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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C10M
審判 全部申し立て 2項進歩性  C10M
管理番号 1104410
異議申立番号 異議2003-73179  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-18 
確定日 2004-07-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3422347号「転がり軸受用グリース組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3422347号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3422347号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成7年12月20日に出願され、平成15年4月25日に特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人市原敏夫より特許異議の申立てがあり、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月14日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(ア)訂正の内容
訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次の(a)〜(o)のとおりである。
(a)特許請求の範囲請求項1に、「基油と、金属石けん系化合物またはウレア化合物から選択される増ちょう剤と、SiO2 、Al2 O3 、MgO、TiO2、ベントナイト、スメクタイト、雲母、Si3 N4 、TiAlN、SiC、TiCから選択される粒径2μm以下の無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とする転がり軸受用グリース組成物。」とあるのを、
「自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される転がり軸受に封入されるグリース組成物であって、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油と、ジウレア化合物から選択される増ちょう剤と、Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とするグリース組成物。」と訂正する。

(b)特許請求の範囲請求項2を削除する。

(c)明細書段落【0001】に、「【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受用グリース組成物に関し、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品、エンジン補機等の転がり軸受に好適な耐はくり性を向上させたグリース組成物に関する。」とあるのを、
「【発明の属する技術分野】本発明は、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品、エンジン補機等の転がり軸受に封入され、耐はくり性を向上させたグリース組成物に関する。」と訂正する。

(d)明細書段落【0007】に、「本発明は、このような知見に基づくものである。即ち、上記の目的は、本発明の、基油と、金属石けん系化合物またはウレア化合物から選択される増ちょう剤と、SiO2 、Al2 O3 、MgO、TiO2、ベントナイト、スメクタイト、雲母、Si3 N4 、TiAlN、SiC、TiCから選択される粒径2μm以下の無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とする転がり軸受用グリース組成物により達成される。」とあるのを、
「本発明は、このような知見に基づくものである。即ち、上記の目的は、本発明の、自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される転がり軸受に封入されるグリース組成物であって、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油と、ジウレア化合物から選択される増ちょう剤と、Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とするグリース組成物により達成される。」と訂正する。

(e)明細書段落【0008】に、「【発明の実施の形態】以下、本発明の転がり軸受用グリース組成物(以下、単に「グリース組成物」ともいう)に関してより詳細に説明する。
〔無機系化合物充填剤〕(組成) 上述の通り、増ちょう剤が形成するゲル構造を補強する材料であり、本発明では、SiO2 、Al2 O3 、MgO、TiO2 、ベントナイト、スメクタイト、雲母、Si3 N4 、TiAlN、SiC、TiCを用いる。また、これらは基油や増ちょう剤との親和性を改善するため、表面を親油性に改質したものを用いても良い。上記に挙げた無機系化合物の中では、それ自身増ちょう作用を備えるSiO2 、Al2 O3 、MgO、TiO2 、ベントナイト、スメクタイト、雲母が好ましい。」とあるのを、
「【発明の実施の形態】以下、本発明のグリース組成物に関してより詳細に説明する。
〔無機系化合物充填剤〕(組成) 上述の通り、増ちょう剤が形成するゲル構造を補強する材料であり、本発明では、Al2 O3 、MgO、TiO2 を用いる。また、これらは基油や増ちょう剤との親和性を改善するため、表面を親油性に改質したものを用いても良い。さらにこれらは、それ自身増ちょう作用を備える。」と訂正する。

(f)明細書段落【0009】の「従って、粒子径2μm以下が望ましい。」を削除し、また、「さらに、軸受潤滑寿命を考慮すれば、用いる粒子径が基油の油膜より小さいことが望ましい。一般的に、軸受が使用される条件で形成される基油の油膜厚さは約0.2μmであるため、より好ましくはこれ以下の粒径が望ましい。」を、「さらに、軸受潤滑寿命を考慮すれば、用いる粒子径が基油の油膜より小さいことが望ましい。一般的に、軸受が使用される条件で形成される基油の油膜厚さは約0.2μmであるため、本発明では、平均粒径10nm〜200nmとする。」と訂正する。

(g)明細書段落【0011】に、「〔金属石けん系、ウレア化合物系増ちょう剤〕ゲル構造を形成し、基油をゲル構造中に保持する能力があれば、特に制約はない。例えばLi、Na等からなる金属石けん、Li、Na、Ba、Ca等から選ばれる複合化金属石けん等の金属石けん類、ジウレアやポリウレア等のウレア化合物を適宜選択して使用できる。金属石けんは音響特性は良好であるが、漏洩性を考慮すれば、複合化金属石けんが好ましい。また、特に耐熱性を必要とする場合には、ウレア化合物が好ましい。」とあるのを、「〔ジウレア化合物系増ちょう剤〕増ちょう剤として、ジウレア化合物を使用する。」と訂正し、また、「従って、はくり防止効果を備える増ちょう剤(例えば、前記特開平5-98280号、特開平5-194979号および特開平5-263091号各公報の末端が芳香族系炭化水素基主体のジウレア化合物)を配合したグリース組成物では、はくり防止効果が更に向上し、はくり防止効果は無いものの、潤滑性に優れた増ちょう剤(例えば、前記特開平3-79698号、特開平5-140576号および特開平6-17079号各公報の末端がシクロヘキシル基主体のジウレア化合物)を配合したグリース組成物では、潤滑性に加えてはくり防止効果が付与される。」を削除する。

(h)明細書段落【0012】に、「〔基油〕特に限定されず、通常、潤滑油の基油として使用されている油は全て使用することができる。」とあるのを「[基油]基油として、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油を使用する。」と訂正する。

(i)明細書段落【0013】に、「具体例としては、鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑基油などが挙げられる。前記鉱油系潤滑基油としては、鉱油を減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を、適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。前記合成油系潤滑基油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。前記炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンとのコオリゴマーなどのポリ-α-オレフィンまたはこれらの水素化物などが挙げられる。前記芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼンなどのアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレンなどのアルキルナフタレンなどが挙げられる。前記エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルリシノレートなどのジエステル、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどの芳香族エステル油、さらにはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネートなどのポリオールエステル、さらにまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステルなどが挙げられる。前記エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテルなどのポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテルなどのフェニルエーテルなどが挙げられる。その他の合成潤滑基油としてはトリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル油などが挙げられる。これらの基油は、単独または混合物として用いることができ、上述した好ましい動粘度に調製される。」と記載される文中から、
「鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑基油などが挙げられる。前記鉱油系潤滑基油としては、鉱油を減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を、適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。前記合成油系潤滑基油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。」、及び、「前記芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼンなどのアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレンなどのアルキルナフタレンなどが挙げられる。」、及び、「その他の合成潤滑基油としてはトリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル油などが挙げられる。」を削除する。

(j)明細書段落【0016】に、「ウレア化合物」とあるのを、「ジウレア化合物」と訂正し、また、「表3中の無機系化合物充填剤の平均粒径は、それぞれ種類1(Al2 O3 )は13nm、種類2(MgO-1)は10nm、種類3(MgO-2)は200nm、種類4(TiO2 )は21nm、種類5(スメクタイト)は約50nmである。」と記載される文中から、「、種類5(スメクタイト)は約50nm」を削除する。

(k)明細書段落【0020】の【表1】に、「ウレア化合物」とあるのを、「ジウレア化合物」と訂正する。

(l)明細書段落【0022】の表3の最下欄の、「種類5 スメクタイト ルーセントSAN コープケミカル株式会社」という記載を削除する。

(m)明細書段落【0023】の表4中の実施例7及び実施例9の列を削除し、さらに、実施例8を実施例7とする。

(n)明細書段落【0026】に、「【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、はくり防止効果を備える増ちょう剤を配合したグリース組成物では、はくり防止効果が更に向上し、はくり防止効果は無いものの、潤滑性に優れた増ちょう剤を配合したグリース組成物では、潤滑性に加えてはくり防止効果が付与される。このように、グリース組成物が元来備える性能に、はくり防止作用を付加させることができ、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品、エンジン補機等の転がり軸受に好適に使用できる。」とあるのを、
「【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品、エンジン補機の転がり軸受のはくり防止作用を高めることができる。」と訂正する。

(o)【符号の説明】に、「4 外輪4 」とあるのを「4 外輪」と訂正する。

(イ)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、本件発明に係る「転がり軸受用グリース組成物」を「転がり軸受に封入されるグリース組成物」に特定し、その使用分野を「自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される」と特定し、該グリース組成物に含有される「基油」を「エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油」と特定し、「増ちょう剤」を「ジウレア化合物から選択される増ちょう剤」と特定し、「無機系化合物充填剤」を「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
転がり軸受用グリース組成物の使用において軸受に封入されることは【0002】の従来の技術にみられるように通常の使用形態であり、「転がり軸受に封入されるグリース組成物」の使用分野に「自動車の電装部品またはエンジン補機」が包含されることは、本件明細書段落【0001】、【0002】、および【0026】に、また、該グリース組成物に含有される「基油」が「エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油」を包含することは段落【0013】、および【0021】の表2に、「増ちょう剤」が「ジウレア化合物から選択される増ちょう剤」を包含することは段落【0011】、および【0020】の表1に、「無機系化合物充填剤」が「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤」を包含することは、補正前の請求項2、段落【0008】、【0009】、【0016】、および【0022】の表3に、それぞれ記載されているから、上記訂正事項(a)は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項(b)は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、この訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
また、上記訂正事項(c)〜(n)は、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の訂正に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、上記訂正事項(o)は、誤記の訂正を目的とするものである。そして、上記訂正事項(c)〜(o)は、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(ウ)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(ア)本件発明
前述のように、本件訂正は適法なものであるので、本件の請求項1に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される転がり軸受に封入されるグリース組成物であって、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油と、ジウレア化合物から選択される増ちょう剤と、Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とするグリース組成物。」(以下、「本件発明」という。)

(イ)申立ての理由の概要
特許異議申立人市原敏夫は、証拠として甲第1号証〜甲第5号証を提出し、本件の訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、当該発明についての特許は取り消されるべき旨を主張している。(以下、「理由3」という。)

(ウ)当審で通知した取消しの理由
1)本件の訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであり、拒絶の査定をしなければならない出願に対してされたものである。(以下、「理由1」という。)
2)本件の訂正前の請求項1、2に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1〜6に記載された発明及び技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、拒絶の査定をしなければならない出願に対してされたものである。(以下、「理由2」という。)

刊行物1:特開昭64-74294号公報
刊行物2:星野、渡嘉敷、藤田著「トライボロジ-叢書8 潤滑グリースと 合成潤滑油」 昭和58年12月25日 株式会社幸書房発行 43頁
刊行物3:特開昭53-113804号公報
(特許異議申立人の提出した甲第1号証)
刊行物4:社団法人日本機会学会編 「機械工学便覧」 新版2刷 社団法 人日本機会学会 昭和63年5月15日 B1-48頁〜B1- 49頁
(特許異議申立人の提出した甲第2号証)
刊行物5:特開昭56-82894号公報
(特許異議申立人の提出した甲第3号証)
刊行物6:特開平5-270816号公報
(特許異議申立人の提出した甲第5号証)
参考資料1:東ソー・シリカ株式会社ホームページ、“シリカの生成過程”
[online]、「2003年12月10日検索」、インター ネット<URL:http://www.n-silica.c o.jp/techdata/pb_silica.htm>
(特許異議申立人の提出した甲第4号証)

(エ)各刊行物等に記載される事項
刊行物1について
刊1-1
「鉱油及び合成油をベースにした潤滑グリースに、モノアルキルベンジルトリアルキルアンモニウム系化合物、ジメチルアルキルベンジルアンモニウム系化合物、トリメチルモノアルキルアンモニウム系化合物からなる群の少なくとも一種を吸着させた有機ベントナイト粉末を0.1〜50重量%になるように添加し、混合してなることを特徴とする潤滑グリースの製造方法。」(特許請求の範囲)

刊1-2
「(発明の目的)化学的及び熱的に安定であるモノアルキルベンジルトリアルキルアンモニウム系化合物、ジメチルアルキルベンジルアンモニウム系化合物、トリメチルモノアルキルアンモニウム系化合物からなる群の少なくとも一種をを吸着させた有機ベントナイト粉末を油性向上剤もしくは極圧添加剤として、各種石けん基グリース及び・・・ウレア系グリース等の潤滑グリース類に添加する事により、油性向上を図り、摩擦力の低い潤滑剤を得、これらをローラーベアリング等に使用した場合摩擦抵抗のより低い効果をもたらし、回転抵抗にともなうロスをできるかぎり軽減する事による省エネ効果とより良好な潤滑状況をもたらす・・・潤滑グリースを提供することを目的とする。」(3頁左上欄3行〜右上欄3行)

刊1-3
「シックナーとして12ヒドロキシステアリン酸リチウムを用い基油に・・・鉱油を使用したリチウム石けん基グリースをベースグリースとして用意する。次にこのグリースに一般に市販されている各種有機ベントナイト粉末を各々5重量%・・・添加し・・・均質化させた。得られたグリース組成物の性質は第1表、第2表の通りである。比較例として他の化合物を吸着させた有機ベントナイトとしては、ベントン34(商標):・・・ジメチルジオクタデシルアンモニウムを吸着させた有機ベントナイト(比較例1)、オルベン(商標):・・・トリメチルオクタデシルアンモニウム・ステアリン酸アミド複合物を吸着させた有機ベントナイト(比較例2)を挙げた。」(5頁右上欄13行〜右下欄9行)

刊1-4
得られたグリース組成物の性質がまとめられている第1表中には、比較例1はベースグリースが95%とベントン34が5%の組成であり、比較例2はベースグリースが95%とオルベンが5%の組成であると記載されており、また、実施例1〜3及び比較例1〜3に「四球耐圧」および「150℃×24Hr加熱劣化度四球耐圧」試験を行って得られた測定値が記載されている。(6頁 第1表)

刊1-5
「本発明の組成物に使用される各種グリースの増稠剤として従来公知の金属石けん、無機増稠剤、有機増稠剤を広く使用できる。・・・無機増稠剤としては具体的には粘土、ベントナイト、コロイドシリカ、シリカエアロゲルアルミナ、黒鉛、雲母、タルク、クレー、ケイソウ土などがあげられる。また有機増稠剤としては・・・ジウレアグリース・・・などがあげられる。」(4頁左下欄末8〜5頁左上欄8行)

刊行物2について
刊2-1
非石けん増ちょう剤の化学構造、大きさのまとめられている表3・3中に、「有機処理粘土」について、「代表的化学構造」の項に「R2N=(CH3)2・Bentone」と、また、「形,大きさ」の項に「薄い鱗片状 1〜3μm」と記載され、「シリカエアロゲル」について、「代表的化学構造」の項に「SiO2」と、また、「形,大きさ」の項に「0.01μm」と記載されている。(43頁 表3・3)

刊行物3について
刊3-1
「1.高級脂肪酸からなる金属石けんおよび非石けんを増ちょう剤としたグリースに、ニッケル,スズ,バリウム,クロム,酸化ニッケル,酸化スズ,酸化バリウム,酸化クロムの微粉末の1種または2種以上を0.2重量%以上添加したグリース組成物。」(特許請求の範囲 第1項)

刊3-2
「高速,高荷重条件に使用される軸受用潤滑グリース(以下、グリースと記す)においてはグリースの使用温度の上昇とともにグリースの交換期間の長いいわゆる長寿命グリースが要求されている。このため以前からグリースの熱安定性や潤滑性能を高めるため各種の添加剤を配合したグリースが市販されている。また・・・、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムの微粉末の内1種を添加してグリースの劣化に伴なう腐食の少ない軸受潤滑用グリースが提案されているが、高温におけるグリースの熱安定性および潤滑寿命の点で必ずしも十分満足できるものがなかった。グリースの熱安定性が低下すると増ちょう剤の網目構造の破壊とともに・・・軸受からグリースが漏洩し・・・潤滑寿命が著しく低下するという欠点がある。増ちょう剤の網目構造の破壊が起ると滴点の低下、せん断安定性、離油度の増大をきたす。」(1頁左下欄末2行〜右下欄末3行)

刊3-3
「本発明の目的は、これらの欠点を改良し、一層改善された熱安定性を有するグリース組成物を提供するものである」(1頁右下欄末2行〜2頁左上欄1行)

刊3-4
「本発明において用いるグリースとしては公知の増ちょう剤、例えば高級脂肪酸とLi,Ca,Na,Al等のアルカリ金属からなる金属石けんおよび有機ベントナイト,疎水性微粉末シリカ,アリル尿素,ベース油として公知の鉱油および合成油等からなるグリースに、前記の金属微粉末もしくは金属酸化微粉末を0.2重量%以上添加することによりグリースの熱安定性が改善できる。グリースに添加する微粉末の平均粒子としては2μ以下のものが適当である。平均粒子が2μ以上になると軸受の騒音および軸受の潤滑面を損傷が起る。」(2頁左上欄7行〜末3行)

刊3-5
「実施例1・・・軸受潤滑グリースに広く用いられているマルチノックNo.2(リチウム石けん〜鉱油系,日本石油製)グリースにニッケル,スズ,バリウム,クロムの微粉末(平均粒度1μ以下)および酸化ニッケル,酸化第二スズ,酸化バリウム,酸化クロムの微粉末(平均粒度1μ以下)を2重量%添加し」(2頁右上欄末2行〜2頁左下欄6行)

刊3-6
「実施例2 実施例1で用いたと同じ金属微粉末および金属の酸化微粉末をマルチノックワイドNo.2(リチウム石けん〜鉱油+エステル油,日本石油製)グリースに2重量%を添加し」(2頁右下欄9行〜2頁右下欄13行)

刊3-7
「実施例3 低温、高温の条件に広く用いられている日立WRグリースNo.3(ナトリウムテレフタラメート〜鉱油+エステル油系,丸善石油製)グリースに実施例1と同じニッケル,バリウム,スズ,クロムの微粉末および上記の金属の酸化微粉末を2重量%加え」(2頁右下欄末行〜3頁左上欄6行)

刊3-8
「実施例4 高温用グリースとして市販されている非石けん基のドリウムNo.2(ポリウレア〜鉱油系,シェル社製)グリースに実施例1と同じ金属微粉末および金属の酸化微粉末を2重量%加え」(3頁左上欄末7行〜末3行)

刊行物4について
刊4-1
「2・2・4 固体潤滑剤 固体潤滑剤(solid lubricant)は(1)潤滑油,グリースの代替品,(2)潤滑油,グリースへの添加剤,(3)潤滑油などを使用できない条件下での潤滑剤として用いられる。
(1)は主として保守管理費の低減など経済上の理由から固体潤滑剤が使用される場合で,使用頻度の少ない機器,民生品,間欠的に使用される機器,長期間停止状態にあって,ある日突然確実な動作を要求される機器(警報機器,安全機器,兵器など)がそれに当たる。(2)は油膜が破断するような厳しい条件下で、焼付きを防ぐ目的で潤滑油やグリースに固体潤滑剤を添加する場合である。(3)の場合こそ固体潤滑剤が真価を発揮できる環境条件である。このような環境とは真空中,放射線下,高温,低温などの作動条件下,酸,アルカリ,液体酸素など潤滑油を使用できない環境下,食品工業のような油やグリースによる汚染をきらう条件下などがあげられる。
固体潤滑剤の使用環境はこのように広い範囲にわたっているため,1種類の固体潤滑剤をすべての分野に適用することは無理で,条件に適した固体潤滑剤が使いわけられている。
a.固体潤滑剤の種類
(1)層状固体潤滑剤:結晶構造が層状になっており,垂直力には強いがせん断力を加えられると層間で容易にせん断される物質。MoS2,WS2などのジカルコゲン化合物,グラファイトなど。
(2)高分子固体潤滑剤:せん断されやすい高分子材料。ナイロン,PTFE,ポリイミド,ポリアセタール,ポリフェニレンサルファイドなど。
(3)軟金属固体潤滑剤:塑性変形しやすい金属。金,銀,鉛,すず,亜鉛など。
(4)その他:PbO,Pb3O4のような酸化物。CaF2,BaF2のようなふっ化物。PbS,雲母など。・・・
b.固体潤滑剤の使用形態と使用例
(1)粉末:粉末状の固体潤滑剤は油やグリースへの添加剤として用いられる。良く使われるのはMoS2,グラファイト,PTFEで,エンジン油,ギヤ油,シャシグリースなどに0.1〜数%添加され,」(B1-48頁右欄5行 〜 B1-49頁左欄15行)

刊行物5について
刊5-1
「(A)一般式
〔R1aR2bSiO4-a-b/2〕n(式中、R1は炭素数4〜30のアルキル基、R2は、炭素数3以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基から成る群から選ばれた1価の炭化水素基を示し、a+bは1.9〜2.7、a+bに対するaの比が少なくとも0.05、nは下記の粘度を満足する数である)で表わされ、25℃の粘度が10〜10,0000cStであるポリオルガノシロキサン100重量部、
(B)シリカ微粉末0.01〜5重量部、
(C)アルミニウムの高級脂肪酸塩0.01〜20重量部、および
(D)含イオウ系極圧潤滑性向上剤0.001〜3重量部
から本質的に成る電気接点用シリコーングリース。」(特許請求の範囲 第1項)

刊5-2
「本発明の(B)成分は、煙霧質シリカ、シリカエアロゲル、沈澱シリカなどシリカ微粉末であり、比表面積50m2/g以上のものが一般に用いられる。」(3頁右上欄末2行〜左下欄2行)

刊行物6について
刊6-1
「フッ素系の雲母を微粉化し、該微粉雲母を、・・・加熱再結晶させることを特徴とする雲母粒子の製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)

刊6-2
「・・・原料雲母の微粉化は、公知の粉砕方法で行えばよい。微粉化の程度は、平均粒径0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μmである。」
(段落【0006】)

刊6-3
「・・・平均粒径1μm以下の雲母微粉・・・」(段落【0010】)

参考資料1について
参1-1
シリカの比表面積(BET Specific Surface Area)200m2/gは粒径(Particle Size)15nmに、
50m2/gは粒径(Particle Size)60nmに相当することが図示されている。(「シリカの生成過程」と表題の付与された図)

(オ)対比・判断
「理由1」について
本件発明は、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油と、ジウレア化合物から選択される増ちょう剤と、Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とする、自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される転がり軸受に封入されるグリース組成物である。
一方、刊行物1には、化学的及び熱的に安定である特定のアンモニウム化合物を吸着させた有機ベントナイト粉末を油性向上剤もしくは極圧添加剤として、各種石けん基グリース、ウレア系グリース等の潤滑グリース類に添加することにより、油性向上を図り、摩擦力の低い潤滑剤を得、これらをロ-ラーベアリング等に使用した場合摩擦抵抗のより低い効果をもたらし、回転抵抗にともなうロスをできるかぎり軽減する事による省エネ効果と良好な潤滑状況をもたらす潤滑グリースを提供することを目的とする発明が記載されると共に(摘示事項「刊1-1」、「刊1-2」参照)、比較例ではあるが、シックナーとして12ヒドロキシステアリン酸リチウムを用い、基油に鉱油を使用したリチウム石けん基グリースをベースグリースとし、このグリースに一般に市販されている有機ベントナイトである、ジメチルジオクタデシルアンモニウムを吸着させた有機ベントナイトであるベントン34(商標)を5重量%添加し均質化させて得られたグリース組成物が記載されている(摘示事項「刊1-3」、「刊1-4」参照)。
また、潤滑グリースに配合可能な無機成分としては、上記の「化学的及び熱的に安定である特定のアンモニウム化合物を吸着させた有機ベントナイト粉末」あるいは「ジメチルジオクタデシルアンモニウムを吸着させた有機ベントナイト」の他に、無機増稠剤の「粘土、ベントナイト、コロイドシリカ、シリカエアロゲルアルミナ、黒鉛、雲母、タルク、クレー、ケイソウ土」が、多数の有機増稠剤化合物と共に記載されている(摘示事項「刊1-5」参照)。そして、それら無機成分の粒径に関する記載はない。
そうすると、刊行物1に記載される無機成分の中には、本件発明の「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤」に相当するものはない。
したがって、刊行物1には「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤」を必須成分とするグリース組成物は記載されていないので、本件発明は、刊行物1に記載された発明ではない。

「理由2」について
本件発明と、刊行物1に記載された発明のグリース組成物は、「「理由1」について」の項で述べたように、本件発明は「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤」を含有するのに対し、刊行物1に記載された発明は該無機系化合物充填剤に相当する成分が含有されていない点で相違する。

上記相違点について検討する。
刊行物2には、非石けん増ちょう剤の化学構造、大きさのまとめられている表3・3中に「有機処理粘土」、及び、「シリカエアロゲル」に関する記載はあるが、Al2 O3 、MgO、TiO2に関する記載はない(摘示事項「刊2-1」参照)。
刊行物3には、高級脂肪酸からなる金属石けんおよび非石けんを増ちょう剤としたグリースにニッケル、スズ、バリウム、クロム、およびそれらの酸化物の微粉末を0.2重量%以上添加したグリース組成物が記載され(摘示事項「刊3-1」参照)、また、上記の「ニッケル、スズ、バリウム、クロム、およびそれらの酸化物の微粉末」以外の無機成分に関して、公知の増ちょう剤の例として「有機ベントナイト、疎水性微粉末シリカ」が有機増稠剤と共に記載されている(摘示事項「刊3-4」参照)。
しかし、刊行物3に記載される上記の無機成分は、本件発明の「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される無機系化合物充填剤」に相当する無機成分ではない。
さらに、刊行物4には、グリースの添加剤に固体潤滑剤があること、その固体潤滑剤には、(1)層状固体潤滑剤、(2)高分子固体潤滑剤、(3)軟金属固体潤滑剤、(4)PbO、Pb3O4のような酸化物、CaF2、BaF2のようなふっ化物、PbS、雲母がある旨記載され(摘示事項「刊4-1」参照)、刊行物5には、「ポリオルガノシロキサン、シリカ微粉末、アルミニウムの高級脂肪酸塩、および、含イオウ系極圧潤滑性向上剤から本質的になる電気接点用シリコーングリース」が記載され(摘示事項「刊5-1」参照)、刊行物6には、「雲母粒子の製造方法」および「原料雲母粒子の大きさ」が記載され(摘示事項「刊6-1」、「刊6-2」、「刊6-2」、「刊6-3」参照)、参考資料1には、シリカの比表面積(BET Specific Surface Area)と粒径(Particle Size)との関係が図示されているが(摘示事項「参1-1」参照)、これら刊行物4〜6および参考資料1には、本件発明の「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される無機系化合物充填剤」に相当する無機成分に関する記載はない。
このように、刊行物2〜6、および、参考資料1のいずれにも、本件発明の「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される無機系化合物充填剤」に相当する成分に関する記載がないことから、耐剥離性を向上するために、「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤を含有させること」を必須の構成要件とするグリース組成物が、刊行物2〜6の記載から導き出せず、本件発明は刊行物1〜6に記載の発明に基づいて当業者が容易に創意し得るものでない。そして、本件発明は、特許請求の範囲請求項1記載の構成を採用することにより、自動車電装部品、エンジン補機の転がり軸受のはくり防止作用を高めるという効果を奏するものである。
よって、本件発明は、刊行物1〜6に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

「理由3」について
異議申立人は、訂正前の本件請求項1、2に係る発明に対して、甲第1号証(刊行物3)、甲第3号証(刊行物5)、甲第4号証(参考資料1)を提出し、甲第1号証(刊行物3)の摘記事項「刊3-2」〜「刊3-8」にあたる記載を根拠として、甲第1号証(刊行物3)には、ベース油として公知の鉱油および合成油等、アルカリ金属からなる金属石けん、疎水性微粉末シリカを含有する軸受用潤滑グリースが記載される旨のこと、および、グリースに添加する微粉末の平均粒子としては2μ以下のものが適当で、平均粒子が2μ以上になると軸受の騒音および軸受の潤滑面に損傷が起る旨のことが記載されているものの、疎水性微粉末シリカの粒径とその含有量が記載されていないとし、訂正前の本件請求項1、2に係る発明と、甲第1号証(刊行物3)に記載される発明とは、無機系化合物充填剤の粒径とその含有量の点で相違があるが、該相違は甲第1号証(刊行物3)、甲第3号証(刊行物5)、あるいは、甲第4号証(参考資料1)に記載される無機微粉末あるいはシリカの粒径から、当業者が極めて容易に想到しえると主張している(異議申立人が根拠とした、甲第1号証(刊行物3)、甲第3号証(刊行物5)、あるいは、甲第4号証(参考資料1)の記載は、摘記事項「刊3-4」〜「刊3-8」、「刊5-2」、「参1-1」参照)。
さらに、異議申立人は、訂正前の本件請求項1、2に係る発明に対して、甲第2号証(刊行物4)、甲第5号証(刊行物6)及び、甲第1号証(刊行物3)を提出し、甲第2号証(刊行物4)の摘記事項「4-1」にあたる記載を根拠にして、甲第2号証(刊行物4)には、鉱油、増ちょう剤、雲母0.1〜数%添加された高荷重用グリースが記載されているものの、雲母の粒径が記載されていないとし、訂正前の本件請求項1、2に係る発明と、甲第2号証(刊行物4)に記載される発明とは、無機系化合物充填剤の粒径の点で相違があるが、該相違は甲第5号証(刊行物6)に記載される雲母の粒径あるいは甲第1号証(刊行物3)に記載される無機微粉末の粒径から、当業者が極めて容易に想到しえたと主張している(異議申立人が根拠とした、甲第1号証(刊行物3)、甲第5号証(刊行物6)の記載は、摘記事項「刊3-4」〜「刊3-8」、「刊6-2」、「刊6-3」参照)。

しかしながら、甲第1号証〜5号証(刊行物3〜6および参考資料1)には、転がり軸受に封入されるグリース組成物に、「Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤」を含有させる技術事項は、「「理由2」について」の項で述べたように記載されていない。
したがって、甲第1〜5号証を出願人が主張するように組み合わせても、「転がり軸受に封入されるグリース組成物に、Al2 O3 、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤を含有させる点」を導き出せるものではないから、本件発明は、上記甲号証の記載から、当業者が容易に想到できるものでない。
よって、異議申立人の主張は妥当なものでない。

5.むすび
以上のとおりであるから、当審での取消しの理由、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
転がり軸受用グリース組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される転がり軸受に封入されるグリース組成物であって、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油と、ジウレア化合物から選択される増ちょう剤と、Al2O3、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とするグリース組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品、エンジン補機等の転がり軸受に封入され、耐はくり性を向上させたグリース組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や各種動力装置の回転運動箇所、例えばオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品やエンジン補機等には、一般に転がり軸受が使用される。
図1は転がり軸受の一種である接触ゴムシール付密閉深溝玉軸受を示す要部断面図であるが、図示されるように、外周面に内輪軌道1を有する内輪2と、内周面に外輪軌道3を有する外輪4とを同心に配置し、内輪軌道1と外輪軌道3との間に保持器7を会して複数個の転動体(玉)5を転動自在に設けることで構成される。また、外輪4の両端部内周面には、それぞれ円輪状のシール6の外周縁を係止し、両シール6によってグリース(図示省略)を封じ込めるとともに、外部からの塵芥の進入や、軸受内部で発生したダストが外部に漏洩するのを防止している。
【0003】
また、自動車は小型軽量化を目的としたFF車の普及により、更には居住空間拡大の要望により、エンジンルーム空間の減少を余儀なくされ、前記に挙げたような電装部品、エンジン補機の小型、軽量化がよりいっそう進められている。加えて、前記各部品にも高性能、高出力化がますます求められている。しかし、小型化により出力の低下は避けられず、例えばオルタネータやカーエアコン用電磁クラッチでは、高速化することにより出力の低下分を補っており、それに伴って中間プーリーも同様に高速化することになる。
更に、静粛性向上の要望によりエンジンルームの密閉化が進み、エンジンルーム内の高温化が促進されるため、前記各部品には高温に耐え得ることも必要となっている。
【0004】
一方、自動車用転がり軸受に使用されるグリースには、従来より軸受潤滑寿命が長いこと、グリース漏れが少ないこと、低温性能に優れること、錆止め性能に優れること、軸受音響性能に優れること等主として潤滑性に関する要求がなされてきている。この点に関して、例えば特開平3-79698号、特開平5-140576号および特開平6-17079号各公報には、高温・高速条件下における軸受潤滑寿命に優れる増ちょう剤として末端がシクロヘキシル基主体のジウレア化合物が開示されている。
しかし、前述したような高速化や高性能化に伴い、転がり軸受の軌道面(図1参照;符号1、3)には高荷重が周期的に加わることとなり、それによるはくり防止が新たな重要課題となっている。このはくり防止効果に関して、前記各公報に開示された末端がシクロヘキシル基主体のジウレア化合物を増ちょう剤とするグリース組成物は、何れも早期にはくりを起こし、実用には至っていない。
これに対して、はくり防止を目的とした高速転がり軸受用長寿命グリースの開発も行われており、例えば特開平5-98280号、特開平5-194979号および特開平5-263091号各公報には、増ちょう剤として末端が芳香族系炭化水素基主体のジウレア化合物を用いたグリース組成物が開示されているが、更なる耐はくり性の向上が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来のグリース組成物は増ちょう剤を選定することにより耐はくり性を得ているが、増ちょう剤の選定だけでは自ずと限界があり、更なる向上には応え得るものではない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来以上に優れた耐はくり性を備えた転がり軸受用グリース組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、はくりが発生する機構に関して研究を重ねた結果、はくりは軸受の共振等による負荷の増加と外輪が変形することによって発生する曲げ応力との相乗作用によって起こり、グリースによる軸受はくり寿命の延長は、転動体と軌道面に十分保持されたグリース膜がダンピング効果を示し、その結果共振時の振動レベルや最大転動体荷重が軽減されることによるものと考察した(NSKテクニカルジャーナルNo.656,1ページ、’93)。そして、グリース膜のダンピング効果を増大させることで、はくり防止効果を向上させることができることに着目した。
グリース膜の形成能力を大きくし、衝撃荷重に対するダンピング効果を増大させるためには、増ちょう剤が形成するゲル構造を強化すればよく、そのための手段として、無機系化合物充填剤をグリース組成物に配合して前記ゲル構造を補強する方法が効果的であるとの結論を得た。
【0007】
本発明は、このような知見に基づくものである。即ち、上記の目的は、本発明の、自動車の電装部品またはエンジン補機に使用される転がり軸受に封入されるグリース組成物であって、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油から選択される基油と、ジウレア化合物から選択される増ちょう剤と、Al2O3、MgO、TiO2から選択される平均粒径10nm〜200nmの無機系化合物充填剤をグリース全量の0.05〜15wt%含有することを特徴とするグリース組成物により達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のグリース組成物に関してより詳細に説明する。
〔無機系化合物充填剤〕
(組成)
上述の通り、増ちょう剤が形成するゲル構造を補強する材料であり、本発明では、Al2O3、MgO、TiO2を用いる。また、これらは基油や増ちょう剤との親和性を改善するため、表面を親油性に改質したものを用いても良い。さらにこれらは、それ自身増ちょう作用を備える。
【0009】
(粒子径)
転がり軸受用グリース組成物として、支障をきたさない程度の粒径である。転がり軸受では、一般的に粒子径がおよそ2μmを超える粒子は異物(ゴミ)として作用し、硬い粒子の場合には軸受軌道や転動体表面の摩耗を促進し、軸受の早期損傷の原因となる。また、軸受音響特性を悪くする場合がある。
さらに、軸受潤滑寿命を考慮すれば、用いる粒子径が基油の油膜より小さいことが望ましい。一般的に、軸受が使用される条件で形成される基油の油膜厚さは約0.2μmであるため、本発明では、平均粒径10nm〜200nmとする。また、形状は球形に近いほど好ましいが、上記の大きさの範囲であれば、多面体(立方体や直方体等)や極端には針状でも構わない。
【0010】
(濃度)
本発明のグリース組成物は、密封転がり軸受に使用されることを考慮すれば、その混和ちょう度としてNLGIでNo3からNo1に調整されることが望ましく、増ちょう剤量はグリース全量に対して概ね10〜35wt%が配合される。これに対して無機系化合物充填剤は、グリース全量に対して0.05〜15wt%配合される。
これより少ないと補強効果が十分得られないし、これより多いと充填剤の粒子数が増大し、軸受音響特性や、摩耗が増大して軸受潤滑寿命へ悪影響を及ぼすことが懸念される。さらに、補強効果をより確かにし、潤滑寿命への悪影響を考慮するなら、0.1〜10wt%が望ましい。
【0011】
〔ジウレア化合物系増ちょう剤〕
増ちょう剤として、ジウレア化合物を使用する。
増ちょう剤はその分子または結晶が鎖状に連なってグリース組成物中に一様に分散してゲル構造を形成するが、更に無機系化合物充填剤がこれら増ちょう剤分子や結晶間に入り込むことで、ゲル構造を強化するものと考えられる。
【0012】
〔基油〕
基油として、エーテル系油、エステル系油、合成炭化水素系油を使用する。好ましくは、低温流動性不足による起動トルクの増大や、高温で油膜が形成され難いために起こる焼付きを割けるために、40℃における動粘度が、好ましくは10〜400mm2/s、特に好ましくは20〜250mm2/s、さらに好ましくは40〜150mm2/sである基油が望ましい。
この動粘度は、通常ガラス式毛管式粘度計により測定した際の値を基準とすることができる。また、軸受潤滑寿命の延長を計るためには、エステル油、特にポリオールエステル油を基油の10wt%以上含有させることが望ましい。
【0013】
具体例としては、前記炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンとのコオリゴマーなどのポリ-α-オレフィンまたはこれらの水素化物などが挙げられる。前記エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルリシノレートなどのジエステル、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどの芳香族エステル油、さらにはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネートなどのポリオールエステル、さらにまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステルなどが挙げられる。前記エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテルなどのポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテルなどのフェニルエーテルなどが挙げられる。
これらの基油は、単独または混合物として用いることができ、上述した好ましい動粘度に調製される。
【0014】
〔その他の添加剤〕
本発明のグリース組成物は、前記無機系化合物充填剤、増ちょう剤及び基油を必須成分とするものであるが、必要に応じて以下の添加剤を単独または複数組み合わせて含有させても良い。その配合量は、全体としてグリース全量の20wt%以下である。
酸化防止剤 :アミン系、フェノール系、イオウ系、ジチオリン酸亜鉛等。
防錆剤 :有石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、ソルビタンエステル等。
油性剤 :脂肪酸、植物油等。
金属不活性剤 :ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダ等。
極圧添加剤 :塩素系、イオウ系、リン系、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等。
粘土指数向上剤:ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等。
【0015】
〔製法〕
本発明のグリース組成物を調製するには、基油中で増ちょう剤を反応させて得られる。無機系化合物充填剤は、前記の反応時に配合することが好ましい。
また、予め増ちょう剤でグリース組成物を得た後、無機系化合物充填剤を混合して得ることも可能である。ただし、ニーダやロール等で無機系化合物充填剤を添加した後十分攪拌し、均一分散させる必要がある。この処理を行う時は、加熱するのも有効である。
尚、上記製法において、無機系化合物充填剤以外の添加剤は、無機系化合物充填剤と同時に添加することが工程上好ましい。
【0016】
〔実施例〕
以下に、実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
グリース組成を表4に示す。また、増ちょう剤、基油、無機系化合物充填剤の各組成を表1〜表3に示す。
表1においてMDIは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの略であり、ジウレア化合物は該MDI1モルに対して表中のアミンを合計で2モル反応させたものである。また、配合番号の小さいものほど、耐はくり性に優れる傾向にある。
また、表3中の無機系化合物充填剤の平均粒径は、それぞれ種類1(Al2O3)は13nm、種類2(MgO-1)は10nm、種類3(MgO-2)は200nm、種類4(TiO2)は21nmである。
増ちょう剤、無機系化合物充填剤及び基油の種類を表4及び表5に示す如く変えてグリース組成物を作成した。尚、配合量は、増ちょう剤、無機系化合物充填剤及び基油の総量を970gとし、その他アミン系酸化防止剤、スルフォネート系錆止め剤を総量で30g加え、総量1000gのグリース組成物とした。そして、これらのグリース組成物につき、以下に示す試験を行い、その結果を表4及び表5に示した。
【0017】
(音響試験)
接触ゴムシール付き密封深溝玉軸受(内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mm)内に2.4gの試験グリース組成物を封入し、1800rpmで30秒間回転させた後の音響を測定した。測定結果をアンデロン値(数値)で表4に示すと共に、通常の判定基準である6アンデロン値以下を合格とした。ここで6アンデロン以下を合格としたのは、ウレア系市販グリースの音響レベルと同等以上との判断からである。試験回数は2回である。
【0018】
(軸受はくり寿命試験)
はくり寿命試験は、軸受を急加減速させることで評価した。即ち、接触ゴムシール付き密封深溝玉軸受(内径φ12mm、外径φ37mm、幅12mm、プラスチック保持器付き)に試験グリース組成物を1.0g封入し、外輪回転速度1000rpm〜6000rpmの繰り返し、室温雰囲気下、ラジアル荷重120kgfの条件で軸受を連続回転させ、軸受内輪転走面に剥離が生じ、振動が増大して停止するまでの時間を測定した。試験回数は4回である。本試験は、振動が発生するまでの時間が500hr以上であれば良好とみなし、試験は500hrで中止した。
【0019】
〔高温・高速焼付き試験〕
(軸受潤滑寿命試験)
実施例1〜4及び比較例1〜4に関して、更に軸受潤滑寿命を調べるために高温・高速焼付き試験を行った。
試験方法は、接触ゴムシール付き密封深溝玉軸受(内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mm、プラスチック保持器付き)に試験グリース組成物2.3gを封入し、内輪回転速度22000rpm、軸受外輪温度150℃、ラジアル荷重10kgf、アキシアル荷重20kgfの条件で軸受を連続回転させた。1000hrを耐久試験の指標とし、軸受外輪温度が165℃以上まで上昇した時を焼付きとし、焼付きまでの時間を測定した。なお、1000hr経過したものは良好とみなし、試験を中止した。試験回数は3回である。
【0020】
【表1】


【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
以上の試験結果から、下記の考察が得られた。
比較例のグリース組成物は、増ちょう剤の配合番号の小さいものほど耐はくり性に優れる。これらに本発明の無機系化合物充填剤を配合すると、何れの場合も初期音響に悪影響を及ぼすことなく、軸受はくり寿命が延長することが確認された。更に、軸受潤滑寿命に関しても、実施例1〜4のグリース組成物は無機系化合物充填剤を配合しない場合(比較例1〜4)に比べ、同等以上の結果が得られた。
また、比較例6から、無機系化合物充填剤の配合量が本発明で特定した範囲よりも多いと音響特性が極端に悪くなり、比較例7から、無機系化合物充填剤の配合量が本発明で特定した範囲よりも少ないと軸受はくり寿命に効果が無いことが確認された。
更に、比較例8として、粒径が本発明で特定した範囲外である平均粒径5μmのマグネタイト(Fe3O4)粒子を用いて表5に示す如くグリース組成物を作成し、上記と同様の音響試験及び軸受はくり寿命試験を行ったところ、初期音響特性及び軸受はくり寿命とも満足できる結果が得られなかった。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車電装部品、エンジン補機の転がり軸受のはくり防止作用を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
転がり軸受の一種である接触ゴムシール付密閉深溝玉軸受を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1 内輪軌道
2 内輪
3 外輪軌道
4 外輪
5 転動体(玉)
6 シール板
7 保持器
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-23 
出願番号 特願平7-348520
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C10M)
P 1 651・ 113- YA (C10M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 後藤 圭次
鈴木 紀子
登録日 2003-04-25 
登録番号 特許第3422347号(P3422347)
権利者 日本精工株式会社
発明の名称 転がり軸受用グリース組成物  
代理人 市川 利光  
代理人 高松 猛  
代理人 小栗 昌平  
代理人 小栗 昌平  
代理人 本多 弘徳  
代理人 市川 利光  
代理人 本多 弘徳  
代理人 濱田 百合子  
代理人 濱田 百合子  
代理人 高松 猛  

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