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審決分類 |
審判 補正却下不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) G11B |
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管理番号 | 1105405 |
審判番号 | 補正2003-50004 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-07-22 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-16 |
確定日 | 2004-11-04 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第195839号「ディスク記憶装置」において、平成14年 4月30日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判の請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成4年(1992年)7月1日(パリ条約による優先権主張 1991年7月1日 ドイツ(DE))の特許出願であって、平成14年4月30日付けで明細書について手続補正がなされたが、当該補正について、特許法第53条第1項の規定により平成14年10月16日付けで補正の却下の決定がなされたものである。 2.原決定の理由の概要 原審における却下の理由は、概要以下のとおりである。 平成14年4月30日付け手続補正による補正は、特許請求の範囲の請求項等において「磁気ディスク駆動装置」とあるのを、すべて「ディスク記憶装置」と補正することを含むものであるが、本願の出願当初の明細書には一貫して「磁気ディスク駆動装置」としか記載されておらず、他の「ディスク記憶装置」については何ら開示、もしくは示唆もされていなかったものであるから、当該補正は本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ同構成が同明細書の記載よりみて自明な事項とも認められない。 よって、上記手続補正による補正は、明細書の要旨を変更するものであるから、特許法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 3.当審の判断 〔3-1〕当初明細書の記載 本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)には、以下の記載が認められる。 (i)「【請求項1】 固定子、回転子、軸受(10、12;18、19)及び同軸ボス(5、7)を備え、該ボスの外面上に1又は複数の固定ディスクが固着される磁気ディスク駆動装置において、ボス(5、7)が径方向の外縁領域において回動自在に枢支されることを特徴とする磁気ディスク駆動装置。」(特許請求の範囲) (ii)「【従来の技術】 磁気ディスク装置においては、磁気ディスクの大きさが2.5インチから1.8インチさらに1.3インチ(1インチ=25.4mm)と益々小型化したことによって要求される高精度のために、電動機において必要とされる高度の許容差及び特別に要求される品質水準を維持するために繰り返し不能な衝撃や又は反復不能なランアオウト等をこれらの電動機に与えることなどが行なわれている。 また品質維持のためには温度の変化にも対処可能でなければならず、軸受部材のある程度の支持力も保証し、また特定の共振周波数は避けなければ成らない。 【発明が解決しようとする課題】 したがって本発明の課題は、前述した特性をさらに満たすようにした、量産可能な小型電動機を提供することにある。」(段落[0002]〜[0004]) (iii)「【実施例】 次に、図1ないし7に示した実施例について本発明を詳説する。 図1、3、5はいわゆる外部回転型の構成、すなわち、内部固定子1が位置が固定されて下板に固着され、内部固定子1の円筒状の外周の回りにおいて永久磁石リング3が回転し、永久磁石リング3が別の中空円筒状の磁気回路リング11と共にこの磁気回路リング無しでカップ状あるいはベル状の外部回転子内に電動機の駆動装置要素を形成され、この外部回転子内において永久磁石のリングが配設された構成を示している。 図2、4、6はこれに代わるものとして、いわゆる内部回転型の構成、すなわち、回転子軸が直接に(時に軟磁性の中空円筒状磁気回路リングを介して)永久磁石リングが回転子を支持し、磁気回路リングの外周は前記下板に位置を固定して連結された中空リング状の固定子コア積層体の内部において回転するようにした構成を示している。 これらの図に共通の構成は、回転するベル又はカップが磁気ディスクのボスを同時に構成し、回転子の外周側に、従って直接駆動電動機の外側に軸受が配されるようにして前記ベル又カップがその外周面において電動機を径方向に囲むようにしたことにある」(段落[0007]〜[0010]) (iv)「図1ないし7の構成において本質的なことは、軸受10、12、18、19が径方向に電動機の外側にあり、電動機を囲んでいることである。従って駆動電動機はほとんど軸受内に配される。」(段落[0018]) (v)「本発明の図1から図7に示されたすべての実施例において、軸受10、12、18、19が固有の電動機の径方向の外側に配設され電動機を囲む構成とされていることが本質的である。駆動電動機は、ほぼ軸受に収容されている。」(段落[0042]) (vi)「【発明の効果】 以上説明したとおり、本発明によれば、軸受を電動機の径方向外側に電動機を取り囲む構成としたことのより、高精度を実現し量産可能な小型磁気ディスク駆動装置を提供するという利点を有する。 また、本発明の磁気ディスク駆動装置によれば軸受部材の支持力が確保され安定で雑音が少ないという利点を有する。 さらに本発明によれば、シール性のボールレース部材によってデータ記憶領域は密封され、通風手段によって塵埃粒子から回避されるという利点を有する。」(段落[0045]〜[0047]) (vii)「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の外部回転型の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【図2】本発明の外部回転型の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【図3】本発明の外部回転型の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【図4】本発明の内部回転型の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【図5】本発明の外部回転型の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【図6】本発明の内部回転型の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【図7】本発明の駆動装置の一実施例を示す断面図である。 【符号の説明】 1 内部固定子 2 外部固定子 3 永久磁石 4 回転子リング 5、7 ボス 10、12、18、19 軸受 11 縁部 17 リング部材」 〔3-2〕判 断 当初明細書における上記記載を考慮すると、本件が対象とする発明について、以下のa〜eの事項が認められる。 a.磁気ディスク駆動装置の駆動部分に特徴を有するものであること(上記記載(i))。 b.磁気ディスク装置においては、小型化によって要求される高精度のために駆動装置を構成する電動機の品質保持のため軸受部材の支持力を保証する必要があり、本発明の課題は、上記特性をさらに満たすようにした、量産可能な小型電動機を提供することにあること(上記記載(ii))。 c.図1〜7に示した本発明の実施例において共通する構成は、回転するベル又はカップが磁気ディスクのボスを同時に構成し、回転子の外周側に、従って直接駆動電動機の外側に軸受が配されるようにして前記ベル又カップがその外周面において電動機を径方向に囲むようにしたことにあること(上記記載(iii))。 d.図1〜7の構成において本質的なことは、軸受10、12、18、19が径方向に電動機の外側にあり、電動機を囲んでいることであり、従って駆動電動機はほとんど軸受内に配されること(上記記載(iv)、(v)、(vii))。 e.本発明によれば、軸受を電動機の径方向外側に電動機を取り囲む構成としたことにより、高精度を実現し量産可能な小型磁気ディスク駆動装置を提供するという利点を有すること。 また、本発明の磁気ディスク駆動装置によれば軸受部材の支持力が確保され安定で雑音が少ないという利点を有すること。 さらに本発明によれば、シール性のボールレース部材によってデータ記憶領域は密封され、通風手段によって塵埃粒子から回避されるという利点を有すること(上記記載(vi))。 上記によれば、当初明細書には、磁気ディスク装置の駆動装置を構成する高精度で量産可能な小型電動機を提供することを目的とし、本質的には、軸受を電動機の径方向外側に配して電動機を径方向に囲むようし、駆動電動機をほとんど軸受内に配されるようにすることが記載乃至開示されているということができる。また、当初明細書中には、磁気ディスク装置としての(駆動用電動機と関連した)具体的な構成については特に示されておらず、図1〜7の実施例にも、上記電動機の構成が示されているのみで、磁気ディスク装置に関連した構成は何ら示されていないことは明らかである。 そうすると、当初明細書には、文言上磁気ディスク装置の駆動装置とされていても、駆動装置(電動機)の構成しか示されておらず、明細書及び図面には磁気ディスク装置としての構成が何ら具体的に記載乃至開示されていないことを考えると、当初明細書における「磁気」なる限定は本来的に技術上特に意義を有するものとはいえないというべきである。 したがって、当初明細書中に上記駆動装置(電動機)が磁気ディスク装置以外のディスク装置にも適用可能であることは特に明記されていないとしても、高精度で量産可能な小型電動機を提供するという目的との関連からすると当初明細書の記載等からみて自明な範囲の事項というべきであり、特許請求の範囲の請求項等において「磁気ディスク駆動装置」とあるのを、「ディスク記憶装置」と補正することは、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された範囲内の補正に該当する。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記手続補正を却下すべきものとした原決定は失当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2004-10-14 |
出願番号 | 特願平4-195839 |
審決分類 |
P
1
7・
56-
W
(G11B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山田 洋一、齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
川上 美秀 江畠 博 |
発明の名称 | 磁気ディスク駆動装置 |
代理人 | 加藤 朝道 |