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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07F
管理番号 1105151
審判番号 不服2002-10296  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-07 
確定日 2004-10-13 
事件の表示 特願2001- 38500「自動販売機の離隔管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月30日出願公開、特開2001-331859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願は、平成13年2月15日付けの出願(国内優先権主張日:平成12年2月15日)であって、平成14年5月2日付けで拒絶査定(発送日:14年5月10日)がなされ、これに対し、同年6月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月3日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年7月3日付けの手続補正について
[結論]
平成14年7月3日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)平成14年7月3日付手続補正による発明
平成14年7月3日付手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「自動販売機または自動販売機を設置した無人店舗に、来店者を検知する検知手段、前記自動販売機周辺または前記無人店舗周辺の音声を集音する集音手段、前記来店者の面貌および前記自動販売機周辺または前記無人店舗周辺の状況を撮影する撮影手段、前記来店者の所持する顔写真および年齢(生年月日)が表示された身分証明書類を撮影する身分証明書撮影手段、前記来店者に以降の行動を促す告知手段が設けられ、前記自動販売機または前記無人店舗とそれらを隔離管理するオペレーションセンタとが通信手段で接続されており、
オペレーションセンタでは、
無人店舗ないし自動販売機の起動をさせ、
来店者の撮像等から制限年齢を明らかに越える来店者の場合は、無人店舗側になにも追加指示・制御をしない、または販売を可とする指示・制御をおこない、
来店者の撮像等から制限年齢を明らかに越えていない場合は、販売を不可とする指示・制御をおこない、購入が断念されないときは、自動販売機の販売を停止する旨の制御をおこない、
購入希望者の撮像等からは年齢が不明確な場合は、身分証明書の提示を求める告知をおこない、身分証明書の提示を促し、
身分証明書が提示され身分証明書に関する情報がオペレーションセンタに送信されると、購入希望者の年齢を判断し、
制限年齢未満と判断された場合、身分証明書の提示がなされない場合、および身分証明書の撮像と無人店舗における撮影装置による撮像とが不一致の場合は、販売を不可とする指示・制御をおこない、購入が断念されないときは、自動販売機の販売を停止する旨の制御をおこない、
制限年齢以上と判断された場合は、無人店舗側になにも追加指示・制御をしない、または販売を可とする指示・制御をおこない、
来店者が、自動販売機から離れたことを検知したときは、無人店舗の初期動作への復帰を制御することを特徴とする自動販売機の離隔管理システム。」
と補正された。
上記補正は、「自動販売機の離隔管理システム」の構成要件である「オペレーションセンタ」について、当該「オペレーションセンタ」で行われる処理を限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、又、この点は、出願当初の明細書に実施例として記載された事項であるから、同法第17条の2第3項の規定に適合するものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。

(2)引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭10-162222号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
A.「不特定者が操作する無人機とセンターとが電話回線網を介して接続され、
前記無人機は利用者が操作開始を告げるスタートボタンと、利用者の正面像を撮影する第1のテレビカメラと、コメントを表示するディスプレーと、利用者が提示する免許証を撮影する第2のテレビカメラと、センターからの指示信号によってディスプレーに各種コメントを表示させるディスプレー制御部および第1,第2のテレビカメラを切り替えるカメラ操作部からなる制御部と、を備え、
前記センターは前記第1,第2のテレビカメラが撮影した画像を表示させるモニターテレビと、認証者の選択で前記ディスプレーに特定のコメントを表示させると共に無人機の機能を作動または停止させる指示信号出力部および画像またはデータをビデオ装置に記録させるビデオ装置制御部からなる制御部と、 を備えたことを特徴とする不特定者が操作する無人機の利用者年齢認証システム。」(特許請求の範囲の請求項1)
B.「本発明は、市中各所に設置された自動販売機や番号登録機などの無人機を操作する不特定者が年齢的に妥当であるか確認するようにした、不特定者が操作する無人機の利用者年齢認証システムに関する。」(段落番号0001)
C.「自動販売機で販売するに際し法律上年齢制限されているもの、あるいは好ましくないとされているものとして、例えば、酒類、たばこ、成人向けビデオや雑誌、電話応対予約用の登録カードなどがある。」(段落番号0003第5〜9行)
D.「次に、本発明の実施の形態を説明する。まず、本実施の形態1では、無人機の利用者年齢認証システムを登録カードの自動販売機に適用した場合を説明する。図1は本発明の実施の形態1における回路構成を示すブロック図、図2は図1のシステムの運用を表したフローチャート、図3は各種コメントを示す説明図である。」(段落番号0010)
E.「図中Aはこの実施の形態の不特定者が登録カードを購入するために操作する自動販売機の利用者年齢認証システムを示しており、Bは自動販売機1内に備えられた利用者側システム、Cは認証者側、つまりセンター側システムである。尚、センター側システムCは、複数の自動販売機を管理するものであるが、本実施の形態1では、1台の自動販売機について説明する。前記自動販売機1は、カードの販売機能部2と共に前記のように利用者年齢認証システムAの一方を構成する利用者側システムBを備えており、この利用者側システムBは、スタートボタン3と、第1のテレビカメラ4と、第2のテレビカメラ5と、ディスプレーとしてのモニターテレビ6と、モデム7と、制御部8を備えている。」(段落番号0011第1〜13行)
F.「前記第1のテレビカメラ4は、利用者の正面像を撮影しその静止画像を転送するものであって、任意の位置で操作する利用者を必ず撮影できるように広角レンズを有すると共に、外部からは容易に解らないように隠しカメラとして形成されている。前記第2のテレビカメラ5は、公的機関が発行した免許証などを撮影するものであって、正面保護ガラス面等に免許証を当てる枠線などが設けられている。尚、前記テレビカメラ4,5はいずれもカラーCCDカメラが使用されている。前記モニターテレビ6は、後述する制御部8により操作の進行に従ってその時に必要なコメントを表示するものである。そのコメントの例として図3に示すが、(イ)は利用者の画像を転送しているときに、(ロ)は転送されてきた画像から利用者の年齢を確認できないときに、(ハ)は販売可能な年齢が確認できたときに、(ニ)は販売不可能な年齢であったときに、または免許証の提示がなくて年齢が確認できないときにセンター側システムの指示で表示する。また、(ホ)はセンター側が込み合っているときに自動で表示する。」(段落番号0012)
G.「前記センター側システムCは、モニターテレビ10と、ビデオ装置11と、認証者操作ボタン12と、モデム13と、制御部14を備えている。…(略)…。前記認証者操作ボタン12は、認証者がモニターテレビ10の画像内容によって利用者側システムBに指示する内容を選択するものであって、S1は販売可能指示、S2は販売不可指示、S3は免許証提示指示、S4は電話遮断指示を行なうものである。」(段落番号0014)
H.「前記制御部14は、…(略)…前記認証者操作ボタン12の操作によって利用者側システムBのモニターテレビ制御部に特定のコメント出力の指示を行なう指示信号出力部14aと、前記指示信号出力部14aの免許証提示指示信号によってビデオ装置の録画制御を行なうビデオ制御部14bなどを備えている。」(段落番号0015)
I.「センター側システムCでは、モデム電話回線16の接続後、接続ランプ15や警報音などで自動販売機1の利用を知らせると共にモニターテレビ10に利用者の画像を表示する(ステップ10)。」(段落番号0018第5行〜10行)
J.「画像表示後、認証者はその年齢が30才を越しているか確認し(ステップ12)、明らかに30才を越していると判断したら、認証者操作ボタン12のうちS1ボタンで利用者側システムBに販売可能指示信号を送る(ステップ13)。前記利用者側システムBでは、前記販売可能信号により、制御部8cが自動販売機1の販売機能部2の電源を投入する(ステップ14)と共に、モニターテレビ6にコメント(ハ)を表示させる(ステップ15)。前記販売機能部2の登録カード発行により、自動販売機1側の販売作業は終了し(ステップ16)、カメラ操作部8bは第2テレビカメラ5を第1テレビカメラ4へ切り替える(ステップ17)。この後、認証者はS4ボタンの操作により、利用者側システムへ電話遮断信号を送信してモデム電話回線の使用を終了させる(ステップ18)。」(段落番号0019)
K.「前記ステップ12で利用者の年齢が確認できないとき、センター側システムCの認証者はS3ボタンの操作により利用者側システムBのモニターテレビ6にコメント(ロ)を表示させる(ステップ19)。この表示を読み取った利用者が指示位置へ提示した免許証を第2テレビカメラ5が撮影し(ステップ20)、センター側システムCへ画像を転送する(ステップ21)。センター側システムCでは、モニターテレビ10に免許証が表示され(ステップ22)、その画像により利用者の年齢が30才以上であると認証者が確認すると(ステップ23)、認証者はS1ボタンを操作して販売可能信号を送信し(ステップ13)この後は前記のステップが進行する。」(段落番号0020)
L.「年齢が30才未満であったり免許証の提示がなく年齢が確認できないときは、認証者はS2ボタンの操作で販売不可信号を送信し、利用者側モニターテレビ6にコメント(ニ)を表示させる。また、この販売不可信号により、カメラ操作部8bは第2テレビカメラ5を第1テレビカメラ4へ切り替え、あとのステップが進行する。」(段落番号0021)
M.「以上説明してきたように、本実施の形態1によれば、無人機としての自動販売機1を操作する不特定の利用者を撮影し、センター側システムのモニターテレビ10の画像によって認証者がその年齢を確認し、また、その利用者の画像だけでは年齢が確認できない場合には、免許証を提示させ、前記モニターテレビ10に表示された免許証の画像により、その年齢を確認することができる。また、自動販売機1は、認証者の年齢確認で操作する信号により、規定の年齢以上の利用者のみに登録カードの販売を行ない、規定に達しない利用者には販売を行なわないようにすることができる。」(段落番号0022第1〜11行)
N.「年齢が確認できません 免許証又は年齢の確認できる物をして指定枠内部に向けて当てて下さい」(図3(ロ)の表示文章)
O.「お待ちどうさまでした 販売開始致します …(略)…」(図3(ハ)の表示文章)
P.「販売できません 免許証又は年齢の確認できる物を持ってきて下さい」(図3(ニ)の表示文章)

(3)引用例に記載された発明
以上の記載、及び、図2のフロー図、図3の記載を総合勘案すると、引用例には、次のような発明が記載されていると認められる(以下、「引用例に記載された発明」という。)。
「自動販売機とセンターとが電話回線網を介して接続され、
自動販売機は、利用者の正面像を撮影する第1のテレビカメラと、利用者が提示する免許証を撮影する第2のテレビカメラと、センターからの指示信号によって各種コメントを表示させるディスプレーと、を備え、
センターは、前記第1、第2のテレビカメラが撮影した画像を表示させるモニターテレビと、認証者の選択により前記ディスプレーに特定のコメントを表示させると共に自動販売機の機能を作動または停止させる認証者操作ボタンと、を備え、
センターの認証者は、モニターテレビに表示された利用者の画像を見て、
利用者の年齢が明らかに30才を越していると判断したら、認証者操作ボタンのS1ボタンで利用者側システムに販売可能指示信号を送り、該販売可能指示信号により、利用者側システムの制御部は、自動販売機の販売機能部の電源を投入し、ディスプレーに「販売開始致します」と表示し、
利用者の年齢が確認できないとき、認証者操作ボタンのS3ボタンで利用者側システムに免許証提示指示信号を送り、該免許証提示指示信号により、利用者側システムの制御部は、ディスプレーに「年齢が確認できません 免許証又は年齢の確認できる物をして指定枠内部に向けて当てて下さい」と表示し、利用者が提示した免許証を第2のテレビカメラにより撮影し、該画像をセンター側システムに送信し、
センター側システムでは、モニターテレビに免許証が表示されると、その画像により利用者の年齢が30才以上であると認証者が確認すると、S1ボタンで販売可能指示信号を送信し、この後は前記と同様のステップが進行し、
年齢が30才未満であったり免許証の提示がなく年齢が確認できないときは、S2ボタンで販売不可指示信号を送信し、該免許証提示指示信号により、利用者側システムの制御部は、ディスプレーに「販売できません 免許証又は年齢の確認できる物を持ってきて下さい」と表示すると共に第1のテレビカメラへ切り替え、センターの認証者はS4ボタンで、利用者側システムへ電話遮断指示信号を送信し、モデム電話回線の使用を終了させる、
自動販売機の利用者年齢認証システム。」

(4)対比・判断
本件補正発明(以下、「前者」という。)と引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを比較する。
後者の「利用者」、「第1のテレビカメラ」、「第2のテレビカメラ」、「ディスプレー」、「電話回線網」、「センター」は、その作用等からみて、前者の「来店者」、「来店者の面貌を撮影する撮影手段」、「身分証明書撮影手段」、「告知手段」、「通信手段」、「オペレーションセンタ」に相当することは明らかである。
なお、前者の「第1のテレビカメラ」は広角レンズで構成されているから、来店者の周辺即ち自動販売機周辺を撮影できることは明らかである。
又、後者における「販売可能指示信号」の送信は、利用者側システムの制御部に販売を可能とする制御を行わせるものであるから、前者の「販売を可とする指示・制御」をすることに他ならず、同様に、後者の「販売不可指示信号」の送信は、前者の「販売を不可とする指示・制御」のことである。
さらに、前者の「購入が断念されないときは、自動販売機の販売を停止する旨の制御」とは、「購入不可」の表示がされても、来店者が自動販売機の前から立ち去らないようなときに、オペレーションセンタにいるオペレータが電源を遮断することである(段落番号0032参照)から、後者の「電話遮断指示信号」の送信と同等のことと認められる。
なお、後者においても、自動販売機を起動させるのは、センターである(上記J参照)。
そこで、後者において、自動販売機利用を可・不可とする設定年齢を「30歳」にした点について検討する。
上記Cの「自動販売機で販売するに際し法律上年齢制限されているもの、あるいは好ましくないとされているものとして、例えば、酒類、たばこ、成人向けビデオや雑誌、電話応対予約用の登録カードなどがある。」との記載からみて、後者も、自動販売機で販売する品物について法律等で制限されている年齢により販売の可・不可を決定するものと認められる。即ち、酒類、たばこであれば20歳、成人向けビデオであれば18歳、そして、上記D乃至Pに摘記したように、後者の実施例として記載される「(電話応対予約用の)登録カードの購入」は30歳である(上記L参照)。
これらの点を勘案すると、後者においても、自動販売機で販売されるものに応じて、販売を可・不可とする年齢が決定され、この年齢は「法律等で制限されている年齢」即ち「制限年齢」と認められるから、後者も「制限年齢」により販売を可・不可とするものである。
以上の点からみて、両者は、次の一致点、相違点を有するものと認められる。
[一致点]
自動販売機に、来店者の面貌および前記自動販売機周辺状況を撮影する撮影手段、来店者の所持する顔写真および年齢(生年月日)が表示された身分証明書類を撮影する身分証明書撮影手段、来店者に以降の行動を促す告知手段が設けられ、自動販売機とそれらを隔離管理するオペレーションセンタとが通信手段で接続されており、
オペレーションセンタでは、
自動販売機の起動をさせ、
来店者の撮像等から制限年齢を明らかに越える来店者の場合は、販売を可とする指示・制御をおこない、
購入希望者の撮像等からは年齢が不明確な場合は、身分証明書の提示を求める告知をおこない、身分証明書の提示を促し、
身分証明書が提示され身分証明書に関する情報がオペレーションセンタに送信されると、購入希望者の年齢を判断し、
制限年齢未満と判断された場合、身分証明書の提示がなされない場合、販売を不可とする指示・制御をおこない、購入が断念されないときは、自動販売機の販売を停止する旨の制御をおこない、
制限年齢以上と判断された場合は、販売を可とする指示・制御をおこなう、
ことを特徴とする自動販売機の離隔管理システム。」
[相違点1]
前者の自動販売機又は無人店舗には、来店者を検知する検知手段、自動販売機周辺の音声を集音する集音手段が設けられているのに対して、後者の自動販売機には、そのような手段は設けられていない点。
[相違点2]
前者では、「来店者の撮像等から制限年齢を明らかに越えていない場合」、「身分証明書の撮像と無人店舗における撮影装置による撮像とが不一致の場合」にも、販売を不可とする指示・制御をおこなうのに対して、後者では、そのような場合のことは記載されていない点。
[相違点3]
前者では、来店者が、自動販売機から離れたことを検知したときは、無人店舗の初期動作への復帰を制御するのに対して、後者では、そのようなことは記載されていない点。

上記相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば、ATMが設置されている無人店舗等において、来店者の検知手段や集音手段を設けることは、引用例を挙げるまでもなく、周知の技術手段であるから、引用例記載の自動販売機等に検知手段や集音手段を設けることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
[相違点2]について
上記B、C、F、M等の記載からみて、後者は、制限年齢に応じて販売を可・不可とするものであるから、明らかに制限年齢を越えていない者に対しては、自動販売機の利用を不可とすることは当然のことであり、又、身分証明書の撮像と撮影装置の撮像が不一致のとき、即ち、本人確認に際して、身分証明書の所持者が本人ではないときに、証明書の提示が必要な種々の行為を禁止することは社会常識であるから、後者においても、そのような場合には販売を不可とするようなアルゴリズムとすることに、格別の困難性は認められない。
[相違点3]について
相違点3に関する「初期動作への復帰を制御すること」という事項について検討する。
本願明細書の段落番号0036には「この後、来店者が自動販売機2から離れ、または無人店舗3の出入口から外に出たことを無人店舗3側で検知し、この検知結果がオペレーションセンタ1側に送信されると、またはオペレーションセンタ1側でモニター等で確認すると、オペレーションセンタ1側が、入力操作装置11を操作して無人店舗3における販売側システム制御装置6に対する初期動作への復帰の制御を実行する。」と記載され、この「オペレーションセンタ1側が、販売側システム制御装置6に対する初期動作への復帰の制御を実行する。」なる記載によれば、初期動作への復帰は、オペレーションセンタにいるオペレータの指示によるものであって、無人店舗の制御手段が、検知手段の指示に基づいて自動的に初期動作に復帰させるものではないから、上記相違点は、検知手段が、来店者が自動販売機から離れたことを検知することと、オペレータが初期動作に復帰させることとの、2つの事項から構成されているものと認められる。
この内、検知手段の検知に関しては、上記相違点1の検討のとおり、人の接近、離脱を検知する検知手段は無人店舗等において、周知の技術手段であり、又、初期動作への復帰に関しては、後者においても、認証者(オペレータ)が、販売の終了を確認して、電話回線の使用を終了させており、電話回線の終了に伴う新たな電話回線の接続時には、表示画面等は、通常、初期状態になっているものであるから、オペレータの指示を、電話回線の使用終了(電話回線の遮断)に代えて初期動作への復帰とすることに、格別の困難性は認められない。
[作用効果]について
そして、前者の奏する作用効果も、引用例及び周知の技術手段から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり、本件補正発明は、引用例及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、平成14年7月4日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年4月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「自動販売機または自動販売機を設置した無人店舗に、来店者を検知する検知手段、前記自動販売機周辺または前記無人店舗周辺の音声を集音する集音手段、前記来店者の面貌および前記自動販売機周辺または前記無人店舗周
辺の状況を撮影する撮影手段、前記来店者の所持する顔写真および年齢(生年月日)が表示された身分証明書類を撮影する身分証明書撮影手段、前記来店者に以降の行動を促す告知手段が設けられ、前記自動販売機または前記無人店舗とそれらを離隔管理するオペレーションセンタとが通信手段で接続されていることを特徴とする自動販売機の離隔管理システム。」

(2)引用例に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりであり、又、引用例に記載された発明は「2.(3)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」に記載した本件補正発明から、「オペレーションセンタで行われる処理」を限定する事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-03 
結審通知日 2004-08-10 
審決日 2004-08-24 
出願番号 特願2001-38500(P2001-38500)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 佐野 遵
井上 哲男
発明の名称 自動販売機の離隔管理システム  
代理人 安原 正義  
代理人 安原 正之  

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