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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04F
管理番号 1104505
異議申立番号 異議2003-73356  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-01-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-19 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3460189号「床パネル及び二重床構造」の請求項1ないし請求項7に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3460189号の請求項1ないし請求項7に係る発明についての特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯及び本件発明
本件特許第3460189号に係る発明は、平成11年6月30日に特許出願された特願平11-186360号に係り、その発明についての特許は、平成15年8月15日に設定登録されたものであり、本件の特許請求の範囲に記載の請求項1ないし請求項7に係る発明(以下、請求項の順に「本件発明1」〜「本件発明7」という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、隣接する床パネルの切り欠き部とによって形成される開口部が、該隣接床パネルの配設状態によってその大きさが可変と成るように形成したことを特徴とする二重床構造に使用する床パネル。
【請求項2】 切り欠き部の形状は、該切り欠き部の一基端より漸次深く切り込まれる略直角三角形状としたことを特徴とする請求項1に記載の二重床構造に使用する床パネル。
【請求項3】 切り欠き部は、四角形状の天板の一対角線に対して、対角線を結ぶ一方の頂点側は、その頂点側を深く切り込み、且つ対角線に対して対称的に形成し、他方の頂点側は、その頂点から離れた側を深く切り込み、且つ対角線に対して対称的に形成して成ることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1に記載の二重床構造に使用する床パネル。
【請求項4】 床パネルの材質を鋼板製としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の二重床構造に使用する床パネル。
【請求項5】 平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、隣接する床パネルの切り欠き部とによって形成される開口部が、該隣接床パネルの配設状態によってその大きさが可変と成るように形成した床パネルを、シート部材にモルタル等の硬化性流状物を一体形成した柱状突起を設けたベース板の1区画内の隣接する柱状突起間に架け渡し、該ベース板上に床パネルを載置したことを特徴とする二重床構造。
【請求項6】 薄厚鋼板製シート部材とモルタル等の硬化性流状物との一体形成に於いて、柱状突起が位置するシート部材に有孔突起、凹凸或いは折り返し突起等の付着突起体を形成することにより、該柱状突起とシート部材とを一体化してなるベース板としたことを特徴とする請求項5に記載の二重床構造。
【請求項7】 各隅部に柱状突起を形成したブロックを1区画とし、複数ブロックを有するシート部材の各ブロック間に、ヒンジ部を形成することにより全体が可撓性のあるベース板としたことを特徴とする請求項5又は6に記載の二重床構造。」

第2 特許異議の申立てについて
1.特許異議の申立ての取消理由の概要
特許異議申立人安川勤(以下、「申立人」という。)は、下記の証拠方法(以下、これを「甲号各証刊行物」と総称する。)を提示して、本件発明1ないし本件発明7についての特許は取り消されるべきであるとして、次のように申し立てている。
取消理由1:新規性欠如により発明としての創作性、有効性が認められない、すなわち、本件発明1ないし本件発明7は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明であるから、本件発明1ないし本件発明7についての本件特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してされたものである。
取消理由2:進歩性欠如により発明としての創作性、有効性が認められない、すなわち、本件発明1ないし本件発明7は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明及び参考資料1ないし参考資料6に記載された周知慣用技術、並びに、参考文献1ないし参考文献6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明7についての本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3:本願請求項及び明細書の記載は、不明瞭であり記載不備がある、すなわち、本願請求の範囲の記載は、目的・課題、請求の範囲と効果との対応関係が不明瞭な記載になっており、記載不備によって、具体的且つ明確に記載されていないので、特許法第36条に違反しているから、本件特許は、特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

・甲第1号証:実願昭56-70669号(実開昭57-181842号)のマイクロフイルム
・甲第2号証:実願昭56-188462号(実開昭58-93131号)のマイクロフイルム
・甲第3号証:特開昭60-43564号公報
・甲第4号証:実願昭61-102158号(実開昭63-8327号)のマイクロフイルム
・甲第5号証:実願昭63-171398号(実開平2-91413号)のマイクロフイルム
・甲第6号証:実願平2-130162号(実開平4-86844号)のマイクロフイルム
・甲第7号証:実願平2-19879号(実開平3-111128号)のマイクロフイルム
・甲第8号証:特許第2778538号公報
・参考資料1:実願昭54-91825号(実開昭56-7833号)のマイクロフイルム
・参考資料2:特開平5-103410号公報
・参考資料3:実公平6-42038号公報
・参考資料4:特開平5-171713号公報
・参考資料5:実願平1-65488号(実開平3-4845号)のマイクロフイルム
・参考資料6:実願平2-72366号(実開平4-30640号)のマイクロフイルム
・参考文献1:特開平4-343969号公報
・参考文献2:特開平9-273295号公報
・参考文献3:特公平4-1142号公報
・参考文献4:特開平6-299685号公報
・参考文献5:実公平7-582号公報
・参考文献6:特開昭60-55164号公報

2.甲号各証刊行物に記載の発明
(1)甲第1号証〔実願昭56-70669号(実開昭57-181842号)のマイクロフイルム〕には、床板に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「少なくとも3つの辺を有する平板体部を備え、この平板体部の少なくとも1つの辺の辺側面に、上下方向に沿いかつ当該平板体部の上下面に開口する導電ケーブル引き出し溝を形成していることを特徴とする床板。」(明細書1ページ4〜8行)
「導電ケーブル引き出し溝7,7を一致させて導電ケーブル引き出し孔8を形成して、開口面積を大きくしたり、また、導電ケーブル引き出し溝7,7を一致させないで、小さな開口面積のまゝであってもよく、導電ケーブル9の太さや本数に合わせて適宜に使い分けができる。」(明細書7ページ6〜12行)
「上記実施例の導電ケーブル引き出し溝7の溝形状を平断面半円状のものについて説明したが、これに限らず、平面から見た形状がU字形であってもЦ字形であってもV字形であってもよい」(明細書7ページ19行〜8ページ3行)

(2)甲第2号証〔実願昭56-188462号(実開昭58-93131号)のマイクロフイルム〕には、フリーアクセスフロアの床板に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「定まった基準寸法を有する単位床板を敷きつめて各端部で上下に調整可能な支柱で支えるフリーアクセスフロアにおいて、上記床板の側面に互いに隣接する床板と係合可能な係合部を有し、該係合部は床板の上下方向には着脱可能に、かつ互いに隣接する床板の近寄り離れ方向と剪断方向には保持力を有する係合構造を有して成るフリーアクセスフロアの床板」(明細書1ページ5〜12行)

(3)甲第3号証〔特開昭60-43564号公報〕には、パネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「パネルの上面板1と下面板4との間に形成された上部空所に布設された信号ケーブルおよび電装品からの信号線取出しや、上記下面板4と床面9との間の下部空所に布設された電力系ケ-ブルからの電力取出しは、……上面板1の端部に第7図に示すように凹部切込み部41を設け、この切込み部41に第8図(a),(b)に示すようなケーブル取出し治具42(31)や電源コンセント43を嵌込むようにすればよい。」(5ページ右上欄9〜18行)

(4)甲第4号証〔実願昭61-102158号(実開昭63-8327号)のマイクロフイルム〕には、床パネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「(1)パネルに床下配線取出用のスリットを穿設してなることを特徴とする床パネル。
(2)床下配線取出用のスリットが穿設された床下配線取出部分ユニットをパネルに設けた開口部に着脱自在に嵌装した実用新案登録請求の範囲の所載の床パネル。」(明細書1ページ5〜10行)

(5)甲第5号証〔実願昭63-171398号(実開平2-91413号)のマイクロフイルム〕には、二重床用床パネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「パネル本体にケーブル引出し部を設け、該ケーブル引出し部は複数本のケーブルを挿通収納する開口面積にて開穿したケーブル通線部と、このケーブル通線部へのケーブルの出し入れを行なうケーブル径と略同径幅の開口幅にて支持脚の台座上に載置支持されるパネル本体のコーナー部に向けて抜けるケーブル導入部とから形成してなることを特徴とする二重床用床パネル。」(明細書1ページ5〜12行)

(6)甲第6号証〔実願平2-130162号(実開平4-86844号)のマイクロフイルム〕には、フロアパネルの配線用簡易切欠構造に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「〔1〕端部から中央に向かって形成された二本の切断溝(20)とこの切断溝(20)の奥端を連結する折り取り可能なVノッチ線(22)と囲まれた舌片(12)を折り取ってフロアパネル(10)の配線用切欠(14)とするとともに、この切欠(14)部分に前記舌片(12)を下から支持する支持構造を設けて成るフロアパネルの配線用簡易切欠構造。」(明細書1ページ5〜12行)

(7)甲第7号証〔実願平2-19879号(実開平3-111128号)のマイクロフイルム〕には、二重床構造におけるケーブル取出具に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「ケーブル挿通用の通孔が開口するケーブル取出面と、パネル本体に開設したケーブル取出口を被蓋する盲目面とを備えた取出具本体を、前記ケーブル取出面及び盲目面がパネル本体の表面に臨んだ状態で上記ケーブル取出口に嵌合可能に形成してなる二重床構造におけるケーブル取出具。」(明細書1ページ5〜10行)

(8)甲第8号証〔特許第2778538号公報〕には、フリーアクセスフロアに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0007】正方形床板1は図2に示すように、金属板の4辺にリブ用張出し部1aを突設し、該リブ用張出し部1aがリブ1bとなるように、当該リブ用張出し部1aを下方に折り曲げて形成されており、したがって著しく容易に製造することができる。同様に長方形床板2も図3に示すように、金属板の4辺にリブ用張出し部2aを突設し、該リブ用張出し部2aがリブ2bとなるように当該リブ用張出し部2aを下方に折り曲げて形成されている。但し長方形床板2の両長辺のうち、一方の長辺の中央には配線取出し溝2cが形成されており、他方の長辺の中央には、折り曲げ加工によって配線取り出し用の溝とすることができる一対のスリット2d,2dが形成されている。」
「【0010】既述のごとく長方形床板2の一方の長辺の中央には配線取出し溝2cが形成されており、且つその直下には支持脚3が配置されている。この配線取出し溝2cの奥行きは、図5に示すように十分に長く形成されており、したがってこの配線取出し溝2cの一部分は支持脚3によって隠蔽されてはいない。したがって同図に示すようにその隙間より配線4を取り出すことができる。取り出そうとする配線が相当に太径のときには、次のようにする。すなわち図5のA部より太径の配線を取り出そうとするときには、図7に示すように2枚の長方形床板2,2についてそれぞれの長辺を入れ替え、A部にスリット2dを集め、このスリット2dの部分を下方に折り曲げて配線取出し口とする。但し配線の径が中程度のときには、1枚の長方形床板2だけを入れ替えて、そのスリット2d部分を折り曲げることもできる。また図5のB部より太径の配線を取り出そうとするときには、図8に示すように2枚の長方形床板2,2の配置の方向を縦長とし、更にB部にスリット2dを集め、このスリット2dの部分を下方に折り曲げて配線取出し口とする。これらのときにはスリット2dの直下にある支持脚3が邪魔になるから、図7、図8に示すようにスリットの両脇に支持脚3,3を配置することになる。」

(9)参考資料1〔実願昭54-91825号(実開昭56-7833号)のマイクロフイルム〕には、電気コンセントの付いた畳に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「電気コンセントの差込口を取付けた畳」(明細書1ページ4行)

(10)参考資料2〔特開平5-103410号公報〕には、二重床用のフロアパネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、建築物の床面に二重床を形成するための二重床用のフロアパネルに関するものである。」
「【0009】図1ないし図6は、アルミダイキャスト製のフロアパネル1に本発明を適用した実施例を示す。」
「【0018】【発明の効果】以上説明したように、本発明の二重床用のフロアパネルによれば、一種類のフロアパネルを用意するだけで種々の配線機器を取り付けることができるから、配線機器ごとにあらかじめ多くの種類のフロアパネルを用意する必要がないという効果を生じる。
【0019】また、異なる大きさの配線機器を自由に選択することができると共に、これらの配線機器をフロアパネルの適正位置に正確に配置することができる。
【0020】更に、配線機器の切り欠き部は、配線機器に対応する切り欠き指示線に沿ってフロアパネルを切断するだけで形成することができるから、配線機器ごとに寸法を当たってけがき線を入れる必要はない。」

(11)参考資料3〔実公平6-42038号公報〕には、フレキシブル床下地材に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】割れ誘発目地によって画成された多数の集合ブロックの表面と裏面に可撓性シートを貼設したことを特徴とするフレキシブル床下地材。」(1ページ1欄2〜4行)
「以上説明したように、上記集合ブロックから成るフレキシブル床下地材は表裏に貼設された可撓性シート材により個々が連結されつつ、施工面の凹凸に順応して屈撓し、良好な凹凸吸収効果を発揮し、単に敷詰めるのみでガタのない高強度の床下地を形成できる。」(3ページ5欄13〜17行)

(12)参考資料4〔特開平5-171713号公報〕には、敷設ブロックの連結構造に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0013】上記基本思想に基き具体化した複数の実施例に付き以下説明する。図1、図2に示すように、敷設ブロックは前記割れ誘発目地等の溝形目地2が表面に形成されており、該溝形目地2の内底部、一適例として縦方向の溝形目地2と横方向の溝形目地2とが交叉する部位の内底部にブロック表面側と裏面側に貫通する上記連結孔5を形成し、他方線材又は帯材により隣接する敷設ブロック1A、1B下面(敷設面)に沿い上記各連結孔5間に延在する連結材6を形成し、該連結材6の上記各連結孔5と対応する位置に同連結材の極部をU字曲げして形成したフック部7を設け、該各フック部7を上記各連結孔5の下部開口から挿入してフック部先端を他方の開口内、即ち溝形目地2内へ突出させ、該フック部7の突出部にキー8を押し込み、該キー8を連結孔5の上部開口縁、即ち目地内底面に係止させ、各フック部7を各敷設ブロック1A、1Bに結合する。よって隣接する各敷設ブロック1A、1Bは上記連結材6を介して相互に連結される。」
「【0015】図5に示すように、上記溝形目地2を有しない敷設ブロック1の場合には、ブロックの表面側に凹所9を設け、該凹所9内において上記キー8をフック部7に合する。又他の実施例として図6、図7に示すように、細長の板材等にて上記連結材6を形成し、該連結材6に上記連結孔5に対応する筒部材11(孔込め部)を一体に設け、該筒部材11を雌ねじ筒とし、連結材6を隣接する敷設ブロック1A、1Bの裏面に沿い延在させつつ、上記筒部材11を連結孔5内へ下部開口から挿入し、同上部開口から引止め螺子10(引止め部材)を上記筒部材11に螺合させ、螺子10の頭部を連結孔5の上部開口縁に着座させて各筒部材11を各敷設ブロック1A、1Bに結合する。この結果隣接する敷設ブロック1A、1B間を上記連結材6を介して相互に連結する。」

(13)参考資料5〔実願平1-65488号(実開平3-4845号)のマイクロフイルム〕には、床パネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「(1)多数の突起が突設された鋼板等で構成された補強材上にパネル材を層着した床パネルにおいて、前記突起の少なくとも一部はそれぞれ前記補強材に穿孔された円形の開口部と、その周縁から外方に立ち上がる複数の突片から構成され、各突片は上方に向かって折り曲げられていることを特徴とする床パネル。」(明細書1ページ5〜11行)

(14)参考資料6〔実願平2-72366号(実開平4-30640号)のマイクロフイルム〕には、床パネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「隣り合う小パネル片2間には複数のスリット6を設けてあり、このスリット6によって形成された継ぎ目7部分において各小パネル片2は折り曲げ可能となっている。」(明細書4ページ18行〜5ページ1行)

(15)参考文献1〔特開平4-343969号公報〕には、二重床の床下空間形成方法に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0012】 円盤状束 図9に示すように、軽量モルタル製の円盤状束7を準備する。直径は10cm、高さは3cmである。
【0013】 床下空間の形成 図10に示すように、スラブ4の上に基盤紙6を敷き詰め、次に、基盤紙6の打抜き64の離型紙63を剥がし、その個所に円盤状束7を貼り付ける。規則正しく千鳥状の円盤状束7が立設される。厚さ1cm、軽量セメントからなる一辺50cmの平板状の床板3を、四隅が円盤状束7の上に載架されるように敷き並べて二重床を形成する。スラブ4と床板3と円盤状束7に囲まれた床下空間5が設けられる。」

(16)参考文献2〔特開平9-273295号公報〕には、床パネル支持脚に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0008】コンクリートスラブ等の床基盤1から所定の間隔をあけて床パネル2を支持し、床パネル2の下方に空間3を形成する支持脚4を床基盤1上に載置する。支持脚4で支持された床パネル2上には仕上材5を載置してある。支持脚4は、薄板をカップ状の中空体6に成形し、この中空体6内に硬質充填材7を充填したものである。薄板としては例えば合成樹脂シート8を膨出形成して中空体6を成形し、複数の中空体6が合成樹脂シート8で繋がった恰好になったものが使用できる。合成樹脂シート8は、厚み0.5〜3.0mm程度の塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂材料を真空成形して所定の箇所に中空体6を成形する。この真空成形時に、膨出成形される中空体6の先端に突起部9を形成しておく。この突起部9は床パネル2の下面に形成された貫通孔2Aに嵌合する。従って、この突起部2が係合部を構成し、貫通孔2Aが被係合部を構成する。図1に示す実施例では、合成樹脂シート8と床基盤1との間にポリウレタンフォーム材料等の弾性材10を介在させてある。この弾性材10の存在によりクッション性が向上し、カタカタと言う床鳴りも防止できる効果がある。一枚の合成樹脂シート8の所定箇所に複数形成した中空体6は、施工現場の状況に合わせて簡単に切断して分離することができる。硬質充填材7は合成樹脂シート8を真空成形して中空体6を形成した後に工場で充填しても良いし、施工現場で充填しても差し支えない。充填する材料としてはセメントあるいは石膏が好適である。なおまた、硬質充填材7として塩化ビニル製等のパイプを中空体6内へ挿入しても良い。床パネル2としては、図2に示すように平板部2Bの上面に格子状のリブ2Cを形成したものを使用した。この図1及び図2に示す実施例では、床パネル2の隅角部が支持脚4の上面の4分の1に載置され、この支持脚4の上面で4枚の床パネル2が突き合わされる。床パネル2を形成する材料としては、ガラス繊維強化コンクリート、アルミダイキャスト、パーティクルボード、硅酸カルシウム、各種合成樹脂材料等が使用できる。」

(17)参考文献3〔特公平4-1142号公報〕には、フロアパネル装置に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「なお十字形配線溝2B付ユニットパネル2(第9図)は、所定の十字形溝間隔を置いて配置した4個のブロック2A相互を可撓性シート2Cで結合して、ブロック2Aとブロック2Aの間に可撓性シート2Cを底とする配線溝2Bを形成し、その配線溝2Bの上面開口を十字形カバー板2Dで覆ったものである。そのカバー板2Dはブロック2Aに溝縁に沿って形成した切欠段2Eに落し込むことによって上面を平らにする構成である。」(3ページ5欄16〜24行)

(18)参考文献4〔特開平6-299685号公報〕には、フロアパネル装置およびその施工方法に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0017】上記のユニットパネル1は、例えば硬質の合成樹脂もしくはモルタルやセメントにおがくずやパーライトなどを混入した軽量コンクリート等で所定の形状に成形してなるブロック形成体を、合成樹脂等の可撓性を有するシート材の表面に接着剤等で一体的に固着したもの、あるいは上記のようなシート材に凹部を形成してその凹部内に上記と同様のブロック形成体を充填したもの、さらに上記凹部の開口面側に別のシート材を被覆したもの等を用いることができる。又これに限らず全体を合成樹脂で一体に形成したもの等その他各種構成のものが適用可能である。」

(19)参考文献5〔実公平7-582号公報〕には、ユニットパネルに関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】表面に係合突起を有する可撓性シート、該シート上に所定間隔を置いて、硬化性充填材から成る複数のブロックが硬化接着されてなることを特徴とするユニットパネル。」(1ページ1欄2〜5行)
「上記可撓性シート3は……極薄の鋼板・アルミニウム板など任意で、要するに床面の凹凸に倣ってたわむ性質を持ったものを用いる。」(2ページ3欄31〜34行)
「上記ブロック4の形状は直方体・円柱・角柱等適宜である。そのブロック4の素材である硬化性充填材としては、モルタル、セメント、セメントにおがくずまたはパーライトなどを混入した軽量コンクリート、……等が適している。」(2ページ3欄43〜47行)
「上記において、隣り合うブロック4とブロック4の間には、ユニットパネルをたわみやすくするために微小間隙Dを設けている。」(2ページ4欄24〜27行)

(20)参考文献6〔特開昭60-55164号公報〕には、床面施工工法に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「このベースプレートは第3図に示すように可撓性を有する合成樹脂で例えば50cm正方に形成された底板12の上面側に正方形の各辺を三等分する溝13が刻設され、各分割部分毎に前記コンクリート素面の不陸に沿って屈曲自在となっている。これら各分割部分の四隅には角形筒状のスペーサ14が底板12に一体成形により突設されており、このスペーサ14の上面と底板12の上面との間に空間部を形成するようになっている。」(2ページ左上欄16行〜同右上欄4行)

3.当審の判断
ア.取消理由1(特許法第29条第1項第3号の特許要件違反)について
(1)本件発明1について
本件特許出願前に頒布された甲第1号証には、床板に関し、前記「第2 特許異議の申立てについて」欄の「2.甲号各証刊行物に記載の発明」の「(1)甲第1号証」の項に摘記したとおりの事項が図面の図示とともに記載されている。
ここで、本件発明1と甲第1号証に記載の発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、甲第1号証には、少なくとも本件発明1の「平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、」の発明特定事項が記載されてなく、本件発明1と引用発明1の両者は、引用発明1が少なくとも上記発明特定事項を備えていない点で構成が相違する(相違点a)。
そして、前記相違点aに係る構成が、他のいずれの甲号各証刊行物に記載されているということもできない。しかも、前記相違点aに係る構成が本件特許出願時の周知・慣用技術、或いは技術常識であるということもできず、また、本件特許出願時の技術水準において明細書の記載事項からみて自明の事項であるとも認めることができない。
したがって、本件発明1の前記発明特定事項が甲号各証刊行物に記載されているということができないから、本件発明1が甲号各証刊行物に記載の発明である、ということはできない。

(2)本件発明2ないし本件発明4について
請求項1を引用する形式で記載されている請求項2ないし請求項4に係る本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を含んでいるから、前記「(1)本件発明1について」欄に前述した理由が、本件発明2ないし本件発明4にも適用できることは明らかである。
したがって、本件発明2ないし本件発明4も、本件発明1についての理由と同じ理由で、本件発明2ないし本件発明4の構成が甲号各証刊行物に記載されているということができないから、本件発明2ないし本件発明4が甲号各証刊行物に記載の発明である、ということはできない。

(3)本件発明5について
甲号各証刊行物には、本件発明5の少なくとも「平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、」の発明特定事項が記載されていない点で相違する。
そして、前記発明特定事項が、本件特許出願時の周知・慣用技術、或いは技術常識であるということもできず、また、本件特許出願時の技術水準において明細書の記載事項からみて自明の事項であるとも認めることができない。
したがって、本件発明5の前記発明特定事項が甲号各証刊行物に記載されているということができないから、本件発明5が甲号各証刊行物に記載の発明である、ということはできない。

(4)本件発明6及び本件発明7について
請求項5を引用する形式で記載されている請求項6及び請求項7に係る本件発明6及び本件発明7は、本件発明5の発明特定事項を含んでいるから、前記「(3)本件発明5について」欄に前述した理由が、本件発明6及び本件発明7にも適用できることは明らかである。
したがって、本件発明6及び本件発明7も、本件発明5についての理由と同じ理由で、本件発明6及び本件発明7の構成が甲号各証刊行物に記載されているということができないから、本件発明6及び本件発明7が甲号各証刊行物に記載の発明である、ということはできない。

(5)まとめ
以上のとおり、申立人の主張する取消理由1について、本件発明1ないし本件発明7が甲号各証刊行物に記載の発明であるということができないから、申立人の上記主張は、採用することができない。

イ.取消理由2(特許法第29条第2項の特許要件違反)について
(1)本件発明1について
前記「ア.取消理由1(特許法第29条第1項第3号の特許要件違反)について」欄の「(1)本件発明1について」において既述したように、甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物のいずれにも、本件発明1の少なくとも「平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、」の発明特定事項についての記載がなく、また示唆されてもいない。そして、本件発明1の前記「平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、」の発明特定事項が、本件特許出願時の周知技術であるとも、或いは、本件特許出願時の技術水準において明細書の記載事項からみて自明の事項であるとも認めることができない。
してみると、上記甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物には、本件発明1の発明特定事項の一部が個々に記載されているだけであり、甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載の発明を組み合わせたとしても、もとより本件発明1の構成を得ることができない。そして、本件発明1は、請求項1に記載の発明特定事項により本件特許明細書に記載の格別顕著な作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということができない。

(2)本件発明2ないし本件発明4について
請求項1を引用する形式で記載されている請求項2ないし請求項4に係る本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1の下位概念の発明であるから、本件発明1の発明特定事項を含んでいることが明らかである。
したがって、本件発明2ないし本件発明4に対しても、前記「(1)本件発明1について」欄に前述した理由が同様に該当することになるから、本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1についての前記理由と同じ理由で、甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということができない。

(3)本件発明5について
前記「イ.取消理由2(特許法第29条第2項の特許要件違反)について」欄の「(1)本件発明1について」において既述したように、甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物のいずれにも、本件発明5の少なくとも「平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、」の発明特定事項についての記載がなく、また示唆されてもいない。そして、本件発明5の前記「平板状の天板と、天板の周縁部の各片に形成された切り欠き部とより形成された床パネルに於いて、上記切り欠き部の形状は、該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状とし、」の発明特定事項が、本件特許出願時の周知技術であるとも、或いは、本件特許出願時の技術水準において明細書の記載事項からみて自明の事項であるとも認めることができない。
してみると、上記甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物には、本件発明5の発明特定事項の一部が個々に記載されているだけであり、甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載の発明を組み合わせたとしても、もとより本件発明5の構成を得ることができない。そして、本件発明5は、請求項5に記載の発明特定事項により本件特許明細書に記載の格別顕著な作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明5は甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということができない。

(4)本件発明6及び本件発明7について
請求項5を引用する形式で記載されている請求項6及び請求項7に係る本件発明6及び本件発明7は、本件発明5の下位概念の発明であるから、本件発明5の発明特定事項を含んでいることが明らかである。
したがって、本件発明6及び本件発明7に対しても、前記「(3)本件発明5について」欄に前述した理由が同様に該当することになるから、本件発明6及び本件発明7は、本件発明5についての前記理由と同じ理由で、甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということができない。

(5)まとめ
以上のとおり、申立人の主張する取消理由2について、本件発明1ないし本件発明7が、本件特許出願前に頒布された甲第1号証ないし参考文献6の甲号各証刊行物に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができないから、申立人の上記主張は、採用することができない。

ウ.取消理由3(特許法第36条違反)について
(1)第1の記載不備の主張について
請求項1に記載の「該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状」の発明特定事項における切欠形状に関して、本件特許明細書には次のように記載されている。
「【0008】実施例1 図1は、本発明の床パネル1の全体を示す平面図、図2はその断面図を示しており、図で示すように、該床パネル1は、平板状の天板2と、その周縁部を折り曲げて形成した折り曲げ側壁部3と、床パネル1の周縁部4より内側に向けて切り欠き形成した略直角三角形状の切り欠き部5とより形成されている。……上記切り欠き部5の形状は、折り曲げ側壁部3の周縁部4より漸次深く内側に切り込まれる略直角三角形状とされ、その頂点部を曲線形状とした半割涙型形状としている。」
「【0009】本実施例のものにあっては、上記切り欠き部5の形成位置は、床パネル1の各片の略中央部に各々形成されている。上記のように、切り欠き部5の形状は非対称型の半割涙型形状とされているので、隣接する床パネル1の配設する位置によっては、上記半割涙型形状相互で形成される開口部の形状が異なることに成る。また、上記半割涙型形状は四角形の対角線AーAに対しては対称に形成され、対角線B-Bに対しては非対称に形成されている。従って、対角線A-Aでは、対角線を結ぶ一方の頂点D側は、その頂点Dに向かって深く切り込まれた半割涙型形状が対称的に形成され、他方の頂点F側は、その頂点Fから遠ざかる方向に深く切り込まれた半割涙型形状が対称的に形成されている。」
「【0012】実施例2 図6は、切り欠き部5の他の実施例を示したもので、上記半割涙型形状に変えて、図6(a)は台形形状のもの、図6(b)は半割ダルマ型形状のもの、図6(c)は半割瓢箪型形状のもの、図6(d)は三角形形状のもの、図6(e)は打撃面の長さの異なる半割鼓型形状のもの等を示している。上記切り欠き部5は、半割涙型形状と同様に隣接する床パネル1の配設位置を変えることによって開口部の形状が異なることになり、その大きさも細線用或いは太線用等に対応できる開口部を得ることが可能と成る。」
このように、本件特許明細書においては、「該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状」を、「対角線A-Aでは、対角線を結ぶ一方の頂点D側は、その頂点Dに向かって深く切り込まれた半割涙型形状が対称的に形成され、他方の頂点F側は、その頂点Fから遠ざかる方向に深く切り込まれた半割涙型形状が対称的に形成されている」と定義しているのであり、これは、即ち「全体の平面形状が非対称型であるような切り欠き形状」の意味において使用していることは、明らかである。
したがって、請求項1に記載の「該切り欠き部の両基端からの切り込み深さが異なるようにした切欠形状」の発明特定事項は、明確であるといえるから、特許異議申立人の「本願請求項及び明細書の記載は、不明瞭であり記載不備がある。」という主張を採用することはできない。

(2)第2の記載不備の主張について
請求項1に記載の「該隣接床パネルの配設状態によってその大きさが可変」の発明特定事項に関して、本件特許明細書には次のように記載されている。
「【0007】【発明の実施の形態】本発明に係る二重床構造に使用する床パネルは、建築床面と床パネルとの間に形成した配線収納空間に配設された太さの異なる線を、当該床パネルを通じて床上に引き出すことを可能とするために、敷設された床パネル間に生じる開口部の大きさを1種類の床パネルで、その配設状態を変えるだけで線の太さに合った開口部を形成することを可能とした床パネルに関するものである。」
「【0009】……上記のように、切り欠き部5の形状は非対称型の半割涙型形状とされているので、隣接する床パネル1の配設する位置によっては、上記半割涙型形状相互で形成される開口部の形状が異なることに成る。……」
「【0011】略長方形状の開口部6では、約直径7、5mmの線まで対応でき、上記涙型形状の開口部7では、約直径12mmの線まで取り出すことが可能と成る。当該開口部6の大きさは、想定される線の太さに応じ、切り欠き部5の大きさを変えることによって適宜対応することができる。このように形成された床パネル1を使用すると、必要に応じて床パネル1の切り欠き部5の位置を変えて敷設することにより、1枚の床パネル1で、線の太さに応じた細線用の開口部6或いは太線用の開口部7とを使い分けて使用することができ、従来のように配線の太さに応じて、予め形成されている大きさの異なった孔から適合する孔を選択するとか、別途配線孔の大きさの異なる床パネルを選択して敷設するとかの必要がなくなった。上記床パネル1を数枚敷設した平面図が図5に示されている。」
「【0012】実施例2 図6は、切り欠き部5の他の実施例を示したもので、上記半割涙型形状に変えて、図6(a)は台形形状のもの、図6(b)は半割ダルマ型形状のもの、図6(c)は半割瓢箪型形状のもの、図6(d)は三角形形状のもの、図6(e)は打撃面の長さの異なる半割鼓型形状のもの等を示している。上記切り欠き部5は、半割涙型形状と同様に隣接する床パネル1の配設位置を変えることによって開口部の形状が異なることになり、その大きさも細線用或いは太線用等に対応できる開口部を得ることが可能と成る。」
上記本件特許明細書の記載からみて、請求項1に記載の「該隣接床パネルの配設状態によってその大きさが可変」という発明特定事項を、本件特許明細書においては、「隣接する床パネル1の配設位置を変えることによって切り欠き部5の形状相互で形成される開口部の形状が異なること」という意味において使用していることは、明らかである。
したがって、請求項1に記載の「該隣接床パネルの配設状態によってその大きさが可変」の発明特定事項は、明確であるといえるから、特許異議申立人の「本願請求項及び明細書の記載は、不明瞭であり記載不備がある。」という主張を採用することはできない。

(3)第3の記載不備の主張について
本件特許の請求項1ないし請求項7に係る発明のそれぞれは、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものである。そして、前記本件特許の請求項1ないし請求項7に係る発明のそれぞれは、その請求項1ないし請求項7に記載された発明特定事項により、本件特許明細書に記載されたような格別顕著な作用効果を奏する蓋然性があるものと考えられる。
しかるに、特許異議申立人が主張する「本願要旨」なる概念は、本件特許の請求項1ないし請求項7に係る個々の発明の発明特定事項を離れて、本件特許明細書の記載及び図面の記載を総合してまとめ上げることにより、特許異議申立人が独自に作り上げた概念であって、本件特許明細書の特許請求の範囲に記載されている請求項1ないし請求項7に係る個々の発明の発明特定事項に基づく主張ではないから、特許異議申立人が前記「本願要旨」に基づいて主張する、「本願要旨」と効果との対応関係について、理由があるものとすることはできない。

(4)まとめ
以上のとおりであり、申立人が主張する取消理由3(特許法第36条違反)について、「本願請求項及び明細書の記載は、不明瞭であり記載不備がある。」ということができないから、申立人の取消理由3についての上記主張も、採用することができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1ないし本件発明7についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし本件発明7についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-08-31 
出願番号 特願平11-186360
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04F)
P 1 651・ 113- Y (E04F)
P 1 651・ 537- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 佐藤 昭喜
新井 夕起子
登録日 2003-08-15 
登録番号 特許第3460189号(P3460189)
権利者 コクヨ株式会社
発明の名称 床パネル及び二重床構造  

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