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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1105393
審判番号 不服2002-5314  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-28 
確定日 2004-10-21 
事件の表示 平成 9年特許願第217862号「コンピュータによるデータ記録及び検索方法、データベース、およびデータ記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 9日出願公開、特開平11- 65644〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成9年8月12日の出願であって、平成13年10月18日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで手続補正がなされたが、平成14年2月19日付けで拒絶査定された。これに対して、同年3月28日付けで審判請求がなされ、同年4月24日付けで審判請求の理由を補正する手続補正と同時に明細書の記載を補正する手続補正がなされ、前置審査に付された後、同年6月21日付けで前置報告書が提出された。当審において、平成15年9月16日付けで前記(平成14年4月24日付け)手続補正を却下し、同年12月18日付けで拒絶理由を通知したところ、平成16年3月4日付けで手続補正(及び意見書の提出)がなされたものである。

【2】本願発明
本願の請求項に係る発明は、上記平成16年3月4日付け手続補正による明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認められる。
「【請求項1】 物品の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号列により履歴データを形成し、前記履歴データを、コンピュータ用のメモリーにおけるレコード内の1データフィールドに格納し、または前記履歴データをコンピュータにより検索することを特徴とする、コンピュータによるデータ記録及び検索方法。」

【3】引用刊行物
(3-1)引用発明
1.特開平6-349691号公報
(1)当審の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

a.「【産業上の利用分野】本発明は半導体装置及びその製造装置と製造方法に係り、特に工程管理の容易な、多種類の半導体装置の同時生産の可能な半導体装置及びその製造装置と製造方法に関する。」(【0001】)

b.「また、工程記録部5は素子形成層3を形成するのに用いた半導体製造装置(半導体装置の製造装置、以下同じ。)とその製造時のプロセス条件を記録するために設けてある。また、該半導体装置を識別するための製造番号をこの代わりに記録してもよい。この工程記録部5には記号16が形成(記載)されている。記号16は数字、図形など容易に識別可能なものであればよい。本実施例においては記号16の具体的な記録手段として薄膜に算用数字を型どった穴を開けたものを用いている。この数字群は半導体装置1の製造に携わった半導体製造装置とそのプロセス条件に対応している。また、工程記録部5の記号16は切り欠き、くぼみのような形態をもって形成されていてもよい。」(【0011】)

c.「図11は本発明の第十の実施例として、各種の加工装置11が結合して構成されている半導体製造装置15に適用した場合である。本実施例においては半導体製造装置15は各種の加工装置11(成膜装置、エッチング装置、イオン注入装置、酸化炉、アニール炉、リソグラフィ装置等)と、これらを結合する搬送系12、搬送系制御装置14、記号読み取り機13より構成されている。記号読み取り機13は各処理装置11にそれぞれ付属していてもよい。また図11では搬送系12は中心部で交わっているが、図12に示すように、それぞれの加工装置11を網目状に結合してもよい。
図13は図11に示されたような記号16の読み取り機構を持つ半導体製造装置15を用いて半導体装置1を製造するときの手順を示したフローチャートである。半導体装置1の搬送過程において工程記録部5上の記号16は記号読み取り機13により認識、判読され、この情報は搬送制御装置14に送られる。搬送制御装置14は半導体装置1がどの工程まで終了しているか認識できるので、次の処理装置まで半導体装置1を搬送するように搬送系12に対して指令を送ることができる。処理装置では素子形成層3の加工後、該処理装置に固有の記号16を工程記録部5に形成する。この動作を半導体装置1の完成まで繰り返し行う。本実施例によれば工程を誤ることがなく、信頼性が向上する。この動作は複数の半導体装置1が半導体製造装置15上に存在しても可能である。これら複数の半導体装置を続けて製造する場合に、搬送制御装置によって最も効率よく加工が行えるように半導体装置1の配置を最適化することもできる。」(【0022】〜【0023】)

d.「図16は半導体装置1上の工程記録部5にあらかじめ半導体装置1の種類を表す記号と、必要な加工工程を表す記号を形成しておく本発明の第十三番目の実施例である。まず、あらかじめ製造したい半導体装置の種類に応じて工程記録部5に半導体装置1の種類と必要な加工工程を表す記号を工程順に形成しておく。そして半導体製造装置15に投入すると搬送経路において記号読み取り機13によって工程記録部5の記号16である半導体装置1の加工工程が読み取られる。この情報は搬送制御装置14に伝えられ、認識され、読み取られた通りの加工装置11へ搬送するように搬送系12に指令される。加工装置11では工程記録部5の記号16の通りに加工が行われる。この加工が終了したのち、工程記録部5に該処理装置での加工が終了したことを示す記号(加工終了記号)を形成する。さらに記号読み取り機13により記号16を読み取り、搬送制御装置によって加工終了記号の付いていない次の加工を示す記号を認識したのちに搬送系12によって所定の処理装置まで搬送を行う。これを工程が終了するまで行う。工程が終了したことを確認後、半導体製造装置15より排出される。本実施例によれば半導体装置1に製造に必要な工程が記載されているので、多種の半導体装置を同時に製造することができる。」(【0026】)

(2)以上の記載から、以下のことが明らかである。
(ア)工程記録部5に形成(記載)されている記号16は、物品(半導体装置)の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させたものである。
(イ)前記記号16は、全ての製造工程が終了した後には、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号列を構成したデータ、即ち履歴データとなる。従ってまた、記載dにおいてあらかじめ工程記録部5に工程順に形成しておく必要な加工工程を表す記号も、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号列により形成した履歴データであるといえ、結局、引用例にはかかる履歴データを形成する方法が記載されているといえる。

(3)したがって、上記引用例には、自明の事項も含め少なくとも次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「物品(半導体装置)の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号列により履歴データを形成する方法。」

(3-2)周知技術
2.特開平6-309329号公報
(1)同じく当審の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物2には、図面と共に以下の記載がある。

a.「【請求項1】 複数種類の作業工程を表す記号を作業工程順に組み合わせることによって作業工程フローを作成する作業工程フロー作成装置において、
作業工程に付随する作業工程名、設備名、標準時間等の作業工程データをあらかじめ記憶する作業工程データ記憶手段と、
画面表示機能を有する表示手段と、
その表示手段に上記作業工程データ記憶手段の内容を表示する際に参照される表示項目および表示位置を記憶するための表示項目位置記憶手段と、
その表示項目位置記憶手段の内容を変更するための表示項目位置変更手段とを備えてなることを特徴とする作業工程フロー作成装置。」(【特許請求の範囲】)

b.「【産業上の利用分野】本発明は、複数種類の作業工程を表す記号を工程順に組み合わせることによって作業工程フローを作成する作業工程フロー作成装置に関し、特に、作業工程に付随するデータの表示項目および表示位置を変更可能な作業工程フロー作成装置に関する。」(【0001】)

c.「さらに、作業工程フローはいろいろな目的に使用され、たとえば、作成された作業工程フローには、ある一つの型の製品を縫製するために必要な全ての作業が記載されているので、工程名・設備名をその表示項目とすればその型の縫製作業工程の雛形となる。また、それを印刷して保存すれば再度同型の縫製作業を行う場合に使用することができるので、長期にわたって有用な資料となる。また、全作業工程に作業者を割り当てたあとで、工程名・作業者名・工程メモを表示項目とすれば作業者に対する指示書としても使用できる。したがって、作業工程フローの使用される目的に応じて所望のデータを表示項目とすることができる機能はきわめて重要である。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、作業工程に付随するデータの表示項目および表示位置を必要に応じて容易に変更することができ、作業工程フローの使用目的に適合させて、独自の表示形式をもった画面表示あるいは印刷を可能とする作業工程フロー作成装置を提供することを目的としている。」(【0005】〜【0006】)

d.「外部記憶装置2は、一例として図2に示されるような、縫製作業に関連する作業工程データが作業工程データ記憶手段として記憶されるとともに、その作業工程データをディスプレイ3上に表示する際、いかなる表示項目をいかなる表示位置に表示するかを表すデータ、たとえば、図5に示されるような表示項目および表示位置データ(表示環境データ)が、表示項目位置記憶手段として記憶されている。」(【0012】)

e.「図2は、縫製作業に関連する作業工程データの一例を示す図であり、工程データの表示座標を表す横および縦座標X、Yをはじめとして、各工程におけるマシン名、工程番号、工程名、標準時間、オペレータ名、工程メモとから構成されている。」(【0015】)

f.「次に、図4に示される作業工程フロー表示画面9について説明すると、作業工程フロー作成画面9には、図2に示される作業工程データの内容がX,Y座標で表される座標に表示される。すなわち、各作業工程において、中央に表示されている工程記号10は、一例として、図6に示されるように、あらかじめ各マシン名に対応して決められている工程記号図形データが使用され、各作業工程に対応する図形の工程記号10が表示される。また、工程記号10の周りには、図5の表示環境データの内容にしたがって作業工程データの並びが表示される。」(【0020】)

(2)以上の記載から、以下のことが明らかである。
(ア)記載a、bから、刊行物2にいう作業工程フローとは、複数種類の作業工程を表す記号を作業工程順に組み合わせることによって作成するものであり、また、例えば記載c等から、その作業工程は縫製作業工程であって、物品(縫製された物品)の製造工程であるといえるから、物品の製造工程を表す記号を製造工程順に組み合わせることによって作成するものといえる。
(イ)記載e、f及び図2、4等から、例えば図4に示される、前脇付け(A1)、割りアイロン(A2)、玉縁縫い(A3)、・・・、裾付け(A7)という一連の作業工程が、作業(製造)工程のフローであって、それが縫製という製造作業の製造工程の順を表すものであることは明らかである。また、例えば図4に示される前記作業工程フローは、図2に示される作業工程データの内容が(X、Y座標で表される座標に)表示されるものであって、その図2に示される作業工程データの工程番号A01(工程名、前脇付け)、A02(同、割りアイロン)、A03(同、玉縁縫い)・・・、C02(同、袋ロック)が、(縫製される)物品の製造工程における各工程にそれぞれ対応させた記号であって、その物品の製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる「記号の集合」により形成された製造工程の順を表す(作業工程フロー)データを意味することも明白である。
(ウ)記載a、cから、前記作業工程データは外部記憶装置2に記憶されるものであるから、前記の製造工程の順を表すデータ(図2の作業工程番号:A01、A02、・・・、C02)は、少なくとも、コンピュータ用のメモリーに格納したものであるといえ、刊行物2は、コンピュータによる(前記のような)データ記録方法を開示するものであるといえる。
(3)以上のことから、刊行物2には、自明の事項も含め少なくとも以下の技術が記載されているものと認められる。
「(例えば縫製される)物品の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号の集合により少なくとも前記製造工程の順を表すデータを形成し、前記製造工程の順を表すデータを、コンピュータ用のメモリーに格納する、コンピュータによるデータ記録方法」に係る技術。

3.特開平8-264405号公報
(4)本願出願前に頒布された刊行物3には、図面と共に以下の記載がある。

a.「【発明の属する技術分野】本発明は、製造に長時間要する半導体装置の自動化された製造工場において、現在、流動中のロットに対しても、処理順序や処理内容の変更をリアルタイムに反映させて製品品質の適正化を図ったシステムに関する。」(【0001】)

b.「【課題を解決するための手段】本発明は、製造すべき半導体装置の各品名毎に最小作業単位を示す工程名を処理順序に従って記述した品名固有フローに基づいて、ロット単位で流動させ処理を行うために、ロット毎に順次実行すべき工程を指令するための工程名を記述したロット固有フローを生成するプロセスフロー生成装置である。」(【0010】)

c.「2.品名固有フローの生成及び変更
品名固有フローを生成するために、原単位管理システム31が設けられており、そのシステム31の詳細な構成は図2に示されている。図2において、プロセスフロー編集装置41は品名固有フローを編集するための装置であり、工場外の工程設計者が利用できる多数の箇所に設けられている。品名固有フローは、品名毎の最小作業単位である工程の流れを記述したものである。ここでは、品名固有フローはこの工程名の羅列により記述されている。プロセスパーツ編集装置42は、各最小作業単位の内容、即ち、レシピをパーツ群毎に記述し変更する装置である。工程の処理条件等を変更する場合であって、他の工程名では対応できない場合は、プロセスパーツ編集装置42を用いて、その条件で処理される作業内容を新規に記述し、新しい工程名が定義される。データベース(DB)コンパイラー43は、品名固有フローや作業内容をプロセスフロー生成装置50や他のステム32〜35で解読可能なようなデータ形式に変換する装置である。又、マスターデータ展開装置44は、工場内に分散している複数のプロセスフロー生成装置50に対して、全く同一に、データベースから読み出し、品名固有フローを展開する装置である。
ある品名固有フローを生成して、その品名固有フローに従って製造が開始された後、上述したように、各種の要因により工程順序や工程の処理内容に変更を加えたい場合がある。その場合にも、プロセスフロー編集装置41により、品名固有フローの変更が加えられる。その変更は、マスターデータ展開装置44を介して、プロセスフロー生成装置50に出力され、その装置50によって、ロット固有フローに変更が加えられる。
図2において、プロセスフロー編集装置41は、半導体装置製造プロセスの基本フローを設計・変更したりする編集を行う基本フロー編集装置1、及び、品名毎のオプション部分のみを設計・変更する品名フロー変更編集装置2を有している。各装置1、2で独立に編集されたそれぞれのプロセスフローは品名固有フロー生成装置4に出力され、DBコンパイラ43によって、各設備に対する指令コード群からなる品名固有フローに変換され、品名固有フロー生成装置4に記憶される。」(【0027】〜【0029】)

d.「このように品名固有フローを基本フローと品名フロー変更とに完全に分離して構成できるのは次の理由があるからである。
(1) 品名固有フローは、工程の集合であり、その工程の順序からなる情報の集合体である。従って、品名固有フローは、自由に分割構成することが可能である。」(【0032】)

e.「ところで、製品を製造するラインは通常長く、複数の製品ロットが常時流れており、それぞれのロットに対してロット固有フローが決められている。それは、製造途中で、変更があった場合などで、同じ製品でも製造工程が異なる場合が存在し得るからである。従って、自動化工場等におけるロット管理はそれぞれのロット毎のプロセスフローをも考慮しなければならない。このため、それらのロット毎のプロセスフローに対しても編集結果がかかわることから、品名フロー変更のデータ量が少ないとは言え、変更のための編集時に、このプロセスフロー編集装置41の負担が大きくなる。しかし、本実施例システムでは、編集装置41とは、別に、独立して、ロット固有フローを更新するためのプロセスフロー生成装置50が設けられているために、編集装置41での負荷増大はない。即ち、編集とロット固有フローの更新は並行して実行されるので、編集装置41はロット固有フローの変更まで関与する必要はなく、品名固有フローの変更だけを行えば良い。」(【0040】)

f.「3.プロセスフロー生成装置
図3は、図2におけるプロセスフロー生成装置50の詳細な構成を示したブロック図である。図3において、プロセスフロー変更履歴管理手段51は、品名固有フローの更新に対して、各世代毎に品名固有フローを更新履歴記憶手段56に記憶するための品名固有フロー更新手段52、製造ラインに新規に投入されるロットに対してロット固有フローの初期値を設定する初期値設定手段54を有している。又、プロセスフロー反映管理手段71は、各世代の品名固有フローの変更工程がロット固有フローに反映できるか否かを判定する判定手段72、その判定手段72の判定結果に基づいて、実際に、反映可能な世代の品名固有フローの変更工程をロット固有フローに反映させるロット固有フロー更新手段74を有している。さらに、プロセスフロー生成装置50には、時間の経過に伴って更新される各世代の品名固有フロー、各世代の変更位置を記憶する更新履歴記憶手段56、多数の流動中のロットに関して、それぞれのロット固有フローを記憶するロット固有フロー記憶手段58が設けられている。
4.プロセスフローのデータ構成
プロセスフローは品名固有フローとロット固有フローの総称である。品名固有フローは図6に示すように構成されている。図6では、品名を1〜mの番号で表している。この品名i毎に、図5に示す最小作業単位を示す工程名A1,A2,…K4等を処理順に並べて品名固有フローが構成されている。又、各品名i毎に、品名固有フローの履歴は、図8に示すように更新の古い順に形成される。そして、データの世代を示すために世代レベル(以下、単に「レベル」という)が記憶されている。図8では、レベル0〜現レベルZ(i)まで表示されている。現レベルZ(i)の品名固有フローが最新に更新されたデータである。」(【0045】〜【0046】)

g.「ロット固有フローのデータは、図7に示すように構成されている。図7では、ロットは(品名,ロット番号)で特定され、品名1のロット番号は1〜n1、品名mのロット番号は1〜nmを使用している。任意のロットは(i,j) で特定される。又、各ロット固有フローにはチェックレベルL(i,j)が設けられている。これは、各ロット固有フローが時間の経過に伴って、品名固有フローを反映して更新されて行くが、現ロット固有フローが品名固有フローのどのレベルまで、反映のための処理が実施されたかを示す。例えば、チェックレベルL(i,j)が現レベルZ(i)に等しいなら、そのロット固有フローは、最新レベルまでの品名固有フローの反映のための操作が行われことを意味する。但し、後述するように、ロット固有フローの更新は、そのロットの反映操作実行時の現在位置と各レベルのポインタP(i,k)との位置関係で決定されるので、反映操作が実行されても、そのレベルの品名固有フローに変更されたことを必ずしも意味しない。又、ロットの現在位置よりも手前に記載されている工程名は、そのロットが実際に処理された工程名であり、そのロットの工程履歴となる。ロットの現在位置よりも先方( 時間的に後) に記載されている工程名は、現時点におけるロットがこれから処理される工程予定を示している。
5.ロット固有フローの初期設定
ロットトラッキングシステム34から、製造ラインにこれから新規に投入されるロットの識別情報(i,j) が入力される。即ち、これらか、品名iの製品をロット番号jで製造することが指令される。図10のプログラムは、初期設定手段54により実行され、ロットの新規投入時に起動される。ステップ200で、ロットトラッキングシステム34からロットの識別情報(i,j) を受信して、ステップ202において、更新履歴記憶手段56に記憶されている品名i、最新レベルZ(i)の品名固有フローがロット固有フロー記憶手段58に転送されて、そのロットに対するロット固有フローが生成される。この後、このロットはこのロット固有フローに記述された工程に従って順次処理されて行く。ロットが製造ラインを流動している間にも、製造結果のフィードバックや環境の変化等に伴い、製造条件を変更したい場合がある。この時には、その品名の品名固有フローが更新される。この更新状況は、以下に述べるように、可能な限り流動中のロットにも適用れる。」(【0049】〜【0050】)

(5)以上の記載から、以下のことが明らかである。
(ア)記載b、c、f及び図5ないし7等から、その品名固有フロー及びロット固有フローを構成する最小作業単位を示す工程名A1、A2、…K4等は、物品(製品)の製造工程における各工程にそれぞれ対応させた記号であり、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせて形成した、少なくとも記号の集合であるといえる。(尚、前記記号の集合は本願発明の記号列に相当するものと認められる。)
(イ)図6、7に示された、工程名A1、A2、…K4により構成された品名固有フローのデータM及びロット固有フローのデータWは、前記記号の集合により形成した前記製造工程の順を表すデータであるといえる。(尚、前記データM、Wは本願発明の履歴データに相当するものと認められる。)
(ウ)例えば記載cから、前記品名固有フローは、そのデータMを含めて品名固有フロー生成装置4に記憶され、また、記載g及び図3から、前記ロット固有フローのデータWはロット固有フロー記憶手段58に記憶される。
そして、前記品名固有フロー生成装置4の品名固有フローが記憶される部分及び前記ロット固有フロー記憶手段は、少なくとも、コンピュータ用のメモリーであるといえ、刊行物3は、コンピュータによる(前記のような)データ記録方法を開示するものであるといえる。

(6)以上のことから、上記刊行物3には、自明の事項も含め少なくとも以下の技術が記載されているものと認められる。
「物品(製品)の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号の集合により少なくとも前記製造工程の順を表すデータを形成し、前記製造工程の順を表すデータを、コンピュータ用のメモリーに格納する、コンピュータによるデータ記録方法」に係る技術。

(7)上記刊行物2、3の記載から、以下の技術が本願出願前に周知であったものと認められる。
「物品の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号の集合により少なくとも前記製造工程の順を表すデータを形成し、前記製造工程の順を表すデータを、コンピュータ用のメモリーに格納する、コンピュータによるデータ記録方法」に係る技術。

【4】対比
本願発明(前者)と引用発明(後者)とを対比すると、両者は、少なくとも「物品の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号列により履歴データを形成する」との発明特定事項(方法)を備える点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明は、上記一致点に係る発明特定事項に加え、前記履歴データを、コンピュータ用のメモリーにおけるレコード内の1データフィールドに格納し、または前記履歴データをコンピュータにより検索する、との発明特定事項を備えるコンピュータによるデータ記録及び検索方法に係る発明であるのに対し、引用発明は、本願発明の前記発明特定事項を備えない、前記履歴データを形成する方法に係る発明である点。

【5】当審の判断
上記【3】(3-2)に示したように、「物品の製造工程における各工程にそれぞれ記号を対応させ、前記製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号の集合により少なくとも前記製造工程の順を表すデータを形成し、前記製造工程の順を表すデータを、コンピュータ用のメモリーに格納する、コンピュータによるデータ記録方法」に係る技術が、本願出願前に周知であったものと認められる。そして、引用発明の物品の製造工程の管理にコンピュータを使用することは当業者が容易に認識し得ることであるから、引用発明に前記周知技術を適用して、引用発明の履歴データを、少なくともコンピュータ用のメモリーに格納し、または前記履歴データをコンピュータにより検索する、コンピュータによるデータ記録及び検索方法を想起すること自体は、当業者が適宜容易になし得たところと認められる。
ところで、前記履歴データを格納するコンピュータ用のメモリーはデータベースとして機能し、通常「関連した一連のフィールドはレコードを構成し、レコードの集合がデータベースを構成する」(Dan Gookin,Wallace Wang、「祝入門コンピュータ辞典」、ソフトバンク株式会社、1996年12月10日初版発行、P.344、415-416の「フィールド」及び「レコード」の項参照。)のであるから、前記の適用に際し引用発明の履歴データをコンピュータ用のメモリーに格納するに当たっては、そのメモリー(データベース)に格納すべき履歴データをデータフィールドに格納することは当然であって、その履歴データは前記のとおり製造工程の順に前記各記号を組み合わせてなる記号列により形成され記号列として工程全体の順序を表す1つのまとまったデータとしての意味を成すものである以上、その履歴データを前記メモリーにおけるレコード内の1データフィールドに格納することは、当業者が当然のこととして(若しくはごく容易に)採り得る設計的事項にすぎず、それにより格別の効果を奏するものとも認められない。

【6】むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、上記引用発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、 結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-23 
結審通知日 2004-08-24 
審決日 2004-09-07 
出願番号 特願平9-217862
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 信男  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 村上 哲
岩本 正義
発明の名称 コンピュータによるデータ記録及び検索方法、データベース、およびデータ記録媒体  
代理人 高田 守  

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