• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1104473
異議申立番号 異議2003-73673  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-04-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3433063号「窒化アルミニウム焼結体、電子機能材料および静電チャック」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3433063号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第3433063号に係る出願は、平成9年9月29日に特許出願され、平成15年5月23日にその発明についての特許権の設定の登録がなされ、その後、平成15年12月25日付けで森田 昭司(以下「申立人」という)より特許異議の申立てがなされたものである。
本件請求項1〜請求項12に係る発明(以下「本件第1発明」〜「本件第12発明」という)は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】窒化アルミニウム結晶粒子を含有する窒化アルミニウム焼結体であって、希士類元素の含有量(酸化物への換算値)が0.05重量%以上、0.5重量%以下であり、前記窒化アルミニウム結晶粒子の平均粒径が3μm以下であり、電子スピン共鳴法によるスペクトルから得られたアルミニウムの単位mg当たりのスピン数が5×1012spin/mg以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム焼結体。
【請求項2】前記窒化アルミニウム焼結体の100℃〜500℃の体積抵抗率が1×1014〜1×107Ω・cmであることを特徴とする、請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項3】前記窒化アルミニウム焼結体の100℃〜500℃までの体積抵抗率が5×1013〜1×108Ω・cmであることを特徴とする、請求項2記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項4】電子スピン共鳴法によるスペクトルのアルミニウムの不対電子のg値が2.0001以上、2.0009以下であることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項5】希土類元素を除く金属不純物量が500ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項6】前記窒化アルミニウム焼結体中の全酸素量と、希土類元素を酸化物換算した場合の換算酸素量との差が1.0重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項7】カソードルミネッセンスによるスペクトルにおいて、350nm〜370nmの波長領域に主要ピークを有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項8】前記窒化アルミニウム焼結体の窒化アルミニウム結晶粒子の平均粒径が1.0μm以上、3.0μm以下であることを特徴とする、請求項1-7のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項9】前記窒化アルミニウム焼結体の窒化アルミニウム結晶粒子の平均粒径が2.2μm以上、2.9μm以下であることを特徴とする、請求項8記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項10】JISZ8721に規定する明度がN4以下であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体。
【請求項11】請求項1〜10のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体からなる基材を備えていることを特徴とする、電子機能材料。
【請求項12】半導体を吸着し、保持するための吸着面を備えた静電チャックであって、請求項1〜10のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム焼結体からなる基体と、この基体中に埋設された面状の電極と、この面状の電極に対して直流電力を供給するための電源とを備えていることを特徴とする、静電チャック。」
2.特許異議申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証及び甲第2号証を提出し、
(1)本件第1発明〜本件第10発明は甲第1号証に記載された発明であるから、本件第1発明〜本件第10発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであって、取り消すべきものである。
(2)本件第1発明〜本件第12発明は甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1発明〜本件第12発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消すべきものである。
旨主張している。
3.証拠の記載内容
(1)甲第1号証:特開昭61-21978号公報
甲第1号証には「窒化アルミニウム焼結体の製造方法」に関して次の事項が記載されている。
(1-ア)「窒化アルミニウム粉末の成形体或いは該窒化アルミニウム粉末と焼結助剤との混合粉末の成形体を2〜100気圧の窒素ガス雰囲気下、1700〜2400℃の温度で焼結することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。」(特許請求の範囲)、
(1-イ)「本発明は高密度で高純度な窒化アルミニウム焼結体の製造方法に関するものである。」(第1頁左下欄第11行〜第12行)、
(1-ウ)「しかし従来窒化アルミニウム焼結体の原料となる窒化アルミニウム粉末は難焼結性のため、高密度な焼結体を得るためには比較的多量の焼結助剤を添加したり、機械的圧力を加えつつ高温で焼成するいわゆるホットプレス法などの手段に依らねばならなかた。」(第1頁右下欄第3行〜第8行)、
(1-エ)「工業的に最も有利な方法としては窒化アルミニウム粉末あるいはそれに適当な焼結助剤を添加した粉末の成形体を大気圧の窒素ガス圧下で焼結するいわゆる常圧焼結法が挙げられるが、この方法で高密度な焼結体を得るためには原料粉末の性状や助剤の選択、焼成温度など、非常に限られた条件下での製造が要求される。本発明者等は窒化アルミニウム粉末の焼結法について鋭意研究した結果、窒化アルミニウム粉末あるいはそれに適当な助剤を添加した粉末の成形体を窒素ガス加圧下で焼結することによって従来にない優れた熱伝導率を有する窒化アルミニウム焼結体が安定して得られ、しかも、原料となる窒化アルミニウム粉末によっては、得られる窒化アルミニウム焼結体の透光性が向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。」(第1頁右下欄第15行〜第2頁左上欄第4行)、
(1-オ)「原料の窒化アルミニウム粉末の平均粒子径……が5μm以下であることが好ましい。好適には3μm以下、最も好適には2μm以下の粉末が採用される。」(第2頁右上欄第1行〜第6行)、
(1-カ)「前記窒化アルミニウム粉末は単独で或いはこれに焼結助剤を混合した後成形して窒素ガス加圧下の焼結に供する。」(第2頁左下欄第12行〜第14行)、
(1-キ)「本発明に於いて好適に用いられる焼結助剤としては……、ランタン族金属およびイットリウムよりなる群から選ばれる少くとも1種の金属又は金属化合物が挙げられる。」(第2頁右下欄第1行〜第5行)、
(1-ク)「また上記ランタン族金属は特に限定されず使用出来る。例えばランタン(La)、セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Na),プロメシウム(Pm),サマリウム(Sm),ユーロビウム(Eu),ガドリニウム(Ga),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),ツリウム(Tm),イッテルビウム(Yb),ルチチウム(Lu)が好適に使用出来る。特に工業的にはランタン,セリウム,ネオジム等が好適に使用される。」(第2頁右下欄第13行〜第3頁左上欄第3行)、
(1-ケ)「本発明で使用される焼結助剤の窒化アルミニウム粉末への混合量は特に限定されないが、通常は酸化物に換算して0.02〜5.0重量%含まれるように混合することが好ましい。」(第3頁左上欄第4行〜第7行)、
(1-コ)「本発明における前記窒化アルミニウム粉末またはその原料粉末と焼結助剤との混合は特に限定されず、乾式混合であっても湿式混合であってもよい。特に好適な実施態様は湿式混合すなわち液体分散媒体を使用する湿式状態での混合である。」(第3頁左上欄第8行〜第13行)、
(1-サ)「本発明における焼結の具体的な態様としては、前記窒化アルミニウム粉末あるいはそれに焼結助剤を添加した混合粉末を適当な成形手段……によって目的の形状に成形した後これを適当なるつぼ,サヤ材などの上に設置して窒素加圧下高温で焼結する方法が最も一般的に採用される。」(第3頁右上欄第9行〜第16行)、
(1-シ)「また別の態様として前記窒化アルミニウム粉末あるいはそれに焼結助剤を添加した混合粉末に50〜500kg/cm2の機械的圧力を印加しつつガス加圧下で焼結する方法も採用することができる。」(第3頁右上欄第16行〜最終行)、
(1-ス)「本発明で採用される窒素ガス圧力は2〜100気圧の範囲である。」(第3頁左下欄第1行〜第2行)、
(1-セ)「本発明の焼結は1700〜2400℃好ましくは1800〜2300℃の温度範囲で実施される。」(第3頁左下欄第12行〜第14行)、
(1-ソ)「本発明の窒素ガス加圧下での焼結は、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率および透光性の改良に著るしい効果を与える。」(第3頁左下欄最終行〜同頁右下欄第3行)、
(1-タ)「実施例1. 平均粒子径が1.31μmで、3μm以下が90容積%を占め、……窒化アルミニウム粉末にCa(NO3)2・4H2Oを……均一に混合した。粉末を乾燥後1500kg/cm2の圧力でラバープレスした円板状試料を9.8kg/cm2の窒素ガス加圧下、2100℃で3時間焼結した。」(第3頁右下欄第13行〜最終行)、
(1-チ)第4頁左下欄に記載の「表2 窒素ガス加圧焼結結果」(N2ガス圧力が1.0気圧〜9.8気圧)、第4頁右下欄に記載の「表3 窒素ガス加圧焼結結果」(N2ガス圧力が1.0気圧〜9.8気圧)」、
(1-ツ)「実施例4. 平均粒子径が1.8μm、3μm以下が75容積%以上で……である窒化アルミニウム粉末(AlN含有量94.8wt%)にCaCO3を……均一に混合した。粉末を乾燥後1500kg/cm2の圧力でラバープレスして円板状の成形体を作成した。この成形体を9.8kg/cm2の窒素ガス圧下、2150℃の温度で3時間焼結した。」(第5頁左上欄第1行〜第12行)。
(2)甲第2号証:特開平9-77558号公報
甲第2号証には「窒化アルミニウム焼結体の製造方法」に関して次の事項が記載されている。
(2-ア)「本発明は、窒化アルミニウム(AlN)焼結体の製造方法に係り、特に熱伝導率が100〜180W/mKのAlN焼結体を安価に製造する方法に関する。」(第2頁左欄第10行〜第13行)、
(2-イ)「本発明は、……、窒化アルミニウム焼結体の焼結温度の低下に応じて、製造コストの低減を図ることを可能にした窒化アルミニウム焼結体の製造方法を提供することを目的としている。」(第2頁右欄第13行〜第17行)、
(2-ウ)「アルミナ焼結体等に対して十分に高熱伝導性を維持した窒化アルミニウム焼結体を安価に作製することが可能となる。」(第2頁右欄第42行〜第44行)、
(2-エ)「これら……希土類元素の化合物は、それぞれ、0.1〜10重量%の範囲で添加することが望ましい。」(第3頁左欄第34行〜第36行)、
(2-オ)「実施例1 ……平均一次粒子径が1.5μmのAlN粉末95.45重量%に、……添加した。この混合粉体を……造粒粉とした。この造粒粉を50MPaの圧力下でブロック状に成形した後、……焼結した。……この焼結体の一部を切り出して鏡面研磨した後、SEM観察してAlNの平均粒子径を測定したところ1.7μmであった。」(第4頁右欄第43行〜第5頁左欄第19行)、
(2-カ)「実施例2 平均一次粒子径が0.9μmで、不純物酸素量が1.3重量%のAlN粉末95重量%に対して、……混合して原料粉末を調製した。続いて……造粒した後、……圧粉体とした。……焼結した。……この焼結体の一部を切り出して鏡面研磨した後、SEM観察してAlNの平均粒子径を測定したところ1.6μmであった。」(第5頁左欄第26行〜第47行)、
(2-キ)「実施例3 平均一次粒子径が0.6μmで、不純物酸素量が1.3重量%のAlN粉末95重量%に対して……混合し、……シートに成形した。……焼成を行った。……得られたAlNパッケージのAlN結晶粒の平均粒子径は0.9μm」(第5頁右欄第2行〜第31行)、
(2-ク)「比較例1 平均一次粒子径が1.3μmで、不純物酸素量が0.9重量%のAlN粉末97重量%に対して……添加した原料粉末を用いて、……焼結した。……得られたAlN焼結体の……平均粒子径は6.4μm」(第5頁右欄第34行〜第44行)、
(2-ケ)「比較例2 比較例1において、焼結条件を……に変更する以外は、同組成のAlN焼結体原料を比較例1と同様にして焼結した。……得られたAlN焼結体の……平均粒子径は0.6μm」(第5頁右欄第48行〜第6頁左欄第4行)、
(2-コ)「実施例4 ……平均一次粒子径が0.8μmのAlN粉末95.45重量%に対して、……添加した。この混合粉体を……造粒粉とした。この造粒粉を50MPaの圧力下でブロック状に成形した後、……焼結した。……得られたAlN焼結体の……平均粒子径は1.7μm」(第6頁左欄第13行〜同頁右欄第13行)。
4.当審の判断
(1)本件第1発明について
甲第1号証には、記載事項1-アに「窒化アルミニウム粉末の成形体或いは該窒化アルミニウム粉末と焼結助剤との混合粉末の成形体を2〜100気圧の窒素ガス雰囲気下、1700〜2400℃の温度で焼結することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法」が記載され、その「焼結助剤」として、記載事項1-キ、1-クに「希土類元素を使用すること」が記載される。そして、その「焼結助剤」の含有量に関し、記載事項1-ケに「使用される焼結助剤の窒化アルミニウム粉末への混合量は酸化物に換算して0.02〜5.0重量%含まれるように混合すること」が記載される。また、原料の窒化アルミニウム粉末の平均粒子径については記載事項1-オに「最も好適には2μm以下の粉末が採用される」と記載される。これらの記載から、甲第1号証には「平均粒子径2μm以下の窒化アルミニウム粉末の成形体或いは該窒化アルミニウム粉末と焼結助剤との混合粉末の成形体を2〜100気圧の窒素ガス雰囲気下、1700〜2400℃の温度で焼結した窒化アルミニウム焼結体であって、希土類元素から成る焼結助剤を窒アルミニウム粉末に対して酸化物に換算して0.02〜5.0重量%含有する窒化アルミニウム焼結体」(以下「甲1発明」という)が記載されているといえる。
そこで、本件第1発明と甲1発明を対比すると、甲1発明の窒化アルミニウム焼結体には窒化アルミニウムの結晶粒子が含有されることは自明であるから、両者は、「窒化アルミニウム結晶粒子を含有する窒化アルミニウム焼結体であって、希士類元素の含有量(酸化物への換算値)が0.05重量%以上、0.5重量%以下の範囲内である窒化アルミニウム焼結体」である点で一致し、下記の点で相違している。
(a)本件第1発明では「窒化アルミニウム結晶粒子の平均粒径が3μm以下である」のに対して、甲1発明は「窒化アルミニウム粉末の平均粒子径が5μm以下である」が結晶粒子の平均粒子径は不明である点
(b)本件第1発明では「電子スピン共鳴法によるスペクトルから得られたアルミニウムの単位mg当たりのスピン数が5×1012spin/mg以下である」のに対して、甲1発明はかかる構成がない点
これら相違点について、申立人は申立書第9頁〜12頁において概ね(ア)相違点(a)に関し、甲1発明の窒化アルミニウム粉末を用いて窒化アルミニウム焼結体を製造すれば、その焼結体の窒化アルミニウム結晶粒子は3μm以下になる、(イ)相違点(b)に関し、原料組成や製造方法が同じであるから甲1発明の焼結体と本件発明のものとは同じである旨主張しているので、その点を検討する。
本件第1発明は「ホットプレス法によって窒化アルミニウム焼結体を製造」するもの(本件特許明細書の段落番号【0039】〜【0043】及び【実施例】参照)であるのに対して、甲1発明は「窒素ガス加圧焼結法によって窒化アルミニウム焼結体を製造するもの」(記載事項1-ア、1-エ、1-カ、1-サ、1-ス、1-ソ、1-タ、1-チ、1-ツ)であるから、両者の「窒化アルミニウム焼結体の製造法」は同じとはいえない。したがって、甲1発明の窒化アルミニウム粉末を用いて窒化アルミニウム焼結体を製造すれば、その焼結体の窒化アルミニウム結晶粒子は3μm以下になるという根拠が明確でない上に、相違点bの構成について、甲1発明の焼結体と本件発明のものとは同じであるとはいえない。
そして、これら相違点について他の証拠に基づいて更に検討すると、
(ア)相違点(a)について
甲第2号証には、記載事項2-オに「平均一次粒子径が1.5μm・・AlNの平均粒子径が1.7μm」、記載事項2-カに「平均一次粒子径が0.9μm・・AlNの平均粒子径1.6μm」と記載されている。しかしながら、甲1発明と甲第2号証のものが共に窒化アルミニウム焼結体に関するものであるとはいえ、本件第1発明が段落【0004】に記載されるように「広い温度範囲で体積抵抗率の変化を少なく」しようとするものであるのに対し、甲1発明あるいは甲第2号証に記載のものは「優れた熱伝導率を有する窒化アルミニウム焼結体を得る」(記載事項1-エ、2-ウ)ものであり、しかも製造方法が異なるものであるから、甲1発明や甲第2号証に記載のものに甲1発明の技術思想は見出せなく、甲1発明の焼結体のアルミニウム結晶粒子の平均粒子径を甲第2号証に記載されるものにする動機付けは見当たらない。しかも、焼結体の製造方法が、それぞれ異なるのであるから、甲第2号証に上記したような平均一次粒子径とAlN結晶粒子の平均粒子径の記載あったとしても、甲第2号証の記載事項2-クの比較例に「平均一次粒子径が1.3μm・・AlN焼結体の平均粒子径6.4μm」であることからみても、甲1発明の原料アルミニウム粉末が2μm以下から直ちにAlN結晶粒子の平均粒子径が3μm以下ともいうことはできない。
(イ)相違点(b)について
甲第2号証には記載事項2-エ〜2-コからみて、本件第1発明の構成における「窒化アルミニウム結晶粒子を含有する窒化アルミニウム焼結体であって、希士類元素の含有量(酸化物への換算値)が0.05重量%以上、0.5重量%以下であり、前記窒化アルミニウム結晶粒子の平均粒径が3μm以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム焼結体」については記載されているといえるものの、「電子スピン共鳴法によるスペクトルから得られたアルミニウムの単位mg当たりのスピン数が5×1012spin/mg以下である点」については全く記載されていない。そして、本件第1発明と甲第2号証に記載のものとは製造方法が異なることから、同じ構造を有するとはいえなく、また、本件第1発明と甲第2号証に記載のものとは上記したように技術思想が異なるものであるから、相違点(b)の本件第1発明の構成を導出することはできない。

そして、本件第1発明は上記の構成を具備することによって、「従来よりも広い温度範囲で体積抵抗率の変化が少ない新規な窒化アルミニウム焼結体を提供することに成功した」という本件特許明細書(段落番号【0067】)に記載された顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件第1発明は、甲1発明であるということができないし、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
また、本件第1発明は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
(2)本件第2発明〜本件第12発明について
本件第2発明〜本件第12発明はいずれも直接的又は間接的に本件第1発明を引用するものであるから、本件第1発明と同じ理由により本件第2発明〜本件第12発明は甲1発明であるということができないとともに、甲1発明、又は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1〜請求項12に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜請求項12に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-08-30 
出願番号 特願平9-263329
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C04B)
P 1 651・ 121- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 岡田 和加子
金 公彦
登録日 2003-05-23 
登録番号 特許第3433063号(P3433063)
権利者 日本碍子株式会社
発明の名称 窒化アルミニウム焼結体、電子機能材料および静電チャック  
代理人 高見 和明  
代理人 青木 純雄  
代理人 中谷 光夫  
代理人 梅本 政夫  
代理人 杉村 興作  
代理人 徳永 博  
代理人 藤谷 史朗  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ