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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1105145 |
審判番号 | 不服2001-21829 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-01-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-06 |
確定日 | 2004-10-14 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第158997号「排ガス浄化方法及び排ガス浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月14日出願公開、特開平 9- 13954〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】本願発明 本願は、平成7年6月26日の出願であって、その請求項1〜8に係る発明は、平成13年8月9日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1、3に記載された発明(以下、「本願発明1、3」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 排ガスを通過させて排ガス中のパティキュレート等を除去するフィルターを加熱して、前記フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させる排ガス浄化方法であって、フィルターを加熱する場合、前記フィルター内の任意の箇所に於ける平均温度が200℃以上、800℃以下となる領域に於いて、任意の箇所に於けるフィルター内温度差が200℃以内となるように、フィルターを加熱流体を吹き付けて加熱する際、加熱流量Qを前記フィルターの排気経路に垂直な断面積Sで割った値を平均流速Vとした時、平均流速Vが0.05m/s〜1.5m/sの範囲内としフィルターに加熱流体を吹き付けて、火炎伝播による燃焼再生ではなく、フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させることを特徴とする排ガス浄化方法。」 「【請求項3】 排ガスを通過させて前記排ガス中のパティキュレート等を捕集するフィルターと、前記フィルターを収納するフィルター収納容器と、前記フィルター収納容器内に排ガスを供給する第1の配管と、前記フィルター収納容器から浄化された排ガスを放出する第2の配管と、前記フィルターの加熱手段と、前記フィルターに送り込まれる加熱流体温度を検知する温度検知手段と、前記フィルターを加熱する時、前記フィルター内の任意の箇所に於ける平均温度が200℃〜800℃の領域に於いて、任意の箇所に於けるフィルター内温度差が200℃以内とするように前記温度検知手段からの情報を基に前記加熱手段に供給するエネルギーを制御する制御部を備え、火炎伝播による燃焼再生ではなく、前記フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させることを特徴とする排ガス浄化装置。」 【2】引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特開昭59-5821号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開平7-102937号公報(以下、「引用例2」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。 (1)引用例1; a.「カーボン浄化装置は通気性耐熱部材に補集されたカーボン微粒子を除去して再生しなければならない。ところが通気性耐熱部材の再生を加熱気体の強制送給により行う場合、加熱気体の温度をカーボン着火温度より若干高い600℃前後としても、カーボン微粒子が急激に燃焼して通気性耐熱部材が1000℃以上、条件によつては1400℃以上になり、通気性耐熱部材に溶損や破壊が生ずる。」(第1頁右下欄第4〜12行) b.「しかして、このカーボン微粒子の除去は排ガス通路の入口側に設けた加熱装置によりカーボン微粒子の着火温度以上に加熱されて強制的に送給されるカーボン燃焼用の加熱気体をもつて行うこととなるが、カーボン微粒子の着火温度以上に加熱されたこの加熱気体の送給によつて該カーボン微粒子の燃焼を行うと、通常は前記加熱気体の温度を通気性耐熱部材の溶融温度より遥かに低く設定しておいた場合でもカーボン微粒子の燃焼炎によつて通気性耐熱部材が異常高温化し、通気性耐熱部材が破損温度や溶損温度に達するおそれがある。そこで、本発明はカーボン微粒子の燃焼に伴う温度上昇が加熱気体の流量および酸素濃度と密接な関係にあることに着目し、加熱気体の流量および酸素濃度を特定の領域内の点に設定することによりカーボン微粒子が燃焼しても通気性耐熱部材内の最高到達温度を該通気性耐熱部材の破損或いは溶損温度以下に保持するようにしたものである。すなわち、本発明はカーボン燃焼用の加熱気体を、(中略)領域内の点に設定して送給することにより、カーボン微粒子が燃焼しても通気性耐熱部材の内部温度を950℃以下に保持させることができるようにした点に特徴がある。」(第2頁右上欄第8行〜左下欄第15行) c.「そして、このセラミツクハニカムフイルターは直径118mm、長さ152mm、隔壁厚0.30mm、孔の密度32個/cm2 、一端からみた開口率34.5%のもので、排ガス通路5内に取付けられ、該排ガス通路5のガス入口側には内燃機関への配管より分岐させて図示しない加熱気体供給装置が設けられている。このような排ガス通路5において、通気性耐熱部材としてのセラミツクハニカムフイルターに捕集されたカーボン微粒子を第1表に示す条件で加熱気体の強制的な送給による燃焼除去を行つた再生テストを示せば下表のとおりである。」(第2頁右下欄第4〜15行) d.「なお、カーボン微粒子の燃焼開始温度は、通気性耐熱部材に触媒が用いられているかどうかによつて異なるが、触媒がない場合は通常550℃前後であるため、加熱気体温度としては約550℃以上となる。しかしながら、650℃を越えると流量および酸素濃度の制御範囲が小さくなり、このためには制御装置が複雑となるばかりでなく、このような装置を自動車用のエンジンに設けることは経済的でなく、さらに650℃以上に気体を加熱することはエネルギー消費の観点から好ましくないので、カーボン燃焼用の加熱気体の温度は550℃〜650℃が実用的である。」(第3頁右上欄第7行〜左下欄第12行) e.「本発明は前記説明から明らかなように、カーボン微粒子が捕集された排ガス通路内の通気性耐熱部材を再生するに際し、カーボン微粒子燃焼用の加熱気体の流量および酸素濃度を所定範囲に制限することにより急激な燃焼をなくしたので、多量にカーボン微粒子を捕集した通気性耐熱部材でも十分な再生効率を確保することができるうえに再生時に通気性耐熱部材の溶損や破損が生ずることがなく、このため大幅に燃焼再生周期を長くすることができて燃焼再生のためのエネルギー効率や通気性耐熱部材の耐久性の面における効果は極めて大きく、カーボン微粒子の排出量の多い排気系への適用も拡大できるなど多くの利点を有する …(後略)」(第3頁左下欄第13行〜右下欄第5行) そして、「第1表」(第3頁上欄)には、「通気性耐熱部材に捕集されたカーボン微粒子の重量」が15gであり、「加熱気体の温度」が約600℃である時に、「加熱時間」を8分間とし、加熱気体の「流量(Nm3 /min)」を「0.08」、「0.1」、「0.2」、「0.25」、「0.3」、「0.4」、「0.6」、「1.0」、「1.3」とした上で、さらに、「酸素濃度」等の条件を種々変更した場合のテスト結果が記載されている。 また、「第1表」の再生テストに用いられたセラミツクハニカムフイルターの直径は、上記記載cによれば、118mmであるから、フィルターの排気経路に垂直な断面積は約110cm2 となり、上記各「流量(Nm3 /min)」を当該断面積(約110cm2 )で割った値を「平均流速」とすると、「平均流速(m/s)」は、それぞれ、「0.12」、「0.15」、「0.3」、「0.38」、「0.45」、「0.6」、「0.9」、「1.51」、「1.97」であることがわかり、また、同表の記載から、これらの場合において、再生テストの「通気性耐熱部材の損傷状況」が「異常なし」であるテスト結果の例が多数あることもわかる。 また、セラミックハニカムフィルターをフィルター収納容器に収納することは、当業者にとって技術常識であるから、第1図の記載からみて、同図に示される浄化装置の排ガス通路5は、セラミックハニカムフィルターを収納するフィルター収納容器と、フィルター収納容器内に排ガスを供給する第1の配管と、前記フィルター収納容器から浄化された排ガスを放出する第2の配管とからなるものであることを、当業者は容易に看取できるものと認められる。 以上の記載、及び、第1〜3図の記載等からみて、引用例1には、以下のような発明が記載されているものと認められる。 ・引用発明1A: 「排ガスを通過させて排ガス中のカーボン微粒子を除去するセラミックハニカムフィルターを加熱して、前記セラミックハニカムフィルターに付着したカーボン微粒子を燃焼させる排ガス浄化方法であって、セラミックハニカムフィルターを温度550℃〜650℃の加熱気体を吹き付けて加熱する際、加熱流量Qを前記セラミックハニカムフィルターの排ガス通路に垂直な断面積Sで割った値を平均流速Vとした時、平均流速Vが0.12m/s〜1.97m/sの範囲内の加熱気体を吹き付けて、セラミックハニカムフィルターの内部温度を950℃以下に保持し、セラミックハニカムフィルターに付着したカーボン微粒子を燃焼させる排ガス浄化方法。」(以下、「引用発明1A」という。) ・引用発明1B: 「排ガスを通過させて前記排ガス中のカーボン微粒子を捕集するセラミックハニカムフィルターと、前記セラミックハニカムフィルターを収納するフィルター収納容器と、前記フィルター収納容器内に排ガスを供給する第1の配管と、前記フィルター収納容器から浄化された排ガスを放出する第2の配管と、前記セラミックハニカムフィルターの加熱装置とを備え、前記フィルターを加熱する時、前記セラミックハニカムフィルターに(8分間)送り込まれる温度550℃〜650℃の加熱気体により前記セラミックハニカムフィルターに付着したカーボン微粒子を燃焼させるカーボン浄化装置。」(以下、「引用発明1B」という。) (2)引用例2; h.「【0007】通常、ディーゼルエンジンから排気される排気ガスに含まれているカーボン、HC等のパティキュレート或いはスモークは、直径が200Å程度と言われているが、それらは次第に凝集して10μm〜20μmの直径を持つ煤に成長する。これらの煤は、通常、600℃〜700℃の温度で酸素が存在すれば燃焼して炭酸ガスになる。 【0008】ところで、フィルタの上流側先端に電熱線を取り付け、該電熱線によって捕集されたすす等のパティキュレートに着火し、フィルタの再生を行っているものは、フィルタの先端領域以外の中間領域の再生には、火炎の伝播を利用してパティキュレートの焼却を行うので、パティキュレートの付着の不均一さによって未燃焼すすによるフィルタの再生不良や、すすの異常燃焼によるフィルタの溶損、及びその熱応力によるフィルタの破損が発生することがある。また、パティキュレートの焼却が火炎の伝播速度になるため、フィルタの再生時間を短縮するのが困難であった。」 i.「【0010】そこで、この発明の目的は、上記の課題を解決することであり、エンジン、燃焼炉、焼却炉等から排出される排気ガスを浄化処理するため排気系に組み込まれて使用され、ディーゼルエンジンから排気される排気ガスに含まれるカーボン、煤、HC等の粒子状物質即ちパティキュレートを捕集するものであり、パティキュレートを捕集するフィルタ用多孔体を導電性フォームドセラミックスで作製すると共に、フィルタ用多孔体の気孔形成をファイバーを含有させてコントロールし、フィルタ用多孔体自体をヒータとして機能させてフィルタ用多孔体全体を均一に加熱することを実現し、捕集されたパティキュレートを均一に燃焼させてフィルタ用多孔体を短時間に再生処理し、フィルタ用多孔体の溶損、熱応力による破損を防止した導電性フォームドセラミックス製ディーゼルパティキュレートフィルタ及びその製造方法を提供することである。」 j.「【0033】そして、前記フィルタ用多孔体への通電時には、前記フィルタ用多孔体の全領域において、異常加熱を避けることができ、同時刻における温度差は100℃以内に収めることができ、加熱温度を約600℃近傍にコントロールしてフィルタ用多孔体2の溶損を防止し、熱応力による前記フィルタ用多孔体の破損を防止でき、前記フィルタ用多孔体の再生を良好に且つ短時間に達成できる。 【0034】従って、前記フィルタ用多孔体に捕集されたパティキュレートを焼却する場合に、パティキュレートは、均一に燃焼して前記フィルタ用多孔体に局部的にパティキュレートが未燃焼の状態で残存することがなく、異常燃焼が発生して局部加熱が発生せず、前記フィルタ用多孔体の溶損、破損は発生しない。しかも、前記フィルタ用多孔体の再生では、前記フィルタ用多孔体を均一に通電できると共に、各領域での同時刻での温度差が小さく、前記フィルタ用多孔体に与える熱応力を低減でき、前記フィルタ用多孔体自体の破損を防止でき、耐久性を向上させることができる。」 【3】当審の判断 (1)本願発明1について (対比) そこで、本願発明1と引用発明1Aとを対比すると、引用発明1Aの「カーボン微粒子」、「セラミックハニカムフィルタ」、「排ガス通路」、「加熱気体」は、それぞれ、本願発明1の「パティキュレート等」、「フィルター」、「排気通路」、「加熱流体」に相当する。 また、両者の平均流速Vは、特定の範囲内の平均流速(m/s)であるといえるから、結局、両者は、 「排ガスを通過させて排ガス中のパティキュレート等を除去するフィルターを加熱して、前記フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させる排ガス浄化方法であって、フィルターを加熱流体を吹き付けて加熱する際、加熱流量Qを前記フィルターの排気経路に垂直な断面積Sで割った値を平均流速Vとした時、平均流速Vが特定の範囲内の平均流速(m/s)とし、フィルターに加熱流体を吹き付けてフィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させる排ガス浄化方法」、 で一致し、以下の点(イ)〜(ハ)で相違している。 (相違点) (イ)本願発明1が、フィルターを加熱する場合、前記フィルター内の任意の箇所に於ける平均温度が200℃以上、800℃以下となる領域に於いて、任意の箇所に於けるフィルター内温度差が200℃以内となるように、フィルターを加熱流体を吹き付けて加熱するものであるのに対し、引用発明1Aは、温度550℃〜650℃の加熱流体でフィルターを加熱するものであり、フィルターの内部温度を950℃以下に保持するものである点。 (ロ)本願発明1の平均流速の特定の範囲が0.05m/s〜1.5m/sであるのに対し、引用発明1Aは、0.12m/s〜1.97m/sである点。 (ハ)本願発明1が、火炎伝播による燃焼再生ではなく、フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させるものであるのに対し、引用発明1Aは、この点が不明である点。 以下、前記各相違点(イ)〜(ハ)について検討する。 (相違点の検討) ・相違点(イ)について; 引用例2の記載事項jにより、熱応力によるフィルタの破損を防止するために、フィルタ内の任意の箇所に於ける温度差を100℃以内としなければならないことがわかり、したがって、フィルタ再生のいかなる時においても、任意の箇所に於けるフィルター内温度差は、熱応力における破損を防止し得る温度差(例えば、100℃以内)にする必要のあることを、当業者は容易に理解し得るものと認められる。 一方、引用発明1Aは、温度550℃〜650℃の加熱流体でフィルターを加熱するものであるが、引用例1の「第1表」によれば、再生テストの「通気性耐熱部材の損傷状況」が「異常なし」であるテスト結果の例が多数あることからみて、引用発明1Aは、フィルターの加熱中に破損がそもそも発生しないものであることを、当業者ならば容易に想到し得るものと認められる。 換言すれば、引用発明1Aは、550℃〜650℃の加熱流体でフィルターが加熱される際に、任意の箇所に於けるフィルター内温度差は、熱応力における破損を防止し得る温度差に保たれているものであることを、当業者ならば容易に想到し得るものというべきである。 そして、前記任意の箇所に於けるフィルター内温度差を、例えば、200℃以内とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計事項にすぎないものである。 また、本願発明1の「フィルタ内の任意の箇所に於ける平均温度」とは、本願明細書の段落【0039】の記載によれば、「本実施例で述べているフィルタ108a内平均温度とは、直径5.66インチ、長さ6インチの円筒状のフィルターに於いて図6に示すZ1〜Z9の測温ポイントでの温度を平均したもの」であるが、フィルタ全体の温度分布の傾向を1つの指標で表す場合に、任意の箇所で計測した温度を平均した「平均温度」を用いることは、当業者が容易に想到し得る事項である。 また、フィルタ内の任意の箇所に於ける内部温度(「最高到達温度」)は、安全率等を考慮して、フィルタの溶損を完全に防止し得る温度にする必要があることは、当業者が当然予測し得る事項にすぎない。 そうであれば、引用発明1Aのフィルタの内部温度を、「フィルタ内の任意の箇所に於ける平均温度」に換えると共に、保持温度(950℃以下)を「800℃以下のフィルタ内の任意の箇所に於ける平均温度」に換え、もって、相違点(イ)における本願発明1のように構成することは、当業者が容易になし得るものと認められる。 ・相違点(ロ)について; 本願発明1と引用発明1Aとは、加熱流体の平均流速の範囲が、0.12m/s〜1.5m/sで重複する。 また、加熱流体の平均流速を、フィルターの材質、形状、寸法、隔壁厚、孔密度、開口率、…等に応じて、変更することは、当業者が当然予測し得る事項であるから、加熱流体の平均流速を、実際に即した基本実験や改良実験等を行い、その結果を検討して適切とされる数値となるように決定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎない。 したがって、引用発明1Aの平均流速(m/s)の特定の範囲を、0.05m/s〜1.5m/sとすることは、当業者が容易になし得るものである。 ・相違点(ハ)について; 引用例2の記載事項hから、フィルタの再生を火炎伝播による燃焼で行うと、フィルタに再生不良、溶損、破損等の不都合が発生することを、ごく普通に理解し得るものと認められる。 したがって、引用発明1Aを、フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させる際に、火炎伝播による燃焼ではない燃焼とすることは、引用例2記載の技術事項から当業者が容易に想到し得るものである。 (効果について) そして、本願発明1の構成によってもたらされる効果も、引用発明1A、及び、引用例2記載の技術事項から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (まとめ) したがって、本願発明1は、引用発明1A、及び、引用例2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本願発明3について (対比) 次に、本願発明3と引用発明1Bとを対比すると、引用発明1Bの「カーボン微粒子」、「セラミックハニカムフィルタ」、「加熱装置」、「加熱気体」、「カーボン浄化装置」は、それぞれ、本願発明3の「パティキュレート等」、「フィルター」、「加熱手段」、「加熱流体」、「排ガス浄化装置」に相当するものであるから、両者は、 「排ガスを通過させて前記排ガス中のパティキュレート等を捕集するフィルターと、前記フィルターを収納するフィルター収納容器と、前記フィルター収納容器内に排ガスを供給する第1の配管と、前記フィルター収納容器から浄化された排ガスを放出する第2の配管と、前記フィルターの加熱手段とを備え、フィルターに送り込まれる加熱流体で前記フィルターを加熱し、前記フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させる排ガス浄化装置」、 で一致し、以下の各点(ニ)、(ホ)で相違している。 (相違点) (ニ)本願発明3が、フィルターに送り込まれる加熱流体温度を検知する温度検知手段と、前記フィルターを加熱する時、前記フィルター内の任意の箇所に於ける平均温度が200℃〜800℃の領域に於いて、任意の箇所に於けるフィルター内温度差が200℃以内とするように前記温度検知手段からの情報を基に前記加熱手段に供給するエネルギーを制御する制御部を備えるのに対し、引用発明1Bは、温度550℃〜650℃の加熱流体で8分間フィルターを加熱するものであるが、温度検知手段や上記のような制御部を具備していない点。 (ホ)本願発明3が、火炎伝播による燃焼再生ではない燃焼で、フィルターに付着したパティキュレート等を燃焼させるものであるのに対し、引用発明1Bは、この点が不明である点。 以下、前記各相違点(ニ)、(ホ)について検討する。 (相違点の検討) ・相違点(ニ)について; 引用発明1Bは、温度550℃〜650℃の加熱流体でフィルターを8分間加熱するものであるから、引用発明1Bに、フィルターに送り込まれる加熱流体温度を検知する温度検知手段と、前記フィルターを加熱する時、前記加熱流体温度を550℃〜650℃とするように前記温度検知手段からの情報を基にフィルターの加熱手段に供給するエネルギーを制御する制御部とを備えさせるようにすることは、フィードバック制御が周知・慣用の手段であることを鑑みれば、当業者が容易に想到し得るものである。 また、引用例1の記載事項dによれば、上記温度550℃〜650℃は、「実用的」という程度のものであって、フィルターの加熱流体温度がこの数値範囲に必ずしも限定されないことがわかる。 そして、加熱流体によりフィルターを加熱する時、前記フィルター内の任意の箇所に於ける平均温度が200℃〜800℃の領域に於いて、任意の箇所に於けるフィルター内温度差が200℃以内となるようにすることは、上記相違点(イ)の箇所で前示したように、当業者が容易になし得るものと認められる。 したがって、引用発明1Bを任意の箇所に於けるフィルター内温度差が200℃以内とするように、温度検知手段からの情報を基にフィルターの加熱手段に供給するエネルギーを制御する制御部を備えさせるようにすることは、フィルターの熱応力による破損を防止することが当業者にとって周知の技術課題であることを考慮すれば、当業者が容易になし得るものと認められる。 ・相違点(ホ)について; 上記相違点(ハ)と同様の理由により、この相違点(ホ)は、引用例2記載の技術事項から当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎない。 (効果について) そして、本願発明3の構成によってもたらされる効果も、引用発明1B、及び、引用例2記載の技術事項から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (まとめ) したがって、本願発明3は、引用発明1B、及び、引用例2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【4】むすび 以上のとおりであって、本願発明1、3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-03 |
結審通知日 | 2004-08-17 |
審決日 | 2004-08-31 |
出願番号 | 特願平7-158997 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 亀田 貴志 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 長谷川 一郎 |
発明の名称 | 排ガス浄化方法及び排ガス浄化装置 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 坂口 智康 |