• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
管理番号 1105331
審判番号 不服2002-15840  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-20 
確定日 2004-10-15 
事件の表示 特願2001-542109「通信回線を用いた情報供給システム」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 8月 2日国際公開、WO01/55992]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2000年5月31日(優先権主張2000年1月26日)の出願であって、「通信回線を用いた情報供給システム」に関するものと認められ、平成14年2月14日付けの拒絶理由が通知され、その指定された期間内である平成14年4月1日付け、及び14年4月5日付けで手続補正がなされ、平成14年7月16日付けで拒絶の査定がなされたところ、拒絶査定に対する不服の審判請求のときに平成14年9月11日付けで手続補正がなされ、平成14年9月11日付けの手続補正は、特許法17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第4項に違反するとして同法第159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下され、当審において平成15年3月31日付けの拒絶理由が通知され、その指定された期間内である平成15年4月23日付け、平成15年6月6日付け、平成15年6月19日付けで手続補正がなされ、平成15年7月14日付けで最後の拒絶理由を通知したところ、その指定された期間内である平成15年9月4日付けで手続補正がなされものである。

第2.最後の拒絶理由について
平成15年7月14日付けの最後の拒絶理由は次のとおりである。
1.特許法第17条の2第3項違反について
平成15年6月6日付けでした手続補正は、下記の点で本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(1)特許請求の範囲について
平成15年6月6日付けでした手続補正は、特許請求の範囲について、
【請求項1】 インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置された管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって、
中継側である管理コンピュータ側に、呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベースを備え、
インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報を入手するステップと、
この入手した特定情報が、前記中継側データベースに予め登録された登録情報と一致するか否かの検索ステップと、
前記特定情報と登録情報とが一致したとき、特定エリアに設置され、かつ前記アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段の制御部に、前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して働きかけるようになっており、予め前記制御部内に決められた暗号モードが記録されており、中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モードを受信すると、この暗号モードが適正なものか、内部のデータと比較し、暗号モードが適正と判断すると、監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップと、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して、前記監視手段によって得られた情報を入手するステップと、
この監視手段から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした利用者に供給するステップと、
からなる通信回線を用いた情報供給システム。
【請求項2】 省略
【請求項3】 省略 」
と補正するものであるが、平成15年6月6日付けでした手続補正の特許請求の範囲に記載された「管理コンピュータ側」、「呼出側ID」、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」、「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側ID」、「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段」等の事項が、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載はない。
(2)発明の詳細な説明について
平成15年6月6日付けでした手続補正の【課題を解決するための手段】(段落番号【0006】)に記載された「管理コンピュータ側」、「呼出側ID」、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」、「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側ID」、「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段」等の事項が、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載はない、
(3)したがって、平成15年6月6日付けでした手続補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.特許法第36条第4項、第6項違反について
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

(1)本願の図2、図5に記載されている「暗号モード要求」、「暗号モード受信」、「暗号モードを送信」、「暗号モードを要求」、「暗号モードは適性か?」における「暗号モード」の意味と、本願の明細書の段落番号【0027】で定義されている「暗号モード」の意味が一致ぜず不統一であることから、本願発明でいうところの「暗号モード」が何を意味するのか不明であり、したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(2)明細書の記載の「暗号モード」の定義では「中継側からの特定の起動信号である特殊信号」、「不特定多数の者がこのシステムを使用できないように、予め制御端末5内に決められた特殊信号」の用語が使われているが、ここでいう「特殊信号」とはどのような信号であるのか不明である。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(なお、請求人は回答書において、電話機から入力できる「起動信号である特殊信号」として電話のトーン信号を挙げているが、電話のトーン信号は「特殊信号」といえるものではなく、また、電話のトーン信号を「予め制御端末」に記録したり、制御端末の起動用として使用するとは考えにくいことから、請求人の回答は当を得ていない。
また、「特殊信号」とは、「非常に簡単な信号ではないことを表現したまでであり、特に具体的なことを表現したものではない」と回答する一方、先願発明との比較においては「極めて特殊な信号である」と回答しているが、この回答では「特殊信号」の意味が依然として不明であるといわざるを得ない。)
(3)中継側からの特定の起動信号に関して、本願の図2では「制御部のコントロール開始用の暗号データ」と記載し、本願の図5では「制御端末起動用の特殊信号」と記載しているが、前者の「暗号データ」とはどのような暗号データを指すのか、また、後者の「特殊信号」とはどのような信号を指すのか不明であり、また、両者を使い分ける理由が不明である。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(4)「暗号」、「暗号モード」に関して、特許請求の範囲には、「インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報」、「予め前記制御部内に決められた暗号モード」、「中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モード」の記載があり、さらに、本願の発明の詳細な説明には、「暗号化された識別データ」(【0006】、「呼出側の暗号モード」(【0033】)、「中継側は呼出側へ暗号モードの認証データの要求を行う」(【0022】)、「特定電話側が、暗号モードを受信すると」(【0028】)、「暗号鍵データ(KA)」(【0059】)、「暗号化ランダムデータ(AR)」(【0062】)「認証データとして暗号化されたデータ」(【0102】)等の記載があり、本願発明で使用されている「暗号」、「暗号モード」が何を意味するのか不明である。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(5)「ID」に関して、本願明細書には「発呼者の・・・ID番号」、「呼出側ID」、「利用者ID」、「ID番号」、「ID」、「識別ID」、「識別符号(ID)」、「子機ID」、「識別符号(ID)」の記載があり、本願明細書又は図面の記載をみても各々の「ID」の意味が明確でない。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(6)「データベース」に関して、特許請求の範囲に「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」の記載があるが、「呼出側」とは何を指し、また、「呼出側ID」に対応付けられて登録される対象が何であるのか明確でないことから、どのような内容のデータベースであるのか不明りょうである。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(7)「監視手段」、「制御部」に関して、特許請求の範囲には「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、及び「呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段の制御部」の記載があるが、「呼出側ID」とは何を指し、「呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、及び「呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段の制御部」は、本願に最初に添付された明細書又は図面の、どの記載に裏付けられているのか明確でない。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(8)「制御部」について、本願の願書に最初に添付した明細書では「特定エリア側の制御部」(請求項2)と記載されていたものが、本願の明細書では「監視手段の制御部」と記載を変えている。「特定エリア側の制御部」と「監視手段の制御部」とはどのように対応するのか、それとも対応しないのか不明である。
(9)本願の願書に最初に添付した明細書では、「特定エリア側の制御部には中継側と取り決められた特定のアクセスコードが記憶されており」(請求項2)と記載されていたものが、その後「予め前記制御部内に決められた暗号モードが記録されており」に変更されているが、「特定のアクセスコード」と「暗号モード」とはどのように対応するのか不明である。
(10)「登録情報」と「特定情報」に関して、特許請求の範囲には、「前記特定情報と登録情報とが一致したとき、」の記載があるが、本願明細書をみても「登録情報」とは何を指すのか明確でない。
(11)特許請求の範囲には、「中継側である管理コンピュータ側に、呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」の記載があるが、本願の図面、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとの対応関係が不明確であるので、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
(12)特許請求の範囲には、「インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報」の記載があるが、本願の図面、本願の発明の詳細な説明に開示されたに記載されたものとの対応関係が不明確であるので、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない
(13)特許請求の範囲には、「中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モードを受信すると、この暗号モードが適正なものか、内部のデータと比較し、暗号モードが適正と判断すると、監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップ」の記載があるが、本願の図面、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとの対応関係が不明確であるので、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
(14)特許請求の範囲には、「この監視手段から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした利用者に供給するステップと」の記載があるが、本願の図面、本願の発明の詳細な説明に開示されたに記載されたものとの対応関係が不明確であるので、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
(15)本願の請求項1ないし3、及び発明の詳細な説明に記載された用語が不統一であり、加えて、1つの用語が複数の意味で使用されていることから、本願発明がどのような発明であるのか把握することができない。
(16)発明の詳細な説明は、以上のように不明りょうな記載が多数存在するので、当業者が請求項1ないし3に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
(なお、請求項1ないし3に係る発明は、国内優先の基礎となった出願(特願2000- 17279号)の明細書又は図面に開示がない「インターネット」、「呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、「呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」、「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側ID」、「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段」等の事項を発明の構成要素とするものであって、これらの事項は本願の出願(平成12年5月31日)のとき、又はその後の手続補正によって追加されたものであり、国内優先の基礎となった出願の願書に添付された明細書又は図面に記載された発明とは認められない。したがって、本願発明は、少なくとも国内優先の利益を享受できないものである。)

3.最後の拒絶理由とする理由
最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。
なお、当審で通知した平成15年3月31日付けの拒絶理由が解消したものではない。

第3.手続補正について
1.手続補正の内容
平成15年9月4日付けでした手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許法第17条の2第1項2号に該当する補正であって、以下のように補正するものである。
(1)特許請求の範囲について
「【請求項1】 インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置された管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって、
中継側である前記管理コンピュータに、呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベースを備え、
インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる呼出者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報を入手するステップと、
この入手した特定情報が、前記中継側データベースに予め登録された登録情報と一致するか否かの検索ステップと、
前記特定情報と登録情報とが一致したとき、特定エリアに設置され、かつ前記アクセスした呼出側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段の制御部に、前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して働きかけるようになっており、予め前記制御部内に決められた暗号モードが記録されており、中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モードを受信すると、この暗号モードが適正なものか、内部のデータと比較し、暗号モードが適正と判断すると、監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップと、
前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して、前記監視手段によって得られた情報を入手するステップと、
この監視手段から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした呼出者に供給するステップと、
からなる通信回線を用いた情報供給システム。
【請求項2】 前記管理コンピュータから前記特定エリアの通信端末に接続不能な状態、若しくは監視手段からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が、前記管理コンピュータで確認された時に、所定の異常通知をアクセスした呼出者に送信できるようになっている請求項1に記載の通信回線を用いた情報供給システム。
【請求項3】 前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して、前記監視手段によって得られた情報を入手する際、この送信されてくる情報が所定の圧縮アルゴリズムにて圧縮処理された画像の圧縮データであり、前記管理コンピュータは、この圧縮データを記憶装置に一時記憶し、前記アクセスしてくる呼出者の情報端末への通信回線のデータ伝送速度に合わせて、前記一時記憶された圧縮データを送信するようになっている請求項1に記載の通信回線を用いた情報供給システム。」

(2)発明の詳細な説明について
「【0006】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の通信回線を用いた情報供給システムは、インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置された管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって、
中継側である前記管理コンピュータに、呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベースを備え、
インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる呼出者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報を入手するステップと、
この入手した特定情報が、前記中継側データベースに予め登録された登録情報と一致するか否かの検索ステップと、
前記特定情報と登録情報とが一致したとき、特定エリアに設置され、かつ前記アクセスした呼出側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段の制御部に、前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して働きかけるようになっており、予め前記制御部内に決められた暗号モードが記録されており、中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モードを受信すると、この暗号モードが適正なものか、内部のデータと比較し、暗号モードが適正と判断すると、監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップと、
前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して、前記監視手段によって得られた情報を入手するステップと、
この監視手段から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした呼出者に供給するステップと、・・・親機端末のコストを安価なものとすることができる。」(なお、アンダーラインは補正した箇所を示す。)

2.手続補正の適否の検討
(1)特許請求の範囲の請求項1について「管理コンピュータ側」を「前記管理コンピュータ」とする補正は、最後の拒絶理由通知に係る拒絶理由の理由に示す事項について明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。
(2)特許請求の範囲の請求項1について「利用者側」を「呼出側」にする補正は、用語を統一するためのものといえ、最後の拒絶理由通知に係る拒絶理由の理由に示す事項について明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。
(3)特許請求の範囲の請求項1ないし3について「利用者」を「呼出者」にする補正は、用語を統一するためのものといえ、最後の拒絶理由通知に係る拒絶理由の理由に示す事項について明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。
(4)発明の詳細な説明についての補正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明が整合するように発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載に合わせたにすぎにものといえるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合する。

第4.請求人の釈明・意見
請求人は、平成15年7月14日付けの最後の拒絶理由に対して、平成15年9月4日付けで手続補正を行うとともに、意見書を提出し以下のように釈明・主張する。

1.特許法第17条の2第3項違反について
(1)「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」について
「監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」に関しては、当初明細書第31頁第19〜25行に記載され、また、当初明細書第14頁第11〜第16頁第2行には、「呼出側ID」と「特定エリア側の電話番号」が対応している点、「特定エリア側の電話番号」は「特定エリア側の制御端末」に対応している点、そして、この「制御端末」により「監視手段」は起動される点が記載されている。これら記載事項により、当初明細書又は図面には「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」が記載されているものと思料する。さらに実施例3についても同様である。したがって、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」なる記載は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。
(2)「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」について
当初明細書第14頁第14〜17行には「中継側に自己のデータベースが存在している」旨記載されており、この「自己のデータベース」が「中継側データベース」であることは明らかである。また、実施例3において「利用者データベース」が「中継側データベース」であることも明らかである。さらに、「呼出側ID」及び「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であることは上記(3)で記載したとおりである。そして、「中継側データベース」に「呼出側ID」が登録されていることは、当初明細書第14頁第14行〜17行に記載されているので、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」が「中継側データベース」に登録されていることも明らかである。したがって、「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視 ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」なる記載は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。
(3)「アクセスした利用者側と予め契約されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段」について
「呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段」の記載が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であることは上記したとおりであり、したがって「アクセスした呼出側と予め契されて呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段」の記載は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。

2.特許法第36条第4項、第6項違反について
[第2.2.(1)に関して]
本願の図2、図5、及び本願明細書の段落番号【0027】に記載の「暗号モード」とは、さきの回答書にも記載した如く、コンピュータ(電話を含む)間において通信線により送信可能であり、かつその間で了解できる記号を言い、この点において、本願の図2、図5に記載されている「暗号モード」の意味と本願の明細書の段落番号【0027】で定義されている「暗号モード」の意味は統一していると思料する。したがって、「暗号モード」には種々の態様(方式)が考えられ、電話のトーン信号もその一態様であり、段落番号【0027】に記載の「特殊信号」も「暗号モード」の一態様である。
[第2.2.(2)に関して]
本願の明細書の段落番号【0027】で定義される「特殊信号」とは、先の回答書にも記載した如く、一般的に他人が容易にコンピュータに侵入する「ナリスマシ」ができないように「非常に簡単な信号」でないものを意味し、「暗号モード」の一態様である。「特殊信号」の一例として、実施例3に記載した「暗号化鍵」と「復号化鍵」を用いた暗号系があげられる。なお、暗号とは「当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な信号」(広辞苑)であって、呼出側と中継側が予め契約が前提になっている以上、「電話のトーン信号」も特殊信号の一例と思料する。
[第2.2.(3)に関して]
両者とも「暗号モード」の態様であり、前者の「暗号データ」とは管理コンピュータ(仲介コンピュータ)と制御部間に関しては、一律に決められた認証データが自動的に送信されるため、「暗号データ」という表現を使った。一方、後者の「特殊信号」は上記したとおりである。
[第2.2.(4)に関して]
「暗号」とは、「当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な信号」のことをいい、その種々の態様を「暗号モード」として使用している。したがって、「暗号化された識別データ」(【0006】)、「暗号鍵データ(KA)」(【0059】)、「暗号化ランダムデータ(AR)」(【0062】)「認証データとして暗号化されたデータ」(【0102】)は、「暗号モード」の具体的態様を表す。
[第2.2.(5)に関して]
「発呼者の・・・ID番号」、「呼出側ID」、「利用者ID」は基本的には同一のもので、言い回しを変えて表現したものである。また、「ID番号」、「ID」、「識別ID」、「識別符号(ID)」、「子機ID」も、基本的には「身元確認情報」の意味で使用している。
[第2.2.(6)に関して]
「呼出側」とは、明細書の段落番号【0018】に記載の如く、「一般的には特定エリア側の電話や家屋等の保有者、またはそのエリアの利害関係者」を指し、そして、中継側データベースに登録されている内容が、「呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」であることは、上記したとおりである。
[第2.2.(7)に関して]
「呼出側ID」とは、発呼者が誰であるか特定する情報(即ち身元確認情報)を意味し、また、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」が当初明細書又は図面に記載されていることは、上記したとおりである。また、この記載により「呼出側IDに対応付けられて登録されている監視手段の制御部」も当初明細書又は図面に記載されていることは明らかである。
[第2.2.(8)に関して]
「特定エリア側の制御部」が「監視手段の制御部」であることは、当初明細書又は図面の図1において、特定エリア100内に監視手段1〜3が設けられており、また監視手段の制御部(制御装置4及び制御端末5)も特定エリア100内に設けられていることから明らかである。したがって、「制御部」を位置的に特定した場合「特定エリア側の制御部」となり、機能的に特定した場合「監視手段の制御部」となり、両者は対応している。
[第2.2.(9)に関して]
「暗号」とは、「当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な信号」のことをいい、その種々の態様を「暗号モード」として使用している。したがって、「特定のアクセスコード」とは「暗号モード」の具体的態様となる。
[第2.2.(10)に関して]
当初明細書第14頁第14〜17行(本願明細書段落番号【0022】)には「この応呼によって通信ラインが接続され、・・・この電話番号やID番号が登録されているかどうかを自己のデータベースの登録番号と比較して検索する。」と記載され、この記載の「登録番号」は上記特許請求の範囲に記載の「登録情報」に相当する。そして、この「登録番号」が呼出側の電話番号、ID番号等の認証データであることは明らかである。また、当初明細書第22頁第18行(本願明細書段落番号【0052】)に記載の「登録データ」も上記「登録情報」に相当するものであり、この「登録データ」も呼出側(利用者側)の利用者ID、暗証番号等の認証データであることは明らかである。
[第2.2.(11)に関して]
本件手続補正で「管理コンピュータ側」なる記載を「前記管理コンピュータ」なる記載に補正した、そして、「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」なる記載が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であって、実施例1、2に対応している。また、実施例1の仲介コンピュータ(管理コンピュータ)に自己のデータベース(中継側データベース)を有することも当初明細書第13頁第18、19行(明細書段落番号【0016】)及び同明細書第14頁第14〜16行(明細書段落番号【0022】)に記載されている。実施例2の管理コンピュータが利用者データベースを有することも当初明細書第21頁第6〜25行(明細書段落番号【0049】)に記載されている。したがって、上記特許請求の範囲の「中継側である管理コンピュータ側に、呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」なる記載と本願の図面、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとの対応関係が明確であって、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
[第2.2.(12)に関して]
本件手続補正で「利用者」なる記載を「呼出者」なる記載に補正した。この記載が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であることは上記したとおりであり、そして、上記「インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる呼出者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報」なる記載は、明細書の段落番号【0018】、【0022】、【0051】、【0052】、【0067】に記載されているで、上記特許請求の範囲の記載と本願の図面、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとの対応関係は明確であって、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとである。
[第2.2.(13)に関して]
上記「中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モードを受信すると、この暗号モードが適正なものか、内部のデータと比較し、暗号モードが適正と判断すると、監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップ」なる記載は、明細書の段落番号【0027】〜【0029】、【0059】〜【0063】に記載されているので、上記特許請求の範囲の記載と本願の図面、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとの対応関係は明確であって、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
[第2.2.(14)に関して]
本件手続補正で「利用者」なる記載を「呼出者」なる記載に補正した。この記載が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であることは上記したとおりであり、そして上記「この監視手段から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした呼出者に供給するステップと」なる記載は、明細書の段落番号【0029】、【0063】に記載されているので、上記特許請求の範囲の記載と本願の図面、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとの対応関係は明確であって、特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
[第2.2.(15)に関して]
上記の釈明で本願発明が明瞭に把握されるものと確信する。
[第2.2.(16)に関して]
上記の釈明で、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし3に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。

第5.当審の判断
1.特許法第17条の2第3項について
(1)本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、本件手続補正の特許請求の範囲、及び【課題を解決するための手段】(段落番号【0006】)に記載された「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、及び「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」の記載はなく、また、これらの事項が当初明細書等の記載から自明な事項でもないことから、本件手続補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

(2)これに関して、請求人は、「監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」については当初明細書第31頁第19〜25行に記載され、また、当初明細書第14頁第11〜第16頁第2行には「呼出側ID」と「特定エリア側の電話番号」が対応している点、「特定エリア側の電話番号」は「特定エリア側の制御端末」に対応している点、そして、この「制御端末」により「監視手段」は起動される点が記載されているので、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」なる記載は当初明細書等に記載した事項の範囲内である旨主張する。
しかしながら、当初明細書第31頁第19〜25行は「また、本実施例では、前記子機端末に設けられる監視手段として、前記監視用CCDカメラ45や集音マイク43を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら監視手段として、例えば動物等が発する赤外線を感知可能な赤外線センサーや、設置場所の雰囲気温度を測定可能な温度監視センサーや(温度による火災監視センサーを含む)、煙監視センサー等を用いるようにしても良く、これら使用する監視手段は、監視目的に応じて適宜に選択すれば良い。」の記載から明らかなように、監視手段に用いられるカメラ、マイク、センサー等を例示する記載は認められるものの「呼出側ID」や「特定エリア側の電話番号」の記載はなく、また、当初明細書第14頁第11〜第16頁第2行の記載をみても、中継側において呼出側の電話番号やID番号等による認証の記載は認められるものの、「呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」の記載はない。
(3)また、請求人は、「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」については、当初明細書第14頁第14〜17行には「中継側に自己のデータベースが存在している」旨の記載があり、この「自己のデータベース」が「中継側データベース」であることは明らかであり、また、実施例3において「利用者データベース」が「中継側データベース」であることも明らかであり、さらに、「呼出側ID」及び「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視 ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であることは上記のとおりであり、そして、「中継側データベース」に「呼出側ID」が登録されていることは、当初明細書第14頁第14行〜17行に記載されているので「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視 ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」が「中継側データベース」に登録されていることも明らかであり、したがって、「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視 ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」なる記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内である旨主張する。
しかしながら、当初明細書または図面の記載をみても「呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」について直接的な記載がなく、また、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(3)以上のとおり、本件手続補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.特許法第36条第4項、第6項違反について
1.そこで、本件出願の明細書及び図面の記載が不明りょうであるか検討する。
(1)「暗号」、「暗号モード」の意味について
「暗号」、「暗号モード」に関して、特許請求の範囲には、「インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる呼出者の電話番号、ID番号、さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つの特定情報」、「予め前記制御部内に決められた暗号モード」、「中継側である前記管理コンピュータから発せられる暗号モード」の記載があり、さらに、本願の発明の詳細な説明には、「暗号化された識別データ」(【0006】、「呼出側の暗号モード」(【0033】)、「中継側は呼出側へ暗号モードの認証データの要求を行う」(【0022】)、「特定電話側が、暗号モードを受信すると」(【0028】)、「暗号鍵データ(KA)と暗号鍵データ(KB)」(【0059】)、「暗号化ランダムデータ(AR)」(【0062】)、「認証データとして暗号化されたデータ」(【0102】)等の記載があり、本願明細書で使用されている「暗号」、「暗号モード」ついて多種多様の記載があることから、本願発明において、「暗号」、「暗号モード」の意味を特定することができない。したがって、本願発明がどのような発明であるのか把握することができないとともに、本願の発明の詳細な説明についても当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえない。

(2)「暗号モード」の定義について
段落番号【0027】に記載の「暗号モード」の定義において、「中継側からの特定の起動信号である特殊信号」、「不特定多数の者がこのシステムを使用できないように、予め制御端末5内に決められた特殊信号」の記載があるところ、「特殊信号」は学術用語ではなく、また、明細書の記載を参酌してもその内容がはっきりしないことから「特殊信号」の意味は不明りょうであり、したがって「暗号モード」の意味は不明りょうである。
これに関して請求人は、本願の明細書の段落番号【0027】で定義される「特殊信号」とは、一般的に他人が容易にコンピュータに侵入する「ナリスマシ」ができないように「非常に簡単な信号」でないものを意味し、「暗号モード」の一態様である旨釈明する。
しかしながら、請求人のいう「一般的に他人が容易にコンピュータに侵入する「ナリスマシ」ができないように「非常に簡単な信号」でないものが何を意味するのか不明りょうであり、不明りょうである「特殊信号」を用いて定義された「暗号モード」は不明りょうであるといわざるを得ない。
また、請求人は平成15年6月6日付けの回答書において、「特殊信号」とは、「非常に簡単な信号ではないことを表現したまでであり、特に具体的なことを表現したものではない」と回答する一方、当審が平成15年3月31日付けで通知した特許法第29条の2違反の先願発明(特願2000-120465号(特開2001-309067号公報参照))との比較においては「極めて特殊な信号である」であると回答し、特殊信号の意味を場合に応じて変えていることからみても「暗号モード」は不明りょうであるといわざるを得ない。

(3)「ID」の意味に関して、
「ID」に関して、特許請求の範囲には「ID番号」、「呼出側ID」の記載があり、本願明細書には「発呼者の・・・ID番号」、「呼出側ID」、「ID番号」、「ID」、「識別ID」、「識別符号(ID)」、「子機ID」、「識別符号(ID)」等の記載があるところ、
本願明細書又は図面の記載をみても各々の「ID」の意味が明確でないから、本願発明がどのような発明であるのか把握することができないとともに、本願の発明の詳細な説明についても当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえない。

(4)「監視手段」、「中継側データベース」に関して
当初明細書等には、「この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段」、及び「中継側である管理コンピュータ側に、呼出側IDと、この呼出側IDに対応付けられて登録された監視カメラ、監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視手段と、が登録されている中継側データベース」の記載はなく、また、これらの事項が当初明細書等の記載から自明な事項でもないことから、本願の発明の詳細な説明には、上記監視手段、及び上記中継側ベースを備えた本願発明について、当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

2.以上のように、本願の特許請求の範囲、及び発明の詳細な説明に記載された「暗号モード」、「呼出側ID」等の用語が不統一であって、一つの用語が複数の意味で使用されその意味を特定することができないことから、特許請求の範囲に記載された発明は不明りょうであり、加えて、「監視手段」、「中継側データベース」について、発明の詳細な説明に当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載しているともいえないことから、本願の特許請求の範囲、及び明細書又は図面の記載は不備であり特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

第6.むすび
したがって、平成15年9月4日付けの手続補正書による手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、また、本願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件も満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-20 
結審通知日 2003-12-02 
審決日 2003-12-15 
出願番号 特願2001-542109(P2001-542109)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04Q)
P 1 8・ 536- WZ (H04Q)
P 1 8・ 561- WZ (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 武井 袈裟彦
大日方 和幸
発明の名称 通信回線を用いた情報供給システム  
代理人 重信 和男  
復代理人 清水 英雄  
代理人 日高 一樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ