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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F
管理番号 1105135
審判番号 不服2003-18007  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-17 
確定日 2004-10-14 
事件の表示 特願2000-164886「冷媒蒸発器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月22日出願公開、特開2001-324290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年6月1日(優先権主張平成11年6月4日、平成11年7月9日、平成12年3月9日)の出願であって、平成15年7月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月2日付で手続補正がなされたものである。
2.平成15年10月2日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月2日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】内部に冷媒通路を有するアルミニウム製のチューブ(2〜5、30)を多数積層し、前記チューブ(2〜5、30)間を通る空気との伝熱面積を増加させるアルミニウム製のコルゲートフィン(19)を前記チューブ(2〜5、30)間に介在させた冷媒蒸発器において、前記チューブ(2〜5、30)の板厚TTを、0.1≦TT≦0.30mmに設定し、前記チューブ(2〜5、30)の積層方向の寸法であるチューブ高さTHを、1.5≦TH≦3.0mmに設定したことを特徴とする冷媒蒸発器。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「チューブ(2〜5、30)の板厚TTを、0.1≦TT≦0.35mmに設定し、」を「チューブ(2〜5、30)の板厚TTを、0.1≦TT≦0.30mmに設定し、」とし、チューブの板厚の設定範囲をさらに限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができたものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(2)引用例等
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-167578号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】フィンと熱交換媒体の流路が形成されたチューブエレメントとが交互に積層されている積層型熱交換器において、前記フィンの通風方向の巾FW、前記フィンの板厚FT、前記フィンのピッチFP、前記フィンの高さFH、前記チューブエレメントの厚みTWが、50mm≦FW≦65mm
0.06mm≦FT≦0.10mm
2.5mm≦FP≦3.6mm
7.0mm≦FH≦9.0mm
2.0mm≦TW≦2.7mm
の関係を満たしていることを特徴とする積層型熱交換器。」(【特許請求の範囲】)
ロ.「第1図において、積層型熱交換器1は、例えば、フィン2とチューブエレメント3とを交互に複数段に積層した例えば片側のみにタンクを有する4パス方式のエバポレータであり、」(段落【0008】)
ハ.「成形プレート4は、厚さ0.25mm乃至0.45mm、好ましくは、0.4mmのアルミニウム製のプレートをプレス加工して形成されているもので、図2にも示されるように、一端に椀状の2つのタンク形成用膨出部8,8が形成されると共に、これに続いて通路形成用膨出部9が形成されており、この通路形成用膨出部9に2つのタンク形成用膨出部8,8の間から成形プレートの他端近傍まで延びる突条10が形成されている。」(段落【0009】)
ニ.「前記フィン2は、チューブエレメント3の通路形成用膨出部9の外面にろう付されたコルゲート状のもので、図4に示されるように、通風方向の巾をFW、板厚をFT、フィンのピッチをFP、フィンの高をFHとすると、50mm≦FW≦65mm、0.06mm≦FT≦0.10mm、2.5mm≦FP≦3.6mm、7.0mm≦FH≦9.0mmの関係を満たしている。また、チューブエレメント3の厚みTWは、2.0mm≦TW≦2.7mmの関係を満たしている。」(段落【0013】)
以上の記載によれば、引用例には、熱交換媒体の流路が形成されたアルミニウム製のチューブエレメントとコルゲート状のフィンとが複数段交互に積層されているエバポレータにおいて、成形プレートの厚さを0.25mm乃至0.45mmに設定し、チューブエレメントの厚みTWを、2.0mm≦TW≦2.7mmに設定したエバポレータ(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。
本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第98/50745号パンフレット(1998)(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
・第1図から第3図に示された偏平管型蒸発器の全ての部品は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金から成り、部品は硬はんだ付けされていること。 (第6頁第2〜5行)・偏平管の幅(d)が2mm以下である偏平管型蒸発器。(特許請求の範囲第6項)
・偏平管の幅(d)が1.5mm以上である偏平管型蒸発器。(特許請求の範囲第9項)
・偏平管の肉厚(w)が0.25mm以下である偏平管型蒸発器。(特許請求の範囲第12項)
・偏平管の肉厚(w)が0.2mm以上である偏平管型蒸発器。(特許請求の範囲第13項)
同じく、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭56-155391号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
・「なお、チューブ1cは黄銅もしくはアルミニウム製の条材(例えば板厚0.13mm)を第2図に示すように偏平形状に成形してなり、」(第2頁左下欄第4〜6行)
・「また、コルゲートフィン1eは銅もしくはアルミニウム製の・・・(中略)・・・波型成形してなり、」(第2頁左下欄第9〜12行)
・「なお、第8図及び第9図図示の結果は、チューブの厚さBを2mmとし、・・・(中略)・・・したものである。」(第4頁右下欄第3〜5行)
(3)対比・判断
本願補正発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「熱交換媒体」は本願補正発明の「冷媒」に、以下同様に、「流路」は「通路」に、「チューブエレメント」は「チューブ」に、「複数段交互に」は「多数」に、「コルゲート状のフィン」は「コルゲートフィン」に、「チューブエレメントとコルゲート状のフィンが複数段交互に積層され」は「コルゲートフィンをチューブ間に介在させ」に、「エバポレータ」は「冷媒蒸発器」に、 「成形プレートの厚さ」は「チューブの板厚」に、「チューブエレメントの厚み」は「チューブ高さ」に、それぞれ相当している。
そして、引用例発明において、チューブエレメントに形成される流路は、チューブエレメントの内部に設けられるものであること、コルゲート状のフィンは、チューブエレメント間を通る空気との伝熱面積を増加させるためのものであることは、それぞれ当業者にとって、自明の事項である。
また、引用例発明において、成形プレートの厚さを0.25mm乃至0.45mmに設定し、チューブエレメントの厚みTWを、2.0mm≦TW≦2.7mmに設定した点は、本願発明において、チューブの板厚TTを、0.1≦TT≦0.30mmに設定し、チューブの積層方向の寸法であるチューブ高さTHを、1.5≦TH≦3.0mmに設定した点と、それぞれ、その設定範囲が重複するものであるから、この点において、両者は、実質的に一致しているといえる。
したがって、両者は、内部に冷媒通路を有するアルミニウム製のチューブを多数積層し、前記チューブ間を通る空気との伝熱面積を増加させるコルゲートフィンを前記チューブ間に介在させた冷媒蒸発器において、前記チューブの板厚TTを、0.1≦TT≦0.30mmに設定し、前記チューブの積層方向の寸法であるチューブ高さTHを、1.5≦TH≦3.0mmに設定したことを特徴とする冷媒蒸発器の点で一致し、次の点で相違している。
本願補正発明は、コルゲートフィンをアルミニウム製としているのに対し、引用例発明は、コルゲートフィンの材質についての記載がない点。
そこで、上記相違点について検討する。
当該技術分野において、コルゲートフィンをアルミニウム製とした点は、本願出願前、周知の技術(「周知例1」、「周知例2」参照。)であって、引用例発明におけるコルゲートフィンをアルミニウム製とした点は、当業者であれば、周知技術に基づいて、容易に想到し得たことである。
したがって、本願補正発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
なお、請求人は、審判請求書において、「しかるに、引用文献1のものでは、成形プレート4の厚さが本願の請求項1の発明によるチューブ板厚TTの上限値(0.30mm)を上回る範囲(0.31〜0.45mm)となっており、このような範囲では本願図7に示すように伝熱量が急激に低下してしまう。このように、本願の請求項1の発明では、チューブ板厚TTを0.1mmないし0.30mmの範囲に設定している点で引用文献1と技術的思想が明確に相違しており、且つ、本願の請求項1の発明によるチューブ板厚の数値限定の考え方を示唆する記載も引用文献1には全く認められない。よって、本願の請求項1の発明は引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。」(第2頁第26〜33行)と主張している。
しかし、周知例1、周知例2に示したように、チューブ板厚を0.3mmを上回らない範囲とした値は通常の範囲のものである。そして、このような構成とすることが、特許請求の範囲の記載から把握される本願発明の構成と技術的意義を異にするものともいえない。よって、請求人の上記主張は、採用できない。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
3.本願発明について
平成15年10月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年6月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】内部に冷媒通路を有するアルミニウム製のチューブ(2〜5、30)を多数積層し、前記チューブ(2〜5、30)間を通る空気との伝熱面積を増加させるアルミニウム製のコルゲートフィン(19)を前記チューブ(2〜5、30)間に介在させた冷媒蒸発器において、前記チューブ(2〜5、30)の板厚TTを、0.1≦TT≦0.35mmに設定し、前記チューブ(2〜5、30)の積層方向の寸法であるチューブ高さTHを、1.5≦TH≦3.0mmに設定したことを特徴とする冷媒蒸発器。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における 「チューブ(2〜5、30)の板厚TTを、0.1≦TT≦0.30mmに設定し、」を「チューブ(2〜5、30)の板厚TTを、0.1≦TT≦0.35mmに設定し、」とし、チューブ板厚の上限値を拡張したものである。
そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに、チューブの板厚の上限値を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-10 
結審通知日 2004-08-17 
審決日 2004-08-30 
出願番号 特願2000-164886(P2000-164886)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F28F)
P 1 8・ 575- Z (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 岡本 昌直
櫻井 康平
発明の名称 冷媒蒸発器  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  

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