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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1105794 |
審判番号 | 不服2002-14525 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-01 |
確定日 | 2004-11-04 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 9999号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月28日出願公開、特開2000-206842〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.出願の経緯 本願は、平成11年1月19日の出願であって、平成14年6月27日付で拒絶査定がなされ、これに対して平成14年8月1日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年8月1日付け及び平成14年9月2日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年8月1日付手続補正に対する補正却下の決定 [結論] 平成14年8月1日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成14年8月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲は以下のとおりに補正された。 「 【請求項1】 用紙上に黒色画像を形成する黒色画像形成部、及び、イエロー、マゼンダ、シアンの画像を形成する複数の画像形成部を備え、各画像形成部に用紙を順に対向させて搬送する画像形成装置であって、 イエロー、マゼンダ、シアンの各画像形成部のうちイエロー画像形成部を、黒色画像形成部に対して用紙搬送方向に隣接させ、且つ、これらの黒色及びイエローの画像形成部をマゼンダ、シアンの画像形成部よりも上流側又は下流側に配置し、 黒色画像形成部に、マゼンダ、シアンの画像形成部から、用紙を一体的に離間させる単一の離間手段を備え、 カラー画像形成時には、カラー画像形成と同時に、イエロー画像形成部によって装置に固有の識別情報を用紙上に形成し、黒色画像形成時には、前記離間手段によってマゼンダ、シアンの画像形成部から用紙を離間させて黒色画像形成と同時に、イエロー画像形成部によって装置に固有の識別情報を用紙上に形成する制御部を設けたことを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 前記イエロー画像形成部における画像形成材料の収納量を、マゼンダ、シアンの画像形成部における画像形成材料の収納量よりも多くした請求項1に記載の画像形成装置。」 (2)補正後の「黒色画像形成部に、マゼンダ、シアンの画像形成部から、用紙を一体的に離間させる単一の離間手段を備え、」の構成に対応する願書に最初に添付された明細書及び図面の記載事項 本願の願書に最初に添付された明細書には、以下に列挙する事項が記載されている。 (a)【請求項5】 「黒色画像を形成する画像形成部、及び、他の色の画像を形成する複数の画像形成部を備え、各画像形成部に用紙を順に対向させて搬送する画像形成装置であって、他の色の画像を形成する複数の画像形成部のうち黒色画像を形成する画像形成部に用紙搬送方向に隣接する画像形成部を識別情報の画像を形成する画像形成部とするとともに、識別情報の画像を形成する画像形成部を除く複数の他の色の画像形成部を用紙搬送方向に互いに隣接させて配置し、黒色画像形成時に用紙を識別情報の画像を形成する画像形成部を除く複数の他の色の画像形成部から一体的に離間させる単一の離間手段を設けた請求項4に記載の画像形成装置。」 (b)【0052】〜【0056】 「 【0052】 部分離間機構330は、この発明の離間手段である支持体331、可動体307、モータ308、ギア311〜313及び昇降棒314を含む。支持体331には、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーションPcに含まれる転写器225c、及び、シアンの画像を形成する画像形成ステーションPdに含まれる転写器225dが固定されている。支持体331は、フレーム300において上下方向に移動自在にされており、駆動ローラ214及びテンションローラ320cとともに図外の伝達部材を介して可動体307に係止されている。 【0053】 可動体307は用紙の搬送方向について4つの画像形成ステーションPa〜Pdの範囲に匹敵する長さにされており、可動体307の下面において用紙搬送方向の最も下流側の画像形成ステーションPdの下方に対向する位置に昇降棒314の上端が当接している。昇降棒314にはギア311〜313を介してモータ308の回転軸308aの回転が伝達される。昇降棒314は、周面の下部に形成されたネジ部においてフレーム300に固定されたネジ穴314aに螺合している。したがって、昇降棒314は、ギア311?313を介してモータ308から供給される回転方向に応じて上下方向に移動する。 【0054】 昇降棒314が図4に示す上側位置に位置している状態では、駆動ローラ214、テンションローラ320c及び支持体331は可動体307とともに上側位置に位置し、転写搬送ベルト216及び転写器225c,225dが画像形成ステーションPc,Pdに含まれる感光体ドラム222c,222dに接近していることから、画像形成ステーションPa〜Pdの全てから用紙に対して4色の画像を形成することができる。 【0055】 昇降棒314が図4に示す上側位置に位置している状態からモータ308を所定方向に回転させると、昇降棒314は図5に示す下側位置に移動する。昇降棒314が図5に示す下側位置に位置している状態では、駆動ローラ214、テンションローラ320c及び支持体331は可動体307とともに下側位置に位置し、転写搬送ベルト216及び転写器225c,225dが画像形成ステーションPc,Pdに含まれる感光体ドラム222c,222dから離間することから、画像形成ステーションPa,Pdにおいて用紙に対して黒色画像及びイエローの画像を形成することができるが、画像形成ステーションPc,Pdによるマゼンタの画像及びシアンの画像を形成することができなくなる。 【0056】 以上のことから、部分離間機構330においてモータ308の駆動によって昇降棒314を上側位置又は下側位置に選択的に位置させることにより、画像形成ステーションPa〜Pdの全てを有効にしてブラック,イエロー、マゼンタ及びシアンの4色のトナーによるカラー画像を形成するフルカラー画像形成処理と、画像形成ステーションPa及びPbのみを有効にしてブラック及びイエローのトナーのみによる識別情報のパターン画像の形成を含む黒色画像形成処理と、のそれぞれに対応した状態にすることができる。」 これらの記載及び第4図の記載からみて、願書に最初に添付された明細書及び図面には、離間手段について以下のとおりの事項が記載されているものである。 マゼンダ及びシアンの画像形成部に設けられ、黒色画像形成時にはマゼンダ及びシアンの画像形成部から用紙を離間させる、支持体331、可動体307、モータ308、ギア311〜313及び昇降棒314からなる離間手段。 (3)補正の適否の判断 本件補正により、特に、願書に最初に添付した明細書の請求項5における「黒色画像形成時に用紙を識別情報の画像を形成する画像形成部を除く複数の他の色の画像形成部から一体的に離間させる単一の離間手段」は本件補正後の明細書の請求項1における「黒色画像形成部に、マゼンダ、シアンの画像形成部から、用紙を一体的に離間させる単一の離間手段を備え、」に補正され、離間手段の所在を黒色画像形成部と定めるとともに離間手段が用紙を離間させる時期に対する条件を取り除いた。 これらの事項は、上の(2)で挙げた願書に最初に添付した明細書及び図面に記載されていないし、また、同明細書又は図面に記載されているに等しい事項であるとも認められない。 すなわち、願書に最初に添付した明細書においては、離間手段はマゼンタ及びシアンに対応する画像形成ステーションPc,Pdに近接して設けられているものであって、黒に対応する画像形成ステーションとの関係については何ら記載されていない。また、離間手段を含む部分離間機構は黒色画像形成処理を行う場合のみ転写搬送ベルト及び転写器を感光体ドラムから離間させるものであって、部分離間機構が他の場合に離間させることについては何ら記載されていない。 したがって、本件補正は本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項を越える内容を本願発明の構成要件とするものであって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (4)補正の却下の決定におけるむすび 以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、特許法159条1項により読み替えて準用する特許法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、上記結論のとおり決定する。 3.本願発明 本願の請求項1〜2に係る発明の要旨は、平成14年5月24日付け及び平成14年9月2日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 【請求項1】 用紙上に黒色画像を形成する黒色画像形成部、及び、イエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成する複数の画像形成部を備え、各画像形成部に用紙を順に対向させて搬送する画像形成装置であって、 イエロー、マゼンタ、シアンの各画像形成部のうちイエロー画像形成部を、黒色画像形成部に対して用紙搬送方向に隣接させ、且つ、これらの黒色及びイエローの画像形成部をマゼンタ、シアンの画像形成部よりも上流側又は下流側に配置し、 黒色画像形成時に、マゼンタ、シアンの画像形成部から、用紙を離間させる離間手段を設け、 カラー画像形成時には、カラー画像形成と同時に、イエロー画像形成部によって装置に固有の識別情報を用紙上に形成し、黒色画像形成時には、前記離間手段によってマゼンタ、シアンの画像形成部から用紙を離間させて黒色画像形成と同時に、イエロー画像形成部によって装置に固有の識別情報を用紙上に形成する制御部を設けたことを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】前記イエロー画像形成部における画像形成材料の収納量を、マゼンタ、シアンの画像形成部における画像形成材料の収納量よりも多くした請求項1に記載の画像形成装置。 4.引用文献 査定の理由に引用された、特開平10-293437号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下に列挙する事項が記載されている。 (1a)【0006】 「そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、トナー像が形成されない感光体ドラムから搬送ベルトを離間させることによって、トナー像が形成されない画像形成ユニットの動作を停止させることができる画像形成装置を提供することである。」 (1b)【0054】〜【0063】 「【0054】 図4は、圧接解除機構の機能を説明するための図解図であり、(a)は感光体ドラム11に搬送ベルト46が圧接された状態を示し、(b)はマゼンタ、シアンおよびイエローの感光体ドラム11M,11C,11Yへの搬送ベルト46の圧接状態が解除された状態を示している。 このディジタルフルカラープリンタにおいて、フルカラー画像を形成する際には、図4(a)に示すように、ブラック転写ローラ50B,マゼンタ転写ローラ50M、シアン転写ローラ50Cおよびイエロー転写ローラ50Yによって、搬送ベルト46が感光体ドラム11B,11M,11C,11Yに圧接されている。このとき、偏心カム73の高位置周面が、くり抜き穴72の上辺に接触している。 【0055】 モノクロ画像を形成する際には、たとえばステッピングモータ(図示せず)などによって、偏心カム73の回動軸74が回転される。すると、くり抜き穴72の上辺が偏心カム73の高位置周面から離脱し、偏心カム73の低位置周面に接触する。これにより、揺動板63,64が、揺動ピン65を中心として反時計回りに回転される。よって、図4(b)に示すように、揺動板63,64に保持されているマゼンタ転写ローラ50M、シアン転写ローラ50Cおよびイエロー転写ローラ50Yが下方に移動されて、搬送ベルト46と感光体ドラム11M,11C,11Yとの圧接状態が解除される。 【0056】 一方、ブラック転写ローラ50Bは、前支持板56および後支持板57によって保持されているので、揺動板63,64が回動されてマゼンタ転写ローラ50M、シアン転写ローラ50Cおよびイエロー転写ローラ50Yが変位されても、ブラック転写ローラ50Bは変位されず、搬送ベルト46とブラックの感光体ドラム11Bとの圧接状態は解除されない。すなわち、このとき、転写ベルト46は、ブラックの感光体ドラム11Bにのみ接触した状態となる。 【0057】 フルカラー画像を再び形成する際には、偏心カム73の回動軸74をさらに回転させて、偏心カム73の高位置周面とくり抜き穴72の上辺とを接触させる。すると、偏心カム73によって揺動板63,64が持ち上げられて、マゼンタ転写ローラ50M、シアン転写ローラ50Cおよびイエロー転写ローラ50Yによって、搬送ベルト46が感光体ドラム11M,11C,11Yに再び圧接される。 【0058】 このように、モノクロ画像を形成する場合には、マゼンタ転写ローラ50M、シアン転写ローラ50Cおよびイエロー転写ローラ50Yが下方に変位されて、搬送ベルト46はブラックの感光体ドラム11Bのみに接触される。したがって、感光体ドラム11M,11C,11Yの駆動を停止させて、マゼンタ、シアンおよびイエローの画像形成ユニット10M,10C,10Yの寿命を延ばすことができる。 【0059】 さらに、この実施形態では、画像形成ユニット10のうち、ブラック画像形成ユニット10B(図1参照)が、用紙搬送方向に関して最も上流側に配置されている。これにより、次のようなメリットがある。 たとえば、ブラック画像形成ユニットが最も下流側に配置されたプリンタにおいて、モノクロ画像を形成する場合に搬送ベルトを傾動させて、搬送ベルトとマゼンタ、シアンおよびイエローの感光体ドラムとの圧接状態を解除すると、レジストローラからブラック画像形成ユニットまでの距離がフルカラー画像形成時の距離よりも長くなる。したがって、モノクロ画像形成時には、フルカラー画像形成時よりも用紙の搬送タイミングを早めるか、画像形成タイミングを遅くする必要がある。 【0060】 ところが、この実施形態によれば、ブラック画像形成ユニット10Bが最上流側に配置されているので、搬送ベルト46とマゼンタ、シアンおよびイエローの感光体ドラム11M,11C,11Yとの圧接状態を解除しても、レジストローラ7からブラックの感光体ドラム11Bまでの距離に変動がない。したがって、上述のような用紙搬送タイミングや画像形成タイミングの調整を行う必要がなく、ゆえに、画像形成動作時のタイミング制御が簡単である。 【0061】 また、ブラック画像形成ユニットが最も下流側に配置されたプリンタにおいて、モノクロ画像形成時に、搬送ベルトとマゼンタ、シアンおよびイエローの感光体ドラムとの圧接状態を解除する構成をとる場合、搬送ベルト上の用紙をブラック画像形成ユニットまで確実に搬送するには、用紙を搬送ベルトに静電吸着させるために、搬送ベルトを帯電する吸着手段が必要となる。 【0062】 しかしながら、この実施形態によれば、ブラックのトナー像が用紙に転写される際に用紙が帯電されるので、用紙は搬送ベルト46に十分に静電吸着されて搬送される。ゆえに、上述のような吸着手段が不要となり、プリンタのコストを低減することができる。 また一般に、フルカラー画像よりもモノクロ画像を形成する場合が多く、マゼンタ、シアンおよびイエローのトナーに比べて、ブラックのトナーの使用量はきわめて多い。したがって、ブラックのトナーは、他のトナーよりも頻繁に補給しなければならない。 【0063】 ところが、ブラック画像形成ユニット10Bが最上流側に配置されていれば、図1に二点鎖線で示すように、ブラック画像形成ユニット10Bに備えられたブラック現像装置13を大きくして、ブラックのトナーの貯留量を多くすることができる。よって、ブラックトナーの補給回数を低減させることができる。そのうえ、ブラック画像形成ユニット10Bのクリーナ14には、ブラックのトナーのみが回収されるので、この回収トナーをブラック現像装置13に移して再使用することができる。」 これらの記載からみて、引用文献1には以下のとおりの事項が記載されているものと認める。 「用紙上に黒色画像を形成するブラック画像形成ユニット、及び、イエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成する複数の画像形成ユニットを備え、各画像形成ユニットに用紙を順に対向させて搬送する画像形成装置であって、 ブラック画像形成ユニットをイエロー、マゼンタ、シアンの画像形成ユニットよりも下流側又はより好ましくは上流側に配置し、 モノクロ画像形成時に、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成ユニットから、用紙を一体的に離間させる単一の圧接解除機構を設け、 フルカラー画像形成時には、カラー画像を用紙上に形成し、モノクロ画像時には、前記圧接解除機構によってイエロー、マゼンタ、シアンの画像形成ユニットから用紙を離間させて黒色画像を用紙上に形成する制御部を設けたことを特徴とする画像形成装置であって、ブラック画像形成ユニットにおけるトナーの貯留量を、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成ユニットにおけるトナーの貯留量よりも多くした画像形成装置。」 5.対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用文献1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)とを対比する。 黒色画像形成時に必要の無い画像形成部から用紙を離間させる手段である点で、引用発明1における圧接解除機構は本願発明1における離間手段に相当する。 したがって、両者は 「用紙上に黒色画像を形成する黒色画像形成部、及び、イエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成する複数の画像形成部を備え、各画像形成部に用紙を順に対向させて搬送する画像形成装置であって、 黒色画像形成部をマゼンタ、シアンの画像形成部よりも上流側又は下流側に配置し、 黒色画像形成時に、マゼンタ、シアンの画像形成部から、用紙を離間させる離間手段を設け、 カラー画像形成時には、カラー画像を用紙上に形成し、黒色画像形成時には、前記離間手段によってマゼンタ、シアンの画像形成部から用紙を離間させて黒色画像を用紙上に形成する制御部を設けたことを特徴とする画像形成装置」 である点で一致し、以下に列挙する点で相違している。 (あ)本願発明1はカラー画像形成時及び黒色画像形成時のいずれにおいてもイエローの画像形成部により装置に固有の識別情報を用紙上に形成するものであって、イエローの画像形成部は黒色画像形成部に隣接して設けられ離間手段に左右されずに画像を用紙上に形成するのに対して、引用発明1は装置に固有の識別情報を形成するものではなく、イエローの画像形成ユニットはマゼンタ及びシアンの画像形成ユニットと同様に圧接解除機構による離間の対象であって、ブラックの画像形成ユニットは圧接解除機構による離間の対象となった画像形成ユニットよりは上流側にある方が利点が多い旨位置関係について記載されている点。 上記相違点について検討する。 カラー画像を形成する場合に、比較的目立たないイエローで装置に固有の識別情報を用紙上に形成するカラー画像形成装置は、原査定の拒絶の理由に文献1、2として引用された特開平7-87296号公報、特開平7-170359号公報に記載されている。 また、黒色画像を形成する場合にも、装置に固有の識別情報を用紙上に形成する画像形成装置は、原査定の拒絶の理由に文献3として引用された特開平6-276381号公報に記載されている。 このことから、引用文献1に記載されているような黒色画像形成部とイエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成する複数の画像形成部を備えた画像形成装置において、カラー画像形成時及び黒色画像形成時のいずれにおいてもイエロー画像形成部により装置に固有の識別情報を用紙上に形成するものにすることは、当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。 そして、そのような変更をする場合に採用する具体的な構成として、黒色画像形成時にマゼンタ、シアンの画像形成部だけを用紙から離間させる構成、しかも単一の離間手段によって一体的に離間させる構成は、イエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成する複数の画像形成部を単一の離間手段によって一体的に用紙から離間させる構成である引用文献1記載の発明を変更する場合、普通に採用しうる構成である。 また、引用文献1には段落【0059】〜段落【0063】には、モノクロ画像を形成する黒色画像形成部を最上流部に配置することのメリットが記載されており、カラー画像、モノクロ画像のいずれにおいても装置固有の識別情報を用紙上に形成するイエロー画像形成部を上流部に、その結果として黒色画像形成部に隣接させて配置することも引用文献1記載の発明を変更する場合、普通に採用しうる構成である。 したがって、引用文献1に記載された画像形成装置において、周知技術に基づきモノクロ及びフルカラーのいずれの場合でも画像形成装置を識別する情報をイエローで用紙上にに残すよう構成することにより本願発明1は当業者が容易に想到しうるものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 6.審判請求理由補充書における主張 請求人は、審判請求理由補充書において、以下のとおり主張している。 「引例1:特開平07-087296号公報 引例2:特開平07-170359号公報 引例3:特開平06-276381号公報 引例4:特開平10-293437号公報 引例5:特開平10-333393号公報 引例6:特開平08-272177号公報 引例7:特開昭57-005062号公報」 「審査官殿は、上述のようにご認定されていますが、引例1乃至7には、少なくとも本願請求項1の上記構成(3)(「黒色画像形成時に、マゼンダ、シアンの画像形成部から、用紙を一体的に離間させる単一の離間手段を設ける点」)について一切開示示唆しておらず、また上記構成(3)により奏される上記効果(b)(「離間手段の構成が簡単になる」)及び上記効果(c)(「極めて簡単な構成及び制御によって、黒色画像形成処理時にマゼンタとシアンの画像形成部を離間させ、マゼンタ及びシアンによる画像形成を同時に無効にすることができる」)の開示及びこれらの起因・契機となる示唆も一切ありません。」 しかしながら、請求人のいう引例4である引用文献1には、モノクロ画像形成時に、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成ユニットから、用紙を一体的に離間させる単一の圧接解除機構が開示されている。 上述のとおり、請求人のいう引例1〜3からカラー画像形成時及び黒色画像形成時のいずれにおいてもイエロー画像形成部により装置に固有の識別情報を用紙上に形成するものにすることは、当業者が容易に考えつくことができた構成の変更に過ぎない。 そして、そのような変更をする場合に採用する具体的な構成として、黒色画像形成時にマゼンタ、シアンの画像形成部だけを用紙から離間させる構成、しかも単一の離間手段によって一体的に離間させる構成は、イエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成する複数の画像形成部を単一の離間手段によって一体的に離間させる構成である引用文献1記載の発明を変更する場合、普通に採用しうる構成である。 さらに、請求人の主張する作用効果は当業者であれば構成から当然に導き出せる事項に過ぎない。 したがって、請求人の主張を採用することはできない。 7.むすび 上述のとおり、本願発明1は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に対して検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-24 |
結審通知日 | 2004-08-31 |
審決日 | 2004-09-16 |
出願番号 | 特願平11-9999 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢沢 清純、北川 清伸 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
井出 和水 山下 喜代治 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 木下 雅晴 |
代理人 | 小池 隆彌 |