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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07K
管理番号 1105420
審判番号 不服2002-9178  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-23 
確定日 2004-10-22 
事件の表示 平成 4年特許願第358026号「神経α-カテニン」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 8月 2日出願公開、特開平 6-211898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [本願発明]
本願は、平成4年12月25日の出願であって、その発明は、平成15年12月4日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 アミノ酸配列が配列表の配列番号1で表され、かつ細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項2】 配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列に1以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加の少なくとも1つを有し、かつ配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列との相同性が81.6%を超え、細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項3】 請求項1又は2のポリペプチドをコードする遺伝子。
【請求項4】 配列表の配列番号2で表される塩基配列の125〜2842番目の塩基配列で表される請求項3記載の遺伝子。
【請求項5】 請求項3記載の遺伝子に厳密な条件下でハイブリダイズ可能であり、かつ細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有する配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列との相同性が81.6%を超えるポリペプチドをコードする遺伝子。
【請求項6】 請求項3〜5のいずれか1項に記載の遺伝子を導入した形質転換細胞を培養し、該培養物から細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有するポリペプチドを採取することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項7】 請求項3〜5のいずれか1項に記載の遺伝子を用いることを特徴とする細胞接着機能の調節方法。」

[当審での拒絶理由の概要]
一方、当審において平成15年10月6日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願請求項1〜7に記載された事項により特定された発明1〜7(以下、「本願発明1〜7」という)は、遺伝子工学に関する周知技術を考慮すると、CEll Struct. Funct. Vol.16 No.6(1991)p.605 3C-1015(以下、「引用例1」という)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.88(1991)p.9156-9160(以下、「引用例2」という)及びCell Vol.65(1991)p.849-857(以下、「引用例3」という)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

[引用例に記載された事項]
引用例1には、「Nカドヘリンと会合する新規なカテニン」について記載されており、
(1-1)「カドヘリン細胞接着分子は、いくつかの細胞質蛋白質、所請カテニン、を経由して細胞スケルトンと作用すると云われてきた。細胞質ドメインが切断された変異カドヘリンは、カテニンとの結合性のみならず、細胞間接着機能も失う。そのため、どのようにカドヘリンの機能を制御するかを理解するために、カテニンの構造と機能を研究することは重要である。最近、ナガフチらは、E-カドヘリン会合102kd蛋白質(=CAP102)をクローン化した。そして、それが、ビンキュリンと似ていることを見つけた。
この研究において、N-カドヘリンと結合する分子の同定を試みた。
N-カドヘリンを、孵卵10日目のニワトリ胚脳からイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。いくつかの蛋白質が、このカドヘリンと結合することを見つけた。ラットをN-カドヘリン-カテニン錯体で免疫化し、ハイブリドーマを生産させた。得られたモノクローナル抗体の一つでは、N-カドヘリンと連結する二つの帯を確認した。そして、ウエスタンブロッティングにより該分子の組織分布を分析し、脳中に最も豊富にあることがわかった。また、抗体は、マウスと交叉反応することもわかった。抗体により脳細胞の単層培養物を染色した時、グリアと神経細胞の下位群のみがそれと反応した。この抗体により認識された抗原のcDNAクローンの部分シークエンスから、この分子はCAP102に類似していることが、明らかになった。」と記載されている。
引用例2には、「ウボモルリン-係留蛋白質α-カテニンはビンキュリン類縁物である」ことについて記載されており、
(2-1)「Ca2+の細胞質領域に依存性の細胞接着分子(CAM)ウボモルリンは、α,β,及びγカテニンとそれぞれ呼ばれている102,88,及び80kDaの大きさの分子量を持つ明確な細胞質蛋白質と会合する。この錯体形成は、ウボモルリンを、細胞接着特性に対してまず最初に重要であると思われるアクチンフィラメント(短繊維)ネットワークとリンクする。我々は次のことを明らかにする。カテニンに対する抗体も、ヒトのN-カドヘリン、マウスのP-カドヘリン、チキンのA-CAM(接合-特異性CAMを接着する、又N-カドヘリンと云われている)もしくはアフリカツメガエルU-カドヘリン、を含む錯体とイムノ沈殿を生じる。このことは、α-カテニンがその他のカドヘリンと錯体を作ることを証明している。イムノフルオレッセンステストにおいて、α-カテニンは、原形質膜でカドヘリンと共局在化される。しかしながら、カドヘリン-ネガティブなLtk-細胞中では、α-カテニンは細胞質中に均一に分配されることが分かり、いくつかの付加的な生物的機能を示唆している。これらの細胞中におけるウボモルリンの表出は、接触細胞の膜エリアでのカテニンの濃縮を引き起こす。また、我々は、ムリン(murine)α-カテニンをクローン化及びシーケンス化した。我々の結果は、細胞-細胞及び細胞-基質接着分子の細胞質係留に関係した新規なビンキュリン-関連の蛋白質ファミリイーの可能性を示唆している。」(抄録)、
(2-2)「Ca2+-依存性細胞接着分子(CAM)のカドヘリン遺伝子ファミリーは、むしろ限られた数の転移膜糖蛋白質、その最適研究例は、ウボモルリン/E-カドヘリン,肝臓CAM(L-CAM),N-カドヘリン及びP-カドヘリンである、から元々は構成されている。どのメンバーも特定のセルタイプの細胞接着を調節することが明らかにされ、そして、それは多細胞有機体の組織化のための基本であると考えられた。最近では、該ファミリーの新メンバーが、マウス筋芽細胞でのM-カドヘリン,アフリカツメガエル発生初期におけるE/P-,U-,及びXB-カドヘリン,及び付着性糖蛋白質とより関連の深い新サブグループを含めて記述されている。
…これらの蛋白質を経るアクチンフィラメントに対するウボモルリンの結合は、細胞結合機能のために非常に重要である。さらに、カテニンは、…その他の必須の膜蛋白質や,…細胞膜構造に、ウボモルリンを結合する。このことは、ウボモルリンが細胞皮質ネットワークの一部であることを示している。
…カテニンは、これらのプロセスにおいて中心的な役割を果たすことになる。カテニン-結合領域は、他のカドヘリンにおいても十分に保持されているから、カテニンは、この遺伝子ファミリーの他のメンバーとも錯体形成することが、可能である。ここで、我々は、α-カテニンに対する抗体を生産し、そして、α-カテニンが、ヒト,マウス,及びアフリカツメガエルからのカドヘリンと現実に会合することを示した。我々は、α-カテニンをコード化しているcDNAをクローン化し、配列化し、そして、一次蛋白質構造を確立した。配列比較により、α-カテニンが、ビンキュリンの類縁物、周知の接着タイプ、及び中心的な結合蛋白質であることを明らかにした。」(第9156頁左欄下から28行〜同右欄9行)、
(2-3)物質と手法の記載箇所(第9156頁右欄10行〜第9157頁右欄下から24行)においては、用いた細胞株とその処理について記載すると共に、
α-カテニンの精製のための具体的手法、及び該ペプチドのアミノ酸配列分析の実施方法について記載し、また、
抗体について、「α-カテニンに対するウサギ抗血清を、…合成ペプチド,His-Val-Asp-Pro-Val-Glu-Ala-Leu-Ser-Glu-Phe-Lys(カルボキシル末端附近に偏在:図4参照)を用いることにより生産した。…皮下免疫の後、特定の抗体が、…単離された。…各cDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によりクローン化された。ニワトリA-CAM(…N-カドヘリンともいう)…に対するモノクローナル抗体FA-5及びGC-4は、Sigmaから購入し…た。…そして、抗-α-カテニン抗体を、…F(ab)2抗-ウサギ免疫グロブリン(Dynatech)により検出した。」(第9157頁左欄4〜30行参照)こと、さらに、
cDNA単離及びシーケンシングについて、「マウス胚上皮ガン細胞PCC4-aza1のポリ(A)+RNAから製造されたオリゴ(dT)-primedファージλgt11 cDNAライブラリーを、親和性-精製抗-α-カテニン抗体を用いてスクリーニングした。7つのイニシャルクローンが、500,000ファージ プラークから得られ、そして、付加的な5’配列を、ランダムprimed…cDNA断片(位置2056-2334;図4参照)を用いて、クローン化した。…」(第9157頁左欄31〜同頁右欄下から24行参照)ことが、記載され、
(2-4)図3には、マウスα-カテニンのヌクレオチド及びアミノ酸配列が具体的に記載され、
(2-5)「注.ナガフチらは(33)、102kDaカドヘリン会合蛋白質の分子クローニングを報告しているが、この原稿での提案以来、CAP102と呼ばれている。配列比較により、CAP102は、αカテニンと同定されている。」(第9160頁右欄5〜8行)と記載され、さらに、ナガフチらの原稿(33)とは、「Cell Vol.65(1991)p.849-857(=引用例3)」であることが記載されている。
引用例3の図3には、上記(2-4)と同様のこと、即ち、マウスα-カテニンのヌクレオチド及びアミノ酸配列が具体的に記載され、また、102kd蛋白質(CAP102)が、E-カドヘリンと会合することが具体的に記載されている。

[対比・判断]
<本願発明1、3について>
本願発明1と引用例1の発明を対比する。
本願発明1に係るアミノ酸配列が配列表の配列番号1で表されるポリペプチドとは、明細書の特に実施例2の記載からみて、孵卵6.5〜7.5日目のニワトリ胚脳由来の新規なカテニン(=神経α-カテニン)であって、CAP102と類似(=81.6%の相同性を示す。)しているものである。
ところで、引用例1には、孵卵10日目のニワトリ胚脳から精製されたN-カドヘリンと結合するいくつかの蛋白質の一つが新規なカテニンであることの記載があり、さらに、N-カドヘリン-カテニン錯体を抗原として得られたモノクローナル抗体の一つにより認識された抗原(=孵卵10日目のニワトリ胚脳からのカテニン)のcDNAクローンの部分シークエンスから、この分子はCAP102と類似していること、また、該抗体は、マウスのもの(前後の文章からみて、マウス由来カテニン=CAP102、もしくはこれを一部分として含むものであると思われる)と交叉反応することが、記載されている。
そして、引用例2〜3には、マウスα-カテニン、即ち、CAP102のヌクレオチド及びアミノ酸配列が具体的に記載されている。
これらの記載内容からすると、引用例1の孵卵10日目のニワトリ胚脳から精製された新規なカテニンは、その由来(=孵卵10日目のニワトリ胚脳)、取得法(=N-カドヘリン-カテニン錯体を抗原として得られたモノクローナル抗体の一つにより認識される抗原として取得する方法)、及びcDNAの部分シーケンスがCAP102と類似しているという化学構造上の特徴(=物質の同定・確認)からみて、本願発明1に係るカテニン(=神経α-カテニン)についての由来(=孵卵6.5〜7.5日目のニワトリ胚脳)、取得法{=N-カドヘリン-カテニン錯体を抗原として得られたモノクローナル抗体(=NCAT-1)の一つにより認識された抗原として取得する方法}及びCAP102と類似している(=81.6%の相同性を示す。)という化学構造上の特徴(=物質の同定・確認)が同一であるところからみて、両者のカテニンは、同一物質である蓋然性が高いと判断できる。
そうしてみると、本願発明1のポリペプチド自体の発明については、アミノ酸配列が配列表の配列番号1で表されることが明記されているが、引用例1のカテニンについては、この点が明記されていない点で一応相違が認められるものの、ポリペプチドという化学物質としては区別ができない。
ところで、請求人が審判請求書で主張する如く、引用例1には、新規なカテニンの取得法が概略記載されているだけであって、具体的な処理条件や実施条件についての記載がされてはいない。
しかしながら、引用例1におけるモノクローナル抗体の一つにより認識された抗原(=孵卵10日目のニワトリ胚脳からの新規なカテニン)が、CAP102と類似であることが記載されており、当該CAP102は、引用例2,3によれば、まさにα-カテニンに相当するポリペプチドである。
そうであれば、引例2に記載されているCAP102の精製条件や操作、即ち、摘出した組織・細胞株からの一般的な可溶化、セファロースカラムによる分離、マイクロシーケンシング操作等々(上記(2-2)、(2-3)参照)といった一般的で基本的な操作や処理、精製条件を適宜組み合わせることにより、本願発明のポリペプチドを単離することが困難であったとは認められないし、本願発明においては、このような一般的な手法では単離ができず、特異な工夫により初めて本願発明のポリペプチドの単離が可能となったものでもない。
また、引例2においては、CAP102の遺伝子もクローニングされており、全DNA配列及び対応するアミノ酸配列が記載されている。
そして、上述の如く、引用例1には新規なカテニンcDNAの取得源が「孵卵10日目のニワトリ胚脳」である旨の記載があるのだから、当該「孵卵10日目のニワトリ胚脳」のcDNAライブラリーを作成し、引用例2,3に記載されるCAP102DNA配列をプローブとして利用することで、新規なカテニンのcDNAをクローニングすることは、当業者が容易にできることと認める。
さらに、本願発明の効果の顕著性について、請求人は、本願発明のポリペプチドは、N-カドヘリンのみならずE-カドヘリンとも複合体を形成することができ、このような本願発明のポリペプチドの有する効果について、各引例には開示がない旨、主張している。
しかしながら、引例2の(2-1)には、「α-カテニンがその他のカドヘリン(前の文章からみて、ヒトのN-カドヘリン、マウスのP-カドヘリン、チキンのN-カドヘリン、キセノパスU-カドヘリン)と錯体を作ることを証明している」という記載があり、また、引例3には、CAP102(=α-カテニン)がE-カドヘリンと会合することが記載され、さらに、引例1には、N-カドヘリンと結合する新規なカテニンは、CAP102(=α-カテニン)と類似しており、かつ、N-カドヘリン-カテニン錯体から得られた抗体は、マウスと交叉反応することが記載されているから、これらを合わせ考慮すると、N-カドヘリンと結合する新規なカテニンは、N-カドヘリンと結合することは無論のこと、チキンやマウスのP-カドヘリン及びE-カドヘリンとも結合して錯体となることが十分に予想され、しかも、本願発明のポリペプチドCAP102と類似している該新規なカテニンが、引用例2の上記(2-1)に記載されたCAP102と同様の活性、即ち、細胞間に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有するであろうことも、容易に予想できるため、本願発明で得られたポリペプチドの効果を格別顕著なものとすることができない。
したがって、孵卵10日目のニワトリ胚脳由来の新規なカテニンであって、細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有するポリペプチドに係る本願発明1及びそれをコードする遺伝子に係る本願発明3は、引用例1〜3の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<本願発明2、5について>
配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列に1以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加の少なくとも1つを有し、かつ配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列との相同性が81.6%を超え、α-カテニンの機能、及び細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有するポリペプチド、及びそれをコードする遺伝子に係る本願発明2及び5は、本願発明1に係るアミノ酸配列が配列表の配列番号1で表され、かつ細胞に細胞間接着形成能を付与しうる活性を有するポリペプチドと実質的に類似均等性を有しているポリペプチド、及びそれをコードする遺伝子であるから、この程度の相同性を有するポリペプチド、及びそれをコードする遺伝子は、特定の遺伝子の配列を変更し変異付けを作成することは遺伝子工学分野における常套手段であるところから、アミノ酸配列において当業者が適宜なし得る設計変更の域を出ない程度のものであって、具体的なアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加の少なくとも1つを特定しているものでもないから、本願発明1と同様に、引用例1〜3の記載事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<本願発明4について>
本願発明4は、配列表の配列番号2で表されるオープンリーデイングフレームに係る塩基配列の125〜2842番目の塩基配列に係る発明であるが、得られたcDNAクローンの全塩基配列における読み始めと読み終わりを決定することは、技術常識に基づいて適宜行いうることに過ぎないから、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<本願発明6について>
上述のようにして得られた遺伝子に対して、周知の遺伝子工学技術を用いた組換え蛋白質の製造方法を適用し、該遺伝子と該遺伝子を発現するのに必要な調節エレメントをベクターに組み込んで組換えプラスミドを作製し、該プラスミドを宿主に組み込んで形質転換し、該形質転換体を培養してカテニンを製造することは、常套手段の域を出るものではないので、本願発明6は、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<本願発明7について>
カテニンが細胞接着に関与していることは引用例2の(2-1)に記載があるから、上述のようにして得られた遺伝子を用いて細胞接着能の調節を行うことは、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、請求人は、取得された遺伝子を実際に細胞に導入して発現させ、導入した遺伝子が細胞に細胞接着活性を付与すること、即ち導入された遺伝子が発現するポリペプチドが細胞に細胞接着活性を付与することを実施例5の(2)[【0030】]にて実証している旨、主張している。
しかしながら、一旦新規なカテニンの遺伝子が取得されれば、その遺伝子を実際に細胞に導入して発現させること自体は、新規なカテニンのcDNAが、CAP102(=α-カテニン)と類似であり(引用例1参照)、しかも、該新規なカテニンと類似しているCAP102が細胞間接着形成能を付与しうる活性を有するものである(引用例2、3参照)以上、引用例3においてCAP102に対して行っている遺伝子のL細胞での発現及び調節に関する基本的な処理操作(第853頁左欄下から24行〜第854頁最下行参照)を、新規なカテニンのcDNAに対して行えばよいだけのことであるから、本願発明のポリペプチドの遺伝子を用いて単に細胞接着能の調節を行う程度のことは、具体的な調節条件が特定されているわけではなく、また、このような基本的な処理操作では実施できず、格別な工夫により初めて細胞接着能の調節を行うことが可能となったものでもないから、当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本願発明1〜7は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[むすび]
以上のとおりであるから、本願発明1〜7は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-26 
結審通知日 2004-08-26 
審決日 2004-09-10 
出願番号 特願平4-358026
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之深草 亜子  
特許庁審判長 佐伯 裕子
特許庁審判官 鵜飼 健
柿澤 惠子
発明の名称 神経α-カテニン  
代理人 井上 昭  
代理人 中本 宏  

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