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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1105604 |
審判番号 | 不服2002-11679 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-03-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-26 |
確定日 | 2004-10-28 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第210512号「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月10日出願公開、特開平 7- 64069〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年8月25日に出願したものであって、その請求項に係る発明は、平成14年4月24日付け及び平成14年6月26日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のものである。 「【請求項1】液晶表示装置の表示画面上に、光線の入射角に対して選択的散乱能を有する光制御板を、その散乱角度域の一部が液晶表示画面の視野角と重なる領域を有し、前記液晶表示装置広視角域の出射光を散乱、拡散するように、かつ該光制御板のない状態よりも視野角が拡大するように装着してなることを特徴とする液晶表示装置。」 2.刊行物の記載事項 原査定において、周知例として引用した刊行物である、特開平2-302725号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに下記の記載が認められる。 「そこで本発明は、前述した従来技術の問題点である視野角の狭さを改善した液晶表示装置を提供することにある。」(1頁右下欄13〜15行)、 「第1図は実施例1に示す液晶表示装置の断面図である。・・・ガラス基板3、シール材4、液晶5及び上下2枚の偏光板2によりなる液晶表示装置の観察者に最近の面に樹脂性拡散板1を設置することにより本実施例の液晶表示装置とした。樹脂性拡散板としてはヘイズ率40%以上の任意の光学値のものが使用可能であったが、第2図においては全光透過率60%、拡散透過率50%(ヘイズ率83%)のものを使用した場合の視角特性7及び樹脂性拡散板1を設置しない場合の視角特性6を示す。この場合左右視角コントラスト特性にほとんど視角依存性がなくなるばかりでなく、視角を小さくすることによって発生する複屈折モード特有の色づき(色変化)がほとんど起こらず、どこから見てもほぼ同一色であった。また、樹脂性拡散板のヘイズ率は全視角同レベルである必要はなく、むしろ正面ではなるべく拡散せず、低視角ではすぐれた拡散性を有する物の方が有効であったことは言うまでもない。」(2頁左上欄15行〜同頁右上欄17行)、 「本発明によれば、液晶表示装置の市場発展性の支障となっていた視野角の狭さを大幅に改善することができ、極めて有効な発明である。」(2頁右下欄1〜3行) 3.対比 本願発明と引用例記載のものとを対比する。 (イ)引用例記載の「樹脂性拡散板」は、引用例に、「樹脂性拡散板のヘイズ率は全視角同レベルである必要はなく、むしろ正面ではなるべく拡散せず、低視角ではすぐれた拡散性を有する物の方が有効であった」と記載されているところから、光線の入射角に対して選択的散乱能を有することは明らかであり、本願発明の「光制御板」に相当する。 また、引用例における『低視角』は、液晶表示装置の表面に対する法線方向を『正面』とした場合、法線に対して上及び下方向又は左及び右方向に大きい角度で見ることを指すものと解されるから、引用例記載の液晶表示装置も上下左右の領域(広視角域)の出射光を散乱、拡散するものであることは明らかである。 (ロ)引用例記載のものは、前掲のとおり「視野角の狭さを大幅に改善することができた」のであるから、樹脂性拡散板のない状態よりも視野角が拡大するように設置されているということができる。 よって、両者は、「液晶表示装置の表示画面上に、光線の入射角に対して選択的散乱能を有する光制御板を、前記液晶表示装置広視角域の出射光を散乱、拡散するように、かつ該光制御板のない状態よりも視野角が拡大するように装着してなる液晶表示装置」である点で一致し、下記の点で相違する。 相違点: 本願発明は、「光制御板の散乱角度域の一部が液晶表示画面の視野角と重なる領域を有している」のに対して、引用例記載のものは、そのような記載がない点。 4.判断 上記相違点に付き検討する。 まず、本願発明における「光制御板の散乱角度域の一部が液晶表示画面の視野角と重なる領域を有する」点については、本願明細書の【0007】に「本発明における光制御板は、その散乱角度域の一部が被装着体である液晶表示画面の視野角と重なる領域をもたなければならない。例えば、被装着体である液晶表示画面が法線に対して画面の上方向角度20度から画面の下方向角度30度までの視野角を有しているならば、光制御板の散乱角度域は、その一部が画面の上方向角度20度から画面の下方向角度30度の範囲に存在していなければならない。」と記載され、また、表2には、実施例1〜4の散乱角度域をそれぞれ、6度〜40度、10度〜44度、15度〜49度、20度〜54度と規定している。 これらの記載からみると、光制御板の散乱角度域は、視野角を仮に0度〜20度とすると、低い側(例えば6度)から20度の範囲において重なる部分を有し、さらにそれを超える散乱角度域を有しているものと理解される。 一方、引用例においては、前掲のとおり「樹脂性拡散板のヘイズ率は全視角同レベルである必要はなく、むしろ正面ではなるべく拡散せず、低視角ではすぐれた拡散性を有する物の方が有効であった」のであるから、引用例の樹脂性拡散板は、左右視野角が0度の時がヘイズ率(曇価に対応)が最低であり、視野角が20度、30度と広がるとヘイズ率が大きくなっているものと解される。また、引用例は、液晶表示装置に樹脂性拡散板を重ねることによって、「視野角の狭さを大幅に改善することができた」のであるから、視野角内の散乱角度が大きい領域において、散乱角度域が視野角と重なっていることは明らかである。 よって、上記相違点の構成のように規定することは、引用例から当業者が容易になし得る程度のことである。 なお、請求人は、審判請求書14頁25〜28行において、『引用文献4(審決注;上記引用例と同じ)の第2頁右上欄第14〜17行には、ヘイズ率が視角によってある程度異なる拡散板の使用を示唆する記載があるものの、その具体的構成は一切示されておらず。本願請求項6で規定するような「光線の入射角に対して選択的散乱能を有する」ほどの光制御板ではないと思料する。』と述べており、この主張は、請求項6に規定する上記構成と同じ構成を有する請求項1にも共通する主張と認められる。 そこで、この点について検討するに、本願発明においても、「光線の入射角に対して選択的散乱能を有する光制御板」については、その選択的散乱能がどれほどのものかは具体的に何も特定されておらず、引用例のものと格別の差異は認められない。 なお、仮に何らかの相違があるとしても、「光線の入射角に対して選択的散乱能を有する光制御板」自体は、原査定の拒絶理由に引用(特開昭64-77001号公報)され、又、本願明細書の【0005】にも引用されているように、周知のものであるから、これを引用例の樹脂性拡散板に適用することになんら困難性はない。 したがって、この点の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであるばかりでなく、容易との判断を覆すものではないから、採用できない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-24 |
結審通知日 | 2004-08-31 |
審決日 | 2004-09-13 |
出願番号 | 特願平5-210512 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 裕之、藤岡 善行 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
町田 光信 吉田 英一 |
発明の名称 | 液晶表示装置 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 榎本 雅之 |
代理人 | 中山 亨 |