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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01B |
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管理番号 | 1105798 |
審判番号 | 不服2001-18329 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-06-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-10-11 |
確定日 | 2004-11-04 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第291829号「光ファイバプローブ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月 6日出願公開、特開平 7-146126〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、特許法第30条第1項適用の申請(平成5年6月10日に応用物理学会の第11回光波センシング技術研究会で発表)を伴った平成5年11月22日の出願であって、平成13年8月31日付け(発送日平成13年9月11日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年10月11日に審判請求がなされたものであり、その請求項1-5に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて特許請求の範囲の請求項1-5に記載のとおりであって、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という)は次のものである。 「【請求項1】コアとクラッドからなる光ファイバの一端に上記クラッドの厚さを小さくした基端部を有し、この基端部の先端に上記コアを先鋭化した検出端部を有してなることを特徴とする光ファイバプローブ。 2.原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶理由の理由1は、本願発明は、本願出願前に頒布された下記刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 そして拒絶理由の理由3は、本願は、学会発表の発表者(計3名)と本願発明者(計1名)が一部相違するから、特許法第30条第1項の規定(新規性喪失の例外規定)の適用を受けることができず、本願発明は、本願発明の前記学会発表に係る下記刊行物2に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないというものである。 記 刊行物1:大津元一,“フォトンSTMと原子操作”,第70期通常総会講 演会講演論文集,日本機会学会,1993年3月25日, 70th,Pt.3,pp.469-470 刊行物2:パンガリブアン トガル、蒋曙東、大津元一,“フォトン走査ト ンネル顕微鏡用ファイバプローブのに段階エッチングとコーティ ング”,光波センシング技術研究会講演予稿集,応用物理学会, 1993年6月10日,11th,pp.43-49 3.刊行物の記載内容 刊行物1には、 「2.フォトンSTM装置 図1に示すようにフォトンSTMでは微小寸法をもつ試料に光を照射したときに発生する散乱光のうち、試料の周りに局在する光、すなわちエバネッセント光、を使う。先鋭化されたプローブによりエバネッセント光を散乱して伝搬光に変換し、そのパワーを測定する。試料面に沿ってプローブを走査し、パワー分布の地図を作れば試料の三次元形状がプローブ先端の曲率半径によってきまる分解能にて測定できる。実際のプローブとしては、先鋭化の加工再現性が高いこと、散乱したエバネッセント光を効率よく導波・集光できること、が重要である。これを実現するために筆者らは光ファイバを緩衝フッ酸溶液によりエッチングした。得られたプローブの電子顕微鏡写真を図2に示す。先端曲率半径5nm、先鋭角20度を得ている。最近ではさらにコア中のGeドーピング量の多い光ファイバを用い、1nm、15度を得ている。加工の再現性は高く、同1条件でのエッチングによる先鋭角のばらつきは0.5度以内である。最近は二段階エッチングにより光ファイバ・クラッド外周部の角を落とすこと、クラッド中に複数のコアがあるマルチコア・光フィアバを加工すること、なども実現している。装置の光源にはパワー制御された半導体レーザ(波長0.8μm)を用いる。」(第469頁左欄第9行-同頁右欄第7行)、 が記載されている。 刊行物2には、 「2.二段階エッチング 我々は、選択科学エッチングによりファイバコア先端を先鋭化した。先鋭化したコア先端をPSTNのプローブとして用い、試料表面に生じるエバネッセント光パワーを測定する。」(第44頁第9-11行) 「上記のエッチング法は一段階エッチング法と呼ばれるが、この方法ではファイバプローブのクラッド径が先端長よりずっと大きいのでプローブ走査中にクラッドの端が試料に衝突する可能性がある。それを避けるためクラッド径を小さくする方法として二段階エッチング法を提案し、ここに報告する。二段階エッチング法ではファイバプローブの尖り角を保ちながら、先端付近のクラッド径だけを細くする方法である。」(第46頁第1-5行)、 が記載されている。 4.対比・検討(特許法第29条第2項) 本願発明と、刊行物1に記載の発明を対比すると、刊行物1には、フォトンSTM(photon scanning tunneling microscope)に用いられる光ファイバプローブの先端について「実際のプローブとしては、先鋭化の加工再現性が高いこと」が重要であり、「得られたプローブの電子顕微鏡写真を図2に示す。先端曲率半径5nm、先鋭角20度を得ている。最近ではさらにコア中のGeドーピング量の多い光ファイバを用い、1nm、15度を得ている。」という記載があり、これら記載は、光ファイバプローブのコアを先鋭に尖らせるようにすることを意味し、先鋭化したコア先端部は、STMにおける検出端部であることは明らかであるから、刊行物には「コアとクラッドからなる光ファイバの一端に基端部を有し、この基端部の先端に上記コアを先鋭化した検出端部を有してなることを特徴とするSTMに用いられる光ファイバプローブ」が示されており、刊行物における「最近は二段階エッチングにより光ファイバ・クラッド外周部の角を落とすこと、……、なども実現している。」という記載は、光ファイバ・プローブのクラッドの基端部の外周の角をエッチングによって落とすことと認められるから、両者は、 「コアとクラッドからなる光ファイバの一端に基端部を有し、この基端部の先端に上記コアを先鋭化した検出端部を有してなることを特徴とする光ファイバプローブ」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点 本願発明の基端部は、クラッドの厚さを小さくしたものであるのに対し、刊行物1に記載の基端部は、クラッド外周の角を落としたものである点。 前記相違点について検討すると、 刊行物1の発明において、基端部の外周の角を落とすことによって、クラッドの厚さを小さくすることは、当業者が容易に想到できたことである。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。 5.対比・検討(特許法第29条第1項第3号) 5.1 特許法第30条第1項の規定の適用の可否 提出された新規性の喪失の例外証明書[文書をもって発表したことの応用物理学会会長による証明書]、および添付された文書(刊行物2である)によれば、発表者は、いずれにおいても「パンガリブアン トガル、蒋曙東、大津元一」の3名として記載されている。これに対して、本件の願書には、「大津元一」の1名が発明者として記載されているだけであり、「パンガリブアン トガル、蒋曙東」が記載されておらず、発表者と発明者が完全一致していない。 これに対して、請求人は大津元一の宣誓書を提出し、『上記証明書およびその添付資料において発表者として「パンガリブアン・トガル、蒋曙東、大津元一」が記載されておりますが、本件出願に係る発明については「大津元一」が単独で発明したものであり、他の2名は協力者に過ぎないものであり、本件出願に係る発明の発明者ではないことを宣誓致します。』旨、宣誓しているが、大津元一のみの宣誓であり、これだけで、大津元一のみが本件出願に係る発明の発明者であると認めるに足りない。 したがって、発表者と本件出願に係る発明者とが一致すると認めることができないから、本件については特許法第30条第1項の規定の適用を受けることはできない。 5.2 対比・検討 本願発明と、刊行物2に記載の発明を対比すると、刊行物2には、PSTMにおける光ファイバプローブにおいて、その基端部において、クラッドの厚さを小さくし、かつ、基端部の先端にコアを先鋭化した検出端部を有するようにすることが記載されているから、両発明は、同一と認められる。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明と同一であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-09-02 |
結審通知日 | 2004-09-07 |
審決日 | 2004-09-22 |
出願番号 | 特願平5-291829 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G01B)
P 1 8・ 121- Z (G01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順、▲高▼見 重雄、山口 剛 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
橋場 健治 菊井 広行 |
発明の名称 | 光ファイバプローブ及びその製造方法 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 伊賀 誠司 |