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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1105603
審判番号 不服2002-11267  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-20 
確定日 2004-10-28 
事件の表示 平成 8年特許願第204595号「液晶ディスプレイ用タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月20日出願公開、特開平10- 48625〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年8月2日の出願であって、平成14年5月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年6月20日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成14年6月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成14年6月20日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のようにする補正を含むものである。
「【請求項1】液晶ディスプレイの前面に配置されるタッチパネルであって、液晶ディスプレイ側から順に、第1の1/4波長板、スペーサーを介して対向する2枚の透明導電膜、第2の1/4波長板及び偏光板を配置してなり、第1の1/4波長板と第2の1/4波長板は、位相差をなくするように配置されていることを特徴とする液晶ディスプレイ用タッチパネル。」(以下、「本願補正発明」という。)
上記補正は、明細書の特許請求の範囲の請求項1の構成である第1の1/4波長板と第2の1/4波長板の配置を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)刊行物の記載事項
原審の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物である特開平5-127822号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の記載が認められる。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】表示装置の前面に配設された第1の基板と、この基板と離間して対向する第2の基板と、前記各基板の対向面に形成された透明電極とを備えているタッチパネルであって、表示装置と第1の基板との間又は第2の基板に、少なくとも位相差板と偏光板とが順次積層されているタッチパネル。・・・
【0017】前記透明電極3,4の間には、前記固定基板1と可動基板2とを離間させるためのドット状スペーサ5が介在している。
【0018】そして、前記可動基板2には、1/4波長位相差板6、偏光板7およびノングレア処理された透明性フィルム8が順次積層されている。1/4波長位相差板6と偏光板7とノングレア処理された透明性フィルム8とをこの順序に組合せることにより、表面反射が小さく、防眩性及びコントラストを著しく高めることができる。すなわち、前記ノングレア処理された透明性フィルム8により、外部から入射する光の反射を防止できると共に、透明タッチパネルに入射した光は、偏光板7で偏光され、1/4波長位相差板6を透過する。位相差板6を透過した光は、液晶セル9の表面で反射され、前記1/4波長位相差板6により位相が90°ずれるため、偏光板7を透過しない。そのため、反射光による表示品質の低下を防止できる。一方、液晶表示装置からの光は、1/4波長位相差板6、偏光板7およびノングレア処理された透明性フィルム8を順次透過する。その際、偏光板7により液晶表示装置からの光は偏光し、一定の方向へ進行する。従って、外光の反射を防止できると共に、液晶表示装置からの光が、乱反射しながら外方へ至るのを防止でき、防眩性、コントラストを高めることができる。」

上記によれば、引用例1には、
「液晶セルからなる表示装置の前面に配設された第1の基板と、この基板とドット状スペーサを介在して対向する第2の基板と、前記各基板の対向面に形成された透明電極とを備えているタッチパネルであって、前記第2の基板に、少なくとも1/4波長位相差板と偏光板とが順次積層されているタッチパネル。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

同じく、特開平3-188420号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の記載が認められる。
(ア)従来技術について
「第3図は従来の反射防止フィルタ19を説明するための断面図である。この反射防止フィルタ19は、反射防止膜18を施した透明基板17に偏光板16と1/4波長板15とを順次貼り合せて構成され、特に偏光板16の偏光軸と1/4波長板15の光学軸とのなす角が45°になるように配置されている。反射防止フィルタに入射した外光23は、透明基板17に施こされた反射防止膜18により反射光を生じないで透明基板17を透過し、偏光板16により直線偏光光となり、さらに1/4波長板15により円偏光光となる。円偏光化された透過光26は、表示装置30の表面34で一部反射し、反射光25を生じる。円偏光光である反射光25は、再び1/4波長板に入射し直線偏光光となるが、その偏光方向は外光23が偏光板16を透過した時の直線偏光光の偏光方向とは直交した方向である。従って反射光25は偏光板16で吸収されるので反射防止フィルタ19を透過することはできない。一方、表示装置30の表示画面として得られる出射光31は、偏光板16において光量がおよそ半分になるが、反射防止フィルタを透過し出射光となる。従って観察者は、表示画面は暗くなるものの外光23の影響を受けずに表示画面を観察することができる。」(2頁右上欄14行〜同頁左下欄18行)
(イ)目的について
「本発明の目的は、表示画面の明るさ並びに見やすさを極端に低下させることなく表面反射を防止するフィルタを備えた液晶表示装置を提供することにある。」(3頁左上欄6〜9行)
(ウ)構成について
「本発明の液晶表示装置は、二枚の基板間に液晶を封入してなる液晶セルと、液晶セルの表面に設けた偏光子と、液晶セルの裏面に設けた検光子とから少なくとも構成され、・・・前記偏光子と前記液晶セルと前記検光子を透過して出射する直線偏光光が円偏光光になるように前記検光子に第1の1/4波長板を貼り合わせ、透明基板の一方の面に反射防止膜を施し、もう一方の面に少なくとも偏光板と第2の1/4波長板とを順次貼り合わせてなる反射防止フィルタを、前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板とが対向するように配置したことを特徴としている。」(3頁左上欄11行〜同頁右上欄4行)
(エ)位相板の機能について
「以上の液晶表示装置に外光23が入射した場合、前述した反射防止フィルタ18の作用により、検光子10に貼り合せた1/4波長板11の表面24で生じる外光23の反射光25は偏光板16で吸収され液晶表示装置から出射しない。一方、照明光20が偏光子4,液晶セル13,検光子10,1/4波長板11を透過して得られる表示画面の出射光21は検光子10を透過することにより直線偏光光に、さらに1/4波長板11を透過することにより円偏光光になっている。ここで1/4波長板11の光学軸を、反射光25の円偏光と出射光21の円偏光の回転方向が逆になるように設定すると、出射光21が反射防止フィルタ19の1/4波長板を透過して得られる直線偏光光の偏光方向は、偏光板16の偏光軸と平行となる。従って、表示画面の出射光21は反射防止フィルタ19で吸収されずに透過することができ、出射光22となるので観察者は明るい表示画面を見ることが可能になる。」(4頁左上欄1行〜19行)
(オ)効果について
「以上説明したように、本発明によれば表示画面の明るさを低下させることなく・・・明るさは2倍であり・・・使用することが可能であった。」
また、第1図には、液晶セル13側から順に、1/4波長板11、1/4波長板15及び偏光板16が配置された液晶表示装置の断面図が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と上記引用発明とを対比するに、
引用発明の「液晶セルからなる表示装置」、「透明電極」、「1/4波長位相差板」は、それぞれ本願補正発明の「液晶ディスプレイ」、「透明導電膜」、「1/4波長板」に相当するから、両者は、
「液晶ディスプレイの前面に配置されるタッチパネルであって、液晶ディスプレイ側から順に、スペーサーを介して対向する2枚の透明導電膜、1/4波長板及び偏光板を配置してなる液晶ディスプレイ用タッチパネル」である点で一致し、下記の点で相違する。
相違点:
本願補正発明は、第1及び第2の1/4波長板を有し、液晶ディスプレイ側に、第1の1/4波長板を配置してなり、第1の1/4波長板と第2の1/4波長板は、位相差をなくするように配置されているのに対して、引用発明では、本願補正発明の第1の1/4波長板に相当する1/4波長板1枚のみであり、第2の1/4波長板に相当すべき液晶ディスプレイ側の1/4波長板を有しない点。

(4)判断
上記相違点につき検討する。
液晶表示装置の表面反射防止フィルタとして、液晶ディスプレイ側から順に、1/4波長板、偏光板及び反射防止膜を配置するだけでは、表示画面の明るさ、見やすさに問題があったのを改善するために(引用例2(ア),(イ),(オ)参照)、液晶ディスプレイ側から順に、1/4波長板11、1/4波長板15、偏光板16及び反射防止膜18を配置することが、引用例2に記載(同(ウ),(エ),第1図参照)されている。
また、引用例2には、「1/4波長板11の光学軸を、反射光25の円偏光と出射光21の円偏光の回転方向が逆になるように設定すると、出射光21が反射防止フィルタ19の1/4波長板を透過して得られる直線偏光光の偏光方向は、偏光板16の偏光軸と平行となる。従って、表示画面の出射光21は反射防止フィルタ19で吸収されずに透過することができ、出射光22となるので観察者は明るい表示画面を見ることが可能になる。」(同(エ)参照)と記載され、このような位相板の配置には、2つの1/4波長板を位相差をなくするように配置することも当然に含むものである。
ところで、本願補正明細書の【0013】及び【0014】に記載されるように、本願補正発明の効果は、「液晶ディスプレイの光はほとんど損失なく透過させることができる」こと、すなわち、「明るい表示画面を得る」ことであるから、引用例2記載のものは、本願補正発明と共通の目的・効果を有しているということができるので、液晶表示装置における表面反射の防止という点で共通の技術分野に属する引用例2記載のものを、引用発明の表示画面の暗さを改善するために適用することは容易になし得る程度のことである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用例1及び引用例2から予想し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年6月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成12年9月5日付け及び平成14年1月10日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められる、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のものである。
「【請求項1】液晶ディスプレイの前面に配置されるタッチパネルであって、液晶ディスプレイ側から順に、第1の1/4波長板、スペーサーを介して対向する2枚の透明導電膜、第2の1/4波長板及び偏光板を配置してなる液晶ディスプレイ用タッチパネル。」

(2)引用例記載の発明
原審の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物である特開平5-127822号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平3-188420号公報(以下、「引用例2」という。)には、上記2.(2)刊行物記載の発明に摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明に比べて、「第1の1/4波長板と第2の1/4波長板は、位相差をなくするように配置されていることを特徴とする」構成を欠くものである。
したがって、本願発明は、上記本願補正発明に対するとほぼ同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2004-08-13 
結審通知日 2004-08-17 
審決日 2004-09-09 
出願番号 特願平8-204595
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 吉田 禎治
向後 晋一
発明の名称 液晶ディスプレイ用タッチパネル  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
代理人 神野 直美  
代理人 榎本 雅之  

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