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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1105754
審判番号 不服2002-8955  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-17 
確定日 2004-11-26 
事件の表示 平成11年特許願第191664号「搬送ベルトのベルト幅調整方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月23日出願公開、特開2001- 19205、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯と本願発明1
本願は、平成11年7月6日に特許出願したものであって、その請求項1〜3に係る発明(以下それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明3」という。)は、平成14年3月27日付け、平成14年6月13日付け及び平成16年10月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】シートを搬送する複数の帯ベルトにより構成された搬送ベルトのベルト幅調整方法であって、少なくとも外端側の帯ベルトが巻掛けられ中心部に膨らみを持たせたクラウニング加工を施してなるテンションプーリをシート幅方向に移動させることにより、帯ベルトの位置がクラウニング加工の中央部に調整される作用を利用して前記テンションプーリに帯ベルトを同伴させてベルト位置を移動させることでベルト幅を調整することを特徴とする搬送ベルトのベルト幅調整方法。
【請求項2】 シートを搬送する複数の帯ベルトをシート幅方向に移動させる搬送ベルトのベルト幅調整装置であって、前記帯ベルトを巻掛けてテンションを付与するテンションプーリを中心部に膨らみを持たせたクラウニング形状に形成し、当該前記テンションプーリをベルト幅方向に移動可能に支持し、前記テンションプーリを移動操作する移動機構を設け、当該移動機構により前記テンションプーリをベルト幅方向に移動させることにより帯ベルトの位置がクラウニング加工の中央部に調整される作用を利用して前記帯ベルトをテンションプーリに同伴させてシート幅方向に移動してベルト位置を変更させることでベルト幅を調整可能としてなることを特徴とする搬送ベルトのベルト幅調整装置。
【請求項3】 前記移動機構において、前記テンションプーリをシートの幅方向に移動させるハンドルが連結されてなり、前記操作部は最端に配置された前記帯ベルトより外部に設けることを特徴とする請求項2に記載の搬送ベルトのベルト幅調整装置。

2.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-19398号(実開平5-65941号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の(a)〜(d)の事項が記載されている。
(a)「相対向して設けた一対の搬送用ベルト2、2及びL字形断面形状のガイド板20、20を介して刷本1を搬送するようにした装置において適宜設けた異形断面状の駆動軸15にベルト2、2駆動用のプーリ3、3を摺動自在に嵌合し、且つ搬送用ベルト2、2の下方位置に夫々設けた一対の支持用ロッド10、10の一端をプーリ3、3に回動自在に連結すると共に、同ロッド10、10の他端にベルト2、2駆動用のプーリ4、4を回動自在に設けてプーリ3、4間にベルト2を掛渡し、更に支持用ロッド10、10間にネジ軸11を設け、更にベルト2、2の外側に一対のL字形断面形状のガイド板20、20を設けると共に、同板20、20間にネジ軸26を設け、ネジ軸11、26の回動を介して搬送用ベルト2、2及びガイド板20、20を夫々幅方向に互いに近接若しくは離反する方向に移動するように構成したことを特徴とする刷本の搬送装置。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】)
(b)「【作用】本考案によれば、一対の搬送用ベルト及びL字形断面形状のガイド板の夫々間隔を任意に調節自在としたことにより、刷本の各種の幅に対応して搬送用ベルト及びガイド板の間隔を互いに近接させたり、又は離反させたりして刷本の異なった幅に対して即座に対応することができるのである。」(段落【0006】)
(c)「52、52は夫々搬送用ベルト2、2の内側に設けたベルトで、同ベルト52、52を夫々プーリ50、51、50、51に掛渡してあり、53、54は夫々プーリ50、50及び51、51に固定した駆動軸及び回動軸でベルト52、52を適宜駆動するようにしてある。」(段落【0020】)
(d)「また前記ベルト2、52の材質としては、例えばスプリング状(コイル状)の金属製ベルトや通常の皮革による帯状もしくは円形状のベルトなどいずれでもよい。」(段落【0022】)
また、「搬送用ベルト2、2」の近接、離反は、これが掛渡される「プーリ3、3」の近接、離反によって達成されることは自明であり、「プーリ3、3」の近接、離反に「搬送用ベルト2、2」は同伴されるものであるといえることから、上記記載事項(a)〜(d)によれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。
「刷本1を搬送する帯状の搬送用ベルト2、2、52、52により構成された搬送用ベルト2、2、52、52の間隔調節方法であって、搬送用ベルト2、2が掛渡されたプーリ3、3を刷本1の幅方向に近接若しくは離反させることにより、プーリ3、3に搬送用ベルト2、2を同伴させて搬送用ベルト2、2の間隔を互いに近接若しくは離反させることで搬送用ベルト2、2、52、52の間隔を調節する搬送ベルト2、2、52、52のベルト間隔調節方法。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭57-19209号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の(e)、(f)の事項が記載されている。
(e)「両端に右ネジと左ネジの切つてある回転可能なネジ軸と、該ネジ軸の右ネジと左ネジにそれぞれ螺合する雌ネジ部材と、該雌ネジ部材に固定され、コンベアの巾を決める案内板と、前記雌ネジ部材に設けられ、コンベアベルトを支持するプーリーとを有する1対のコンベアベルト支持ブロックと、駆動軸に摺動可能なキーで係合し、案内板の移動と共に駆動軸上を摺動する駆動プーリーを有する駆動ブロックと、案内板に設けられたテンシヨンプーリーとを有することを特徴とする巾調節可能なコンベア。」(特許請求の範囲)
(f)「…テンシヨンプーリー28、29は案内板6、7に取付けてあるので、ネジ軸3の回転によって案内板6、7の位置を調整、変更したときには、プーリー10、11、10’、11’、駆動プーリー22、23、及びテンシヨンプーリー28、29も案内板と共に動き、コンベアベルト32、33も支障なく案内板6、7の移動に伴って移動する。」(第2頁左下欄第1行〜第8行)

また、原査定に、周知例として引用された特開昭58-109339号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の(g)、(h)の事項が記載されている。
(g)「本発明はベルト搬送装置に関する。一般に、ベルトを駆動コロ等に掛けることにより動力を伝達したり、品物を載置して搬送したりするベルト搬送装置は、例えば複写機のような画像形成機にも随所に使用されている。」(第1頁左欄第14行〜第18行)
(h)「…上記ベルト1は、シート搬送タイミングや斜行を防ぐためにも一定以上の張力で保持されなければならないという要求があり、そこで、無端ベルト1を駆動する駆動コロ3、および従動コロ4a,4bは、第2図に示すような胴部の外径が両端の外径より大きな中高とした太鼓形コロを用い、これによりベルト1の寄りやはづれを防ぐように構成し、また、従動コロ4bの軸にバネ等で付勢力を与えて上記ベルト1の張力を常に一定以上に保ち、駆動コロ3とベルト1との動力の伝達を確実にしているのが普通である。」(第1頁右欄第6行〜第16行)

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-60536号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、次の(i)〜(k)の事項が記載されている。
(i)「シャフト4は図示しない動力源により回転し、固定ローラ6,7及び移動ローラ11,12を介してそれぞれフィードベルト8,13を回転して給紙台2上の帳票1を給紙する。」(第2頁右下欄第9行〜第12行)
(j)「モータ15の回転に伴い反転ローラ14とワイヤ16を介してホルダ9をスライドシャフト10上を検出信号に応じた数に相当する距離だけ左又は右に移動させる。このようにして帳票1の幅に応じた適正な位置に給紙ローラ12を自動的におくことができるので安定給紙が可能となる。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第6行)
(k)「また給紙の為の移動ローラ12の移動を反転ローラ14とワイヤ16を介してモータ15の駆動によって行う場合について説明したが、ラック、ピニオン方式など他の機構を介して給紙の為の移動ローラ12の移動を行ってもよい。」(第3頁右上欄第11行〜第16行)

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭64-34854号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、次の(l)、(m)の事項が記載されている。
(l)「本発明は、長捲輪転印刷機などから搬送されてくる長捲紙を断裁するシータに係り、…」(第1頁右欄第6行〜第7行)
(m)「下部搬送部3は第1の下部搬送部3Aと第2の下部搬送部3Bとからなり、第1の下部搬送部3Aは、断裁紙14の搬送方向と直交する方向に配置されたローラ75,76およびフリーローラ78に一定の間隔をおいて第1の上部ベルト20と対向して並列に巻き掛けられた複数の上流側の下流ベルトである第1の下部ベルト79と、複数のホィール80,81,82とを備えており、第1の下部ベルト79の搬送面79aは、第1の上部ベルト20の搬送面20aと対接するように設定されている。ローラ75はサイドフレーム8に回転自在に支持され、ローラ76はサイドフレーム8に固定された軸83に基端部を嵌挿され、図示しないばねにより矢印Gの方向に付勢されたローラ腕85の先端部に回転自在に支持されている。」(第4頁左上欄第3行〜第17行)

3.対比と判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「刷本1」、「帯状の搬送用ベルト2、2、52、52」、「搬送用ベルト2、2、52、52の間隔調節方法」、「搬送用ベルト2、2」、「掛渡された」、「刷本1の幅」、「近接若しくは離反させる」、「搬送用ベルト2、2の間隔を互いに近接若しくは離反させることで搬送用ベルト2、2、52、52の間隔を調節する」はそれぞれ、本願発明1の「シート」、「複数の帯ベルトにより構成された搬送ベルト」、「搬送ベルトのベルト幅調整方法」、「外側端の帯ベルト」、「巻掛けられ」、「シート幅」、「移動させる」、「ベルトの位置を移動させることでベルト幅を調整する」に相当する。
また、引用例1記載の発明の「プーリ3、3」と、本願発明1の「テンションプーリ」とは、前者は搬送ベルトのテンションを調整するためのものではない点で後者と相違するものの、外側端の帯ベルトが巻き掛けられるプーリ手段としては共通するものである。
してみれば、本願発明1と引用例1記載の発明とは、「シートを搬送する複数の帯ベルトにより構成された搬送ベルトのベルト幅調整方法であって、少なくとも外側端の帯ベルトが巻掛けられたプーリ手段をシート幅方向に移動させることにより、プーリ手段に帯ベルトを同伴させてベルト位置を移動させることでベルト幅を調整する搬送ベルトのベルト幅調整方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
本願発明1は、ベルト位置を移動させるプーリ手段として、その中心部に膨らみを持たせたクラウニング加工を施してなるテンションプーリを用い、これをシート幅方向に移動させることにより、帯ベルトの位置がクラウニング加工の中央部に調整される作用を利用してベルト位置を移動させるもの、すなわち、テンションプーリを駆動した状態でシート幅方向に移動することで、搬送ベルトを、テンションプーリの中心部の膨らみを利用した所謂調芯作用によって、テンションプーリの移動に追従させるものであるのに対して、引用例1記載の発明は、該プーリ手段として、テンションプーリでなくしかも通常形状の従動プーリを用い、これをシート幅方向に移動させることでベルト位置を移動させるもの、すなわち、従動プーリを停止した状態でこれに巻掛けられる搬送ベルトと一緒に、シート幅方向に移動させるものである点。

上記相違点について検討する。
引用例2記載の発明は、ベルト位置を移動させるプーリ手段として、外側端の帯ベルトが巻掛けられたテンションプーリを用い、これをシート幅方向に移動させることにより、ベルト位置を移動させるものではあるものの、該テンションプーリは、本願発明1のように、中心部に膨らみを持たせたクラウニング加工を施してなる形状を有するものではなく、搬送ベルトは、所謂調芯作用によってテンションプーリの移動に追従するものではない。
また、引用例3記載の発明は、単に、中心部に膨らみを持たせたクラウニング加工を施してなるテンションプーリが、本願出願前に周知であったことを示しているにすぎず、これを引用例1、2記載の発明に適用したとしても、テンションプーリを駆動した状態でシート幅方向に移動することで、搬送ベルトを、テンションプーリの中心部の膨らみを利用した所謂調芯作用によって、テンションプーリの移動に追従させるための構成は得られるものではない。
また、引用例4記載の発明は、そもそもテンションプーリを備えるものではない。
また、引用例5記載の発明は、テンションプーリは備えるものの、ベルト位置を移動させるための如何なる構成をも備えるものではない。

したがって、相違点に係る本願発明1の構成は、引用例2〜5に記載されおらず、また、引用例2〜5から示唆されるものともいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成により、明細書に記載されるような顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、上記相違点に係る本願発明1の構成については、引用例1〜5記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(2)本願発明2、3について
本願発明2は、方法の発明である本願発明1の実施に直接使用する物の発明として記載されたものであり、発明のカテゴリーの相違による表現上の差異はあるものの、本願発明1と実質的に同一の発明である。
そして、本願発明2は、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を発明特定事項として備えるものであるから、上記と同様の理由により、上記引用例1〜5記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

さらに、本願発明3は、本願発明2の構成に発明特定事項を追加し限定を付したものであり、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を発明特定事項として備えるものであるから、上記と同様の理由により、上記引用例1〜5記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるので、本願発明1〜3は、上記引用例1〜5記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2004-11-16 
出願番号 特願平11-191664
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 中村 則夫
中西 一友
発明の名称 搬送ベルトのベルト幅調整方法および装置  
代理人 大久保 操  
代理人 村上 友一  

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