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審決分類 審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1105131
審判番号 不服2004-9478  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-06 
確定日 2004-10-14 
事件の表示 特願2003- 29772「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月25日出願公開、特開2003-270898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月7日に出願した特願平11-99724号の一部を平成15年2月6日に新たな特許出願としたもので、請求項1ないし8に係る発明は、平成16年6月7日付け手続補正書によって補正された明細書または図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであり、特に請求項1に係る発明は次のとおりのものである。以下、[本願発明1]という。
なお、請求項1に係る発明は出願当初から補正されていないので、審判請求時の補正である平成16年6月7日付け手続補正の適否については検討しない。
「【請求項1】
本体と、重畳的な配列で前記本体に着脱可能に装着される複数の作像カートリッジとを有しこれらの作像カートリッジが前記本体に装着された状態のもとで作像手段により感光体に画像形成を行う画像形成装置であって、
前記作像カートリッジに前記感光体が予め支持されている構成又は、前記本体に感光体が予め支持されていて前記作像カートリッジを前記本体に装着したときに前記感光体に対し前記作像カートリッジに予め支持されている前記作像手段の一部が前記感光体に当接した状態となる構成を有する画像形成装置において、
前記複数の作像カートリッジの片側であって前記感光体のある作像部分とは反対側の空間位置に前記重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材を設けたことを特徴とする画像形成装置。」

2.本願の出願日について
上の1.でも述べたように、本願は、平成11年4月7日に出願した特願平11-99724号の一部を平成15年2月6日に新たな特許出願としたいわゆる分割出願であるから、その分割が適法なものであったかについて検討する。
[特許庁編「特許・実用審査基準」、第V部、特殊な出願、第1章 出願の分割]によると、その[2.2.1.実体的要件]として「[3]分割出願の明細書又は図面が、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含まないこと」を挙げている。
そこで原査定においても指摘している、本願分割出願の明細書記載事項である上記本願発明1が、原出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載された事項の範囲内のものであるかについて検討する。
(1)この点に関する原査定の判断
平成16年3月30日付け拒絶査定の判断は、「出願人がその主張の根拠にしているのは、原出願の出願当初の明細書の発明の詳細な説明の段落0133の「(八)請求項23に対応する例」から段落0135の「またバンディングの防止上有効である。」までに記載された実施例である。この実施例は、段落0133の「本例は、図34で示した構成の書き込みユニット100の画像形成装置への取り付方に関する。」という記載、段落0135の「本例では、構造部材92が・・・一体的に固定されているので本体22全体の剛性が増し、また書き込みユニット100は構造部材92に取り付けられているので、またバンディングの防止上有効である。」という記載、及び、段落0165の「書き込みユニットが本体に固定された構造部材に取り付けられているので、本体の剛性が増し、バンディングの防止上有効である。」という記載から明らかなように、「構造物92」に書き込みユニットを取り付けることを前提にしている。そして、書き込みユニットとは関係なく、「構造物92」だけを設けることは、記載も示唆もされていない。
一方、この出願の請求項1に係る発明及び請求項9に係る発明は、いずれも、書き込みユニットとは関係なく、「構造物92」に相当する「平板状の構造部材」又は「垂直ステー」を設けるものである。したがって、この出願の明細書が、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内でないものを含んでいることは、明らかである。」
というものである。
(2)当審の判断
当初明細書には、その発明の詳細な説明の段落【0041】以降に【課題を解決するための手段】として、まず「そこで本発明は、作像カートリッジや、光書き込み手段の振動に起因するバンディングの発生を防止することのできる画像形成装置を提供する事を目的とする。」とあり、続いて特許請求の範囲の各請求項の記載と概略同じ内容が再記され、さらに段落【0044】以降に 【発明の実施の形態】として各請求項に対応する実施の形態が説明され、段落【0146】以降に【発明の効果】として各請求項に対応する効果が記載されている。
そこで、当初明細書において、本願発明1の「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けた平板状の構造部材」に対応する構成を含んでいる請求項は、請求項5、請求項11、請求項12、請求項23及びそれらの請求項を引用する請求項である。
請求項5は「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けられた平板状の構造部材」と作像カートリッジ仕切用の構造部材とを連接する構成を有するものであり、その効果も「作像カートリッジ取付近傍の剛性向上による防振」(段落【0150】参照)であり、
請求項11は「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に本体に固定された平板状の構造部材」と光書き込み手段仕切用の構造部材とを連接する構成を有するものであり、その効果も「本体の強度を高めることができるとともに光書き込み手段自体の振動抑制機能を高めることができ、バンディングを高精度に抑制することができる。」であり、
請求項12は「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行にその一部が本体に固定された平板状の構造部材」と、光書き込み手段仕切用の構造部材及び作像カートリッジ仕切用の構造部材とを連接する構成を有するものであり、その効果も「作像カートリッジ仕切り用の複数の構造部材、光書き込み手段仕切り用の複数の構造部材、共通構造体、及び本体が相互に組み合わされて一体的な構造体となり相乗的に全体の剛性が増し、バンディングの防止を図ることができる。」であり、
請求項23は「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行にその一部が本体に固定された平板状の構造部材」を書き込みユニット支持用の構造部材とするものであり、その効果も「書き込みユニットが本体に固定された構造部材に取り付けられているので、本体の剛性が増し、バンディングの防止上有効である。」である。
請求項5、請求項11、請求項12において「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けられた平板状の構造部材」は、いずれも作像カートリッジ仕切用の構造部材又は光書き込み手段仕切用の構造部材あるいはそれら両方の構造部材と連接される構成として説明されており、このことは「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けられた平板状の構造部材」が作像カートリッジ仕切用の構造部材や光書き込み手段仕切用の構造部材と共働して、作像カートリッジや光書き込み手段を装着する本体の装着部の剛性を増加させるものとして説明されている。
このことは上記当初明細書の「そこで本発明は、作像カートリッジや、光書き込み手段の振動に起因するバンディングの発生を防止することのできる画像形成装置を提供する事を目的とする。」とも合致する。
請求項23において「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けられた平板状の構造部材」は、その構造部材に書き込みユニットをユニットを支持することによって前記目的を実現するものとして説明されている。
ところが、本願発明1は、バンディング発生原因である作像カートリッジや光書き込み手段あるいは書き込みユニット等とは無関係に、単に「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材」を設けたというものであり、そのような発明が当初明細書に記載されていたとすることはできない。
ここで、審判請求人は審判請求書において、
「当初明細書の段落[0135]の記載中の構造部材に書き込みユニットを取り付ける構成は、構造部材92が前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定されて装置全体の剛性を増した後に、書き込みユニットを取り付けるように構成したことにより、「バンディングの防止上有効」としているのであり、本願発明としては、書き込みユニットを構造部材に取り付けるということは、必ずしも必須の構成ではありません。
つまり、当初明細書の段落[0135]にあるように、「構造部材92が前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定されている」ことで、装置構造体の剛性を向上させるという優れた効能があることは明らかです。
このように、本願請求項1で規定している構造部材92は、それだけで本体全体の剛性が増すという技術的な意味をもち、構造部材92に更に書き込みユニット100が取り付けられていることを必須とするものではなく、このことは当初明細書に開示されているとおりです。
そもそも本願発明は、[発明が解決しようとする課題](段落番号[0042])に記載のとおり、「作像カートリッジや、光書き込み手段の振動に起因するバンディングの発生を防止することのできる画像形成装置を提供する事」を目的としております。そして、その課題を解決するために、「装置本体に「構造部材」を設けることにより、装置全体の剛性を増すように構成したのです(段落番号[0135])。そして、結果として、上述の目的である「振動に起因するバンディングの発生」を解決できたのです。」
と主張しているので検討する。
まず、審判請求人が根拠としている当初明細書の段落【0133】〜【0135】には
「本例は、図34で示した構成の書き込みユニット100の画像形成装置への取り付方に関する。本例では、図35、図36に示すように、上下方向に重畳的に配列された作像カートリッジ4、5、6、7の配列方向、つまり上下方向に合わせて、平板状をした書き込みユニット支持用の構造部材92を配置している。この構造部材92は前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22fにそれぞれ固定されている。この構造部材90には書き込みユニット100を取り付けるための4つの台座90aが形成されている。書き込みユニット100は、これらの台座92aを利用して取り付け手段としてのボルト94により取り付けられている。このような取り付け態様により、書き込みユニット100と感光体8K、8C、8M、8Yとの距離を一定に保持される。なお、台座92aを設けない構成とすることもできる。本例では、構造部材92が前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定されているので本体22全体の剛性が増し、また書き込みユニット100は構造部材92に取り付けられているので、またバンディングの防止上有効である。」
と記載されている。
ここでは構造部材90は書き込みユニット100の支持用として説明されており、書き込みユニット100を構造部材90ではない、例えば本体22に直接装着するような構成も含みうるものとして説明されているわけではない。
審判請求人は「その課題を解決するために、「装置本体に「構造部材」を設けることにより、装置全体の剛性を増すように構成したのです(段落番号[0135])。そして、結果として、上述の目的である「振動に起因するバンディングの発生」を解決できたのです。」と主張するが、そもそも本願発明1は「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けた平板状の構造部材を設けた」と規定するだけで、本体との具体的な結合関係を規定していないから、例えば平板状構造部材を本体22の天板22e又は底板22fとあるいは両方とだけ結合したものも含むことになり、このような構成は本体22の剛性、特に作像ユニットや光書き込み手段等を装着するための前側板22aや後側板22bの剛性を増加させる効果も僅かであり、「装置全体の剛性を増すように構成した」との請求人の主張と合致しない構成を含むことになる。
また、本願発明1は、「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けた平板状の構造部材」を書き込みユニットや光書き込み手段仕切用の構造部材と連接することを規定していないので、本願発明1は、光書き込み手段が作像カートリッジ側に、あるいはそれと一体に設けられていて(例えば原査定の拒絶の理由に引用した特開平11-84883号公報参照)、「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けた平板状の構造部材」が書き込みユニットを支持することのできない構成を含むことになる。
このように本願発明1は「複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に設けた平板状の構造部材」を作像カートリッジや光書き込み手段と無関係な構造として規定した結果、請求人の意図とは離れて上記のような構成の発明を含むことになり、このような発明が上記当初明細書の段落【0133】〜【0135】に記載されていたとすることはできないから、審判請求人の主張は採用できない。
以上のことから、本願発明1は当初明細書に記載された発明ではないから、本願は特許法第44条第1項に規定する要件を満たしておらず、適法な分割出願とすることができない。
したがって、本願の出願日は、現実の出願日である平成15年2月6日である。

3.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2000-35702号公報、公開日平成12年2月2日)には次のような技術的事項が図面と共に記載されている。
「(八)請求項23に対応する例
本例は、図34で示した構成の書き込みユニット100の画像形成装置への取り付方に関する。
本例では、図35、図36に示すように、上下方向に重畳的に配列された作像カートリッジ4、5、6、7の配列方向、つまり上下方向に合わせて、平板状をした書き込みユニット支持用の構造部材92を配置している。この構造部材92は前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22fにそれぞれ固定されている。
この構造部材90には書き込みユニット100を取り付けるための4つの台座90aが形成されている。書き込みユニット100は、これらの台座92aを利用して取り付け手段としてのボルト94により取り付けられている。このような取り付け態様により、書き込みユニット100と感光体8K、8C、8M、8Yとの距離を一定に保持される。なお、台座92aを設けない構成とすることもできる。
本例では、構造部材92が前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定されているので本体22全体の剛性が増し、また書き込みユニット100は構造部材92に取り付けられているので、またバンディングの防止上有効である。」(段落【0133】〜【0135】参照)

以上の記載を対比のためにまとめると、引用文献1には次のような発明が図面とともに記載されている。
「本体22と、重畳的な配列で本体22に着脱可能に装着される複数の作像カートリッジ4〜7とを有しこれらの作像カートリッジが本体に装着された状態のもとで作像手段により感光体に画像形成を行う画像形成装置であって、作像カートリッジ4〜7に感光体8K、8C、8M、8Yが予め支持されている構成を有する画像形成装置において、
書き込みユニット100と感光体8K、8C、8M、8Yとの距離を一定に保持するために、複数の作像カートリッジの片側であって感光体のある作像部分とは反対側の空間位置に複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材92を本体22の前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定して設け、その平板状の構造物92に書き込みユニット100を支持した画像形成装置。」

4.対比
本願発明1を引用文献1記載の発明と対比すると、引用文献1記載の発明も「複数の作像カートリッジの片側であって感光体のある作像部分とは反対側の空間位置に複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材」が設けられているから、両者間には次のような一致点、相違点がある。
(一致点)
本体と、複数の作像カートリッジの重畳的な配列で前記本体に着脱可能に装着される複数の作像カートリッジとを有しこれらの作像カートリッジが前記本体に装着された状態のもとで作像手段により感光体に画像形成を行う画像形成装置であって、
作像カートリッジに感光体が予め支持されている構成を有する画像形成装置において、複数の作像カートリッジの片側であって前記感光体のある作像部分とは反対側の空間位置に前記複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材を設けた画像形成装置。
(相違点)
本願発明1は複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材を設けただけであるのに対して、引用刊行物1記載の発明は複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材を本体22の前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定して設けるとともに、その平板状の構造物に書き込みユニット100を支持している点
(相違点の検討)
本体22の前側板22a、後側板22b、天板22e、底板22f等と一体的に固定して設けるとともに、書き込みユニット100を支持する平板状の構造部材を、書き込みユニット100や本体22とは切り離して単に複数の作像カートリッジの重畳的な配列方向と平行に平板状の構造部材を設けると上位概念の発明として規定することは、当業者が容易に考えつくことができた変更である。
したがって、本願発明1は引用例1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のことから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-10 
結審通知日 2004-08-17 
審決日 2004-08-30 
出願番号 特願2003-29772(P2003-29772)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 03- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀史  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 山下 喜代治
井出 和水
発明の名称 画像形成装置  
代理人 樺山 亨  
代理人 本多 章悟  

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