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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1105143
審判番号 不服2002-4290  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-13 
確定日 2004-10-14 
事件の表示 平成 8年特許願第249609号「相談先端末接続方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月14日出願公開、特開平10- 97571〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年9月20日の出願であって、平成14年2月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月12日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年4月12日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年4月12日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項6は、
「相談者の利用する端末装置に接続できる対応可能な相談員の利用する端末装置がなく、前記相談者の利用する端末装置を相談者の相談を受ける無人端末装置に接続した場合に、前記無人端末装置が前記相談者の相談を受けている間に、前記相談員の利用する端末装置が接続可能となることを監視する機能と、
接続可能になった場合に、前記無人端末装置に蓄積された接続切り替えまでに前記無人端末装置が受けた相談途中の相談内容を、接続先の前記相談員の利用する端末装置に送信させるために、前記相談者の利用する端末装置の接続先を、前記無人端末装置から相談員の利用する端末装置への切り替える指示をする機能を備えた計算機。」
と補正された。
(2)上記補正についての検討
上記補正によって、補正前の特許請求の範囲の請求項6は、
イ):「前記無人端末装置が前記相談者の相談を受けている間に、」が追加され、
ロ):「のやり取り」が「に前記無人端末装置が受けた相談途中の相談内容」と変更された。
そこで、上記補正が、まず、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するか否かについて、以下検討する。
上記ロ)について、一般的に解釈するならば、「やり取り」は、対話(相談)の進行とともに行われた時系列的な質疑応答を意味し、(無人端末装置が受けた相談途中の)「相談内容」は、相談の主題(テーマ)を意味し、両者は異なる概念であるから、発明特定事項の限定ではない。また、両者を発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しつつ解釈した場合、【0014】において、「やり取り」は(問い合わせ及び回答)と記載されており、図14における「相談質問データ33102」及び「相談回答データ33103」に相当する。一方、「相談内容」は、図14における「相談内容3304」に相当するから、異なる領域に記録された異なる内容のデータである。よって、この場合も発明特定事項の限定には当たらない。(なお、発明の詳細な説明及び図面の記載では、無人端末装置から相談員端末装置に送信されるのは「相談引継コード33201」及び「相談引継データ33202」であるのに、請求項1,6の記載では「相談内容」と記載されており、対応していない。)
以上のように、いずれに解釈したとしても、上記ロ)を含む請求項6の上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
そして、上記補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないことは、明らかである。
よって、請求項6の上記補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しないので、同項の規定に違反しているものと認められ、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
平成14年4月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年9月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「相談者の利用する端末装置に接続できる対応可能な相談員の利用する端末装置がなく、前記相談者の利用する端末装置を相談者の相談を受ける無人端末装置に接続した場合に、前記相談員の利用する端末装置が接続可能となることを監視する機能と、
接続可能になった場合に、前記無人端末装置に蓄積された接続切り替えまでのやり取りを、接続先の前記相談員の利用する端末装置に送信させるために、前記相談者の利用する端末装置の接続先を、前記無人端末装置から相談員の利用する端末装置への切り替える指示をする機能を備えた計算機。」
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、小林暢子,「テレマーケティングに新潮流C/SシステムとPBXを融合」,日経コンピュータ,日経BP社,1995年8月7日,第371号,p.67-69(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
「 CTI技術によってオペレータが電話を受けると同時に、応対に必要な情報を端末で参照できる。日本タンデムの統合コールセンターを例にとると、その仕組みをこうだ(例2)。
まず顧客から問い合わせや資料送付の依頼の電話が入ってくると、PBXが電話を受信する。PBXとオペレータ端末を制御するCTIサーバーは、電話をどのオペレータに回すかを決定し、PBXに指令を出して電話を転送する。同時にその対応に必要なデータをデータベースから検索し、オペレータの端末に表示する。端末はパソコンと多機能電話が一体になっている。オペレータが顧客に応対した後、結果を端末に入力するとCTIサーバーが情報を吸い上げてデータベースを更新する。
CTIサーバーは顧客の要件に応じて適切なオペレータを選択する機能も持つ。顧客が電話をかけてきた時、音声応答装置を稼働させ、自動音声で顧客の要件を尋ねる。顧客は問い合わせ、苦情、資料送付などの要件を番号で入力する。このデータをCTIサーバーが判断し、苦情処理など高度な対応が必要な場合は熟練したオペレータに、資料依頼など単純な作業は経験の少ないオペレータに電話を回す仕組みだ。
PBXとの接続は独自仕様
PBXとCTIサーバーの接続プロトコルは各社とも独自仕様を採用している。
日本タンデムはHimalayaで稼働するCTI用ソフト「CAM」を提供する。さらにCTI技術を利用した「ワークフロー・オートメーション機能」を用意した。商品購入や問い合わせが複数のオペレータにまたがる場合、各オペレータが次に誰に代わるか判断しなくても、前のオペレータの入力処理が終了すると、CTIサーバーが自動的に判断し次の担当者にデータと電話を転送する」(68頁中欄12行-右欄下6行)
と記載されている。
ここで、「商品購入や問い合わせが複数のオペレータにまたがる場合、各オペレータが次に誰に代わるか判断しなくても、前のオペレータの入力処理が終了すると、CTIサーバーが自動的に判断し次の担当者にデータと電話を転送する」のであるから、CTIサーバーが、オペレータ端末の稼働状況を監視する機能を備えていることは、明らかである。
してみれば、引用例1には、
「オペレータ端末の稼働状況を監視する機能と、
顧客からの問い合わせや資料送付の依頼の電話を、自動音声で顧客の要件を尋ねる音声応答装置に接続した場合に、適切なオペレータを選択し、そのオペレータに電話を転送する機能と、
顧客からの問い合わせや資料送付の依頼の電話をどのオペレータに回すかを決定し、指令を出して電話を転送すると同時に、対応に必要なデータをオペレータ端末に表示する機能とを備えたCTIサーバー。」
の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、
引用例1発明の「オペレータ端末」は、本願発明の「相談員の利用する端末装置」に相当し、同様に、引用例1発明の「音声応答装置」、「CTIサーバー」は、それぞれ本願発明の「無人端末装置」、「計算機」に相当する。また、引用例1発明の「オペレータ端末の稼働状況を監視する機能」と、本願発明の「相談員の利用する端末装置が接続可能となることを監視する機能」とは、「相談員の利用する端末装置の稼働状況を監視する機能」という概念に包摂される。
さらに、引用例1発明では、顧客からの電話を音声応答装置に接続した場合に、オペレータを選択して、そのオペレータに電話を転送するのであるが、その転送の際には、CTIサーバーが、指令を出して電話を転送し、また、電話を転送すると同時に、対応に必要なデータをオペレータ端末に表示していることは明らかであるから、引用例1発明と本願発明とは、「相談者の利用する端末装置の接続先を、無人端末装置から相談員の利用する端末への切替える指示をする機能を備えた」という概念で共通する。
してみれば、両者は、
「相談員の利用する端末装置の稼働状況を監視する機能と、
相談者の利用する端末装置の接続先を、無人端末装置から相談員の利用する端末への切替える指示をする機能を備えた計算機。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
監視する機能の監視対象が、本願発明では、「相談者の利用する端末装置に接続できる対応可能な相談員の利用する端末がなく、前記相談者の利用する端末装置を相談者の相談を受ける無人端末装置に接続した場合に、前記相談員の利用する端末装置が接続可能となること」であるのに対し、引用例1発明では、そのような対象について監視をしていない点。
[相違点2]
相談者の利用する端末装置の接続先を、無人端末装置から相談員の利用する端末への切り替える指示をすることが、本願発明では、「(監視の結果、相談員の利用する端末が)接続可能になった場合に、無人端末装置に蓄積された接続切り替えまでのやり取りを、接続先の相談員の利用する端末に送信させるため」であるのに対し、引用例1発明では、そのような接続先を切り替える指示をする条件および目的が記載されていない点。

そこで、以下、検討を加える。
[相違点1について]
一般に、顧客からの電話が入ってきた際に対応できるオペレータがいない場合、オペレータに代わって、音声応答装置が顧客からの電話に応対することは、よく知られていることである。
引用例1発明においては、電話の接続先としての複数のオペレータのうちから、どのオペレータに電話を回すかを決定し、電話を転送する仕組みになっており、かつ、電話の接続先の一つとして音声応答装置があるわけであるから、顧客からの電話が入ってきた際に前記複数のオペレータの誰もが対応可能な状況にない場合、その顧客からの電話を音声応答装置に接続するように構成することは、自然な発想である。
そして、このような場合、オペレータの誰もが対応可能でないために、やむを得ず、顧客からの電話が音声応答装置に接続するのであるから、オペレータが対応可能になれば、その顧客からの電話を、対応が可能になったオペレータ端末に接続先を切り換えるようにすることが最善の処置であることは明らかである。引用例1発明においては、オペレータ端末の稼働状況を監視する機能を備えているわけであるから、このような処置を講ずるために、顧客の電話に接続できるオペレータの端末がなく、その顧客からの電話を音声応答装置に接続した場合に、オペレータの端末が接続可能であるかどうかという稼働状況を監視し、対応が可能になれば、オペレータの端末に接続先を切り換えるように構成することもまた、自然な発想であるといえる。
してみれば、引用例1発明において、顧客の電話(本願発明の「相談者の利用する端末」に相当)に接続できる対応可能なオペレータ端末(本願発明の「相談員の利用する端末」に相当)がなく、その顧客の電話を音声応答装置(本願発明の「無人端末装置」に相当)に接続した場合に、オペレータ端末が接続可能であるかどうかという稼働状況を、監視する機能の監視対象に加えることにより、相違点1の構成を得ることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
[相違点2について]
相違点1について検討したとおり、対応可能なオペレータ端末がなくて顧客からの電話を音声応答装置に接続した場合における、オペレータ端末の稼働状況を、監視する機能の監視対象に加えるとすれば、それに伴い、オペレータ端末が「接続可能になった」という監視結果を条件として、顧客からの電話の接続先を、音声応答装置からオペレータ端末へ切り替える指示をする機能を稼働させるようにすることは、自然な発想である。
また、引用例1発明においては、音声応答装置は、自動音声で顧客の要件を尋ねるものであって、顧客とのやり取りの内容が当該音声応答装置に蓄積されることは明らかである。そして、引用例1発明においては、接続先の切り替えの際には、対応に必要なデータと電話を転送する構成であるので、音声応答装置からオペレータ端末へ切り替えの際の対応に必要なデータとして、音声応答装置が尋ね、接続切り替えまでに蓄積されたやり取りの内容を含めることは、当然に想到し得るところである。
してみれば、引用例1発明において、オペレータ端末が「接続可能になった場合に」、顧客の電話(本願発明の「相談者の利用する端末」に相当)の接続先を、音声応答装置(本願発明の「無人端末装置」に相当)からオペレータ端末(本願発明の「相談員の利用する端末」に相当)へ切り替える指示をする機能を稼働させるようにするとともに、音声応答装置からオペレータ端末へ切り替える目的として、音声応答装置に蓄積された接続切り替えまでのやり取りを、接続先のオペレータ端末に送信させることを加え、相違点2の構成を得ることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
そして、本願発明の作用効果も、引用例1の記載から、当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-16 
結審通知日 2004-08-17 
審決日 2004-08-31 
出願番号 特願平8-249609
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 佐藤 伸夫
特許庁審判官 須原 宏光
竹中 辰利
発明の名称 相談先端末接続方法  
代理人 作田 康夫  

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