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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1105042
審判番号 不服2001-6322  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-20 
確定日 2004-10-12 
事件の表示 平成 4年特許願第124196号「舶用機関用高圧燃料噴射管」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年11月 9日出願公開、特開平 5-296121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成4年4月17日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年7月16日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認められる。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】両側端部に接続頭部と該接続頭部の背後に締付けナットを組込んだ噴射管本体の外周側に、それぞれ別体からなる外管を相対する端面間に間隔を保持して軸方向への移動可能に被着重合し、且つこれら相互の外側端部附近をシールリング部材を介在して前記締付けナットと係合せしめ、更に前記外管相互の内側端部附近に跨って短寸状の連結筒体を嵌合、架設して構成した高圧燃料噴射管において、前記連結筒体として、一端の内周面に膨出加工にて形成した環状凹溝を有する構造のものを用い、前記環状凹溝にシールリング部材を嵌合、配置して構成したことを特徴とする舶用機関用高圧燃料噴射管。」

2.引用文献記載の発明
2-1.引用文献1記載の発明
(1)当審において平成16年5月17日付けで通知した拒絶の理由に引用された実願昭50-66100号(実開昭51-145415号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「本考案は上記問題点を解決するため高圧管の両端ジョイント部を含む全体を完全に被覆し、燃料が例え高圧管のどの部分から霧状に噴出した場合でもこれを検出して警報等を出せるようにしたものである。次に図面により説明する。図中1は高圧管(燃料噴射管)、2、13は高圧管1の両端部に設けたジョイント部、3は燃料噴射ポンプ4のジョイント部、5は袋ナットである。袋ナット5はジョイント部3の外周部に設けた雄ねじに螺合し、座金6を介してジョイント部2をジョイント部3に締付け、双方の燃料通路7、8を液密を保持して接続している。高圧管1の他端のジョイント部13も同様に袋ナット9により燃料噴射弁10のジョイント部11に締付け固定されている。12は座金である。以上説明した各部は従来から一般に具備されている。その場合燃料が漏出する可能性のある場所は高圧管1上の傷、ピンホール、クラックのある部分及びジョイント部2、3、13、11の間であり、本考案によるとこれらの部分が袋ナットと被覆管により完全に被われている。15、16は2分割された被覆管で、同じく被覆管の働きをする継手17により接続されている。被覆管15の下端には円筒ピース18がろう付けされ、ピース18はOリング19を介して袋ナット5の筒状部20に嵌合している。筒状部20はOリング19の溝21を有する。被覆管15と高圧管1の間の環状断面の空間22は、筒状部20内の室23に開口している。」(明細書2頁2行から3頁9行)

イ.「39は袋ナットで、継手17の雄ねじに螺合している。40は被覆管押えである。被覆管16の端部に固定した円筒ピース41はOリング42を介して袋ナット9の筒状部に嵌合し、筒状部43内の室44はきり孔45を介してジョイント部11の上方の室46に連通している。被覆管15、16は例えばアルミ製で、高圧管ジョイント部2、13を成形後、高圧管1と被覆管16を同時に曲管できる程度の僅かな隙間(空間22)を有する。図示の例に於て被覆管15、16を分割したのは、高圧管ジョイント部2、13を成形可能とするためで、L1はジョイント部成形時、被覆管15、16を待避させるための距離である。被覆管継手17は被覆管15、16のない部分(L1)を被覆するための部材で、被覆管15、16の外周を自由にスライドすることができる。」(明細書3頁20行から4頁15行。審決注「待避」は「退避」の誤り。)

ウ.「本考案の効果を列記すると、(1)高圧管のクラック発生等による燃料の外気への霧状噴出に起因する火災を確実に防止することができる。・・・
(3)船舶用エンジンに適用する場合は船舶の無人化を図ることができ、・・・
(5)被覆管は高圧管成形前に挿入しておく必要があるが、図示の構造を採用すると成形必要長さ(L1)の確保と、継手17部分のシールが確実になる利点がある。」(明細書6頁3行から18行)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしウ.及び図面から、次のことがわかる。
1は高圧管(燃料噴射管)、2、13は高圧管1の両端部に設けたジョイント部、3は燃料噴射ポンプ4のジョイント部、5は袋ナットである。袋ナット5はジョイント部3の外周部に設けた雄ねじに螺合し、座金6を介してジョイント部2をジョイント部3に締付け、双方の燃料通路7、8を液密を保持して接続している。高圧管1の他端のジョイント部13も同様に袋ナット9により燃料噴射弁10のジョイント部11に締付け固定されている。15、16は2分割された被覆管で、同じく被覆管の働きをする継手17により接続されている。被覆管15の下端には円筒ピース18がろう付けされ、ピース18はOリング19を介して袋ナット5の筒状部20に嵌合している。筒状部20はOリング19の溝21を有する。39は袋ナットで、継手17の雄ねじに螺合している。40は被覆管押えである。被覆管16の端部に固定した円筒ピース41はOリング42を介して袋ナット9の筒状部に嵌合している。被覆管15、16を分割したのは、高圧管ジョイント部2、13を成形可能とするためで、L1はジョイント部成形時、被覆管15、16を退避させるための距離である。被覆管継手17は被覆管15、16のない部分(L1)を被覆するための部材で、被覆管15、16の外周を自由にスライドすることができる。
図面及び上記記載事項ア.、イ.から、高圧管ジョイント部2、13の背後に袋ナット5、9を組込んでおり、高圧管1の外周側にそれぞれ別体からなる被覆管15、16を被着重合していることがわかる。また、上記記載事項ウ.から、船舶用エンジンに適用する高圧管(燃料噴射管)であることがわかる。

(3)引用文献1記載の発明
上記記載事項(2)より、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「両側端部に高圧管ジョイント部2、13と高圧管ジョイント部2、13の背後に袋ナット5、9を組込んだ高圧管1の外周側に、それぞれ別体からなる被覆管15、16を相対する端面間に被覆管15、16のない部分L1を保持して軸方向への移動可能に被着重合し、且つこれら相互の外側端部に固定した円筒ピース18、41をOリング19、42を介在させて袋ナット5、9と係合せしめ、更に被覆管15、16相互の内側端部附近に跨って被覆管継手17を嵌合、架設して構成した高圧燃料噴射管において、被覆管押え40を介在させて袋ナット39を被覆管継手17の端部に螺合して構成した船舶用エンジン用高圧燃料噴射管。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

2-2.引用文献2記載の発明
(1)同じく当審において平成16年5月17日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開昭53-62020号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「直管状態をもって形成された燃料噴射管と、この燃料噴射管の両端に設けられ少なくとも一方を球形とした管継手と、前記燃料噴射管の外側を同心状に覆い一定間隔離して取付けられた2本の保護管と、これら2本の保護管の対向する部分を固定支持する支持板とを備えたことを特徴とするディーゼル機関の燃料噴射管。」(1頁下左欄5行から11行)

イ.「第3図は本発明の一実施例を説明するもので、図において符号3で示すものは燃料噴射管で、その外側は同心配置の保護管4、5によつて覆われている。燃料噴射管3の燃料ポンプ側端部は球頭の管継手6が接続され燃料噴射ポンプ7側の取付部8内に挿入され、ボルト9によつて押圧固定されている。球形の管継手6と燃料噴射管3との間推力片10を内側に位置させた袋ナット11によつて結合されている。また、取付部8の側端には密栓12が螺着されている。一方、燃料噴射管3の他端は同じく袋ナット11を介してシリンダカバー13に装着された燃料噴射片14に連結される平頭の管継手15が連結されている。ところで、前記保護管は燃料噴射ポンプ7側の保護管4と、シリンダカバー13側の保護管5とに2分割され両者間はある間隙lをもつて対向配置された状態で支持板16によつて連結固定されている。そして、保護管4、5の支持板16との嵌合部および取付部8、シリンダーカバー13との嵌合部には気密シールするためのOリング17が取付けられている。」(1頁下右欄14行から2頁上左欄15行。審決注、「燃料噴射片14」は「燃料噴射弁14」の誤り。)

ウ.「保護管4、5は燃料噴射管3からの油もれを大気中に飛散さすことなく取付部3中に設けられている図示していないドレン板孔よりドレンタンクに回収する役目を持つている。」(2頁上右欄1行から5行)

(2)ここで、上記記載事項2-2(1)ア.ないしウ.及び第1ないし8図から、次のことがわかる。
燃料噴射管3と、この燃料噴射管3の両端に袋ナット11を介して連結された管継手6、15と、前記燃料噴射管3の外側を同心状に覆い一定間隔(間隙l)離して取付けられた2本の保護管4、5と、これら2本の保護管4、5の対向する部分を固定支持する支持板16とを備えたことを特徴とするディーゼル機関の燃料噴射管であり、保護管4、5の支持板16との嵌合部には気密シールするためのOリング17が取付けられている。

(3)引用文献2記載の発明
上記記載事項(2)より、引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。

「燃料噴射管3の外側を同心状に覆い一定間隔離して取付けられた2本の保護管4、5と、これら2本の保護管4、5の対向する部分を支持する支持板16とを備えたディーゼル機関の燃料噴射管において、保護管4、5の支持板16との嵌合部には気密シールするためのOリング17が取付けられた点。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用文献1記載の発明を対比するに、引用文献1記載の発明における「高圧管ジョイント部2、13」、「高圧管1」、「被覆管15、16のない部分L1」、「Oリング19、42」、「袋ナット5、9」、「被覆管継手17」、「船舶用エンジン」は、本願発明における「接続頭部」、「噴射管本体」、「間隔」、「シールリング部材」、「締付けナット」、「連結筒体」、「舶用機関」にそれぞれ相当する。
さらに、引用文献1記載の発明の「被覆管15、16」と被覆管15、16の「外側端部に固定した円筒ピース18、41」は、外管構成体の限りにおいて、本願発明における「外管」に相当するものといえ、また、引用文献1記載の発明の「被覆管押え40を介在させて袋ナット39を被覆管継手17の端部に螺合し」た構造は、密閉構造の限りにおいて、本願発明における「連結筒体として、一端の内周面に膨出加工にて形成した環状凹溝を有する構造のものを用い、前記環状凹溝にシールリング部材を嵌合、配置し」た構造に相当するものといえる。

したがって、本願発明と、引用文献1記載の発明は、
「両側端部に接続頭部と該接続頭部の背後に締付けナットを組込んだ噴射管本体の外周側に、それぞれ別体からなる外管構成体を相対する端面間に間隔を保持して軸方向への移動可能に被着重合し、且つこれら相互の外側端部附近をシールリング部材を介在して前記締付けナットと係合せしめ、更に前記外管構成体相互の内側端部附近に跨って連結筒体を嵌合、架設して構成した高圧燃料噴射管において、前記連結筒体の一端に密閉構造を設けた舶用機関用高圧燃料噴射管。」である点で一致し、次の相違点で相違している。

(1)相違点1
密閉構造が、本願発明においては、「連結筒体として、一端の内周面に膨出加工にて形成した環状凹溝を有する構造のものを用い、前記環状凹溝にシールリング部材を嵌合、配置し」た構造であるのに対し、引用文献1記載の発明では、「被覆管押え40を介在させて袋ナット39を被覆管継手17の端部に螺合し」た構造である点。
(2)相違点2
外管構成体が、本願発明では、単一の外管であるのに対して、引用文献1記載の発明では、被覆管と被覆管の外側端部に固定した円筒ピースである点。
(3)相違点3
連結筒体が、本願発明では、短寸状であるのに対して、引用文献1記載の発明では、そのような構成がない点。

4.判断
上記相違点1について検討する。
引用文献2記載の発明における「燃料噴射管3」、「保護管4、5」、「Oリング17」は、本願発明の「噴射管本体」、「外管」、「シールリング部材」にそれぞれ相当するものであり、また、引用文献2記載の発明における「支持板」は、保護管4、5相互を連結する限りにおいて、本願発明の「連結筒体」に相当する。したがって、引用文献2記載の発明には、燃料噴射管において、外管と連結筒体との間にシールリング部材を配置する技術思想が示されている。また、引用文献2記載の発明はディーゼル機関の燃料噴射管に関するものであり、引用文献1記載の発明と同一の技術分野に属するものである。
さらに、シールリング部材を環状凹溝に嵌合配置することは慣用手段であり、また、環状凹凸部を膨出加工にて形成することは周知にすぎない。(例、特開平3-94927号公報の第4図等、特開昭64-46086号公報)
したがって、引用文献1記載の発明における密閉構造として、引用文献2記載の発明の上記技術思想および上記周知慣用手段を適用して、上記相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のものと認められる。
また、上記相違点2について、引用文献1記載の発明の、被覆管と被覆管の外側端部に固定した円筒ピースを、単一の被覆管で構成して外管構成体とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であり、上記相違点3についても、引用文献1記載の発明の被覆管継手を短寸状とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

以上のように、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明の上記技術思想、及び上記周知慣用手段に基づいて、当業者が容易に想到することができたものと認められ、しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明の上記技術思想、及び上記周知慣用手段から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明の上記技術思想、及び上記周知慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-18 
結審通知日 2004-08-19 
審決日 2004-08-31 
出願番号 特願平4-124196
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小椋 正幸久保 竜一  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 亀井 孝志
長谷川 一郎
発明の名称 ディーゼル機関用高圧燃料噴射管  
代理人 押田 良輝  

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