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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1105804
審判番号 不服2003-5392  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-02 
確定日 2004-11-04 
事件の表示 平成 8年特許願第320982号「断熱壁体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-141581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年11月15日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成15年1月8日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「ガスバリア性のフィルム内に断熱コア材を真空密閉して成る真空断熱材を備え、この真空断熱材を面材間に配置すると共に、これら面材間には発泡断熱材を充填して成る断熱壁体において、
前記真空断熱材を鋼板製の前記面材内面に固定すると共に、前記面材間の断熱厚さ寸法D1と前記真空断熱材の厚さ寸法D2との比D1/D2を、2以上8以下に設定したことを特徴とする断熱壁体。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、次のものである。
・引用例1:実願昭57-015483号(実開昭58-119187号)のマイクロフィルム。
・引用例2:特開昭57-96852号公報

3.引用例に記載された事項
引用例1には、内外箱間に充填した発泡断熱材内部に、さらに真空断熱部をもつ密閉容器を埋設した断熱箱体に関して、図面とともに、
「図において1は鉄板等の外箱2と、プラスチック等の内箱3、及び両箱2,3間に充填した硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材4から成る断熱箱体である。5は金属-プラスチック等の複合ラミネートフィルム6から成る袋状の密閉容器で、あらかじめパーライト等の無機質発泡粉末7が充填され、10-2〜10-1Torr程度の真空に脱気されている。……そして、支持部材8はピン10を外箱2に設けた穴11に圧入して固定し、内外箱2,3の間の略真中空間に密閉容器5を支持している。12は発泡機のヘッダで、内箱2に設けた注入口13を介して硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材4の原料を内箱3と密閉容器5、外箱2と密閉容器5、および内外箱間に注入せしめ、発泡させる。」(2頁14行〜3頁10行)こと、
「発泡断熱材4の熱伝導率を0.015kcal/mh℃とすると両箱2,3間の厚みが3cm、密閉容器5の厚みを1cmのとき両箱2,3間の平均熱伝導率は0.008kcal/mh℃となり、密閉容器5が存在しない部分に比べて約2倍の断熱に富む部分が形成される。」(3頁19行〜4頁4行)こと、
が記載されている。

引用例2には、断熱材に関して、図面とともに、
「第1図において、1は層状の粉末真空断熱部で、微粉末2と、これを包む微粉末容器3から構成されていて、容器3内の微粉末間の空間は真空に引かれている。4は発泡樹脂層、5,6は外壁である。微粉末2は粒径1μから1mm程度の粉末の混合物で、……例えば、無機物質やプラスチックの中空球殻体などは適格であり、具体的には発泡パーライト粉末などが望ましく適格であり、具体的には発泡パーライト粉末などが望ましく適格である。微粉末収納容器3はプラスチックまたはプラスチックと金属の複合材を用いる。またこの容器は板状ではなく変形可能なフィルム状のものが望ましい。」(2頁右上欄6行〜同20行)こと、
「真空リークを防ぐために、このプラスチックフィルムはその一部に例えば金属の薄層をラミネートした複合材料に置き換えてもよい。」(2頁左下欄6行〜同9行)こと、
「次に実施例の具体例について述べる。塩化ビニル製の袋状容器に真空断熱用パーライト粉末(三井金属製)を充填し、10-2〜10-1Torr程度の真空に引いて封じ厚さ約1cmの粉末真空断熱層1を作った。この粉末真空断熱層1の見掛けの熱伝導率はおよそ0.004Kcal/mh℃であった。次に、2枚の肉厚1mmのプラスチック板を外壁とし、その間隔が5cmと3cmである容器を用意した。この容器の2枚の外壁の中間に前記断熱層1を固定し、ポリウレタンを発泡させつつ断熱層の表面に密着して取り囲むように発泡ポリウレタン層を形成させた。」(2頁下右欄13行〜3頁上左欄4行)こと、
が記載されている。

4.対比・判断
引用例1には、上記摘示した事項からみて、以下の発明が記載されているものと認められる。

「金属-プラスチック等の複合ラミネートフィルム6から成る袋状の密閉容器5内にパーライト等の無機質発泡粉末7を充填し、これを10-2〜10-1Torr程度の真空に脱気してなる真空断熱部を備え、この真空断熱部を鉄板等の外箱2とプラスチック等の内箱3との間に配置すると共に、これらの外箱2と内箱3との間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材4を充填した断熱箱体1において、
前記真空断熱部である密閉容器5を内外箱2,3の間の略真中空間に支持すると共に、前記両箱2,3間の厚みを3cm、密閉容器5の厚みを1cmとした断熱箱体。」

そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「断熱箱体」は、本願発明の「断熱壁体」に相当し、引用例1に記載された発明の「金属-プラスチック等の複合ラミネートフィルム6から成る袋状の密閉容器5内」は、10-2〜10-1Torr程度の真空に脱気されるものであるから、本願発明の「ガスバリア性のフィルム内」に相当しているものと認められ、また、引用例1に記載された発明の、「パーライト等の無機質発泡粉末7」、「真空断熱部」、「鉄板等の外箱2とプラスチック等の内箱3との間」、「硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材4」は、それぞれ本願発明の「断熱コア材」、「真空断熱材」、「面材間」、「発泡断熱材」に相当しているものと認められるから、両発明は、
「ガスバリア性のフィルム内に断熱コア材を真空密封して成る真空断熱材を備え、この真空断熱材を面材間に配置すると共に、これら面材間には発泡断熱材を充填して成る断熱壁体。」
で一致しているものと認められる。

しかし、次の点で相違している。
・相違点1
真空断熱材を面材間に配置する構成について、本願発明は、「前記真空断熱材を鋼板製の前記面材内面に固定する」のに対し、引用例1に記載された発明は、面材間(内外箱2,3の間)の略真中空間に支持する点。
・相違点2
面材間の断熱厚さと真空断熱材の厚さについて、本願発明は、「前記面材間の断熱厚さ寸法D1と前記真空断熱材の厚さ寸法D2との比D1/D2を、2以上8以下に設定したこと」にあるのに対し、引用例1に記載された発明は、面材間(前記両箱2,3間)の厚みを3cm、真空断熱材(密閉容器5)の厚みを1cmとした点。

そこで、この相違点1、2を検討する。
・相違点1について
鋼板製の面材内面に真空断熱材を固定することは、例えば、特開平4-148181号公報、特開平6-194031号公報、特開平7-103640号公報、実願平2-114967号(実開平4-70995号)のマイクロフィルムに示されているように周知技術と認められるから、真空断熱材を、引用例1に記載された面材間の略真中空間に支持する態様に代えて、鋼板製の面材内面に固定することは、当業者が容易になし得たものといえる。
・相違点2について
上記各先行技術における断熱厚さ寸法D1と真空断熱材の厚さ寸法D2との比D1/D2についての具体例をみると、引用例1記載の発明では、D1/D2=3cm/1cm=3、引用例2記載の発明では、D1/D2=5cm/1cm=5 及びD1/D2=3cm/1cm=3、また、上記の周知技術として挙げた特開平4-148181号公報記載の発明では、D1/D2=60mm/10mm=6が示されている。そして、これらの数値がヒートブリッジを少なくするための数値であるとは記載されてはいないが、ヒートブリッジは、真空断熱材の周辺部のフィルム自体を伝達する熱移動をいうものであるから、当然、上記先行技術に開示された真空断熱材においても、ヒートブリッジが発生し、その数値にはヒートブリッジの因子を含んでいるものといえる。
そうすると、本願明細書の段落【0027】記載の断熱箱体(断熱壁)の熱伝導率の最も低くなるD1/D2=5付近を含むD1/D2=3〜6が、上記先行技術において開示されているといえるから、その数値範囲を含み、それを多少広げた本願発明の「2以上8以下に設定したこと」は、当業者が容易に選定し得た設計事項というべきものである。

そして、本願発明の効果についても、引用例1、2及び上記周知技術から当業者が予測し得るものであり、格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-07 
結審通知日 2004-09-07 
審決日 2004-09-24 
出願番号 特願平8-320982
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 信平内山 隆史  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 断熱壁体  
代理人 芝野 正雅  

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