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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G03G |
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管理番号 | 1104444 |
異議申立番号 | 異議2003-72118 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-22 |
確定日 | 2004-09-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3379812号「転写搬送装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3379812号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3,379,812号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成6年4月8日に特許出願され、平成14年12月13日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人 滝川貞昭により特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内に特許異議意見書が提出されたものである。 2.本件発明 特許第3,379,812号の請求項1ないし3に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるものである。以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」という。 「【請求項1】 記録媒体を静電的に吸着させた状態で回動可能な誘電体ベルトと、該誘電体ベルトを回動させる駆動手段と、前記誘電体ベルト上に電荷を付与する手段と、前記誘電体ベルトから分離した直後の記録媒体を案内するガイド部材とを備え、像担持体上に保持された画像を前記記録媒体上に転写させ、前記誘電体ベルトを回動させて該記録媒体を搬送する転写搬送装置において、 前記記録媒体が前記誘電体ベルトから分離される位置の近傍に、該誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と略平行に導電性部材を設け、該導電性部材を接地し、該部材の前記誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と対向する面と前記誘電体ベルトの前記ベルト面との間の距離を5mm以下としたことを特徴とする転写搬送装置。 【請求項2】 記録媒体を静電的に吸着させた状態で回動可能な誘電体ベルトと、該誘電体ベルトを回動させる駆動手段と、前記誘電体ベルト上に電荷を付与する手段と、前記誘電体ベルトから分離した直後の記録媒体を案内するガイド部材とを備え、像担持体上に保持された画像を前記記録媒体上に転写させ、前記誘電体ベルトを回動させて該記録媒体を搬送する転写搬送装置において、 前記記録媒体が前記誘電体ベルトから分離される位置の近傍に、該誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と略平行に導電性部材を設け、該導電性部材に電界発生手段を接続し、該導電性部材の前記誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と対向する面と前記誘電体ベルトの前記ベルト面との間の距離を10mm以下としたことを特徴とする転写搬送装置。 【請求項3】 請求項1又は2記載の転写搬送装置において、前記ガイド部材が、導電体又は体積固有抵抗が1012Ωcm以下の中抵抗体によって形成されていることを特徴とする転写搬送装置。」 3.引用刊行物記載の発明 先の取消理由通知において引用した刊行物(特開昭60-48859号公報)には次のような技術事項が図面と共に記載されている。 ア)(1)静電吸着されて搬送されるシートをシート搬送ベルトから分離するシート分離装置において、該シート搬送ベルト上のシートを排出案内するガイド部材のシート搬送方向上流位置にシート搬送方向と略直角方向に延びる導電性部材を設け、該導電性部材を接地したことを特徴としたシート分離装置。 (2)該導電性部材をシート分離位置と該ガイド部材との間に配置したことを特徴とした特許請求の範囲第1項記載のシート分離装置。 (3)該導電性部材が該シート搬送ベルトを搬送するプーリである特許請求の範囲第1項記載のシート分離装置。 (4)さらに、該シート搬送ベルト上方に第2の導電性部材を配置した特許請求の範囲第1項記載のシート分離装置。(公報第1頁 特許請求の範囲参照) イ)第5図において、ガイド17は導電性部材で電気的に接地されている。メッシュのベルト13は、ガイド17に接することにより、記録紙101とベルト13間の静電力が無くなり、紙端は自由となる。又今ガイド17の上方に記録紙101を誘導する導電性のステー18を設けることにより、紙先端はベルトから充分に(数mmから十数mm以上も)離れることになる。即ち、記録紙101の裏面に、ベルトメッシュ間を抜けた正の電子が帯電しているから、この電荷とステー18(接地或いは負(-)の電荷を加える)の負の電荷間で、静電力が発生し、記録紙101を誘導することになり、記録紙101の先端は、遊離しステー18に近ずくものである。(第3頁右上欄第1行〜同欄第14行参照) ウ)第7図は、他の実施例を示す概要説明図である。ガイド144は他のガイド154と同様にベルト13と静電的に絶縁されている。ベルト駆動用のプーリ302内には、メッシュのベルト13に接して、ガイド17に代わる導電性のコロ301を設けたものである。或いは、301のコロを用いず、ベルト駆動用のプーリ302が、搬送と直角方向の記録紙幅より大きい範囲に導電性部材例えばブラシ等でベルト13と接する様にしてもよい。記録紙101は第6図の如くベルト13から分離して排紙ガイド21に確実に排紙される。一方導電性のステー18は導電性のコロであっても良いし又記録画像に影響を与えない部分(例えば紙の余白部分)のみ存在し、充分記録紙を誘導するものであればよい。これは紙の厚さ、腰及び帯電量による静電力によっても異なる。(第3頁左下欄第8行〜右下欄第3行参照) 4.対比・判断 4-1.本件発明1 本件発明1を刊行物記載の発明と対比すると、特許異議申立書において申立人も相違点として挙げているように、 導電性部材の誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と対向する面と誘電体ベルトのベルト面との間の距離について、本件発明1は5mm以下としているのに対して、刊行物記載の発明はその距離について明確な言及はなく、ただ紙先端はベルトから充分に(数mmから十数mm以上も)離れるとしている点、 で相違している。 この相違点について検討する。 まず、本件発明1において導電性部材を設けたことの技術的意義についてみてみると、発明の詳細な説明には 「また、図2の距離dを5mm以下にすると、画像乱れを抑止する効果が一層増す。このように、導電性部材14を設けると画像乱れを抑える効果があるのは、次に説明する理由による。 すなわち、転写紙が転写ベルト10から分離する際に、転写紙と転写ベルト10との間の空隙が大きくなっていくと、その空隙の増大に伴って転写紙の持つ電荷によりその空隙間の電位が急激に上昇して剥離放電が起きることは前述した。 その際の放電によって、上記の画像乱れが発生するのであるが、導電性部材14をその転写紙の分離位置の近傍に設けると、その導電性部材14と転写紙との間に新たな電界が生じるため、上述した転写紙の転写ベルト10からの分離時における空隙間の急激な電位変動を抑えることができるので、画像乱れを防止することができる。(段落【0039】〜【0040】参照)」 とある。 このように本件発明1は転写紙が転写ベルト10から分離する際に空隙間の電位が急激に上昇して剥離放電が起きるのを、転写紙の分離位置の近傍に、接地した導電性部材14を設けることによって、導電性部材14と転写紙との間に新たな電界が生じさせ、転写紙と転写ベルトの空隙の増大に伴う空隙間の急激な電位変動を抑えるようにしたものである。 その上で、実験により導電性部材14と誘電体ベルトの間の距離dを10mmでは剥離放電による画像乱れを防止できないが、5mm以下とすれば有効に防止することができることを確認して、距離dを5mm以下と規定したものである。 これに対して刊行物記載の発明は、静電力によりベルト13に吸着した記録紙をガイド17により除電し、記録紙自身の腰によりベルト13から浮き上がらせ、さらに、ガイド17の上方に設けた記録紙101を誘導する導電性のステー18によって紙先端をベルトから充分に(数mmから十数mm以上も)離すようにするというものである。 そして、刊行物記載の発明は剥離放電についての認識がないので、記録媒体とベルト間の空隙の増大に伴う電位変動を剥離放電を起こさない電位以下となるように抑制するためには導電性部材とベルトとの間の距離を特定の寸法以下とする必要があるとする技術思想はなく、具体的な寸法として5mm以下とすることを示唆するものではない。 したがって、「導電性部材の誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と対向する面と誘電体ベルトのベルト面との間の距離を5mm以下とする」ことが、当業者が容易に考えつくことができた構成の変更であるとすることができない。 なお、この点に関して申立人は「しかしながら、請求項1に係る本件特許発明において、導電性部材と誘電体ベルトとの間隔は、その下限値が規定されていないことから理解されるように、紙詰まりなどが発生せず、記録媒体の搬送がスムーズに行われ且つ画像に乱れが生じない限り、その間隔は限りなく小さくても良いものである。しかるに甲第1号証(刊行物1)においても、導電性部材(ガイド20)とシート搬送ベルトとの間隔は、紙詰まりなどが発生しない限り、可及的に小さくてもよいものである。しかるに、甲第1号証においても、導電性部材(ガイド20)とシート搬送ベルトとの間隔は、紙詰まりなどが発生しない限り、可及的に小さくてもよいことは自明であり、例えば5mmよりも大きな間隔に設定しなければならないという必然性は全く無い。」と主張しているので検討する。 上でも述べたように、刊行物記載の発明は静電力によりベルト13に吸着した記録紙をガイド17により除電し、記録紙自身の腰によりベルト13から浮き上がらせ、さらに、ガイド17の上方に設けた記録紙101を誘導する導電性のステー18により、紙先端をベルトから充分に離すようにしたものであり、「紙先端はベルトから充分に(数mmから十数mm以上も)離れる」という記載からみても、可及的に小さい寸法として5mm以下のような小さい寸法を想定するものではなく、異議申立人の主張は採用できない。 したがって、本件発明2も刊行物記載の発明ではないし、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 4-2.本件発明2 本件発明1における検討で述べたように、刊行物記載の発明は剥離放電についての認識がないので、記録媒体とベルト間の空隙の増大に伴う電位変動を剥離放電を起こさない電位以下となるように抑制するためには、導電性部材とベルトとの間の距離を特定の寸法以下とする必要があるとする技術思想はない。 そして、導電性部材に電界発生手段を接続した場合、導電性部材の誘電体ベルトの直線搬送部のベルト面と対向する面と誘電体ベルトのベルト面との間の距離を具体的に10mm以下とすることも示唆するものではなく、したがって、本件発明2も刊行物1記載の発明ではないし、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 4-3.本件発明3 本件発明3は、本件発明1又は本件発明2を全部包含する発明であり、上の4-1.や4-2.で述べたように、本件発明1や本件発明2が刊行物記載の発明ではないし、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明3も刊行物記載の発明ではないし、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし3の特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明1ないし3の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-08-26 |
出願番号 | 特願平6-70752 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G03G)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小宮山 文男 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
井出 和水 山下 喜代治 |
登録日 | 2002-12-13 |
登録番号 | 特許第3379812号(P3379812) |
権利者 | 株式会社リコー |
発明の名称 | 転写搬送装置 |
代理人 | 大澤 敬 |