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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200335136 審決 特許
無効2010800100 審決 特許
無効200335239 審決 特許
無効200480218 審決 特許
無効200580005 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A61K
管理番号 1105017
審判番号 無効2003-35137  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2004-08-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3095420号発明「少なくとも1つの定着ポリマおよび少なくとも1つのセラミドタイプの化合物を含有するケラチン繊維のトリートメント用組成物およびその方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3095420号の請求項1、2、4ないし15に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3095420号の請求項1、2、4〜15の発明に係る出願は、1996年10月22日(パリ条約による優先権主張1995年10月23日、仏国)を国際出願日とする出願であり、平成12年8月4日にそれらの発明について特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、請求人は、本件特許の請求項1、2、4〜15に係る特許を無効とする、との審決を求め、本件特許の請求項1、2、4〜15は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許の請求項1、2、4〜15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたと主張し(理由1)、さらに、本件特許の請求項1、2、4〜15に係る特許は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たさない出願に対してなされたと主張し(理由2)、証拠方法として下記4.(1)〜(7)の書証を提出している。
一方、被請求人は、平成15年11月6日に訂正請求書とともに答弁書を提出し、本件審判請求は成り立たない、との審決を求め、訂正後の本件特許の請求項1、2、4〜15は、甲第1〜4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない、また、訂正後の本件特許明細書には記載不備がない、と主張したが、平成16年2月24日の口頭審理においては、本件特許の請求項3のみの特許維持を希望するので、本件審判請求について答弁をしないと陳述し、上記主張を撤回した。

2.訂正の適否の判断
(1)訂正の内容
上記訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、本件特許の請求項1を下記のとおり訂正することを求めるものである。

「【請求項1】ケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物であって、該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも1つのアニオン性、非イオン性、双性イオン性、または両性定着ポリマ、および、少なくとも1つの、セラミド、グリコセラミド及びシュードセラミドから選択されるセラミドタイプの化合物を含有し、
前記組成物が、水中での活性物質が1重量%の濃度で、15mPa.s.よりも低い粘度を有するカチオン性ポリマで、1級、2級、3級アミン、または4級アンモニウム基を主鎖に含有するカチオン性ポリマおよび/またはビニルピロリドンポリマを含有しないことを特徴とし、
前記定着アニオンポリマが、
- アクリル酸/エチル=アクリラート/N-tert-ブチルアクリルアミドターポリマから選択されるアクリル酸のコポリマ;
- ビニル=アセタート/ビニル=tert-ブチルベンゾアート/クロトン酸ターポリマ及びクロトン酸/ビニル=アセタート/ビニル=ネオドデカノアートターポリマから選択されるクロトン酸から誘導されたコポリマ;
- モノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマから選択される、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、フェニルビニル誘導体、またはアクリル酸およびそのエステルを用いて、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、または、これらの酸無水物から誘導されるポリマ;
- メタクリル酸およびメチルメタクリラートのコポリマ;
- メタクリル酸およびエチルアクリラートのコポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸コポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸/ポリエチレングリコールターコポリマ;
から選択され、
前記定着両性ポリマが、
a)アルキル基で窒素に置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択された少なくとも1つのモノマから誘導されるユニット、
b)1以上の反応性カルボキシル基を含有する少なくとも1つの酸性コモノマから誘導されるユニット、および、
c)ジメチルまたはジエチル=スルファートでジメチルアミノエチル=メタクリラートの4級化により得られた生成物、および、アクリル酸およびメタクリル酸の1級、2級、3級、および4級アミン置換基を含有するエステルに例示される、少なくとも1つの塩基性コモノマから誘導されるユニット、
を含有するポリマから選択され、
前記定着非イオンポリマが、
- ポリ-β-アラニン;
- ポリアルキルオキサゾリン;
- ビニル=アセタートホモポリマ;
- ビニル=アセタートおよびアクリルエステルのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびエチレンのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびマレイン酸エステルのコポリマ;
- 塩化ビニルのホモポリマ;
- ポリエチレンワックス;
- ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレンワックス;
- マレイン酸無水物およびポリエチレンコポリマ;
- アルキル=アクリラートホモポリマおよびアルキル=メタクリラートホモポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびアルキル=メタクリラートのコポリマから選択されるアクリルエステルのコポリマ;
- アクリロニトリルおよび、ブタジエンおよびアルキル(メタ)アクリラートから選択された非イオンモノマのコポリマ;
- スチレンホモポリマ;
- スチレンおよびアルキル(メタ)アクリラートのコポリマ;
- スチレン、アルキルメタクリラート、およびアルキルアクリラートのコポリマ;
- スチレンおよびブタジエンのコポリマ;
- スチレン、ブタジエン、およびビニルピリジンのコポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびウレタンのコポリマ
から選択されることを特徴とする化粧品組成物。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正は、本件特許明細書中の「本発明によれば、”セラミドタイプの化合物”とは、天然または合成のセラミドおよび/またはグリコセラミドおよび/またはシュードセラミド(pseudoceramides)・・・を意味する」(本件特許公報第4頁第7欄第37〜40行参照。)の記載に基づき、本件特許の請求項1中の「セラミドタイプの化合物」を「セラミド、グリコセラミド及びシュードセラミドから選択されるセラミドタイプの化合物」に限定するとともに、同項中の「のおよび」の誤記を「および」と訂正する(9箇所)ものであるから、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とし、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書及び同条第5項の規定で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明
本件特許の請求項1、2、4〜15に係る発明は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2、4〜15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などということがある。)

「【請求項1】ケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物であって、該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも1つのアニオン性、非イオン性、双性イオン性、または両性定着ポリマ、および、少なくとも1つの、セラミド、グリコセラミド及びシュードセラミドから選択されるセラミドタイプの化合物を含有し、
前記組成物が、水中での活性物質が1重量%の濃度で、15mPa.s.よりも低い粘度を有するカチオン性ポリマで、1級、2級、3級アミン、または4級アンモニウム基を主鎖に含有するカチオン性ポリマおよび/またはビニルピロリドンポリマを含有しないことを特徴とし、
前記定着アニオンポリマが、
- アクリル酸/エチル=アクリラート/N-tert-ブチルアクリルアミドターポリマから選択されるアクリル酸のコポリマ;
- ビニル=アセタート/ビニル=tert-ブチルベンゾアート/クロトン酸ターポリマ及びクロトン酸/ビニル=アセタート/ビニル=ネオドデカノアートターポリマから選択されるクロトン酸から誘導されたコポリマ;
- モノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマから選択される、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、フェニルビニル誘導体、またはアクリル酸およびそのエステルを用いて、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、または、これらの酸無水物から誘導されるポリマ;
- メタクリル酸およびメチルメタクリラートのコポリマ;
- メタクリル酸およびエチルアクリラートのコポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸コポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸/ポリエチレングリコールターコポリマ;
から選択され、
前記定着両性ポリマが、
a)アルキル基で窒素に置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択された少なくとも1つのモノマから誘導されるユニット、
b)1以上の反応性カルボキシル基を含有する少なくとも1つの酸性コモノマから誘導されるユニット、および、
c)ジメチルまたはジエチル=スルファートでジメチルアミノエチル=メタクリラートの4級化により得られた生成物、および、アクリル酸およびメタクリル酸の1級、2級、3級、および4級アミン置換基を含有するエステルに例示される、少なくとも1つの塩基性コモノマから誘導されるユニット、
を含有するポリマから選択され、
前記定着非イオンポリマが、
- ポリ-β-アラニン;
- ポリアルキルオキサゾリン;
- ビニル=アセタートホモポリマ;
- ビニル=アセタートおよびアクリルエステルのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびエチレンのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびマレイン酸エステルのコポリマ;
- 塩化ビニルのホモポリマ;
- ポリエチレンワックス;
- ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレンワックス;
- マレイン酸無水物およびポリエチレンコポリマ;
- アルキル=アクリラートホモポリマおよびアルキル=メタクリラートホモポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびアルキル=メタクリラートのコポリマから選択されるアクリルエステルのコポリマ;
- アクリロニトリルおよび、ブタジエンおよびアルキル(メタ)アクリラートから選択された非イオンモノマのコポリマ;
- スチレンホモポリマ;
- スチレンおよびアルキル(メタ)アクリラートのコポリマ;
- スチレン、アルキルメタクリラート、およびアルキルアクリラートのコポリマ;
- スチレンおよびブタジエンのコポリマ;
- スチレン、ブタジエン、およびビニルピリジンのコポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびウレタンのコポリマ
から選択されることを特徴とする化粧品組成物。
【請求項2】セラミドタイプの化合物が、一般式(I):




(式中、
- R1は、
- 飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C5-C50炭化水素基であり、該基は酸R7COOHで任意にエステル化した1以上のヒドロキシル基によって置換可能であり、R7は、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C35炭化水素基であり、R7基のヒドロキシル基は、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C35脂肪酸でエステル化可能であり、または、
- R”-(NR-CO)-R’基であり、Rは、水素原子またはモノまたはポリヒドロキシル化され、好ましくはモノヒドロキシル化されたC1-C20炭化水素基であり、R’およびR”は、その炭素原子の合計が9から30までの間である炭化水素基であり、R’が2価の基であり、または、
- R8-O-CO-(CH2)pであり、R8は、C1-C20炭化水素基であり、pは1から12の整数であり、;
- R2は、水素原子または(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基であり、nは1から4の整数であり、mは1から8の整数であり、;
- R3は、水素原子、または、ヒドロキシル化または非ヒドロキシル化され、飽和または不飽和のC1-C33炭化水素基であり、該ヒドロキシル基は、無機酸または酸:R7COOHで任意にエステル化可能であり、R7は、上記と同様の意味を有し、該ヒドロキシル基が、(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基によってエーテル化可能であり、R3は、1以上のC1-C14アルキル基で置換可能であり;
- R4は、水素原子、メチルまたはエチル基、または任意にヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C3-C50炭化水素基、または、-CH2-CHOH-CH2-O-R6基であり、R6基は、C10-C26炭化水素基またはR8-O-CO-(CH2)pであり、R8はC1-C20炭化水素基であり、pは1から12の整数であり、
- R5は、水素原子、または、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C30炭化水素基であり、該ヒドロキシル基は、(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基によってエーテル化可能であり;
ただし、R3およびR5が水素原子を示す場合、または、R3が水素原子であってR5がメチル基である場合、R4は水素原子、またはメチルまたはエチル基を示さない)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】セラミドタイプの化合物が、ビス-(N-ヒドロキシエチル-N-セチル)マロンアミド、セチル酸のN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-セチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミド、およびN-ドコサノイル-N-メチル-D-グルカミンから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】定着両性ポリマが、CTFA名で、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチルメタクリラートコポリマであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】セラミドタイプの化合物が、組成物の全重量に対して、0.0001から20重量%までの濃度で存在することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】定着ポリマが、組成物の全重量に対して、0.01から20重量%までの量で存在することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】増粘剤、脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、グリセロール、シリコーン、界面活性剤、香料、防腐剤、サンスクリーン、蛋白質、ビタミン、ポリマ、植物、動物、鉱物、または合成油から選択される少なくとも1つの添加剤、および化粧品分野において通常使用される他の添加剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】化粧品として許容される媒体が、水、または水および少なくとも1つの化粧品として許容される溶媒との混合物からなることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】化粧品として許容される溶媒が、モノアルコール、ポリアルコール、グリコールエーテル、脂肪酸エステル、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】ゲル、ミルク、クリーム、分散物、増粘されてもよいローション、またはフォームの形態で提供されることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】ヘアースタイリング、ヘアースタイル保持および形成用製品であることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】スプレー、ヘアースプレー、またはフォームを得るためのエアゾール容器に、または、ベイパライザ、ポンプディスペンサに実装されることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】定着ポリマが、化粧品として許容される媒体中に溶解され、不溶性固体粒子の水分散物の形態で使用されることを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】ケラチン繊維の医療行為を除くトリートメント方法であって、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物を、ケラチン繊維に適用することを含有するトリートメント方法。」

4.甲各号証記載の概要
(1)甲第1号証(特開昭64-9913号公報)
アミド誘導体を含有する毛髪化粧料について記載されており、参考例1には、該アミド誘導体の具体例として、N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが記載され、実施例5には、参考例1のアミド誘導体を含有するブロー仕上剤組成物が記載されている。
(2)甲第2号証(特表平7-508294号公報)
アミノデオキシアルジトール親油性誘導体を含有する香粧品組成物について記載されており、例2には、該アミノデオキシアルジトール親油性誘導体の具体例として、1-(ヘキサデシルオキシカルボニル-メチル-アミノ)-1-デオキシ-D-グルシトールが記載され、例Oには、例2の化合物を含有する整形ローションが記載されている。
(3)甲第3号証(Fragrance Journal, 1993(12), 第51〜58頁)
毛髪用セットポリマーの開発の歴史について記載されており、合成高分子としては、1950年にポリビニルピロリドンがヘアスプレー用に市販されたことに続いて、1950年代後半にはアクリル系のポリマー、1960〜70年代にはVA/クロトン酸/ビニルネオデカネート共重合体、1970年代後半には両性のセットポリマーであるオクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルアクリレート共重合体が開発されたこと等、が記載されている。
(4)甲第4号証(日本化粧品技術者会編「最新化粧品科学-改訂増補-」、薬事日報社、昭和63年6月6日発行、第118〜124頁)
整髪料の製品形態について記載されており、ディスペンサー容器に入ったポンプ式スプレー、エアゾール製品等、が記載されている。
(5)甲第5号証(「化学大辞典」、株式会社東京化学同人、1989年10月20日発行、「セラミド」の項及び「スフィンゴシン」の項)
セラミド、スフィンゴシンの化学構造等について記載されている。
(6)甲第6号証(国際公開第95/16665号パンフレット)
合成セラミド及び化粧用組成物におけるその使用に係る発明について記載されている。
(7)甲第7号証(国際公開第94/24097号パンフレット)
化粧用組成物におけるアミノデオキシアルジトール親油性誘導体の使用に係る発明について記載されている。

5.当審の判断
(1)理由1(特許法第29条第2項)について
ア.本件特許発明1について
(ア-1)甲第1号証について
本件特許発明1と甲第1号証の実施例5に記載のブロー仕上剤組成物(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)を対比すると、甲第1号証記載の発明で使用されている「参考例1で得たアミド誘導体(N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)」は、本件特許発明4中で本件特許発明1に記載のセラミドタイプの化合物の具体例として記載されている「セチル酸のN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-セチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミド」と同一の化合物であるから、両者は、
「N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドを含有する組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1は、ケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物であるのに対し、甲第1号証記載の発明は、ブロー仕上剤組成物である点。
(相違点2)
本件特許発明1は、定着ポリマー成分として、
水中での活性物質が1重量%の濃度で、15mPa.s.よりも低い粘度を有するカチオン性ポリマで、1級、2級、3級アミン、または4級アンモニウム基を主鎖に含有するカチオン性ポリマおよび/またはビニルピロリドンポリマを含有せず、
少なくとも1つの以下に記載の群から選択されるポリマーを含有するのに対し、甲第1号証記載の発明では、これらの限定がなく、ポリマー成分としてポリビニルピロリドンを含有する点。

- アクリル酸/エチル=アクリラート/N-tert-ブチルアクリルアミドターポリマから選択されるアクリル酸のコポリマ;
- ビニル=アセタート/ビニル=tert-ブチルベンゾアート/クロトン酸ターポリマ及びクロトン酸/ビニル=アセタート/ビニル=ネオドデカノアートターポリマから選択されるクロトン酸から誘導されたコポリマ;
- モノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマから選択される、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、フェニルビニル誘導体、またはアクリル酸およびそのエステルを用いて、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、または、これらの酸無水物から誘導されるポリマ;
- メタクリル酸およびメチルメタクリラートのコポリマ;
- メタクリル酸およびエチルアクリラートのコポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸コポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸/ポリエチレングリコールターコポリマ;
-a)アルキル基で窒素に置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択された少なくとも1つのモノマから誘導されるユニット、
b)1以上の反応性カルボキシル基を含有する少なくとも1つの酸性コモノマから誘導されるユニット、および、
c)ジメチルまたはジエチル=スルファートでジメチルアミノエチル=メタクリラートの4級化により得られた生成物、および、アクリル酸およびメタクリル酸の1級、2級、3級、および4級アミン置換基を含有するエステルに例示される、少なくとも1つの塩基性コモノマから誘導されるユニット、
を含有するポリマ;
- ポリ-β-アラニン;
- ポリアルキルオキサゾリン;
- ビニル=アセタートホモポリマ;
- ビニル=アセタートおよびアクリルエステルのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびエチレンのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびマレイン酸エステルのコポリマ;
- 塩化ビニルのホモポリマ;
- ポリエチレンワックス;
- ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレンワックス;
- マレイン酸無水物およびポリエチレンコポリマ;
- アルキル=アクリラートホモポリマおよびアルキル=メタクリラートホモポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびアルキル=メタクリラートのコポリマから選択されるアクリルエステルのコポリマ;
- アクリロニトリルおよび、ブタジエンおよびアルキル(メタ)アクリラートから選択された非イオンモノマのコポリマ;
- スチレンホモポリマ;
- スチレンおよびアルキル(メタ)アクリラートのコポリマ;
- スチレン、アルキルメタクリラート、およびアルキルアクリラートのコポリマ;
- スチレンおよびブタジエンのコポリマ;
- スチレン、ブタジエン、およびビニルピリジンのコポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびウレタンのコポリマ。

そこで、上記相違点1及び2について検討する。
(相違点1)について
本件特許発明1のケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物には、ブロー乾燥用ローションが包含され(本件特許公報第11頁第21欄第46〜47行参照。)、甲第1号証記載の発明であるブロー仕上組成物はブロー乾燥用ローションに相当するから、相違点1は表現上の差異であって、実質的な差異ではない。
(相違点2)について
甲第3号証には、ヘアスタイリング剤に使用される毛髪用セットポリマーの開発の歴史について記載され、1950年にポリビニルピロリドンがヘアスプレー用セットポリマーとして市販され、その後、1956年にはポリビニルピロリドンの改良品として、酢酸ビニルとの共重合体が開発され、更なる改良品として、アクリレート/アクリルアミド共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の低級ハーフエステル、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルネオデカネート、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノメタクリレート等が開発されたことが記載されている。
他方、甲第1号証記載の発明であるブロー仕上剤が、ヘアスタイリング剤の一種であり、そこに含有されているポリビニルピロリドンが毛髪用セットポリマー(本件特許発明1で使用されている定着ポリマに相当。)として使用されていることは明らかであるから、甲第1号証記載の発明におけるポリビニルピロリドンに代えて、甲第3号証にその改良品として記載されている、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルネオデカネート、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノメタクリレート等を使用してみるという程度のことは当業者の容易に為し得るところである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(ア-2)甲第2号証について
また、本件特許発明1と甲第2号証の例Oに記載の整形ローション(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)を対比すると、甲第2号証記載の発明における例2の化合物(1-(ヘキサデシルオキシカルボニル-メチル-アミノ)-1-デオキシ-D-グルシトール)は、本件特許明細書において、セラミドおよび/またはグリコセラミドおよび/またはシュードセラミドが記載されているとされるWO94/24097に記載された化合物であるから、本件特許発明1の「セラミド、グリコセラミド及びシュードセラミドから選択されるセラミドタイプ」に相当するから、両者は、
「1-(ヘキサデシルオキシカルボニル-メチル-アミノ)-1-デオキシ-D-グルシトールを含有する組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1は、ケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物であるのに対し、甲第2号証記載の発明は、整形ローションである点。
(相違点2)
本件特許発明1は、定着ポリマー成分として、
水中での活性物質が1重量%の濃度で、15mPa.s.よりも低い粘度を有するカチオン性ポリマで、1級、2級、3級アミン、または4級アンモニウム基を主鎖に含有するカチオン性ポリマおよび/またはビニルピロリドンポリマを含有せず、
上記本件特許発明1と甲第1号証記載の発明の相違点2において記載の群から選択される少なくとも1つのポリマーを含有するのに対し、甲第2号証記載の発明では、これらの限定がなく、ポリマー成分としてビニルピロリドン-ビニルアセテート(65/35)コポリマーを含有する点。

しかるに、本件特許発明1のケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物には、ヘアーセットローションが包含され(本件特許公報第11頁第21欄第46行)、甲第2号証記載の整形ローションはヘアーセットローションに相当するから、相違点1は実質的な相違点ではなく、また、相違点2については、上記本件特許発明1と甲第1号証記載の発明の相違点2において記載したと同様の理由で、甲第2号証記載の発明におけるビニルピロリドン-ビニルアセテート(65/35)に代えて、甲第3号証に記載されている、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルネオデカネート、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノメタクリレート等を使用してみるという程度のことは当業者の容易に為し得るところである。
したがって、本件特許発明1は、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

イ.本件特許発明2について
本件特許発明2は本件特許発明1で使用される「セラミド、グリコセラミド及びシュードセラミドから選択されるセラミドタイプの化合物」を一般式(I)で表されるものに限定するものであるが、一般式(I)において、R1=C19H39,R2=R3=H、R4=CH3、R5=-(CH(OH))3CH2OHのものは、甲第2号証の例1の化合物に相当する。そして、甲第2号証において、例1の化合物と例2の化合物は、ケラチン物質の処理のための香粧品組成物に配合された場合、毛髪に対し、もつれのなさ、輝き、生き生きさ、心地よい手触り等を与える化合物として、同等のものとして記載されているのであるから、甲第2号証記載の発明における例2の化合物に代えて、例1の化合物を使用してみるという程度のことは当業者が適宜なし得るところのものである。
したがって、本件特許発明2は、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

ウ.本件特許発明4について
本件特許発明4と甲第1号証記載の発明を対比すると、甲第1号証記載の発明で使用されている「参考例1で得たアミド誘導体(N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)」は、本件特許発明4に記載されている「セチル酸のN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-セチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミド」と同一の化合物である。
したがって、本件特許発明4は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

また、本件特許発明4に記載されているN-ドコサノイル-N-メチル-D-グルカミンは、甲第2号証に記載されている例1の化合物と同一のものである。
したがって、本件特許発明4は、上記イに記載したと同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

エ.本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1における定着両性ポリマを、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチルメタクリラートコポリマに限定するものである。
しかるに、甲第3号証には、毛髪用セットポリマー(定着ポリマに相当。)として、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノメタクリレートが記載されているのであるから、本件特許発明5は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

オ.本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1における組成物全重量に対するセラミドタイプの化合物の濃度を、0.0001から20重量%に限定するものであるが、甲第1号証記載の発明における「参考例1で得たアミド誘導体」の濃度は0.5%であり、また、甲第2号証記載の発明における例2の化合物の濃度は0.25%であるから、いずれも上記限定の範囲内であり、本件特許発明6と甲第1号証記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明との間における相違点と同一であり、また、本件特許発明1と甲第2号証記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明6は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

カ.本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1における組成物全重量に対する定着ポリマの量を、0.01から20重量%に限定するものであるが、甲第1号証記載の発明における定着ポリマ成分であるポリビニルピロリドンの量は1.5%であり、また、甲第2号証記載の発明における定着ポリマ成分であるビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマーの量は10%であるから、いずれも上記限定の範囲内であり、本件特許発明7と甲第1号証記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明との間における相違点と同一であり、また、本件特許発明1と甲第2号証記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明7は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

キ.本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明1の組成物に、さらに、増粘剤、脂肪酸エステル、グリセロール、シリコーン、界面活性剤、香料、防腐剤、サンスクリーン、蛋白質、ビタミン、ポリマ、植物、動物、鉱物、または合成油から選択される少なくとも1つの添加剤、および化粧品分野において通常使用される他の添加剤を添加することを特徴とするものであるが、甲第1号証記載の発明においても、香料に加え、毛髪に良好な感触を与える成分として、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを含有しており、また、甲第2号証に記載の発明においては、芳香剤、保存剤に加え、染料を含有しており、本件特許発明8と甲第1号証に記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明との間における相違点と同一であり、また、本件特許発明1と甲第2号証に記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明8は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

ク.本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明1における化粧品として許容される媒体を、水、または水および少なくとも1つの化粧品として許容される溶媒との混合物に限定するものであるが、甲第1号証記載の発明においても媒体として水を使用しており、本件特許発明9と甲第1号証に記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明9は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

ケ.本件特許発明10について
本件特許発明10は、本件特許発明9における化粧品として許容される溶媒を、モノアルコール、ポリアルコール、グリコールエーテル、脂肪酸エステル、およびこれらの混合物から選択されるものに限定するものであるが、甲第2号証記載の発明は、脱ミネラル水に加え、エチルアルコール(モノアルコールに相当)を溶媒として使用しており、本件特許発明10と甲第2号証に記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第2号証に記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明10は、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

コ.本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明1の組成物を、ゲル、ミルク、クリーム、分散物、増粘されてもよいローション、またはフォームの形態に限定するものであるが、甲第1号証記載の発明は、参考例1で得たアミド誘導体が水に分散した分散物であり、甲第2号証記載の発明はローションであるから、本件特許発明11と甲第1号証に記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との間における相違点と同一であり、また、本件特許発明1と甲第2号証記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明11は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

サ.本件特許発明12について
本件特許発明12は、本件特許発明1の組成物を、ヘアースタイリング、ヘアースタイル保持および形成用製品に限定するものであるが、甲第1号証記載の発明は、ブロー仕上剤であり、また、甲第2号証記載の発明は整形ローションであるから、いずれも「ヘアースタイリング、ヘアースタイル保持および形成用製品」に相当するものであり、本件特許発明12と甲第1号証記載の発明との間における相違点は、本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明との間における相違点と同一であり、また、本件特許発明1と甲第2号証に記載の発明との間における相違点と同一である。
したがって、本件特許発明12は、上記(ア-1)と同様の理由により、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、上記(ア-2)と同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

シ.本件特許発明13について
本件特許発明13は、本件特許発明1の組成物を、スプレー、ヘアースプレー、またはフォームを得るためのエアゾール容器に、または、ベイパライザ、ポンプディスペンサに実装することを特徴とするものであるが、ヘアースタイリング剤をヘアスプレー(例えば、甲第3号証第51〜54頁参照。)、ディスペンサー容器に入ったポンプ式スプレー(例えば、甲第4号証第118頁参照。)に実装して提供することは周知の技術であるから、本件特許発明13は、本件特許発明12と同様に、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものでる。

ス.本件特許発明14について
本件特許発明14は、本件特許発明1における定着ポリマ成分を、化粧品として許容される媒体中に溶解されているもの、又は、不溶性固体粒子の水分散物の形態のものに限定するものであるが、毛髪用セットポリマー(定着ポリマに相当。)は水およびアルコール等の溶剤に対する溶解性、相溶性の向上も主要な観点として開発されており、特に、ヘアスプレーの場合VOCs規制に適合させるため、ポリマーの基本性能として、水/エタノール混合系およびLPG/DME混合系での相溶性が重要と考えられているのであるから(甲第3号証第53頁右欄第16〜20行参照。)、定着ポリマを化粧品として許容される媒体中に溶解させて使用することは通常の態様で実施されているものであり、本件特許発明14は、本件特許発明13と同様に、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものであり、また、甲第2号証及び甲第3号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

セ.本件特許発明15について
甲第1号証記載の発明はブロー仕上剤組成物であり、また、甲第2号証記載の発明は整形ローションであるから、いずれも毛髪のスタイリングを目的とするものであり、これらを通常の態様で使用することは、「ケラチン繊維の医療行為を除くトリートメント方法」に相当する。
したがって、本件特許発明15は、甲第1号証〜甲第4号証に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、理由2について検討するまでもなく、本件の請求項1、2、4〜15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
少なくとも1つの定着ポリマおよび少なくとも1つのセラミドタイプの化合物を含有するケラチン繊維のトリートメント用組成物およびその方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物であって、該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、
少なくとも1つのアニオン性、非イオン性、双性イオン性、または両性定着ポリマ、および、少なくとも1つの、セラミド、グリコセラミド及びシュードセラミドから選択されるセラミドタイプの化合物を含有し、
前記組成物が、水中での活性物質が1重量%の濃度で、15mPa.s.よりも低い粘度を有するカチオン性ポリマで、1級、2級、3級アミン、または4級アンモニウム基を主鎖に含有するカチオン性ポリマおよび/またはビニルピロリドンポリマを含有しないことを特徴とし、
前記定着アニオンポリマが、
- アクリル酸/エチル=アクリラート/N-tert-ブチルアクリルアミドターポリマから選択されるアクリル酸のコポリマ;
- ビニル=アセタート/ビニル=tert-ブチルベンゾアート/クロトン酸ターポリマおよびクロトン酸/ビニル=アセタート/ビニル=ネオドデカノアートターポリマから選択されるクロトン酸から誘導されたコポリマ;
- モノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマから選択される、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、フェニルビニル誘導体、またはアクリル酸およびそのエステルを用いて、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、または、これらの酸無水物から誘導されるポリマ;
- メタクリル酸およびメチルメタクリラートのコポリマ;
- メタクリル酸およびエチルアクリラートのコポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸コポリマ;
- ビニル=アセタート/クロトン酸/ポリエチレングリコールターコポリマ;
から選択され、
前記定着両性ポリマが、
a)アルキル基で窒素に置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択された少なくとも1つのモノマから誘導されるユニット、
b)1以上の反応性カルボキシル基を含有する少なくとも1つの酸性コモノマから誘導されるユニット、および、
c)ジメチルまたはジエチル=スルファートでジメチルアミノエチル=メタクリラートの4級化により得られた生成物、および、アクリル酸およびメタクリル酸の1級、2級、3級、および4級アミン置換基を含有するエステルに例示される、少なくとも1つの塩基性コモノマから誘導されるユニット、
を含有するポリマから選択され、
前記定着非イオンポリマが、
- ポリ-β-アラニン;
- ポリアルキルオキサゾリン;
- ビニル=アセタートホモポリマ;
- ビニル=アセタートおよびアクリルエステルのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびエチレンのコポリマ;
- ビニル=アセタートおよびマレイン酸エステルのコポリマ;
- 塩化ビニルのホモポリマ;
- ポリエチレンワックス;
- ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレンワックス;
- マレイン酸無水物およびポリエチレンコポリマ;
- アルキル=アクリラートホモポリマおよびアルキル=メタクリラートホモポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびアルキル=メタクリラートのコポリマから選択されるアクリルエステルのコポリマ;
- アクリロニトリルおよび、ブタジエンおよびアルキル(メタ)アクリラートから選択された非イオンモノマのコポリマ;
- スチレンホモポリマ;
- スチレンおよびアルキル(メタ)アクリラートのコポリマ;
- スチレン、アルキルメタクリラート、およびアルキルアクリラートのコポリマ;
- スチレンおよびブタジエンのコポリマ;
- スチレン、ブタジエン、およびビニルピリジンのコポリマ;
- アルキル=アクリラートおよびウレタンのコポリマ
から選択されることを特徴とする化粧品組成物。
【請求項2】セラミドタイプの化合物が、一般式(I):

(式中、
- R1は、
- 飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C5-C50炭化水素基であり、該基は酸R7COOHで任意にエステル化した1以上のヒドロキシル基によって置換可能であり、R7は、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C35炭化水素基であり、R7基のヒドロキシル基は、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C35脂肪酸でエステル化可能であり、または、
- R”-(NR-CO)-R’基であり、Rは、水素原子またはモノまたはポリヒドロキシル化され、好ましくはモノヒドロキシル化されたC1-C20炭化水素基であり、R’およびR”は、その炭素原子の合計が9から30までの間である炭化水素基であり、R’が2価の基であり、または、
- R8-O-CO-(CH2)pであり、R8は、C1-C20炭化水素基であり、pは1から12の整数であり;
- R2は、水素原子または(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基であり、nは1から4の整数であり、mは1から8の整数であり;
- R3は、水素原子、または、ヒドロキシル化または非ヒドロキシル化され、飽和または不飽和のC1-C33炭化水素基であり、該ヒドロキシル基は、無機酸または酸:R7COOHで任意にエステル化可能であり、R7は、上記と同様の意味を有し、該ヒドロキシル基が、(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基によってエーテル化可能であり、R3は、1以上のC1-C14アルキル基で置換可能であり;
- R4は、水素原子、メチルまたはエチル基、または任意にヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C3-C50炭化水素基、または、-CH2-CHOH-CH2-O-R6基であり、R6基は、C10-C26炭化水素基またはR8-O-CO-(CH2)pであり、R8はC1-C20炭化水素基であり、pは1から12の整数であり、
- R5は、水素原子、または、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C30炭化水素基であり、該ヒドロキシル基は、(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基によってエーテル化可能であり;
ただし、R3およびR5が水素原子を示す場合、または、R3が水素原子であってR5がメチル基である場合、R4は水素原子、またはメチルまたはエチル基を示さない)
で表わされることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】セラミドタイプの化合物が、
- N-リノレオイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-オレオイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-パルミトイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-ベヘノイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-2-ヒドロキシパルミトイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-ステアロイルフィトスフィンゴシン、
- N-パルミトアミドヘキサデカンジオール、
またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】セラミドタイプの化合物が、ビス-(N-ヒドロキシエチル-N-セチル)マロンアミド、セチル酸のN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-セチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミド、およびN-ドコサノイル-N-メチル-D-グルカミンから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】定着両性ポリマが、CTFA名で、オクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチルメタクリラートコポリマであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】セラミドタイプの化合物が、組成物の全重量に対して、0.0001から20重量%までの濃度で存在することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】定着ポリマが、組成物の全重量に対して、0.01から20重量%までの量で存在することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】増粘剤、脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、グリセロール、シリコーン、界面活性剤、香料、防腐剤、サンスクリーン、蛋白質、ビタミン、ポリマ、植物、動物、鉱物、または合成油から選択される少なくとも1つの添加剤、および化粧品分野において通常使用される他の添加剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】化粧品として許容される媒体が、水、または水および少なくとも1つの化粧品として許容される溶媒との混合物からなることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】化粧品として許容される溶媒が、モノアルコール、ポリアルコール、グリコールエーテル、脂肪酸エステル、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】ゲル、ミルク、クリーム、分散物、増粘されてもよいローション、またはフォームの形態で提供されることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】ヘアースタイリング、ヘアースタイル保持および形成用製品であることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】スプレー、ヘアースプレー、またはフォームを得るためのエアゾール容器に、または、ベイパライザ、ポンプディスペンサに実装されることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】定着ポリマが、化粧品として許容される媒体中に溶解され、不溶性固体粒子の水分散物の形態で使用されることを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】ケラチン繊維の医療行為を除くトリートメント方法であって、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物を、ケラチン繊維に適用することを含有するトリートメント方法。
【発明の詳細な説明】
本発明は、少なくとも1つの定着ポリマおよび少なくとも1つのセラミドタイプの成分を含有する、ケラチン繊維、特に髪のトリートメント用化粧品組成物、並びに、該組成物を用いる非治療的トリートメント方法に関する。
ヘアースタイリングポリマ(定着ポリマ)を組成物中に含有する髪成形組成物または髪形保持組成物は、一般的には、特にヘアーブロー中、髪のもつれをほどいたり、再スタイリングしたり、またはブラッシングするのを困難にするという不利益をもたらす。
ブロー乾燥中、髪は、ドライヤの熱および髪を形創るために髪にブラシを通すことによってダメージを受ける。
多くの髪の房はブロー乾燥中に折れ、したがって、これらの攻撃中の髪の折れから髪を保護可能である組成物が求められている。
ヘアースタイルを保持するために化粧品組成物中において、シリコーン含有誘導体を定着ポリマと組み合わせることが知られている。これらのシリコーン含有誘導体は、これらの組成物を用いて処理した髪のもつれのほどきやすさ、柔軟性、および光沢性を改善することが見い出されている。しかしながら、シリコーン含有誘導体は、定着ポリマを含有する組成物のスタイリング特性に好ましくなく、また、髪の折れ(breaking-off)に対する保護特性に関しても満足するものではない。
本出願人は、驚くべきことに、セラミドタイプの化合物と組み合わせて定着ポリマを含有する組成物を用いることによって、優れたヘアースタイリング特性を保持しつつ、特にブロー乾燥中の髪の折れに対して、非常に良好な保護特性が得られることを発見した。
ヘアースタイリング特性は、定着ポリマのみを含有する組成物のヘアースタイリング特性と同レベルかまたはそれ以上であり、特に、定着力、経時的な性質、および髪のボリュームが良好である。
該発見が、本発明の基礎となるものである。
本発明の主題は、したがって、髪等のケラチン繊維をトリートメントするための非洗浄化粧品組成物であって、該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも1つの定着ポリマ、および、少なくとも1つのセラミドタイプの化合物を含有し、前記組成物が、水中での活性物質が1重量%の濃度で、15mPa.s.よりも低い粘度を有するカチオン性ポリマで、1級、2級、3級アミン、または4級アンモニウム基を主鎖に含有するカチオン性ポリマおよび/またはビニルピロリドンポリマを含有しないことを特徴とする化粧品組成物である。
本発明の主題はまた、上記で定義した組成物の、ブロー乾燥中における髪の保護用への用途である。
これらの組成物はまた、化粧品特性、特に髪の光沢および柔軟性を改善可能である。
該組成物の定着力とは、ヘアースタイルの最初の形状を保持するような結合力を髪に付与する能力を示す。定着ポリマとは、ヘアースタイルの形状を一時的に定着させることを意味する。
”非洗浄(nondetergent)”組成物とは、該組成物が、固体媒体、たとえば髪から、該媒体に付着したごみを、分散させたり溶解したりすることによって除去可能でないことを意味する。特に、本発明による組成物は、組成物の全重量に対して4重量%よりも少ないアニオン性または両性洗浄界面活性剤を含有するものである。
ビニルピロリドンポリマは、少なくともビニルピロリドンモノマを含有するポリマを示す。
本発明によれば、”セラミドタイプの化合物”とは、天然または合成のセラミドおよび/またはグリコセラミドおよび/またはシュードセラミド(pseudoceramides)および/またはネオセラミドを意味すると理解される。
セラミドタイプの化合物は、たとえば、特許出願:DE 4,424,530;DE 4,424,533;DE 4,402,929;DE 4,420,736;WO 95/23807;WO 94/07844;EP-A-0,646,572;WO 95/16665;FR-2,673,179;EP-A-0,227,994;およびWO 94/07844;WO 94/24097;WO 94/10131に記載されており、これらの教示は、参照してここに組み入れられるものである。
本発明において使用可能なセラミドタイプの化合物は、好ましくは、以下の一般式(I):

(式中、
- R1は、
- 飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C5-C50炭化水素基であり、該基は酸R7COOHで任意にエステル化した1以上のヒドロキシル基によって置換可能であり、R7は、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C35炭化水素基であり、R7基のヒドロキシル基は、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C35脂肪酸でエステル化可能であり、または、
- R”-(NR-CO)-R’基であり、Rは、水素原子またはモノまたはポリヒドロキシル化され、好ましくはモノヒドロキシル化されたC1-C20炭化水素基であり、R’およびR”は、その炭素原子の合計が9から30までの間である炭化水素基であり、R’が2価の基であり、または、
- R8-O-CO-(CH2)pであり、R8は、C1-C20炭化水素基であり、pは1から12の整数であり;
- R2は、水素原子または(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基であり、nは1から4の整数であり、mは1から8の整数であり;
- R3は、水素原子、または、ヒドロキシル化または非ヒドロキシル化され、飽和または不飽和のC1-C33炭化水素基であり、該ヒドロキシル基は、無機酸または酸:R7COOHで任意にエステル化可能であり、R7は、上記と同様の意味を有し、該ヒドロキシル基が、(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基によってエーテル化可能であり、R3は、1以上のC1-C14アルキル基で置換可能であり;
好ましくはR3は、C15-C26α-ヒドロキシアルキル基を示し、該ヒドロキシル基は任意に、C16-C30α-ヒドロキシ酸でエステル化され;
- R4は、水素原子、メチルまたはエチル基、または任意にヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C3-C50炭化水素基、または、-CH2-CHOH-CH2-O-R6基であり、R6基は、C10-C26炭化水素基またはR8-O-CO-(CH2)pであり、R8はC1-C20炭化水素基であり、pは1から12の整数であり、
- R5は、水素原子、または、任意にモノ-またはポリヒドロキシル化され、飽和または不飽和で、直鎖または分岐の、C1-C30炭化水素基であり、該ヒドロキシル基は、(グリコシル)n、(ガラクトシル)m、またはスルホガラクトシル基、またはホスホリルエチルアミンまたはホスホリルエチルアンモニウム基によってエーテル化可能であり;
ただし、R3およびR5が水素原子を示す場合、または、R3が水素原子であってR5がメチル基である場合、R4は水素原子、またはメチルまたはエチル基を示さない)
に相当する。
式(I)の化合物中、その構造が文献:DOWNING,Journal of Lipid Research,Vol.35,2060-2068,1994に記載されているセラミドおよび/またはグリコセラミド、または、仏国特許出願:FR-2,673,179に記載されたものが好ましい。なお、これら文献に含まれる教示は、参照してここに組み入れられるものである。
本発明によるより好ましいセラミドタイプの化合物は、R1が、任意にヒドロキシル化されたC14-C22脂肪酸から誘導された飽和または不飽和アルキルを示し;R2が、水素原子を示し;R3が、任意にヒドロキシル化した直鎖のC11-C17、好ましくはC13-C15基を示す、式(I)の化合物である。
このような化合物はたとえば、
- N-リノレオイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-オレオイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-パルミトイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-ベヘノイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-2-ヒドロキシパルミトイルジヒドロスフィンゴシン、
- N-ステアロイルフィトスフィンゴシン、
- N-パルミトアミドヘキサデカンジオール、
またはこれらの化合物の混合物である。
たとえばダウニング(DOWNING)分類によるセラミド2およびセラミド5の混合物等の特別な混合物も使用可能である。
R1が、脂肪酸から誘導された飽和または不飽和アルキル基を示し;R2が、ガラクトシルまたはスルホガラクトシル基を示し;R3が、飽和または不飽和のC12-C22炭化水素基、好ましくは-CH=CH-(CH2)12-CH3基を示す、式(I)の化合物を使用可能である。
たとえば、”WAITAKI INTERNATIONAL BIOSCIENCES”社から”GLYCOCER”の商品名で販売されているグリコセラミドの混合物からなる製品が挙げられる。
特許出願、EP-A-0,227,994およびWO94/07844に記載の化合物(I)を使用可能である。
このような化合物は、たとえば、”QUEST”社から販売されている”QUESTAMIDE H”(ビス-(N-ヒドロキシエチル-N-セチル)マロンアミド)、および、セチル酸N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-セチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)アミドである。
特許出願:WO94/24097に記載されたN-ドコサノイル-N-メチル-D-グルカミンもまた使用可能である。
セラミドタイプの化合物の濃度は、組成物の全重量に対して約0.0001重量%から20重量%までの間、好ましくは約0.001重量%から10重量%までの間、さらに好ましくは約0.005重量%から3重量%までの間で変化させることが可能である。
本発明によれば、シャンプーによって除去可能な、アニオン性、両性、双性、および非イオン性ポリマおよびこれらの混合物から選択された、それ自体知られている種々の定着ポリマを使用可能である。
定着ポリマは、シュードラテックス(ポリマの固体不溶性粒子の水分散物)またはラテックスの形態で、または、溶解形態で使用可能である。
使用される定着アニオンポリマは一般的には、カルボン酸、スルホン酸、またはリン酸から誘導される基を含有するポリマであり、約500から5,000,000までの間の分子量を有する。
これらのカルボキシル基は、式:

(式中、nは0から10までの整数を示し、Aは、nが1よりも大きい場合、酸素またはイオウなどのヘテロ原子を介したとなりのメチレン基、または不飽和基の炭素原子に任意に結合する、メチレン基を示し、R7は水素原子またはフェニルまたはベンジル基を示し、R8は水素原子または低級アルキルまたはカルボキシル基を示し、およびR9は、水素原子または低級アルキルまたは-CH2-COOH、またはフェニルまたはベンジル基を示す)
で表される不飽和モノまたはジカルボン酸モノマにより提供される。
上記式において、低級アルキル基は好ましくは1から4の炭素原子を有する基を示し、特にメチル及びエチル基を示す。
本発明によるカルボキシル基を含有する好ましい定着アニオンポリマとしては以下のものが挙げられる:
A)アクリル酸またはメタクリル酸またはこれらの塩のホモ-またはコポリマ。特に”Allied Colloid”社から販売されている商品名”Versicol E”または”Versicol K”、または”BASF”社から販売されている商品名”Ultrahold”で販売されている製品。”Hercules”社から販売されている商品名”Reten 421”、”Reten 423”、または”Reten 425”のナトリウム塩の形態で販売されている、アクリル酸のおよびアクリルアミドのコポリマ、またはポリヒドロキシカルボン酸のナトリウム塩。
B)モノエチレンモノマ、たとえばエチレン、スチレン、ビニルエステルまアクリルまたはメタクリル酸のエステル、任意にポリアルキレングリコールにグラフト化した、たとえばポリエチレングリコール、および任意に架橋したものと、アクリル酸またはメタクリル酸とのコポリマ。このようなポリマ類は、特に仏国特許1,222,944号および独国特許出願2,330,956号に記載されており、特に鎖中に任意にN-アルキル化および/またはN-ヒドロキシアルキル化アクリルアミドユニットを含有するこのタイプのコポリマ、たとえば特にルクセンブルグ特許出願75370号および75371号に記載されているもの、または”American Cyanamid”社から商品名”Quadramer”で提供されているものである。アクリル酸のおよびC1-C4アルキルメタクリラートのコポリマ、および、メタクリル酸/エチル=アクリラートのコポリマ類、たとえば”BASF”社から商品名”Luvimer Maex”として販売されている製品も挙げられる。
C)クロトン酸から誘導されるコポリマ類、たとえば鎖中に、ビニル=アセタートまたはプロピオナートユニット、及び任意に他のモノマ、たとえば、長い炭化水素鎖を含有する、たとえば少なくとも5つの炭素数を有する炭化水素鎖を含有する直鎖または分岐の飽和カルボン酸のビニルエステルまたはビニルエーテル、アリルまたはメタリルエステルを含有するもの。これらのポリマは任意にグラフト化および架橋されてもよく、または、α-またはβ-環状カルボン酸のビニル、アリルまたはメタリルエステルである。このようなポリマ類は、特に仏国特許1,222,944号、1,580,545号、2,265,782号、2,265,781号、1,564,110号、および2,439,789号に記載されている。これらのタイプに入る商品は、”National Starch”社から販売されている樹脂28-29-30、26-13-14、および28-13-10である。
D)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、または、これらの酸無水物、および、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、フェニルビニル誘導体、またはアクリル酸およびそのエステルから誘導されたポリマ。これらのポリマは任意にエステル化可能である。このようなポリマは特に、米国特許第2,047,398号、2,723,248号、2,102,113号、および英国特許第839,805号、特に”ISP”社から”Gantrez AN”または”Gantrez ES”の商品名で販売されているものである。
このタイプに入るポリマは、マレイン酸、シトラコン酸、およびイタコン酸無水物、および、任意に、鎖中に、アクリルアミド、メタクリルアミド、α-オレフィン、アクリルまたはメタクリルエステル、アクリルまたはメタクリル酸を含有するアリルまたはメタリルエステルのコポリマである。これらのコポリマの無水物官能基は、モノエステル化またはモノアミド化されている。これらのポリマはたとえば、本出願会社による仏国特許第2,350,384号および第2,357,241号に記載されている。
E)カルボキシラート基を含有するポリアクリルアミド。
スルホン基を含有するポリマはビニルスルホン、スチレンスルホン、ナフタレンスルホン、または、アクリルアミイドアルキルスルホンユニットを含有するポリマである。
これらのポリマは、特に以下のものから選択可能である。
-約1000から100,000までの間の分子量を有するポリビニルスルホン酸の塩、ならびに、不飽和コモノマとのコポリマ、たとえばアクリルまたはメタクリル酸およびこれらのエステル、ならびに、アクリルアミドまたはその誘導体、ビニルエーテルおよびビニルピロリドン。
-ポリスチレンスルホン酸の塩、”National Starch”社から商品名”Flexan 500”および”Flexan 130”で販売されている、それぞれ約500,000のおよび約100,000の分子量を有するナトリウム塩。これらの化合物は、仏国特許2,198,719号に記載されている。
-ポリアクリルアミドスルホン酸の塩、米国特許4,128,631号に記載されたもの、特に”Henkel”社から”Cosmedia Polymer HSP 1180”の商品名で販売されているポリアクリルアミドエチルプロパンスルホン酸の塩。
本発明によれば、アニオンポリマは好ましくは、”BASF”社から”Ultrahold Strong”の商品名で販売されているアクリル酸/エチルアクリラート/N-tert-ブチルアクリルアミドターポリマなどの、アクリル酸のコポリマ;”National Starch”社から”Resin 28-29-30”の商品名で販売されているクロトン酸/ビニル=アセタート/ビニル=ネオドデカノアートターポリマおよびビニル=アセタート/ビニル=tert-ブチルベンゾアート/クロトン酸ターポリマなどの、クロトン酸から誘導されたコポリマ;”ISP”社から”Gantrez ES 425”の商品名で販売されているモノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマなどの、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、フェニルビニル誘導体、またはアクリル酸およびそのエステル類を用いた、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、または、これらの酸無水物から誘導されるポリマ;”Rohm Pharma”社から”Eudragit L”の商品名で販売されている、メタクリル酸のおよびメチルメタクリラートのコポリマ;”BASF”社から”Luvimer Maex”の商品名で販売されている、メタクリル酸のおよびエチル=アクリラートのコポリマ;”BASF”社から”Luviset CA 66”の商品名で販売されているビニル=アセタート/クロトン酸コポリマ;および、”BASF”社から”Aristoflex A”の商品名で販売されているポリエチレングリコール/クロトン酸/ビニル=アセタートターポリマから選択される。
最も好ましいアニオンポリマは、”ISP”社から”Gantrez ES 425”の商品名で販売されているモノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマ;”BASF”社から”Ultrahold Strong”の商品名で販売されているアクリル酸/エチル=アクリラート/N-tert-ブチルアクリルアミドターポリマ;”Rohm Pharma”社から”Eudragit L”の商品名で販売されている、メタクリル酸のおよびメチル=メタクリラートのコポリマ;”National Starch”社から”Resin 28-29-30”の商品名で販売されているクロトン酸/ビニル=アセタート/ビニル=ネオドデカノアートターポリマおよびビニル=アセタート/ビニル=tert-ブチルベンゾアート/クロトン酸ターポリマ;”BASF”社から”Luvimer Maex”の商品名で販売されている、メタクリル酸のおよびエチル=アクリラートのコポリマ;または、”ISP”社から”Acrylidone LM”の商品名で販売されているビニルピロリドン/アクリル酸/ラウリル=メタクリラートターポリマである。
本発明において使用可能な両性または双性ポリマ類は、ポリマ鎖に統計的に分布したBおよびCユニットを含有するポリマから選択可能であり、ここで、Bは、少なくとも1つの塩基性窒素原子を含有するモノマから誘導されるユニットを示し、Cは、1以上のカルボキシルまたはスルホン基を含有する酸性モノマから誘導されるユニットを示し、または、BおよびCはカルボキシベタインのまたはスルホベタインの双性イオンモノマから誘導される基を示す;
BおよびCはまた、1級、2級、3級、または4級アミン基を含有するカチオンポリマ鎖を示し、ここで、これらのアミン基の少なくとも1つは、炭化水素基を介して結合するスルホン基またはカルボキシル基を有し、または、BおよびCはα,β-ジカルボキシルエチレンユニットを含有するポリマの鎖の部分を形成し、ここで、カルボキシル基のうちの1つは、1以上の1級または2級アミン基を含有するポリアミンと反応しているものである。
上記定義に相当する、より好ましい定着両性ポリマは以下のものから選択される:
(1)たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはα-クロロアクリル酸などのカルボキシル基を有するビニル化合物から誘導されたモノマの、および、たとえばジアルキルアミノアルキル=メタクリラートおよびアクリラートまたはジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドおよびジアルキルアミノアルキルアクリルアミドなどの、少なくとも1つの塩基性原子を含有する置換ビニル化合物から誘導される塩基性モノマの共重合から得られたポリマ。
このような化合物は、米国特許3,836,537号に記載されている。
(2)a)アルキル基で窒素に置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択された少なくとも1つのモノマ、
b)1以上の反応性カルボキシル基を含有する少なくとも1つの酸性コモノマ、および、
c)ジメチルまたはジエチル=スルファートでジメチルアミノエチル=メタクリラートを4級化することにより得られた生成物、および、アクリル酸およびメタクリル酸の1級、2級、3級、および4級アミン置換基を含有するエステル等の、少なくとも1つの塩基性コモノマ、
から誘導されるユニットを含有するポリマ。
本発明によるより好ましいN-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミドは、アルキル基が2から12の炭素原子を含有する基であり、特に、N-エチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-デシルアクリルアミド、またはN-ドデシルアクリルアミド、およびこれらの相当するメタクリルアミドが挙げられる。
酸性コモノマは、特に、アクリル、メタクリル、クロトン、イタコン、マレイン、およびフマル酸、および、マレイン酸またはフマル酸の炭素数1から4のアルキルモノエステル類、または酸無水物から選択される。
好ましい塩基性コモノマ類は、アミノエチル、ブチルアミノエチル、N,N’-ジメチルアミノエチル、および、N-tert-ブチルアミノエチル=メタクリラートである。
特に、CTFA名(4版、1991年)でオクチルアクリルアミド/アクリラート/ブチルアミノエチルメタクリラートコポリマ、たとえば、”National Starch”社から”Lovocryl 47”または”Amphomer”の商品名で販売されている製品が使用される。
(3)以下の式で表わされるポリアミノアミドから誘導される部分的にまたは全体的にアルキル化および架橋されたポリアミノアミド:

式中、R10は、飽和ジカルボン酸から、エチレン2重結合を有する脂肪族モノまたはジカルボン酸から、これらの酸の1から6の炭素原子を有する低級アルカノールのエステルから、または前記酸の1つとビス1級またはビス2級アミンとの反応から得られた基から誘導された2価の基を示し、Zは、ビス1級またはモノ-またはビス2級ポリアルキレンポリアミンを示し、および好ましくは以下に示すものである。
a)ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはジプロピレントリアミンから誘導される基:

(式中、x=2およびp=2または3またはx=3およびp=2である)
を60モル%から100モル%の比率で、
b)エチレンジアミンから誘導された上記基(IV)(式中、x=2およびp=1)またはピペラジン:

から誘導される基を0モル%から40モル%の比率で、
c)ヘキサメチレンジアミンから誘導される-NH-(CH2)6-NH-基を0モル%から20モル%の比率で含有する。これらのポリアミノアミン類は、エピハロヒドリン類、ジエポキシド類、二無水物類、またはビス不飽和誘導体から選択される二官能性架橋剤をポリアミノアミドのアミン基あたり0.025から0.35モル添加して架橋するか、または、アクリル酸と、クロロ酢酸と、またはアルカンスルトンと、またはこれらの塩と反応させることによってアルキル化する。
これらの飽和カルボン酸類は好ましくは、6から10の炭素原子を有する酸、たとえばアジピン酸、2,2,4-トリメチル-および2,4,4-トリメチルアジピン酸、またはテレフタル酸、エチレン2重結合を含有する酸類、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸から選択される。
アルキル化において使用されるアルカンスルトンは好ましくは、プロパンスルトンまたはブタンスルトンであり、アルキル化剤の塩類は好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩である。
(4)以下の式で表わされる双性イオンユニット類を含有するポリマ類:

式中、R11は、重合性不飽和基、たとえばアクリラート、メタクリラート、アクリルアミドまたはメタクリルアミド基を示し、yおよびzは1から3の整数を示し、R12およびR13は、H、メチル、エチルまたはプロピルを示し、R14およびR15は、HまたはR14およびR15における炭素数の合計が10を越えないようなアルキル基を示す。
このようなユニットを含有するポリマ類はまた、非双性イオンモノマ類、たとえばジメチル-またはジエチルアミノエチル=アクリラートまたはメタクリラート、またはアルキルアクリラートまたはメタクリラート、アクリルアミドまたはメタクリルアミドまたはビニル=アセタートから誘導されたユニットを含有可能である。
たとえば、メチル=メタクリラート/メチル=ジメチルカルボキシメチルアンモニオエチルメタクリラートコポリマ、たとえば”Sandoz”社から”Diaformer Z 301”の商品名で販売されている製品が挙げられる。
(5)以下の式(D)、(E)、(F)で表わされるモノマーユニットとを含有するキトサンから誘導されたポリマ:

Dユニットは、0から30%、Eユニットは、5から50%、Fユニットは、30から90%の比率で存在し、Fユニットにおいて、R16は、式:

(式中、q=0の場合、R17、R18、R19は同じでも異なっていてもよく、各々、H、メチル、ヒドロキシル、アセトキシ、またはアミノ基、モノアルキルアミン基またはジアルキルアミン基を示し、任意に1以上の窒素原子が介されてもよく、および/または、任意に1以上の、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、アルキルチオまたはスルホン基により置換されてもよく、アルキルチオにおけるアルキル基はアミノ基を含有し、R17、R18、R19の少なくとも1つはこの場合、水素原子であり;
または、q=1の場合、R17、R18、R19は各々、水素原子および塩基または酸とともにこれらの化合物から形成された塩を示す)
で表わされる基を示す。
(6)キトサンのN-カルボキシアルキル化から誘導されたポリマ類、たとえば、”Jan Dekker”社から”Evalsan”の商品名で販売されているN-(カルボキシメチル)キトサンまたはN-(カルボキシブチル)キトサン。
(7)仏国特許1,400,366に記載された次式で表わされるポリマ:

(式中、R20は水素原子またはメトキシ、エトキシ、またはフェニル基を示し、R21は、Hまたは低級アルキル基、たとえばメチルまたはエチルを示し、R22は、Hまたは低級アルキル基、たとえばメチルまたはエチルを示し、R23は、低級アルキル基、たとえばメチルまたはエチル、または式:-R24-N(R22)2(式中、R24は、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、または-CH2-CH(CH3)-基を示し、R22は上記と同様であり、および6までの炭素数を有するこれらの基の高級類似体である)で示される基を示す。
(8)以下から選択される-D-X-D-Xタイプの両性ポリマ類:
a)クロロ酢酸またはクロロ酢酸ナトリウムを式:
-D-X-D-X-D- (VII)
(式中、Dは、基:

で表わされ、XはEまたはE’を表わし、EまたはE’は同じでも異なっていてもよく、ヒドロキシル基によって置換されても置換されていなくてもよく、さらに酸素、窒素またはイオウ原子を含有してもよく、または1から3の芳香族および/またはヘテロ環を含有してもよい、主鎖において炭素数7までの直鎖または分岐のアルキレン基である2価の基を示し;酸素、窒素またはイオウ原子はエーテル、チオエーテル、スルホキシド、スルホン、スルホニウム、アルキルアミンまたはアルケニルアミン基、またはヒドロキシル、ベンジルアミンまたはアミンオキシド、4級アンモニウム、アミド、イミド、アルコール、エステル、および/またはウレタン基の形態で存在する)
で表わされる少なくとも1つのユニットを含有する化合物と反応させることによって得られたポリマ;
b)式: -D-X-D-X- (VII’)
(式中、Dは、基:

で表わされ、XはEまたはE’を表わし、EまたはE’の少なくとも1つは上記と同じであり、E’は主鎖において炭素数7までの直鎖または分岐のアルキレン基である2価の基を示し、該基は、1以上のヒドロキシル基によって置換されても置換されていなくてもよく、1以上の窒素原子を含有し、この窒素原子はアルキル鎖によって置換され、任意に酸素原子が介在し、かならず、クロロ酢酸またはクロロ酢酸ナトリウムとの反応によってベタイン化した1以上のヒドロキシル官能基または1以上のカルボキシル官能基を含有する。
(9)(C1-C5)アルキルビニルエーテル/マレイン酸無水物コポリマ;ここで、マレイン酸無水物は部分的に、N,N-ジアルキルアミノアルキルアミン、たとえばN,N-ジメチルアミノプロピルアミンによるセミアミド化によって、または、N,N-ジアルカノールアミンによるセミエステル化によって、変性されている。これらのコポリマ類はまた、他のビニルコモノマ、たとえばビニルカプロラクタムを含有可能である。
特に好ましい本発明による定着両性ポリマは、上記(3)に属するものであり、たとえば、CTFA名でオクチルアクリルアミド/アクリラート類/ブチルアミノエチルメタクリラートコポリマであり、たとえば”National Starch”社から販売されている商品名”Lovocryl 47”または”Amphomer”が挙げられる。
本発明において使用可能な定着非イオン性ポリマは、たとえば以下のものから選択される。
-特に仏国特許第2,508,795号に記載されたポリ-β-アラニン;
-ポリアルキルオキサゾリン類、たとえば、ポリエチルオキサゾリン類、”Dow Chemical”社から販売されている商品名”PEOX 50,000”、”PEOX 200,000”、および”PEOX 500,000”;
-ビニル=アセタートホモポリマ類、たとえば、”Hoechst”社から販売されている商品名”Appretan EM”、または”Rhone-Poulenc”社から販売されている商品名”Rhodopas A 012”;
-ビニル=アセタートのおよびアクリルエステルのコポリマ類、たとえば、”Rhone-Poulenc”社から販売されている商品名”Rhodopas AD 310”;
-ビニル=アセタートのおよびエチレンのコポリマ類、たとえば”Hoechst”社から販売されている商品名”Appretan TV”;
-ビニル=アセタートのおよびマレイン酸エステルのコポリマ類、たとえば”Hoechst”社から販売されている商品名”Appretan MB Extra”;
-ビニルクロリドホモポリマ類、たとえば”Goodrich”社から販売されている商品名”Geon 460X45”、”Geon 460X46”、および”Geon 577”;
-ポリエチレンワックス、たとえば”Byk Cera”社から販売されている商品名”Aquacer 513”および”Aquacer 533”;
-ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレンワックス、たとえば”R.T.Newey”社から販売の商品名”Wax Dispersion WD-1077”及び”Dres Ameroid”および社から販売の商品名”Drewax D-3750”;
-ポリエチレンおよびマレイン酸無水物のコポリマ類;
-アルキル=アクリラートホモポリマ類、および、アルキル=メタクリラートホモポリマ類、たとえば”BASF”社から販売されている商品名”Luhydran A 848 S”または”Matsumoto”社から販売されている商品名”Micropearl RQ 750”;
-アクリルエステル類のコポリマ類、たとえばアルキル=アクリラート類のおよびアルキル=メタクリラート類のコポリマ類、たとえば”Rohm & Haas”社から販売されている商品名”Primal ACZ 61 K”、”Eudragit NE 30 D”、”BASF”社から販売されている商品名”Acronal 601”または”Luhydraw LR 8833”または”Luhydraw LR 8845”、または、”Hoechst”社から販売されている商品名”Appretan N 9213”または”Appretan N 9212”;
-アクリロニトリルのおよび非イオン性モノマのコポリマ類、たとえばブタジエンおよびアルキル(メタ)アクリラート類から選択されたもの;たとえば”Nippon Zeon”社から販売されている商品名”Nipol LX 531 B”、”Rohm & Haas”社から販売されている商品名”CJ 0601 B”;
-スチレンホモポリマ類、たとえば”Rhone-Poulenc”社から提供されている製品”Rhodopas 5051”;
-スチレンおよびアルキル=(メタ)アクリラートのコポリマ類、たとえば”Hoechst”社から提供されている製品”Mowilith LDM 6911”、”Mowilith DM 611”、および”Mowilith LDM 6070”、”Rhone-Poulenc”社から提供されている製品”Rhodopas SD 215”および”Rhodopas DS 910”、および、”DSM”社から提供されている製品”Uramul SC 70”;
-スチレン、アルキル=メタクリラート、およびアルキル=アクリラートのコポリマ類、たとえば”Wackherr”社から提供されている製品”Daitisol SPA”;
-スチレンおよびブタジエンのコポリマ類、たとえば”Rhone-Poulenc”社から提供されている製品”Rhodopas SB 012”および”Rhodopas SB 153”;
-スチレン、ブタジエン、およびビニルピリジンのコポリマ類、たとえば”Goodrich”社から提供されている製品”Goodrite SB Vinylpyridine 2528X10”および”Goodrite SB Vinylpyridine 2508”;
-ポリウレタン類、たとえば”Rohm & Haas”社から販売されている商品名”Acrysol RM 1020”または”Acrysol RM 2020”、または、”DSM Resins”社から販売されている製品”Uraflex XP 401 UZ”または”Uraflex XP 402 UZ”;
-アルキル=アクリラートのおよびウレタンのコポリマ類、たとえば”National Starch”社から販売されている製品”8538-33”;
-ポリアミド類、たとえば”Rhone-Poulenc”社から提供されている製品”Estapor LO 11”。
非イオン性ポリマのアルキル基は好ましくは、1〜6の炭素原子を有する。
本発明によれば、定着ポリマ類は、好ましくはアニオン性ポリマ類である。
定着ポリマ(類)は、例えば、組成物の全重量に対して、0.01重量%から20重量%までの間、好ましくは0.1重量%から15重量%までの間、さらに好ましくは0.5重量%から10重量%までの間の濃度で存在する。
化粧品としてまたは皮膚科学用に許容される媒体は好ましくは、水、または水と化粧品として許容される溶媒類たとえばモノアルコール類、ポリアルコール類、グリコールエーテル類、または脂肪酸エステル類との混合物からなり、単独でまたは混合物として使用可能である。
特に、低級アルコール類、たとえばエタノール、イソプロパノール、ポリアルコール類、たとえばジエチレングリコール、またはグリコールエーテル類、例えばグリコールのまたはジエチレングリコールのアルキルエーテル類が挙げられる。
本発明の組成物はまた、増粘剤、脂肪酸エステル類、脂肪酸エステル類およびグリセロール、シリコーン類、香料類、防腐剤類、サンスクリーン剤類、蛋白質類、ビタミン類、ポリマ類、動物性油、植物性油、鉱油、合成油から選択される少なくとも1つの添加剤、および、化粧品分野において通常使用されている他の添加剤を含有可能である。
好ましくは、該組成物は、シリコーン、たとえばオイル、レジン、ワックス、またはシリコーンゴムを含有する。
本発明による組成物はまた、1以上の界面活性剤を含有可能である。これらの界面活性剤の濃度および性質は、組成物に洗浄特性を付与しないように、当業者には選択されるものである。好ましくは、該組成物は、アニオン性及び/又は両性および/または双性イオン性洗浄界面活性剤を4重量%よりも少なく含有するものである。
これらの添加剤は、組成物の全重量に対して、0重量%から20重量%までの比率で存在する。各添加剤の正確な量は、その性質に依存するものであり、当業者には容易に定められるものである。
無論、当業者には、本発明による組成物の優位な特性が、これらの添加によって、損なわれないようにまたは本質的に損なわれないように、本発明による組成物に添加されるべき化合物を選択することが可能である。
特に、本発明による組成物は好ましくは、組成物の全重量に対して、10重量%より少ない量で、脂肪物質、たとえばワックス、オイル、パラフィン、炭素数8〜30の脂肪酸エステルを含有する。本発明による組成物で処理されたケラチン繊維は、脂っぽい感じや脂っぽい外観がなく、組成物の定着力は減少しないものである。好ましくは、本発明による組成物は、カチオン性界面活性剤を含まないか、または、実質的に含まないものである。
本発明による組成物は、増粘されてもされなくてもよい、ゲル、ミルク、クリーム、分散物、ローション、またはフォームの形態で提供可能である。
本発明による組成物はたとえば、特に、ヘアースタイル保持用、髪の成形用の、好ましくは洗い流さない製品として使用可能である。
これらは特に、ヘアーセットローション、ブロー乾燥用ローション、定着組成物(ラッカー)、またはヘアースタイリング組成物である。これらのローションは、霧状形態またはフォーム形態で組成物を適用するために、種々の形態、特にベイパライザーまたはポンプタイプのスプレー、またはエアゾール容器に収容されていてもよい。たとえば髪を定着させるためまたはトリートメントするためのスプレーまたはフォーム使用を所望する場合には、このような収容形態が使用される。
本発明による組成物が、スプレーまたはエアゾールフォームを得るべくエアゾールの形態で収容される場合には、少なくとも1つの推進剤を含有し、該推進剤は、揮発性炭化水素類、たとえばn-ブタン、プロパン、イソブタンまたはペンタン、塩化及び/またはフッ化炭化水素類、およびこれらの混合物から選択可能である。二酸化炭素ガス、酸化窒素、ジメチルエーテル、窒素、圧縮空気、およびこれらの混合物も推進剤として使用可能である。
本発明のさらなる主題はまた、髪などのケラチン繊維の非治療のトリートメント方法であって、上記組成物をケラチン繊維に適用することを含有するものである。
以下、本発明を実施例を挙げて例解するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(以下、”AS”とは、活性物質を意味する。)
実施例1
以下の組成のブロー乾燥用ローションを調製する。
- N-オレオイルジヒドロスフィンゴシン(セラミド) 0.02g
- ”ISP”社から販売されている商品名”Gantrez ES 425”、モノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマ
1g AS
- エタノール 50g
- 水 合計 100g
組成物は、セラミドと10gのエタノールを含有する部分Aと、ポリマ、水、およびエタノールの残りを含有する部分Bとを混合することによって、使用時に調製される。
組成物は、洗浄して水気をきった髪に適用し、次いでブロー乾燥する。乾燥した髪はつやがあり、柔軟で、良好なヘアースタイリング特性を有する。髪は完全にブロー乾燥に対して耐性を有する。
実施例2
以下の組成のブロー乾燥用ローションを調製する。
- N-オレオイルジヒドロスフィンゴシン(セラミド) 0.02g
- ”Sandoz”社から商品名”Diaformer Z301”で、エタノール中、30%ASの溶液で販売されている、ブチル=メタクリラートのおよびメタクリロイルエチル-N,N-ジメチルカルボキシメチルベタインのコポリマ
1g AS
- エタノール 50g
- 脱イオン水 合計 100g
組成物は、実施例1と同様に調製して適用する。乾燥した髪はつやがあり、柔軟で、良好なヘアースタイリング特性を有する。髪は完全にブロー乾燥に対して耐性を有する。
実施例3
以下の組成のブロー乾燥用ローションを調製する。
- N-オレオイルジヒドロスフィンゴシン(セラミド) 0.02g
- ”ISP”社から販売されている商品名”Gantrez ES 425”、モノエステル化マレイン酸無水物/メチルビニルエーテルコポリマ
1g AS
- ”National Starch”社から商品名”Celquat L200”で販売されている、ヒドロキシエチルセルロースおよび塩化ジアリルジメチルアンモニウムのコポリマ
0.5g
- エタノール 50g
- 脱イオン水 合計 100g
組成物は、実施例1と同様に調製して適用する。乾燥した髪はつやがあり、柔軟で、良好なヘアースタイリング特性を有する。髪は完全にブロー乾燥に対して耐性を有する。
実施例4
以下の組成のブロー乾燥用ローションを調製する。
- N-オレオイルジヒドロスフィンゴシン(セラミド) 0.02g
- ”BASF”社から販売されている商品名”Aristoflex A”、ビニル=アセタート/クロトン酸/ポリエチレングリコールのターポリマ
1g AS
- 35%ASの、”Dow Corning”社から商品名”DC 929”で販売されている、アモジメチコーン
0.5g AS
- エタノール 17.2g
- 脱イオン水 合計 100g
組成物は、実施例1と同様に調製して適用する。乾燥した髪はつやがあり、柔軟で、良好なヘアースタイリング特性を有する。髪は完全にブロー乾燥に対して耐性を有する。
比較テスト
セラミドを除いた以外は、実施例1、2、3、および4とそれぞれ同一の組成を有する、4つの組成物1A、2A、3A、および4Aを調製した。
ブロー乾燥した後のかつらの髪の質量を、各組成物の対で比較する。切れ毛の質量が多い程、組成物が髪をより保護しないものである。
各半かつらを予め、6mlの標準シャンプーで洗浄する。濯いだ後、スポンジタオルで乾燥し、2.4mlの第1製品をピペットで半かつらに適用する。ブロー乾燥する。次いで、2.4mlの第2製品を第2の半かつらに適用してブロー乾燥する。
ブロー乾燥は、”Centaure 3940”ブラシと”Mega sprint bi-turbo 1500”ヘアードライヤ(セッティング2および2)を用いて、美容師が行う。各ブロー乾燥後、ブラシに残った髪を回収し、重量を計り、髪の質量を、各テスト組成物に対して比較する。
結果を以下の表に纏める。

組成物(1,1A)、(2,2A)、(3,3A)、(4,4A)の各対に対して、ブロー乾燥後にブラシに残った髪の質量は、実質的に、セラミドを含有する本発明による組成物1、2、3、4の場合、減少していることがわかる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-03-09 
結審通知日 2004-03-12 
審決日 2004-03-23 
出願番号 特願平9-516356
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 小柳 正之
森田 ひとみ
登録日 2000-08-04 
登録番号 特許第3095420号(P3095420)
発明の名称 少なくとも1つの定着ポリマおよび少なくとも1つのセラミドタイプの化合物を含有するケラチン繊維のトリートメント用組成物およびその方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  

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