して生物分解性有機物や硝酸性窒素とし、オゾン接触塔1より流出するオゾン処理水を生物ろ床2に導入して、オゾン処理水中の生物分解性有機物や硝酸性窒素を嫌気的条件下または好気的条件下で生物酸化処理により分解除去している。 【0003】 また、図9に示したように、オゾン接触塔1と生物ろ床2とを複数段設け、原水をこれらオゾン接触塔1と生物ろ床2に1頂次導入する処理方法も行われている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 オゾン酸化処理においては、水中に溶解したオゾン分子は、被酸化性物質を直接酸化する(直接酸化)とともに、ラジカル誘発物質と反応してOHラジカルとなって被酸化性物質を酸化する(ラジカル酸化)。直接酸化の場合、反応に選択性があるので、必ずしも全ての難分解性有機物を酸化できるというわけではない。一方、ラジカル酸化は、OHラジカルの酸化力が極めて強く物質選択性が小さいため、難分解性有機物の酸化に有用であるだけでなく、反応時間が短縮されるぶん反応塔の容積を小さくできるという利点を有している。 【0005】 ただし、難分解性有機物を含む排水には、ラジカル誘発物質が含まれるほか、OHラジカルを分解するスカベンジャー物質が多量に存在することがある。さらに、オゾン酸化処理によって重炭酸塩が生成し、生成した重炭酸塩がラジカルスカベンジャーとして働く。そのため、ラジカル酸化反応は、処理対象である難分解性有機物とスカベンジャー物質との競合反応となり、原水中にスカベンジャー物質が多いと難分解性物質の酸化に用いられるオゾンの割合は小さくなる。 【0006】 ここで、従来の方法は、図8を用いて説明したようにオゾン接触塔1と生物ろ床2とに一過式で流す方法、または図9を用いて説明したように複数段設けたオゾン接触塔1と生物ろ床2とに一過式で流す方法である。そのため、溶解したオゾンが原水中に含まれるラジカル誘発物質と反応してOHラジカルが生成しても、生成したOHラジカルは、上記したように物質選択性がほとんどないので、処理対象である難分解性有機物や、その酸化により生成した生物易分解性有機物や、スカベンジャー物質と反応してしまう。結果的に、オゾンが難分解性有機物の酸化に用いられる割合は小さくなる。そのため、図10のグラフに白四角で示したように、処理水中COD(難分解性有機物量の指標)を小さくするためにはオゾン反応量(g/m3)を大きくする必要があり、同グラフに黒四角で示したうに、オゾン反応が進行するほどオゾン利用効率(オゾンの反応量ΔO3/難解性有機物の除去量ΔCOD)が悪くなる。 【0007】 難分解性有機物の酸化の効率を高めるためには、オゾン接触塔内において、オゾンとOHラジカルの濃度が高く、生物易分解性有機物とスカベンジャー物質の濃度が低くなるような条件を設定しなければならない。しかるに、図8に示した方法では、オゾン接触塔においてオゾン酸化により生成した炭酸塩のようなスカベンジャー物質と生物易分解性有機物の濃度が大きいため、オゾンとOHラジカルはそれらとの反応に使われてしまう。図9に示した方法でも、第1段において、OHラジカルがスカベンジャー物質により分解されてしまう割合が大きく、後段では、原水中に含まれるラジカル誘発物質が生物酸化により低減されてOHラジカルが発生しにくくなるため、難分解性有機物の酸化に必要なラジカル酸化が起こりにくくなる。そのため、反応に時間がかかるし、発生したOHラジカルも反応の早いスカベンジャー物質によって分解されてしまう割合が大きい。 【0008】 本発明は上記問題を解決するもので、複雑な構成のオゾン接触塔を要することなくオゾン利用効率を向上させることができ、難分解性有機物を効果的に除去できるようにすることを目的とする。 【0009】 具体的には、本発明は、オゾン接触塔におけるスカベンジャー物質と生物易分解性有機物の濃度を低く保ち、その影響を極力小さくして、オゾンとラジカル誘発物質との反応により発生するOHラジカルを難分解性有機物の酸化に最大限利用できるようにすることを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明の難分解性有機物の除去方法は、生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾン接触塔に導入してオゾン酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン接触塔から流出するオゾン酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくするものである。 【0011】 また本発明の難分解性有機物の除去方法は、生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をUV照射装置を備えたオゾンUV接触塔に導入してオゾンUV酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾンUV接触塔から流出するオゾンUV酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾンUV接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾンUV接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくするものである。 【0012】 また本発明の難分解性有機物の除去方法は、生物難分解性およびオゾン難分解性の有機物を含んだ原水をオゾンラジカル発生触媒を充填したオゾン触媒接触塔に導入してオゾン触媒酸化処理してオゾン直接酸化により生物難分解性の有機物を生物易分解性有機物へ変換し、ラジカル酸化によりオゾン難分解性の有機物を分解し、オゾン触媒接触塔から流出するオゾン触媒酸化処理水を凝集濾過槽と生物ろ床とにいずれかの順序で導入して凝集濾過処理および生物酸化処理する難分解性有機物の除去方法において、凝集濾過槽または生物ろ床でラジカルスカベンジャー物質を除去した処理水をオゾン触媒接触塔の流入部へ返流して原水を希釈し、オゾン触媒接触塔内のラジカルスカベンジャー物質の濃度を低下させてラジカルスカベンジャー物質としての働きを抑制し、ラジカル誘発物質としての効果を発揮させてオゾン難分解性の有機物をラジカル酸化するOHラジカルの濃度を大きくするものである。 【0013】 オゾン接触塔は、底部に配した散気管からオゾン化ガスを散気する構造のもの、エゼクタ式のオゾン注入装置を備えたUチューブ型オゾン接触塔などを用いることができる。 【0014】 生物ろ床は、好気的条件にしたり、あるいは嫌気的条件にして必要に応じ水素供与体としてのメタノール添加等を行うことにより、有機物だけでなく窒素化合物をも除去することができる。したがって、好気的ろ床、嫌気的ろ床、および単一槽内に好気的領域と嫌気的領域とを有する生物ろ床などを用いることができる。 【0015】 上記した第1の構成によれば、原水はオゾン接触塔で処理された後に凝集濾過槽と生物ろ床とに流入してそれぞれにおいて処理され、その処理水がオゾン接触塔に循環されて同じ処理工程が繰返される。この処理方法による有機物の反応、挙動はおよそ以下のようになる。 【0016】 1)原水中に含まれる多重不飽和結合またはベンゼン環結合を持つオゾン易分解性の有機物は、流入と同時に分解されるか、あるいは生物易分解性の有機物へと変換される。したがって、オゾン接触塔におけるオゾン易分解性の有機物の濃度は小さくなり、オゾン難分解性の有機物が残留する。 【0017】 2)原水中のフミン酸やフミン質といった生物難分解性の有機物は、オゾンおよびOHラジカルにより生物易分解性有機物へと変換され、生じた生物易分解性有機物は後段の生物酸化処理により除去される。 【0018】 またフミン酸やフミン質の一部をなす高分子量あるいは不溶性の疎水性物質は、オゾン酸化やOHラジカル酸化は困難であるが、凝集濾過処理によって容易に除去される。 【0019】 一方では、フミン酸やフミン質はラジカルスカベンジャー物質として働くことが知られている。しかし、これらの物質は上記したようにオゾン酸化、生物酸化、凝集濾過により除去され、これらが除去された処理水がオゾン接触塔に返流されて原水に混合されるので、オゾン接触塔内のラジカルスカベンジャー濃度は小さく保たれる。 【0020】 3)原水中のMn、Fe等の無機物もラジカルスカベンジャー物質であるが、凝集濾過、生物ろ床により除去される。そして、これらが除去された処理水がオゾン接触塔に返流されて原水に混合されるので、オゾン接触塔内のMn、Fe等の無機物濃度も小さく保たれる。 【0021】 4)1),2),3)の結果、オゾン接触塔では、オゾン易分解性有機物や、フミン酸、フミン質、Mn、Fe等のラジカルスカベンジャー物質の濃度は小さくなり、オゾン難分解性有機物が残留した状態となる。 【0022】 したがって、オゾン接触塔では、原水中のラジカル誘発物質とオゾンとの反応により生成するOHラジカルは、ラジカルスカベンジャーにより無駄に消費されることなく、主としてオゾン難分解性有機物のラジカル酸化に利用される。 【0023】 つまり、上記した第1の構成によれば、オゾン易分解性の有機物、中程度にオゾン難分解性の有機物が効率よく分解されることになり、オゾン難分解性有機物の分解におけるオゾン利用効率は従来より大きなものとなる。 【0024】 上記した第2あるいは第3の構成によれば、UVあるいはオゾンラジカル発生触媒によってOHラジカルの発生量を増大することができ、これにより、極端にオゾン難分解性、生物難分解性の物質、いいかえれば非分解性の有機物をも、オゾン接触塔内で分解したり、生物易分解性物質に変換することができる。 【0025】 つまり、オゾン接触塔の内部で、オゾン易分解性の有機物とオゾン難分解性の有機物がともに効率よく分解されることになり、オゾン難分解性有機物の分解におけるオゾンの利用効率はさらに大きくなる。 【0026】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。 図1は本発明の一実施形態の難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置の全体構成を示す。図1において、3は塔内で被処理水とオゾンとが効率よく接触するように構成されたオゾン接触塔であり、4は凝集剤の添加によって凝集した凝集物を濾過するろ材層5を充填した凝集濾過槽であり、6は槽内に生物活性炭など微生物が付着したろ材層7を充填した生物ろ床である。 【0027】 オゾン接触塔3には、原水供給管8と後段より循環水を循環返送する循環水供給管9とが上部に接続し、塔外のオゾン発生機から導かれたオゾン供給管10と、塔内でオゾン酸化処理したオゾン処理水を凝集濾過槽4に送る送液管11とが底部に接続し、オゾン供給管10に連通した散気管12が塔内に設けられている。 【0028】 凝集濾過槽4には、オゾン接触塔3から導かれた送液管11が上部に接続し、槽内で凝集濾過処理した凝集濾過処理水を後段に送る送液管13が底部に接続している。 【0029】 生物ろ床4には、凝集濾過槽4から導かれた送液管13が上部に接続し、槽内で生物酸化処理した生物処理水を後段に送る生物処理水管14が底部に接続している。 【0030】 生物処理水管14は貯水槽15に導かれて貯水槽15の内部に生物処理水を貯留するようになっており、前記した循環水供給管9はこの貯水槽15の内部に基端をおくとともに循環水ポンプ16を介装していて、貯水槽15内の生物処理水の一部を循環水として任意の流量でオゾン接触塔3に返流する。17は貯水槽15内の残りの生物処理水を処理水として流出させる処理水管である。 【0031】 上記した構成による作用を説明する。 オゾン接触塔3の内部に、原水供給管8より原水を供給し、循環水供給管9より循環水を循環返送するとともに、オゾン供給管10より散気管12を通じてオゾン化ガスを導入する。 【0032】 これにより、原水および循環水からなる被処理水とオゾン化ガスとが接触して被処理水中にオゾン分子が溶解し、溶解したオゾンが被処理水中のオゾン易分解性有機物を直接酸化してオゾン易分解性有機物の濃度を減ずる。これと同時に、溶解したオゾンが被処理水中のラジカル誘発物質と反応してOHラジカルを生じ、生じたOHラジカルが被処理水中の難分解性有機物をラジカル酸化して難分解性有機物の濃度を減ずる。 【0033】 そして、オゾン易分解性有機物および難分解性有機物の酸化により生成した生物易分解性有機物や、OHラジカルでも酸化困難な不溶性・疎水性の有機物を含んだオゾン処理水が凝集濾過槽4に流入し、主として不溶性・疎水性の有機物が凝集剤の添加によりフロックを形成してろ材層5により水中から除去される。 【0034】 凝集濾過槽4から流出する凝集濾過処理水は生物ろ床6に導かれ、凝集濾過処理水中に残存する生物易分解性有機物は、オゾン化ガスが溶解した溶存酸素が存在する好気的条件下で、ろ材層7に付着した微生物により摂取、酸化され、一部は炭酸ガスまで分解される。生物ろ床6内の生物処理水は生物処理水管14によって貯水槽15に送られる。 【0035】 上記した作用をさらに詳細に説明する。 前述したように、原水中には様々な物質が含まれており、オゾン易分解性有機物や生物分解性有機物やラジカルスカベンジャーやラジカル誘発物質の濃度も大きい。一方、オゾン酸化と凝集濾過と生物酸化とを経た後にオゾン接触塔3に循環返送される循環水中にはこれらの物質の濃度は極端に低く、循環水中に含まれる有機物の中にオゾン難分解性有機物が占める割合は大きい。 【0036】 このような原水と循環水とがオゾン接触塔3において混合されるので、原水中にフミン酸やフミン質、およびMn、Feといった物質の濃度が高い場合も濃度が低減されてそのラジカルスカベンジャーとしての働きは抑制され、フミン酸やフミン質はラジカル誘発物質としての効果が発揮されるようになり、溶解したオゾン分子から発生するOHラジカルの濃度が大きくなる。その結果、効率的なオゾン直接酸化とラジカル酸化とが行われ、オゾン難分解性有機物も効果的に酸化される。 【0037】 したがって、上記したような方法においては、従来のオゾン酸化・生物酸化多段処理の欠点、すなわち、OHラジカルを効率的に生成させるのが困難であり、OHラジカルが生成した場合もラジカルスカベンジャーにより消費されてしまうため、ラジカル酸化を有効に生じさせるのが容易でないという不都合を解消できる。よって、オゾン難分解性有機物の分解におけるオゾン利用効率は従来より大きなものとなる。 【0038】 図2は各処理過程の水に含まれる易分解性有機物と難分解性有機物と非分解性有機物の量を従来の方法と比較して示したグラフである。(原水+循環水)は原水と循環水との混合比を1:9とした。本発明の循環式法では、従来の一過式法に比べて難分解性有機物の除去効率が向上している。 【0039】 図3はオゾン接触塔内におけるオゾン消費物質レベルを従来の方法と比較して示したグラフである。レベルはオゾン当量比(mgO/mgO)を意味する。本発明の循環式法では、従来の一過式法に比べて、スカベンジャーや易分解CODのレベルが低く、難分解CODのレベルが高くなっている。 【0040】 なお、上記したオゾン接触塔3では、底部に設けた散気管12からオゾン化ガスを散気するとともに、水流の向きを下向流としたが、原水供給管8と循環水供給管9とをオゾン接触塔3の下部に接続して水流の向きを上向流としてもよい。 【0041】 あるいは、図4に示したように、エゼクタ式オゾン注入手段18を備えた2重管型(Uチューブ型)オゾン接触塔19を用いることによって、オゾンの溶解効率を高めることができる。11a,11bはそれぞれ、オゾン処理水を循環するオゾン処理水循環管、オゾン処理水循環ポンプである。原水供給管8と循環水供給管9は、図示したようにオゾン接触塔19の上部に接続してもよいし、あるいはオゾン接触塔19の下部に接続してもよい。 【0042】 また、図1においては、水流の向きを下向流とした生物ろ床6を示したが、送液管13を生物ろ床6の下部に接続し、生物処理水管14を生物ろ床6の上部に接続して水流の向きを上向流としてもよい。 【0043】 あるいは、図5に示したように、2つのろ材層20,21の間に曝気装置22を設けて、一つの塔内に嫌気領域と好気領域とを存在させた生物ろ床23を用いることもできる。このように、好気的な条件とともに嫌気的条件が達成されるようにし、必要に応じて水素供与体としてのメタノール等を添加すれば、有機物以外に窒素化合物を除去することができる。 【0044】 図6は本発明の他の実施形態の難分解性有機物の除去方法が行なわれる水処理装置の全体構成を示し、この水処理装置は、オゾン接触塔3の内部にUV照射装置24を設けた以外は図1に示したものと同様の構成を有している。 【0045】 オゾン接触塔3の内部にオゾン化ガスを導入しつつ、UV照射装置24によりUVを照射すると、オゾン化ガスより被処理水中に溶解したオゾンからのOHラジカルの発生が促進されて、OHラジカルの濃度が大きくなる。その結果、極端にオゾン難分解性の有機物をも分解することができ、難分解性有機物の分解におけるオゾン利用効率は著しく高まる。 【0046】 図7は本発明のさらに他の実施形態の難分解性有機物の除去方法が行なわれる水処理装置の全体構成を示し、この水処理装置は、オゾン接触塔3の内部にラジカル発生触媒25を充填した以外は図1に示したものと同様の構成を有している。 【0047】 ラジカル発生触媒25を充填したオゾン接触塔3の内部にオゾン化ガスを導入すると、オゾン化ガスより被処理水中に溶解したオゾンはラジカル発生触媒25の表面に吸着され、局部的にオゾン濃度が高まるとともに、ラジカル発生触媒25の表面に存在する活性部位の作用によりOHラジカルの発生が促進されて、OHラジカルの濃度が大きくなる。その結果、ラジカル発生触媒25の表面で効率的なラジカル酸化反応が生じ、難分解性有機物の分解におけるオゾン利用効率は著しく高まる。 【0048】 【発明の効果】 以上のように本発明によれば、オゾン酸化処理と凝集濾過処理と生物酸化処理とを経た処理水をオゾン接触塔に返流するようにしたので、OHラジカルを効率的に生成できるとともに、ラジカルスカベンジャーや生物易分解性有機物を低濃度としてその悪影響を低減することができ、これにより、発生したOHラジカルをオゾン難分解性有機物のラジカル酸化反応に利用できる。この結果、難分解性有機物の分解におけるオゾン利用効率を向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一実施形態の難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置の全体構成を示した説明図である。 【図2】 同難分解性有機物の除去方法における各処理過程の水に含まれる易分解性有機物と難分解性有機物と非分解性有機物の量を、従来の難分解性有機物の除去方法との比較において示したグラフである。 【図3】 同難分解性有機物の除去方法におけるオゾン接触塔内のオゾン消費物質レベルを、従来の難分解性有機物の除去方法との比較において示したグラフである。 【図4】 同難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置に配置される他のオゾン接触塔の構成を示した説明図である。 【図5】 同難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置に配置される他の生物ろ床の構成を示した説明図である。 【図6】 本発明の他の実施形態の難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置の全体構成を示した説明図である。 【図7】 本発明のさらに他の実施形態の難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置の全体構成を示した説明図である。 【図8】 従来の難分解性有機物の除去方法が行われる水処理装置の全体構成を示した説明図である。 【図9】 従来の難分解性有機物の除去方法が行われる他の水処理装置の全体構成を示した説明図である。 【図10】 従来の難分解性有機物の除去方法におけるオゾン反応量と処理水中CODおよびオゾン利用効率との関係を示したグラフである。 【符号の説明】 3 オゾン接触塔 4 凝集濾過槽 6 生物ろ床 8 原水供給管 9 循環水供給管 10 オゾン供給管 24 UV照射装置 25 オゾンラジカル発生触媒 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-06-29 |
出願番号 | 特願平7-279519 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C02F)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 谷口 博 |
特許庁審判長 |
大黒 浩之 |
特許庁審判官 |
西村 和美 金 公彦 |
登録日 | 2002-01-18 |
登録番号 | 特許第3269951号(P3269951) |
権利者 | 株式会社クボタ |
発明の名称 | 難分解性有機物の除去方法 |
代理人 | 板垣 孝夫 |
代理人 | 板垣 孝夫 |
代理人 | 森本 義弘 |
代理人 | 森本 義弘 |