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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B07B
管理番号 1104479
異議申立番号 異議2003-71414  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-30 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3352313号「トナーの製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3352313号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3352313号の請求項1に係る発明についての出願は、平成8年1月4日に特許出願され、平成14年9月20日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 中石幸明より特許異議の申立てがなされ、当審において権利者に対し審尋がなされ、権利者より平成16年7月23日付けで回答書が提出されたものである。

2.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許第3352313号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粉砕手段によって粉砕して得られた粗粉砕物からなる粉体原料を、先ず、水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段を用いる第1分級工程に導入して微粉と粗粉とに分級し、次に、第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入して更に分級してトナーを製造する為の分級品を得、且つ第1分級工程で分級された粗粉を被粉砕物として機械式粉砕機に導入して微粉砕し、該微粉砕された粉砕物を上記粉体原料中に混入させて第1分級工程に導入して循環処理を行うトナーの製造方法において、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体からなる回転子と、該回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている機械式粉砕機の上記環状空間に被粉砕物を導入し、上記回転子を高速回転させることによって被粉砕物を微粉砕することを特徴とするトナーの製造方法。」
(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人 中石幸明は、下記の甲第1号証乃至甲第8号証を提出し、本件発明は、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は、取り消されるべきものである旨、主張している。
甲第1号証:特開平7-199530号公報
甲第2号証:ホソカワミクロン株式会社によるカタログ「ホソカワ製品ハンドブック」第91、92頁
甲第3号証:日清エンジニアリング株式会社によるカタログ「NISSHIN ENGINEERING 粉体機器総合カタログ」「TURBO CLASSIFIER ターボクラシファイア」の項
甲第4号証:特開平6-75428号公報
甲第5号証:特開平7-49583号公報
甲第6号証:特開平6-277545号公報
甲第7号証:川崎重工技報 第101号、第129〜131頁、昭和63年12月20日発行
甲第8号証:特公平6-66034号公報
(3)甲各号証に記載された事項
(3-1)甲第1号証には、図面と共に下記の記載がある。
1-ア「結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、混練物を冷却し、冷却物を粉砕手段によって粉砕して粉砕物を得、得られた粉砕物を気流分級手段で粗粉と細粉とに分級し、分級された粗粉を衝突式気流粉砕手段により微粉砕して微粉体を生成し、生成した微粉体から気流分級手段で微粉を分級し、分級された細粉から静電荷像現像用トナーを製造する方法において、前記衝突式気流粉砕手段は、高圧気体により供給された粗粉を搬送し加速する為の加速管と、粗粉を微粉砕する為の粉砕室とを有し、加速管の後端部には粗粉を加速管内に供給する為の粗粉供給口を有し、粉砕室内には、加速管の出口の開口面に対向して設けた衝突面を有する衝突部材が具備されており、粉砕室は、衝突部材で粉砕された粗粉の粉砕物を衝突により更に粉砕する為の側壁を有し、側壁と衝突部材の縁端部との最近接距離11 は、衝突面に対向する粉砕室前壁と衝突部材の縁端部との最近接距離12 よりも短く、粉砕室内においては衝突部材の衝突面と側壁において粗粉の粉砕及び粗粉の粉砕物の更なる粉砕を行った後、第1気流分級手段に循環し、第1気流分級手段で分級された微粉体に、この微粉砕工程とは別に該衝突式気流粉砕手段より比較的低い衝撃を短時間与えた後、第2分級手段により粒度を調整することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
1-イ「本発明の目的は、粉砕効率の良好なトナーの製造方法を提供し、且つ流動性に優れたトナーの製造方法を提供することにある。」(第3頁左欄下から2行〜同頁右欄1行、【0012】段落)
1-ウ「第1図は、本発明の製造方法の概要を示すフローチャートの一例である。本発明において、粉砕原料は、先ず第1分級手段に供給され、第1分級手段において粗粉と細粉に分級される。規定内粒度以上の粗粉は衝突式気流粉砕手段に導入されて粉砕され、粉砕後に第1分級手段に循環及び導入される。細粉は、低衝撃処理手段により処理された後、第2分級手段によって分級され、少なくとも規定粒度内の粒度を有する中粉体と規定粒度以下の粒子からなる微粉体とに分級される。分級された中粉体は、そのままトナーとして使用されるか、又は疎水性コロイダルシリカの如き添加剤と混合された後にトナーとして使用される。」(第3頁右欄下から1行〜第4頁左欄11行、【0015】段落)として、第13頁に【図1】が記載されている。
1-エ「本発明に用いられる第1分級手段としては、公知の気流分級機が用いられる。有効な気流分級機としては、例えば、日本ニューマチック工業社製DS型分級機、ホソカワミクロン社製ミクロンセパレター、日清エンジニアリング社製ターボクラシフアイアー、日本ドナルドソン社製ドナセレック等が挙げられる。」(第5頁右欄15〜20行、【0030】段落前段)
1-オ「低衝撃処理手段としては、回転するローター、ブレード又はハンマーとそれに相対峙するライナーとの間で衝撃を与えるか、又は多数の回転ピン間で衝撃を与える様な方法を例示し得る。図13は、ローターとーライナーの組み合わせによる低衝撃処理装置の概略断面図である。図中31は回転軸、32はケーシング、33はライナー、34は送風羽根、35はローター(ブレード付き)、36は出口、37は製品取出口、38はリターン路、39は原料投入口、40は入口、41はジャケット、42はリターン閉鎖弁である。・・・。図14は図13に示した低衝撃処理装置のライナー33と回転するローター35の位置関係を示した図である。ライナーとローターの間隔とはライナーの内周への突出部の先端を結んで得られる円周とローターの突出部の軌跡の2つの円周の半径の差を言う。このローターの代わりにブレードやハンマーでも同様である。ローター、ブレード又はハンマーとライナーとの間隔は、0.5〜10mm程度、好ましくは0.5〜3mmのものでよい結果が得られている。図15は別のタイプの低衝撃処理装置の概略断面図である。該装置は、円筒状のケーシング51とこのケーシング51内にケーシング軸と同軸に配置されてローター52とを備えている。ローター52には複数のブレード53が設けられている。ライナー54とローターブレード53との間には適度の広さ(0.5〜10mm、好ましくは0.5〜3mmの間隙)の空間が存在し処理領域55を形成している。・・・。この様な装置としては、川崎重工業(株)製「クリプトロン」やターボ工業社製の「ターボミル」等が採用され得る。」(第5頁右欄20行〜第6頁左欄26行、【0030】段落後段〜【0034】段落)として、第13〜15頁には【図13】、【図14】、【図15】が記載されており、これらの図面の記載からローターは中心回転軸に取り付けられていることが窺える。
1-カ「本発明の低衝撃処理の目的は、粒子の球形化ではなく表面特性の改質であるので、装置内における粒子の滞留時間は極めて短く、その時間は、夫々のトナー処理原料の性質及びローターの周速によって異なる・・・。処理後のトナー表面の状態を走査型電子顕微鏡で観察すると、処理前に比較して形状に大きな変化は見えないが、角張った突起部分が減少しているのが認められる。この低衝撃処理時間(滞留時間)を前述の時間より長くしすぎるとトナーの球形化が促進され、トナー消費量の増加やクリーニング性の低下に伴うカブリの増加等の現象が強くなり、逆に短すぎると表面特性の改質の効果が弱くなり、流動性が悪くなると言う傾向が見られる。」(第6頁左欄27〜45行、【0035】、【0036】段落前段)
(3-2)甲第2号証には、「ミクロンセパレータ(登録商標)」について図面と共に下記の記載がある。
2-ア「ミクロンセパレータは、粉砕機または篩分機だけでは使用目的に適応した粒度分布の製品を得ることが困難な微粉や超微粉の分級を効率よく、シャープに行う遠心力型風力分級機である。」(第91頁左欄2〜5行)
2-イ「分級ロータの形状は流体力学の理論によって設計されているので確実な遠心力の場を作る。これによって分級微粉中に粗粉混入・・・のないシャープな分級が可能になる。又、独特のロータ設計と二次空気による風篩により、80%程度から最高90%程度の微粉回収率が得られる。」(第91頁左欄15〜20行)
2-ウ「分級ロータ 複数の羽根が回転することにより、遠心力を発生させる。」(第92頁1〜3行)
2-エ 第92頁には「Fig.1」が記載されており、この「Fig.1」から分級ロータの回転軸が垂直方向に配設されていることが窺える。
(3-3)甲第3号証には、「ターボクラシファイア」について図面と共に下記の記載がある。
3-ア「世界ではじめてサブミクロン分級を実現。幅広い分野の粉体を精密に効率よく分級します。」(左欄1〜3行)
3-イ「原料投入口より供給された粉体は、空気の流れに乗った状態で分散羽根と分散円板で均一に分散されながら分級室に送り込まれます。ここで粉体の各粒子は回転による遠心力と、半径方向へ流れる空気流の抗力を受け、粗粒子は遠心力により外側へ、微粒子は抗力により内側へ移動し、分散されます。」(右欄1〜5行)
3-ウ「構造断面図」が記載されており、この「構造断面図」から、分級ロータの回転軸が垂直方向に配設されていることが窺える。
(3-4)甲第4号証には、図面と共に下記の記載がある。
4-ア「 少なくとも結着樹脂および磁性粉を含有する組成物を溶融混練する工程、混練物を粉砕する工程、および粉砕物を分級する工程よりなる磁性粉含有微粒子を製造する方法において、混練物の粉砕後、回転する分散羽根によって粉砕粒子に衝撃力を加えて粉砕粒子を分散させ、分級することを特徴とする磁性粉含有微粒子の製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
4-イ「従来の分級機による分級においては、粉砕された磁性トナーおよび遊離磁性粉は、装置壁あるいは粒子同士の摩擦により帯電し、その静電引力によって凝集するために、遊離磁性粉を単一粒子化することができず、分級工程で除去することが難しい。また、昨今のコピー高画質化のため、トナーには小粒径化、シャープな粒度分布が要求されている。・・・。本発明は、磁性粉含有微粒子、特に磁性トナーにおける上記の問題点を解消することを目的とするものであって、粉砕物から遊離磁性粉を除去し、かつ分級性能を損なわずに、磁性粉含有微粒子を製造する方法を提供することにある。」(第2頁右欄22行〜第3頁左欄1行、【0004】、【0005】段落)
4-ウ「図3は、図1における分級機2、3および図2における分級機17および18に用いられるものの概略の断面図であり、図4はその平面図である。分級機は、上部中心に粉砕物挿入用のホッパー26および分散用高圧空気27を導入するディスパージョンノズル28を備えたケーシング29と、その内部に回転可能に軸支された分級ロータ30と、ケーシングの内周面および分級ロータの円周端部に設けられた分級羽根31、32と、ケーシングに設けた粗粉を取り出すための粗粉取出口33および微粉排出口34とより構成されており、そして、分級ロータ30は、その上部が分散円板35になっており、円板の上面に多数の分散羽根36が放射状に配設されている。なお、図において、37はバランスロータ、38は流路、39は空気流、40は粗粉である。上記の分級機において、粉砕された粉砕物は、分級機の入口部で、ディスパージョンノズルから導入された分散用高圧空気によって衝撃力が与えられ、加速されて回転する分級ロータ上面に搬送される。分級ロータ30の円板上面には分散羽根36が配設されているので、搬送された粉砕物は分散羽根に衝突し、機械的な衝撃による分散作用を受ける。粉砕物は次いで分級羽根31および32によって分級され、粗粉40は分級羽根31の外側に移送されて粗粉出口33から取り出される。他方、微粉は分級羽根32の隙間を通過して、外部から吸引された空気流と共に矢印で示すように流路38を通って微粉排出口34に達する。本発明においては、上記のように、粉砕物が分級される前に、回転する分散羽根に衝突するため、機械的な衝撃による分散作用を受け、その結果、続いて行われる分級によって粗粉と微粉とが効率よく分離される。」(第2頁右欄6〜35行、【0010】、【0011】段落)として、第7頁には【図3】、【図4】が記載されており、これら【図3】、【図4】の記載から、分級ロータ30の回転軸が垂直方向に配設されていることが窺える。
4-エ「実施例1 ・・・
使用した分級機は、ターボクラシファイアTC-40(日清エンジニアリング(株)製)であり、図3および4に示す構造を有するものであった。」(第4頁右欄14行〜同頁左欄下から20行、【0016】段落)
(3-5)甲第5号証には、図面と共に下記の記載がある。
5-ア「 粗粉砕粒子から高速気流中衝撃粉砕により得た平均粒径10〜19μmの中粉砕粒子を、ジェット気流式粉砕により、平均粒径5〜10μm未満を有する小粒径粒子を得、次いで得られた小粒径粒子を分級ロータ型分級機で分級することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
5-イ「高速気流衝撃粉砕法とは、ローター等の高速回転により外周ライナーとの間に発生する渦気流を利用する粉砕法をいう。ジェットノズルからの超高速気流を利用するジェット粉砕により行うことも可能であるが、動力費が衝撃粉砕法に比べ格段に高く、本発明の生産能力の向上という目的に沿わない。・・・。中粉砕粒子を形成するに適している粉砕機としては、従来から使用されている衝撃式粉砕機を使用することができるが、特に高速気流衝撃粉砕法を適用したクリプトロンシステム(川崎重工業社製)が好ましい。図1にクリプトロンシステムの概略構成図を示した。回転部は多数の溝のついたローター(1)より構成されており、ケーシングは内面に多数の溝のついたステータ(2)が取り付けられている。ローター(1)が高速回転することによって、機内に激しい渦流と圧力振動が発生する。原料は空気と共に吸気口(3)より吸い込まれ空気流で粉砕室へ供給される。続いて激しい空気の渦流によって粉砕され、ローターに沿って回転しながら上昇し排気口(4)より空気と共に排出される。かかる装置は、凝集物の解砕と同時に、中粉砕粒子表面に結合している添加された有機または無機微粒子ならびにそれらの超微粉を機械的衝撃力によりさらに強固に固定化することが可能である。このようにして解砕され得られた中粉砕粒子には、表面に有機ないし無機微粒子が強固に結合しており、また粒子中に超微粉の含まれる割合が少ない。」(第2頁第2欄23行〜第3頁第3欄4行、【0010】〜【0015】段落)として、第6頁には【図1】が記載されており、【図1】からみて、ローターは中心回転軸に取り付けられていることが窺える。
5-ウ「最後に、・・・小粒径粒子を分級する。分級は、分級ロータ型分級器でおこなう。・・・分級ロータ型分級器としてはターボクラシファイアー(日清エンジニアリング社製)、アキュカット(日本ドナルドソン社製)等種々知られている。これらの中でも、ティープレックス超微粉分級機100〜1000ATPシリーズ(ホソカワミクロン社製)が好ましい。このシリーズの中でティープレックスマルチホイール型分級機の概略構成図を図2および図3に記載する。図2は中央垂直断面図であり、図3は分級部の水平断面図である。・・・。分級部(11)は個別駆動方式による分級ローターが水平に複数個取り付けられている。」(第3頁第3欄22行〜同頁第4欄22行、【0019】〜【0021】段落)として、第6,7頁には【図2】、【図3】が記載されており、これら【図2】、【図3】を検討しても、分級ローターの回転軸の配設方向は明確でない。
(3-6)甲第6号証には、図面と共に下記の記載がある。
6-ア「 粗粉砕したトナー粗粉砕物を粉砕して静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、回転軸(2)に支持され且つ突起(3)を外側表面の母線に沿って多数設けた回転子(1)と、当該回転子に嵌装され且つ突起(5)を内側表面の母線に沿って多数設けた固定子(6)と、回転子(1)の外側表面と固定子(6)の内側表面との間に形成された粉砕部(4)と、固定子(6)を構成するケーシングの両端部にそれぞれ形成された供給口(7)と排出口(8)とから主として構成され、回転子(1)及び固定子(6)の少なくとも一方の表面において、当該表面の一部の突起の繰り返し周期を異ならせた衝撃式粉砕機を使用してトナー粗粉砕物の粉砕を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
6-イ「本発明は、・・・、その目的は、粉砕工程におけるエネルギー効率が優れ、微粉および粗粉の発生が少なくて小粒径のトナーであっても歩留り良く製造し得るトナーの製造方法および改良された衝撃式粉砕機を提供することにある。」(第2頁第2欄24〜28行、【0006】段落)
6-ウ「回転子(1)と固定子(6)との間に設けられる微小間隙、すなわち、回転子(1)の波形状突起(3)の山部と固定子(6)の波形状突起(5)の山部との距離(t)は、通常、数mm以下とされるが、2mm前後の範囲が好ましい。」(第3頁第4欄2〜7行、【0014】段落)
6-エ 第6頁にはこの発明の衝撃式粉砕機の一例の断面図である【図1】が、第5頁には【図1】におけるA-A線断面図である【図2】が記載されており、【図1】から、回転子は中心回転軸に取り付けられていることが窺える。
(3-7)甲第7号証には、「微粉砕機-”クリプトロン”」について図面と共に下記の記載がある。
7-ア「「クリプトロン」は竪型の高速回転式微粉砕機に属するもので、その概略構造および外観を、図1,図2に示す。フィーダ等で供給された原料は、空気と共に吸気口から吸引され、Vベルトによって駆動され高速回転するロータによって円周に均等に分散された後に、ロータとステータ間の粉砕ゾーンに達する。ロータ、ステータはそれぞれ表面に特殊な形状の多数の溝をもち、原料はこの狭間隙に発生する激しい渦流に巻き込まれて排出される。」(第129頁左欄14〜21行)として、第129頁には図1が記載されており、図1の記載からロータが中心回転軸に取り付けられていることが窺える。
7-イ「独特な粉砕機構により従来の粉砕機を越える優れた粉砕性能を発揮し、気流式粉砕機(ジェットミル)でしか粉砕できないといわれていた、トナー等の弱熱性物質の粉砕も容易にでき、・・・。特に粒度分布は他機では得られない非常にシャープなもので、過粉砕されることなく、微粉の発生も少ない。」(第129頁左欄5〜10行)
7-ウ「動力消費が少ないのも大きな特徴である。無負荷動力が同種の機械より大幅に低く、また粉砕効率が高いため、動力消費は従来の機械式粉砕機に比べて半分以下、気流式粉砕機に比べれば1/4〜1/5と大きな省エネルギー効果が得られる。このため発生熱が少なく、熱に敏感な物質の粉砕も容易に行える。」(第129頁右欄12〜17行)
7-エ「図5にトナー等の弱熱性物質の粉砕に多く用いられる閉回路冷風粉砕システム例を示す。」(第131頁左欄9,10行)として、第130頁に「図5 ”クリプロトン”のフローシート」が記載されている。
(3-8)甲第8号証には、図面と共に下記の記載がある。
8-ア「結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する組成物を溶融混練し、混練物を冷却固化し、固化物を粉砕して粉砕原料を生成し、生成した粉砕原料を分級してトナー粉を製造する方法において、粉砕原料を第1風力分級手段へ導入して第1粗粉と1分級粉とに風力分級し、風力分級された第1粗粉をジェット式粉砕手段からなる第1粉砕手段へ導入して5〜10kg/cm2の範囲の粉砕エア圧で粉砕し、得られた第1粗粉の粉砕物を粉砕原料とともに第1風力分級手段へ導入して風力分級し、風力分級された第1分級粉を第2風力分級手段へ導入して第2粗粉と第2分級粉とに風力分級し、分級された第2粗粉を該第1粉砕手段の処理能力よりも低いジェット式粉砕手段からなる第2粉砕手段へ導入して、該第1粉砕手段における粉砕時の衝撃力よりも弱い衝撃力となるように2〜6kg/cm2の範囲の粉砕エア圧で粉砕し、得られた第2粗粉の粉砕物を第2風力分級手段へ導入すること、を特徴とするトナー粉の製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
(4)対比、判断
甲第1号証の記載事項1-ウには、記載事項1-アに記載された「静電荷現像用トナーの製造方法」において、「気流分級手段」は「第1分級手段」であり、「衝突式気流粉砕手段より比較的低い衝撃」は「低衝撃処理手段」で与えられ、「第2分級手段」によって分級された規定粒度内の粒度を有する中粉体はそのまま又は添加剤と混合された後トナーとして使用されることが記載されていると云える。そして、記載事項1-エには、「第1分級手段」で用いられる気流分級機として、ホソカワミクロン社製ミクロンセパレター、日清エンジニアリング社製ターボクラシフアイアー等が挙げられることが記載されており、記載事項1-オには、「低衝撃処理手段」で用いられる装置は、中心回転軸に取り付けられて回転するローター、ブレード又はハンマーとそれに相対峙するライナーとの間で衝撃を与える装置であって、この様な装置としては、川崎重工業(株)製「クリプトロン」やターボ工業社製の「ターボミル」等が採用されることが記載されていると云えるから、記載事項1-ア〜カからみて、甲第1号証には下記の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると云える。
「結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、混練物を冷却し、冷却物を粉砕手段により粉砕して得られた粉砕物を、先ず、ホソカワミクロン社製ミクロンセパレター、日清エンジニアリング社製ターボクラシフアイアー等の気流分級手段からなる第1分級手段で粗粉と細粉とに分級し、次に、分級された細粉を第2分級手段で分級して静電荷像現像用トナーを製造するための分級品を得、且つ第1分級手段で分級された粗粉を衝突式気流粉砕手段により微粉砕して微粉体を生成し、生成した微粉体を気流分級手段からなる第1分級手段に循環して分級する静電荷像現像用トナーの製造方法において、前記衝突式気流粉砕手段は、高圧気体により供給された粗粉を搬送し加速する為の加速管と、粗粉を微粉砕する為の粉砕室とを有し、加速管の後端部には粗粉を加速管内に供給する為の粗粉供給口を有し、粉砕室内には、加速管の出口の開口面に対向して設けた衝突面を有する衝突部材が具備されており、粉砕室は、衝突部材で粉砕された粗粉の粉砕物を衝突により更に粉砕する為の側壁を有し、側壁と衝突部材の縁端部との最近接距離は、衝突面に対向する粉砕室前壁と衝突部材の縁端部との最近接距離よりも短く、粉砕室内においては衝突部材の衝突面と側壁において粗粉の粉砕及び粗粉の粉砕物の更なる粉砕を行うものであり、また、気流分級手段からなる第1分級手段で分級された細粉は、川崎重工業(株)製クリプトロンやターボ工業社製のターボミル等の、中心回転軸に取り付けられて回転する回転するローター、ブレード又はハンマーとそれに相対峙するライナーとの間で衝撃を与える装置からなる低衝撃処理手段により、該衝突式気流粉砕手段より比較的低い衝撃を短時間与えた後、第2分級手段により粒度を調整するものである静電荷像現像用トナーの製造方法。」
本件発明と甲1発明とを対比すると、後者における「冷却物を粉砕手段により粉砕して得られた粉砕物」は前者における「冷却物を粉砕手段によって粉砕して得られた粗粉砕物」に相当し、後者における「静電荷像現像用トナー」は前者における「トナー」に相当することは明らかである。また、後者において第1分級手段で分級される「細粉」は前者における「微粉」に相当し、後者における「微粉体」は前者における「微粉砕された粉砕物」に相当する。さらに、後者における「第1分級手段」、「第2分級手段」は、それぞれ、前者における「第1分級工程」、「第2分級工程」を行うものであることは明らかである。そして、後者における「衝突式気流粉砕手段」も「粉砕機」と云えるものであるから、両者は、
「結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粉砕手段によって粉砕して得られた粗粉砕物からなる粉体原料を、先ず、第1分級工程に導入して微粉と粗粉とに分級し、次に、第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入して更に分級してトナーを製造する為の分級品を得、且つ第1分級工程で分級された粗粉を被粉砕物として粉砕機に導入して微粉砕し、該微粉砕された粉砕物を上記粉体原料中に混入させて第1分級工程に導入して循環処理を行うトナーの製造方法。」で一致し、下記の点で相違する。
(i)前者は、第1分級工程が水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段を用いるのに対し、後者は、第1分級工程がホソカワミクロン社製ミクロンセパレター、日清エンジニアリング社製ターボクラシフアイアー等の気流分級手段を用いるものである点。
(ii)前者は、粉砕機として、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体からなる回転子と、該回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている機械式粉砕機を用い、該機械的粉砕機の上記環状空間に被粉砕物を導入し、上記回転子を高速回転させることによって被粉砕物を微粉砕するのに対し、後者は、粉砕機として、高圧気体により供給された粗粉を搬送し加速する為の加速管と、粗粉を微粉砕する為の粉砕室とを有し、加速管の後端部には粗粉を加速管内に供給する為の粗粉供給口を有し、粉砕室内には、加速管の出口の開口面に対向して設けた衝突面を有する衝突部材が具備されており、粉砕室は、衝突部材で粉砕された粗粉の粉砕物を衝突により更に粉砕する為の側壁を有し、側壁と衝突部材の縁端部との最近接距離は、衝突面に対向する粉砕室前壁と衝突部材の縁端部との最近接距離よりも短く、粉砕室内においては衝突部材の衝突面と側壁において粗粉の粉砕及び粗粉の粉砕物の更なる粉砕を行う衝突式気流粉砕手段を用いる点。
(iii)前者は、第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入するに際し、何らかの処理をすることについて特定がないのに対し、後者は、第1分級工程で分級された微粉に、川崎重工業(株)製クリプトロンやターボ工業社製のターボミル等の、中心回転軸に取り付けられて回転する回転するローター、ブレード又はハンマーとそれに相対峙するライナーとの間で衝撃を与える装置からなる低衝撃処理手段により、該衝突式気流粉砕手段より比較的低い衝撃を短時間与えた後、第2分級工程に導入するものである点。
そこでまず、相違点(i)で挙げた本件発明の構成要件の一部である「水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段」について検討する。
まず、本件発明における「水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段」の意味するところについて検討すると、本件明細書には、【0018】段落に「本発明で用いられる第1分級手段としては、強制渦流を利用し遠心力によって分級する水平型回転ローターを有する回転式気流分級機が用いられる。例えば、ホソカワミクロン社製ティープレックス(ATP)分級機等が挙げられる。好ましくは、図3〜図4に示す様な水平型回転ローターを有する回転式気流分級機を用いれば、微粉及び粗粉の分級精度を向上させることが出来る。尚、図3は前記気流分級機の全体図を示し、図4は該気流分級機の水平型回転ローター(分級ローター)124の部分拡大図及び拡大側面図を示す。」との記載があり、【0019】〜【0027】段落に水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段についての記載がある。しかし、本件明細書には「水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段」とは何かという明確な定義は無く、図3の記載からはローターの回転軸が水平方向に配設されていることが窺える。そこで、平成16年7月23日に権利者より提出された回答書の第1頁下から9行〜同頁下から6行の記載を参酌すると、本件発明における「水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段」とは、本件明細書の図3に記載されているとおりの、ローターの回転軸が水平方向に配設したものであると云える。
これに対して、甲第2号証は、ホソカワミクロン株式会社によるカタログであって「ミクロンセパレータ(登録商標)」について記載されたものであり、記載事項2-ア〜エ、特に記載事項2-エからみて、甲第2号証に記載されたミクロンセパレータなる分級機は分級ロータの回転軸が垂直方向に配設されたものであると云えるものである。また、甲第3号証は、日清エンジニアリング株式会社によるカタログであって、「ターボクラシファイア」について記載されたものである。そして、記載事項3-ア〜ウ、特に記載事項3-ウからみて、甲第3号証に記載されたターボクラシファイアなる分級機は分級ロータの回転軸が垂直方向に配設されたものであると云えるものである。さらに、甲第4号証には、記載事項4-ウに、分級機として分級ロータの回転軸が垂直方向に配設されたものを用いることが記載されており、その例として記載事項4-エに、分級機としてターボクラシファイアTC-40(日清エンジニアリング(株)製)を使用することが記載されている。また、甲第5号証には、記載事項5-ウに、分級器は、分級ロータ型分級器でおこない、分級ロータ型分級器としては種々のものが知られているが、ティープレックス超微粉分級機100〜1000ATPシリーズ(ホソカワミクロン社製)が好ましいことが記載されており、さらに、記載事項5-ウには、ティープレックスマルチホイール型分級機は、分級部に個別駆動方式による分級ローターが水平に複数個取り付けられているものである旨記載され、その概略構成図が記載されている。しかし、該概略構成図からは分級ローターの回転軸の配設方向は明確でない。なお、甲第6号証乃至甲第8号証には分級機の構造について具体的記載はない。
よって、甲第2号証乃至甲第4号証に具体的に記載された分級機は、その名称からみて甲1発明における第1分級工程の気流分級手段として用いられるものであると解されるが、ローターの回転軸が垂直方向に配設されたものであり、甲第2号証乃至甲第8号証には、水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段が具体的に記載されているとは云えない。しかし、本件明細書には、上記のとおり【0018】段落に、「本発明で用いられる第1分級手段としては、・・・。例えば、ホソカワミクロン社製ティープレックス(ATP)分級機等が挙げられる。」との記載があり、この記載は本件発明における「水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段」が本件出願前公知のものであるが如き記載であり、しかもこの「ホソカワミクロン社製ティープレックス(ATP)分級機」は甲第5号証に記載された分級器「ティープレックス超微粉分級機100〜1000ATPシリーズ(ホソカワミクロン社製)」と商品名が酷似している。してみると、「水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段」自体は本件出願前公知のものである蓋然性が高い。
次に、相違点(ii)で挙げた本件発明の構成要件の一部である「機械的粉砕機」について検討する。
まず、本件発明における「一定間隔S」について検討すると、本件明細書の【0029】段落に「図6に示す如く、これらの回転子43と固定子44とは、対峙する夫々の表面が、相互に所定の間隙Sを有する様に配置されている。即ち、当該装置においては、図7に示した様な円筒形状の静置されている固定子44の内側に、図8に示した様な円筒形状の回転体からなる回転子43が設けられているが、両者の表面相互間に所定の間隔Sを有するように配置されている。」との記載があるだけで、本件明細書中には、本件発明における「一定間隔S」について明確な定義はない。そこで、平成16年7月23日に権利者より提出された回答書の第2頁8行〜同頁最終行の記載を参酌すると、本件発明における「一定間隔S」とは、「回転子が回転した状態で形成される固定子との間隙(即ち、回転子と固定子との最近接距離)」を云うものであり、本件明細書の図5〜図8に記載されているような表面に凹凸部のない円筒状の回転子と円筒内面を有する固定子との間隙ばかりでなく、回転子及び固定子の表面に凹凸を有する場合も含めて、回転子が回転した状態で形成される固定子との間隙の距離が一定であることを云うものであると云える。
そして、甲第1号証の記載事項1-オには、川崎重工業(株)製「クリプトロン」やターボ工業社製の「ターボミル」等は、中心回転軸に取り付けられて回転する回転するローター、ブレード又はハンマーとそれに相対峙するライナーとの間で被処理粉体に衝撃を与える装置が記載されている。この装置における「ローター、ブレード又はハンマー」、「ライナー」は、それぞれ、本件発明における「回転子」、「固定子」に相当すると云え、上述の本件発明における「一定間隔S」の意義を参酌すると、記載事項1-オからみて、甲第1号証の記載事項1-オに記載のこの装置も、回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている装置であると云える。
また、甲第5号証の記載事項5-イには、中心回転軸に取り付けられた多数の溝のついたローターと、ローターの周囲に配置され内面に多数の溝のついたステータとを有し、ローターが高速回転することによって、機内に激しい渦流と圧力振動が発生させることにより被粉砕物を粉砕するクリプトロンシステム(川崎重工業社製)なる粉砕機が記載されていると云える。そして、この粉砕機における「ローター」、「ステータ」は、それぞれ、本件発明における「回転子」、「固定子」に相当すると云え、同じく記載事項5-イからみて、甲第5号証に記載のこの粉砕機も、回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている粉砕機であると云える。
さらに、甲第6号証にも、記載事項6-ア〜エからみて、回転軸に支持され且つ突起を外側表面の母線に沿って多数設けた回転子と、当該回転子に嵌装され且つ突起を内側表面の母線に沿って多数設けた固定子と、回転子の外側表面と固定子の内側表面との間に形成された粉砕部を備えた粉砕機が記載されており、同じく記載事項6-ウ及びエからみて、この粉砕機も、回転子表面と固定子表面との間隙は一定間隔Sであり、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されていると云える。
また、甲第7号証には、「微粉砕機-”クリプトロン”」が竪型の高速回転式微粉砕機に属するもので、中心回転軸に取り付けられ高速回転するロータと、ステータを備え、ロータ、ステータはそれぞれ表面に特殊な形状の多数の溝をもち、原料はこの狭間隙に発生する激しい渦流に巻き込まれて排出されるものであることが記載されている。そして、この粉砕機における「ロータ」、「ステータ」は、それぞれ、本件発明における「回転子」、「固定子」に相当すると云え、同じく記載事項7-アからみて、甲第7号証に記載のこの粉砕機も、回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている粉砕機であると云える。さらに、記載事項7-イ及びウからみて、この粉砕機を用いることにより、粒度分布は他機では得られない非常にシャープなものとなり、微粉の発生も少なく、動力消費が少ないことが記載されていると云える。
してみると、甲第1号証及び甲第5号証乃至甲第7号証には、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体からなる回転子と、該回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている装置が記載されていると云え、さらに甲第5号証乃至甲第7号証には、該装置が機械式粉砕機であり、該機械式粉砕機の上記環状空間に被粉砕物を導入し、上記回転子を高速回転させることによって被粉砕物を微粉砕することが記載されていると云え、さらに甲第7号証には、この機械式粉砕機は他の粉砕機と比べ、粒度分布がシャープなものとなり、動力消費が少ないことが記載されていると云える。
なお、甲第2号証乃至甲第4号証には粉砕機について具体的記載が無く、甲第8号証には粉砕機に関しジェットミルについてしか記載がない。
そこで、相違点(i)乃至(iii)について総合して検討する。
本件発明は、粗粉砕物からなる粉体原料を、先ず、第1分級工程に導入して微粉と粗粉とに分級し、次に、第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入して更に分級してトナーを製造する為の分級品を得、且つ第1分級工程で分級された粗粉を被粉砕物として粉砕機に導入して微粉砕し、該微粉砕された粉砕物を上記粉体原料中に混入させて第1分級工程に導入して循環処理を行うトナーの製造方法において、第1分級工程を水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段により行ない、粉砕機として、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体からなる回転子と、該回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている機械式粉砕機を用い、該機械式粉砕機の上記環状空間に被粉砕物を導入し、上記回転子を高速回転させることによって被粉砕物を微粉砕することにより、本件明細書に記載された効果を奏するものである。
そして、上記水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段、及び、機械式粉砕機の各々については、上述したとおりである。
しかし、甲1発明において、第1分級工程の気流分級手段は、ローターの回転軸が垂直方向に配設されたものであって水平型回転ローターを有するものではなく、甲第1号証の記載事項1-オに記載された装置は、記載事項1-ア、ウ及びカ、特に記載事項1-カに記載されているように、粉砕機として用いるものではなく、第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入するに際し、該粉砕機より比較的低い衝撃を短時間与え、粒子の角張った突起を減少させ表面特性を改質するための低衝撃処理手段として用いるものである。
してみれば、上述のとおり水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段自体は本件出願前公知のものである蓋然性が高いこと、及び、甲第5号証乃至甲第7号証には、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転体からなる回転子と、該回転子表面と一定間隔Sを保持して回転子の周囲に配置されている固定子とを有し、且つ該間隔Sを保持することによって形成される環状空間が気密状態となるように構成されている機械式粉砕機を用い、該機械式粉砕機の上記環状空間に被粉砕物を導入し、上記回転子を高速回転させることによって被粉砕物を微粉砕することが記載されていることを考慮しても、甲1発明において、第1分級工程の気流分級手段として、ローターの回転軸が垂直方向に配設されたものに代えて水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段を用い、粉砕機として、特定の衝突式気流粉砕手段に代えて第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入するに際し該微粉に比較的低い衝撃を短時間与える低衝撃処理手段として用いる装置を用い、さらに、第1分級工程で分級された微粉を第2分級工程に導入するに際し該微粉に比較的低い衝撃を短時間与える工程を無くすることが、当業者にとって容易に想到し得たことであるとは云えない。
また、甲第5号証の記載事項5-アからみて、甲第5号証に記載された発明において、上記の機械式粉砕機による粉砕は平均粒径10〜19μmの中粉砕粒子を製造するためのものであり、甲第5号証に記載された発明は、かかる粉砕により得られた中粉砕粒子を、さらにジェット気流式粉砕により平均粒径5〜10μm未満を有する小粒径粒子とし、得られた小粒径粒子を分級ロータ型分級機で分級するものである。そして、甲第6号証には粉砕について記載されているだけで、分級工程については何等の記載もなく、甲第7号証には、分級機で分級された粉末を係る機械式粉砕機の被粉砕物とし、粉砕物を該分級機に循環することは記載されているものの、分級機の構造について具体的記載はなく、第2の分級工程を設けることについても何等の記載もない。
してみると、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明を検討しても、第1分級工程に水平型回転ローターを有する回転式気流分級手段を用い、粉砕機として、甲第5号証乃至甲第7号証に記載された機械式粉砕機を用いて本件発明の構成を想到することが、当業者にとって容易に為し得たことであるとは云えない。
よって、本件発明は、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-08-25 
出願番号 特願平8-14760
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B07B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
金 公彦
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3352313号(P3352313)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 トナーの製造方法  
代理人 吉田 勝廣  
代理人 近藤 利英子  

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