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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1105517 |
審判番号 | 不服2001-12280 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-04-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-13 |
確定日 | 2004-10-29 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第275757号「はっ水フィルタ取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月23日出願公開、特開平11-111381号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成 9年10月 8日の出願であって、平成13年 6月 1日付けで拒絶査定がなされ、その請求項1に係る発明は、平成12年 9月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されたとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。) 「防水用樹脂部品に一体に形成されているフィルタ取付部に、はっ水フィルタを取り付けるためのはっ水フィルタ取付構造であって、前記フィルタ取付部は、前記防水用樹脂部品の内側と外側とを連通させるためのフィルタ呼吸穴と、該フィルタ呼吸穴の周囲に形成され、前記はっ水フィルタの周縁部を受け止めると共に前記はっ水フィルタの周縁部を溶着するためのフィルタ溶着面とを有しているはっ水フィルタ取付構造において、前記フィルタ取付部は、前記フィルタ溶着面の外周縁に沿って形成された、前記はっ水フィルタを位置決めするためのフィルタ位置決め壁と、前記フィルタ位置決め壁を取り囲むように形成された、前記フィルタ位置決め壁よりも大きい径をもつフィルタ固定部形成用突起とを一体に有し、該フィルタ固定部形成用突起は、前記はっ水フィルタを前記フィルタ溶着面に溶着した後に、前記はっ水フィルタの周縁部を固定するためのフィルタ固定部と成るものであることを特徴とするはっ水フィルタ取付構造。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前である平成8年11月29日に頒布された特開平8-315898号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、「電源接続部防護器具」に関し、図1〜12と共に、以下の事項が記載されている。 (1-イ)「本発明は、電源端末器(コンセントやアウトレット等と呼称される、配線に電気器具を繋ぐための受け口及び其の付属周辺器を本発明では電源端末器と言う)とプラグの接続部(本発明ではこれを電源接続部と言う)の防塵防水機能を有する、電源接続部防護器具に関わる。」(第2頁第1欄第40〜45行) (1-ロ)「電源接続部防護器具が大電力対応のためには高い放熱性が必要となるので、放熱機構を設けるとよい。即ち、外筒2若しくは蓋3の一方又は外筒2と蓋3の両方に表面積の大きな放熱部材6を設ける事や、外筒2若しくは蓋3の一方又は外筒2と蓋3の両方に放熱孔7を設け、放熱孔7に撥水性防塵フィルター8を設置するとよい。」(第3頁第3欄第18〜24行) (1-ハ)「支持板1(又はコンセントパネル11)、外筒2、蓋3は、防水部材が適するが、高熱伝導率(低電気抵抗)の金属は不適当と言える。難結露性で防水性のプラスティック等の樹脂やセラミックス等が適当である。」(第3頁第3欄第27〜30行) (1-ニ)「図9(a)(b)(c)は本発明の第7の実施例の斜視図を示す。第7の実施例も放熱効率を高めるもので、(a)は蓋3のみに、(b)は蓋3と外筒2に、(c)は外筒2のみに、各々放熱孔7を穿ち放熱孔7に撥水性フィルター8を設けてある。外筒2上部にも放熱孔7と撥水性フィルター8を設けてもよい。」(第3頁第4欄第49行〜第4頁第5欄第4行) これら(1-イ)〜(1-ニ)の記載及び図9(a)(b)(c)の記載を総合すると、上記引用刊行物1には、「外筒2、蓋3を難結露性で防水性のプラスティック等の樹脂やセラミックス等製とし、前記外筒2あるいは蓋3に放熱孔7を穿ち、前記放熱孔7に撥水性フィルター8を設けた電源接続部防護器具」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 また、同様に引用された本願出願日前である平成3年2月25日に頒布された特開平3-43235号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「プラスチック部品への金網溶着方法」に関し、第1図〜第5図と共に、以下の事項が記載されている。 (2-イ)「本発明は、プラスチック部品の金網の溶着部に突設される山形突条の外側に位置決め用の突条を別途設け、この突条も溶融させて金網先端部を覆うことにより上記課題を解決することができることに着目してなされたもので、 熱可塑性プラスチック製の成形体に金網を溶着するにあたり、 成形体の溶着面に山形突条を設け、この突条の外側に金網外周形状よりやや外側に位置し、前記突条の高さに金網の厚みを加えた高さよりも所定寸法高い位置決めの突条を設け、 少なくとも、両突条を覆う幅の押付具にて両突条を熔融固着することを要旨とするプラスチック部品への金網溶着方法にある。 本発明方法は上記押付具として超音波ホーンを用いる場合だけでなく、高周波による加熱溶融を利用する場合にも適用可能である。」(第2頁左上欄第3〜19行) (2-ロ)「2はフィルター用金網で、通常ステンレススチール製で製造されるものであって、オイル内の微細なゴミなどを濾去できるメッシュとなっている。この金網2はその周縁部21を上記山形突条12上に載置し、その周端を位置決め突条13によって所定の位置にセットされる。 このようなセット状態において、超音波ホーン3′を上記山形突条12および位置決め突条13を覆う先端幅を有し、その両突条をまたがって対設し、以下の条件で発振させると同時に押し付けると、まず位置決め突条13が山形突条12に先立って熔融し、金網周縁部21をくるみ込むように上側に回り込むことになる。それと同時に山形突条12が溶け始め、上記回り込んだ熔融樹脂と一体となって金網周縁部21をその表裏面から溶着することになる。」(第2頁左下欄第2〜17行) (2-ハ)「本発明においては、プラスチック部品の金網の溶着部に突設される山形突条の外側に位置決め用の突条を別途設け、少なくとも、両突条を覆う幅の押付具にて両突条を熔融固着するようにしたので、金網は位置決め突条によって位置決めされて容易にセット可能であり、しかもこの位置決め突条は上記山形突条に先立って熔融し、その先溶けビードが金網端部をくるみ込むように被さり、それに対し山形突条が熔融し、両者が一体となって金網を溶着する。しかも、溶着カスも発生することがないので、強固に溶着されることになる。」(第2頁右下欄第3〜15行) 3.対比・判断 本願発明と引用発明を比較すると、その機能・構造からみて、後者の「外筒2、蓋3」が前者の「防水用樹脂部品」に相当し、同様に、「撥水性フィルター8」が「はっ水フィルタ」に、「放熱孔7」が「フィルタ呼吸穴」に相当すると言える。また、引用発明においても、「放熱孔7に撥水性フィルター8を設けてある」のであるから、「放熱孔7」の周縁部に「撥水性フィルター8」の取付部が形成されることが明らかであり、しかも、「外筒2、蓋3」が樹脂製であれば、前記取付部が一体に形成されるのが常套手段であり、前記取付部は取付面を有すると言える。そして、本願発明の「フィルタ溶着面」も一種の「フィルタ取付面」であることから、両者は、 「防水用樹脂部品に一体に形成されているフィルタ取付部に、はっ水フィルタを取り付けるためのはっ水フィルタ取付構造であって、前記フィルタ取付部は、前記防水用樹脂部品の内側と外側とを連通させるためのフィルタ呼吸穴と、該フィルタ呼吸穴の周囲に形成され、前記はっ水フィルタの周縁部を受け止めフィルタ取付面とを有しているはっ水フィルタ取付構造」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点:前者においては「はっ水フィルタの周縁部を受け止めると共に前記はっ水フィルタの周縁部を溶着するためのフィルタ溶着面を有し、前記フィルタ溶着面の外周縁に沿って形成された、はっ水フィルタを位置決めするためのフィルタ位置決め壁と、フィルタ位置決め壁を取り囲むように形成された、フィルタ位置決め壁よりも大きい径をもつフィルタ固定部形成用突起とを一体に有し、該フィルタ固定部形成用突起は、はっ水フィルタをフィルタ溶着面に溶着した後に、はっ水フィルタの周縁部を固定するためのフィルタ固定部となるものである」のに対して、後者においてはそのような構成ではない点。 そこで上記相違点について検討する。 ところで、上記相違点における本願発明の構成である「該フィルタ固定部形成用突起は、はっ水フィルタをフィルタ溶着面に溶着した後に、はっ水フィルタの周縁部を固定するためのフィルタ固定部となるものである」は、本願発明が「はっ水フィルタ取付構造」という「物の発明」であることから、請求人が認めている(当審からの審尋に対する平成16年7月21日付け回答書参照)ように、「該フィルタ固定部形成用突起は、前記はっ水フィルタの周縁部を固定するためのフィルタ固定部と成るものであり、前記はっ水フィルタはその周縁部を前記フィルタ溶着面に溶着されかつ前記フィルタ固定部にて固定される」という構成を意味していると認められる。 一方、上記引用刊行物2にはフィルター用金網の取付構造が記載されているのに対して、本願発明は「はっ水フィルタ取付構造」であって、フィルタの種類が異なるものの、フィルタの取付に関するものとして同一の技術分野に属すると言える。そして、そのフィルタ取付構造に注目すると、前記記載事項(2-イ)の「プラスチック部品の金網の溶着部に突設される山形突条」および「成形体の溶着面に山形突条を設け」からみて、上記引用刊行物2記載の「山形突条を設けた溶着面(溶着部)」は本願発明の「フィルタ溶着面」に相当する。また、上記引用刊行物2記載の「フィルタを位置決めするための位置決め突条13」は、本願発明の「フィルタ位置決め壁」に相当すると共に、前記記載事項(2-ロ)の「まず位置決め突条13が山形突条12に先だって熔融し、金網周縁部21をくるみ込むように上側に回り込む」からみて、本願発明の「フィルタ固定部となるフィルタ固定部形成用突起」に相当すると言え、本願発明のように「フィルタ位置決め壁」と「フィルタ固定部形成用突起」とを別々に形成するか、あるいは一体に形成するかは、当業者ならばフィルタの大きさ等に応じて適宜選択し得る設計的事項に過ぎないと認められる。 してみると、引用発明のフィルタ取付構造として上記引用刊行物2記載のフィルタ取付構造を採用して、相違点における本願発明の構成することは、両者のフィルタの種類の相違が上記採用の阻害要因になるとは言えないから、当業者ならば容易に想到し得る程度のことであると認められる。そして、上記採用したことにより格別の効果を生じるとも言えない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1および2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-31 |
結審通知日 | 2004-09-01 |
審決日 | 2004-09-14 |
出願番号 | 特願平9-275757 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 栗田 雅弘、井上 哲男 |
特許庁審判長 |
増山 剛 |
特許庁審判官 |
内藤 真徳 岡田 孝博 |
発明の名称 | はっ水フィルタ取付構造 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 後藤 洋介 |