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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1105166
審判番号 不服2002-16660  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2004-10-14 
事件の表示 平成 6年特許願第310845号「画像処理装置の自動焦点合せ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月25日出願公開、特開平 8-166534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年12月14日の出願であって、平成14年7月26日付けで拒絶査定がなされ、平成14年8月29日付けで審判請求がなされるとともに、平成14年9月17日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年9月17日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成14年9月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「時系列的に焦点距離を変化させ、順次撮影された画像から、該各画像の合焦すべき一部の画像エリアを取り出す画像エリア取り出し工程と、一部画像エリアの画素に対して、
【数1】

により光量の標準編差値(σp)を算出する標準編差値算出工程と、算出された標準編差値の中から最大値を選択する最大標準編差値選択工程と、選択された最大標準編差値が得られた時の焦点距離を合焦点として検出する合焦点距離検出工程と、焦点距離を前記合焦点となる焦点距離に設定する合焦点距離設定工程と、を具備することを特徴とする画像処理装置の自動焦点合せ方法。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1の構成「取り出された前記一部画像エリアの画素の光量の標準編差値を算出する標準編差値算出工程」を、出願時明細書【0012】段落の記載に基づいて、取り出された「一部画像エリアの画素に対して、【数1】により光量の標準編差値(σp)を算出する標準編差値算出工程」と具体的な算出式で標準偏差の算出方法を限定するものであり、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について検討する。

(2)刊行物
原審の拒絶査定の拒絶の理由に引用された特開平6-205263号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記述および関連する図面が記載されている。
「【0012】(1)原理的構成
本発明による自動焦点調整装置は、図1に示すように、テレビジヨンカメラから得られる視野映像PIC内の所定位置に、所定の大きさ及び所定の形状の合焦検出領域FOを設定し、当該合焦検出領域FOに対応するビデオ信号部分に基づいて焦点駆動制御信号を形成する。
【0013】この実施例の場合、合焦検出領域FOは視野映像PICの各画像をxy直交座標として表したとき、左上隅の座標(xF0、yF0)を基準として、図2に示すように、水平方向のM列の画素と、垂直方向のN行の画素とで構成されたM×N個の画像を含む。
【0014】ここで水平及び垂直方向にm(=1、2……M)及びn(=1、2……N)番目の画素の輝度をBmn(m=1、2……M、n=1、2……N)とし、すべての画素の輝度の平均値をRとしたとき、平均輝度Rは次式
【数1】

として表すことができる。
【0015】この平均輝度Rと各画素の輝度B11、B12……BMNとの偏差は、次式
【数2】

のように、平均輝度Rに対する各画素の輝度B11、B12……BMNの分散によつて表される合焦判定パラメータPi を得るために用いられ、この合焦判定パラメータPi を用いてテレビジヨンカメラのレンズを自動的に合焦制御する。
【0016】(2)式によつて表される合焦判定パラメータPi は、平均輝度Rと各画素の輝度Bmnとの偏差の2乗和の平均値を内容としているので、視野映像PICのうち合焦検出領域FOの映像部分がぼけているときには、画像の尖鋭度が小さいために、各画素の輝度Bmn(m=1、2……M、n=1、2……N)と平均輝度Rとの偏差が小さいので、分散値も小さくなり、その結果合焦判定パラメータPi の値も小さくなる。
【0017】これに対して合焦検出領域FOの映像部分が合焦状態にあれば、画像がシヤープになつて尖鋭度が大きくなるために、各画素の輝度Bmnと平均輝度Rとの偏差が大きくなるので、分散値も大きくなり、その結果合焦判定パラメータPi の値も大きくなる。
【0018】かくして合焦判定パラメータPi の値は、レンズに対する観察対象の位置が近接距離にある場合、中位距離にある場合及び無限遠点にある場合についてそれぞれ、図3の合焦判定パラメータ曲線K1、K2及びK3によつて示すような変化を呈することになる。
【0019】すなわちレンズの焦点距離FDを小さい値から大きくして行くとき、レンズに対する観察対象の位置が近接距離及び中位距離にある場合、合焦判定パラメータPi は、合焦点JF1及びJF2に対応する焦点距離FD1及びFD2になつたときそれぞれ最大値に到達するまで増大して行き、さらに合焦点JF1及びJF2を通りすぎて合焦状態から離れて行くに従つて減少して行くようなピーク曲線に沿うような変化を呈する。
【0020】これに対してレンズに対する観察対象の位置が無限遠点にある場合、合焦判定パラメータPi は無限遠点にある合焦点に向つて単調に増加して行くような単調増加曲線に沿うような変化を呈する。
【0021】本発明による自動焦点調整装置はこのような関係を利用して、合焦判定パラメータPi の値が最大になるようにテレビジヨンカメラのレンズを合焦制御することにより、撮像面に結像する観察対象の映像を実用上十分な合焦精度で撮像画に結像させる。」(第0012〜0019段落)
これらの記載から、刊行物1には、「視野映像PIC内の所定位置に、所定の大きさ及び所定の形状の合焦検出領域FOを設定」すること(第0012段落)、「平均輝度Rに対する各画素の輝度B11、B12……BMNの分散によつて表される合焦判定パラメータPi を得る」こと(第0015段落)、「レンズの焦点距離FDを小さい値から大きくして行くとき、・・・合焦判定パラメータPi は、合焦点JF1及びJF2に対応する焦点距離FD1及びFD2になつたときそれぞれ最大値に到達するまで増大して行き、さらに合焦点JF1及びJF2を通りすぎて合焦状態から離れて行くに従つて減少して行くようなピーク曲線に沿うような変化を呈する。」(第0019段落)および「これに対してレンズに対する観察対象の位置が無限遠点にある場合、合焦判定パラメータPi は無限遠点にある合焦点に向つて単調に増加して行くような単調増加曲線に沿うような変化を呈する。」(第0020段落)ことにより、「合焦判定パラメータPi の値が最大になるようにテレビジヨンカメラのレンズを合焦制御する」こと(第0021段落)が記載されており、これから刊行物1には、
「レンズの焦点距離を変化させて視野映像PICを取得する工程、視野映像PIC内に合焦検出領域FOを設定する工程、合焦点検出領域FOにおける各画素の輝度B11,B12……BMNの分散によって表される次の式の合焦判定パラメータPi
Pi=[(B11-R)2+(B12-R)2+・・・
+(BMN-R)2]/(M×N)
(ただし、R=[B11+B12+・・・+BMN]/(M×N)は平均輝度)
の値を求める工程、合焦判定パラメータPiの値が最大になる値を選択する工程、合焦判定パラメータPiが最大値となる焦点距離を決定する工程、合焦判定パラメータPiの最大の焦点距離にレンズを合焦制御する工程、を具備する自動焦点調整方法。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「岩波 理化学辞典 第4版」(1993年6月10日 第4版第8刷)(以下、「刊行物2」という。)には、「分散」項目に以下の記載がある。
「[3][variance]確率変数Xの平均値をE(X)と書くとき、(X-E(X))2の平均値をいう。σ2で表わし、σは標準偏差とよぶ。・・・・(以下、略)・・・。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1における「視野映像PIC内に合焦検出領域FOを設定」は本願補正発明における「各画像の合焦すべき一部の画像エリアを取り出す」に相当し、引用発明1の「各画素の輝度B11、B12……BMN」は本願補正発明の明細書全体の記載からみて、本願補正発明におけるP(i,j)(ただし、i=0〜m-1、j=0〜n-1)に相当する。
とすると、引用発明1と本願補正発明との相違点は以下のものとなる。
[相違点1]
本願補正発明においては、「時系列的に焦点距離を変化させ」ることにより撮影された画像について標準偏差値(σp)(「標準編差値」は「標準偏差値」の明らかな誤記であるので、以下、本願補正発明に関する記載でも「標準偏差値」とする。)を算出するのに対して、引用発明1においては、「レンズの焦点距離を変化さて」との記載はあるも、「時系列的に」行うとはされていない点。
[相違点2]
本願補正発明では、(1)式で表現される標準偏差値σpの最大値を合焦点とするのに対して、引用発明1では、合焦判定パラメータPi
Pi=[(B11-R)2+(B12-R)2+・・・
+(BMN-R)2]/(M×N)
(ただし、R=(B11+B12+・・・+BMN)/(M×N)は平均輝度)
の値の最大値となるレンズ位置を合焦点としている点。

(4)当審の判断
上記[相違点1]および[相違点2]について検討する。
[相違点1]
引用発明1において、「レンズの焦点距離を変化させて」は「レンズの焦点距離FDを小さい値から大きくして行くとき」(第0019段落)との記載にもあるように、同時に複数の焦点距離に設定し得ない以上、異なる時に異なる焦点距離に設定することから、たとえ、引用発明1において「時系列的に」と明示されていないとしても、実質的に時系列的に行われると解するべきであり、本相違点1は実質的な相違点ではない。
[相違点2]
引用発明1における合焦判定パラメータPiは、「平均輝度Rに対する各画素の輝度B11、B12……BMNの分散によつて表される合焦判定パラメータPi」(第0015段落)と記載されているように、各画素の輝度の、いわゆる「分散」であり、刊行物2に記載されているように「標準偏差」は「分散」の平方根であるので、引用発明1において合焦判定パラメータPiの最大値となるレンズ位置を合焦点とすることは、各画素の輝度の「標準偏差」を最大値とするレンズ位置を合焦点とすることと等価である。
更に言うならば、引用発明1における合焦判定パラメータPiの表現式は、
Pi=[(B112-2×B11×R+R2)+・・・
+(BMN2-2×BMN×R+R2)]/(M×N)
=[(B112+・・・+BMN2)
-2×R×(B11+・・・+BMN)
+M×N×R2]/(M×N)
=[(B112+・・・+BMN2)
-2×R×(M×N×R)
+M×N×R2]/(M×N)
=(B112+・・・+BMN2)/(M×N)-R2となり、B11、・・・、BMNは、本願補正発明におけるP(i、j)(ただし、i=0〜m-1、j=0〜n-1)に相当することから、Piは本願補正発明における標準偏差σpの平方に等しくなる。
とすれば、引用発明1における合焦判定パラメータPiが最大値となる場合に代えて、その平方根である標準偏差が最大値となる場合とすることに何ら困難性はない。
このように、[相違点1]とした点は実質的な相違点ではなく、[相違点2]は当業者が容易に想到しうる構成であるので、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づき容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとは認められない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年9月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願時の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「時系列的に焦点距離を変化させ、順次撮影された画像から、該各画像の合焦すべき一部の画像エリアを取り出す画像エリア取り出し工程と、取り出された前記一部画像エリアの画素の光量の標準編差値を算出する標準編差値算出工程と、算出された標準編差値の中から最大値を選択する最大標準編差値選択工程と、選択された最大標準編差値が得られた時の焦点距離を合焦点として検出する合焦点距離検出工程と、焦点距離を前記合焦点となる焦点距離に設定する合焦点距離設定工程と、を具備することを特徴とする画像処理装置の自動焦点合せ方法。」

4.引用刊行物の発明、対比および当審の判断
これに対して、先の「2.平成14年9月17日付けの手続補正についての補正却下の決定、(2)刊行物」の項で示したように、原審の拒絶査定の拒絶の理由に引用された特開平6-205263号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「レンズの焦点距離を変化させて視野映像PICを取得する工程、視野映像PIC内に合焦検出領域FOを設定する工程、合焦点検出領域FOにおける各画素の輝度B11,B12……BMNの分散によって表される次の式の合焦判定パラメータPi
Pi=[(B11-R)2+(B12-R)2+・・・
+(BMN-R)2]/(M×N)
(ただし、R=[B11+B12+・・・+BMN]/(M×N)は平均輝度)
の値を求める工程、合焦判定パラメータPiの値が最大になる値を選択する工程、合焦判定パラメータPiが最大値となる焦点距離を決定する工程、合焦判定パラメータPiの最大の焦点距離にレンズを合焦制御する工程、を具備する自動焦点調整方法。」
本願発明と引用発明とを比較検討すると、先の「2.平成14年9月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の項において既に検討したように、引用発明における「視野映像PIC内に合焦検出領域FOを設定」は本願発明における「各画像の合焦すべき一部の画像エリアを取り出す」に相当する。
同様に、引用発明における「合焦判定パラメータPiの値が最大になる値を選択する工程」、「合焦判定パラメータPiが最大値となる焦点距離を決定する工程」、「合焦判定パラメータPiの最大の焦点距離にレンズを合焦制御する工程」と、本願発明における「算出された標準編差値の中から最大値を選択する最大標準編差値選択工程」、「選択された最大標準編差値が得られた時の焦点距離を合焦点として検出する合焦点距離検出工程」、「焦点距離を前記合焦点となる焦点距離に設定する合焦点距離設定工程」とは、それぞれ実質的に相当する工程である。
そして、引用発明の「合焦点検出領域FOにおける各画素の輝度の分散によって表される合焦判定パラメータPi」に代えて「取り出された前記一部画像エリアの画素の光量の標準編差値」とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明により当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-05 
結審通知日 2004-08-10 
審決日 2004-08-27 
出願番号 特願平6-310845
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川俣 洋史吉川 陽吾  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 青木 和夫
辻 徹二
発明の名称 画像処理装置の自動焦点合せ方法  
代理人 鈴江 武彦  

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