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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F04C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F04C 審判 全部申し立て 2項進歩性 F04C 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 F04C |
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管理番号 | 1105890 |
異議申立番号 | 異議2003-71365 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2002-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-05-26 |
確定日 | 2004-08-18 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3350039号「スクロール型流体機械」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3350039号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3350039号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成7年8月31日に出願された特願平7ー246978号の一部を平成12年4月4日に新たな特許出願とした特願2000ー101830号の一部を、さらに平成14年2月6日に新たな特許出願としたものであって、平成14年9月13日にその発明について特許権の設定登録がなされ、平成15年5月23日に、三菱電機株式会社から、平成15年5月26日に、佐藤精孝から、その請求項1〜3に係る発明の特許に対し特許異議の申立てがなされ、平成15年8月4日付けで取消しの理由が通知され(同年8月15日発送)、その指定期間内である平成15年10月14日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1中の、「ガスを圧縮又は膨張させて」を、「ガスを圧縮させて」に訂正する。 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1中の、「形成した」を、「形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段差部が噛み合う」に訂正する。 訂正事項c 特許請求の範囲の請求項2中の、「前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、インボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるインボリュート始点よりも中央部先端側部分とし、」を、「前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分とし、」に訂正する。 訂正事項d 請求項3を削除する。 訂正事項e 本件特許公報4欄8行、6欄13行の、「ガスを圧縮又は膨張させて」を、「ガスを圧縮させて」に訂正する。 訂正事項f 本件特許公報4欄14行の、「形成した」を、「形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段差部が噛み合う」に訂正する。また、本件特許公報6欄19〜20行の、「形成しているので、」を、「形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合うので、」に訂正する。 訂正事項g 本件特許公報4欄17〜20行、6欄31〜34行の、「前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、インボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるインボリュート始点よりも中央部先端側部分とし、」を、「前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分とし、」に訂正する。 訂正事項h 本件特許公報6欄45行〜7欄12行に、「(3)請求項3の発明のスクロール型流体機械によれば、・・・圧縮機を得ることができる。」とあるのを、削除する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、択一的記載である「圧縮又は膨張」の一方である「圧縮」を選択して限定するものである。したがって、上記訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するとともに、新規事項の追加に該当しない。 上記訂正事項bは、固定スクロールと旋回スクロールとにより対応する段差部について、噛み合うことに限定するものである。また、段差部が噛み合うことは、図3(b)、(c)に示されている。したがって、上記訂正事項bは特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するとともに、新規事項の追加に該当しない。 上記訂正事項cは、うずまき状ラップの中央部先端側部分を、「うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線のそれぞれのインボリュート始点の間に位置するもの」として明確にしているので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するとともに、新規事項の追加に該当しない。 上記訂正事項dは、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するとともに、新規事項の追加に該当しない。 上記訂正事項e〜hは、上記訂正事項a〜dに伴って、発明の詳細な説明の欄の対応箇所を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するものであるとともに、新規事項の追加に該当しない。 また、上記訂正事項a〜hは、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)異議申立ての理由の概要 a.異議申立人三菱電機株式会社は、下記の甲第1、2号証を提出し、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、もしくは、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項、もしくは第2項の規定により特許を受けることができないので、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は取り消すべきであると主張している。 甲第1号証:特開昭62ー107283号公報(引用例1) 甲第2号証:特開平2ー169886号公報(引用例2) b.異議申立人佐藤精孝は、次の理由1、2により、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は取り消すべきであると主張している。 ・理由1:下記ア、イの点で明細書の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 ア.発明の詳細な説明及び特許請求の範囲に記載される「うずまき状ラップの中央部先端側部分」は、うずまき状ラップのどの部分を意味するのか不明確である。 イ.特許請求の範囲の請求項1の「各うずまき状ラップの中央先端側部分」の記載、および、請求項1に従属した請求項2の「インボリュート曲線で形成されたラップ」の記載によれば、中央先端側部分はインボリュート曲線で形成されたうずまき状ラップの一部と解されるが、請求項2の「中央先端部分を・・・インボリュート始点よりも中央先端側部分とし」の記載によれば、中央先端側部分はインボリュート曲線で形成されたうずまき状ラップとは別の部分であると解される。したがって、記載に矛盾があり、不明確である。 ・理由2:下記の甲第1〜9号証を提出し、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:実願平3ー4661号(実開平4ー95684号)のマイクロフィルム(引用例3) 甲第2号証:特開昭60ー79189号公報(引用例4) 甲第3号証:特公平5ー29796号公報(引用例5) 甲第4号証:実願平3ー49461号(実開平5ー1882号)のマイクロフィルム(引用例6) 甲第5号証:特開昭59ー99085号公報(引用例7) 甲第6号証:特開昭60ー256581号公報(引用例8) 甲第7号証:特開昭63ー201385号公報(引用例9) 甲第8号証:特開平5ー215084号公報(引用例10) 甲第9号証:特開平2ー81980号公報(引用例11) (2)明細書の記載要件について a.本件特許明細書 特許第3350039号の請求項1、2に係る特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)は、平成15年10月14日付けの訂正明細書のとおりのものである。 b.判断 ア.うずまき状ラップの中央部先端側の部分については、「各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分」と訂正されたことにより、うずまき状ラップの延在方向での端部であって、スクロールの中心側の端部であることが明確になった。 イ.上記アにおける訂正によって、うずまき状ラップは、それぞれのインボリュート始点の間に位置する中央部先端側の部分も含むことが明確になった。 c.まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第36条第4項、6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであるとすることはできない。 (3)新規性・進歩性に関して a.本件の請求項に係る発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】それぞれ端板にうずまき状ラップを立設してなる固定スクロールと旋回スクロールとを互いに偏心させ、かつ、位相をずらせて噛み合わせたことにより前記各端板間において前記各うずまき状ラップにより腹側密閉空間と背側密閉空間とを限界し、前記旋回スクロールを前記旋回スクロールの自転を阻止して公転旋回させることにより吸入口から前記腹側密閉空間及び前記背側密閉空間内に取り込まれたガスを圧縮させて吐出口から吐出するスクロール型流体機械において、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、該ラップの段部より根元側のラップ厚さを厚く、前記端板から離れた上方段のラップ厚さを薄く形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合うことを特徴とする、スクロール型流体機械。 【請求項2】請求項1に記載のスクロール型流体機械において、前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分とし、該中央部先端側部分のみを階段状に形成したことを特徴とする、スクロール型流体機械。」 (3)引用刊行物に記載された発明 当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物である、引用例1〜11には、それぞれ以下のような事項が記載されているものと認められる。 ア.引用例1:特開昭62ー107283号公報 a.「第2図に示すように、うずまき体1101の端板1121と逆方向のうずまき体の端面方向より、うずまき体1101端板1121に向つて段付逃げ部1113を設け、この段付逃げ部1113は、第3図に示すように両うずまき体を組み合わせたとき段付逃げ部の逃げ部がオーバーラツプするようにするのが望ましい。」(第7頁左上欄第13〜20行) b.「同図(4)においては、θ=θ4となり、公転側うずまき体1101Aの一部が吐出ポートを塞ぐものの、公転側うずまき体の段付逃げ部により、従来のものに比べ吐出通路面積は大きくなっており、圧力損失は低下し、第6図(1)〜(4)の小室圧力の変化は第7図に示すようになり、圧力損失を示す斜線部は第19図に示したものに比べて大きく減少する。」(第8頁左上欄第7〜14行) 上記記載a、bを第2、3、6図の記載を参酌して看ると、引用例1には、「両うずまき体に段付き逃げ部を形成することによって、吐出通路面積を大きくして圧力損失を低下したスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 イ.引用例2:特開平2ー169886号公報 c.「第7図と第8図は、旋回スクロール2のラツプ先端部2fに段付部57を設けた一実施例である。」(第5頁右上欄第9〜10行) d.「吐出部の流路面積を確保し吐出圧力の過圧縮量低減に有効で圧縮機の性能向上が図れる。」(第6頁右上欄第4〜6行) 上記記載c、dを第7、8図の記載を参酌して看ると、引用例2には、「旋回スクロール2のラツプ先端部2fに段付部57を設けることによって、吐出部の流路面積を確保し吐出圧力の過圧縮量を低減したスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 ウ.引用例3:実願平3ー4661号(実開平4ー95684号)のマイクロフィルム) e.「圧縮室19bは切り欠き52、53を介して吐出ポート29に連通する。このようにして圧縮室19a、19b内の圧縮ガスは常時円滑に吐出ポート29に流入する。」(段落【0014】末尾) 上記記載eを第1〜3図の記載を参酌して看ると、引用例3には、「スクロールに切り欠き52、53を形成して圧縮ガスを常時円滑に吐出するようにしたスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 エ.引用例4:特開昭60ー79189号公報 f.「第7図はラップ1bの巻き終り1dに、円柱状の膨出部4’を鏡板1a側からラップ1bのほぼ半分の高さまで形成した例を示している。また、第8図はラップ1bの巻き終り1dからある範囲(a〜b)に亘る膨出部14’をラップ1bのほぼ半分の高さまで形成した例を示している。」(第3頁左上欄第18行〜同頁右上欄第3行) g.「スクロールのラップの巻き終り部を、そのラップ外側が膨出するような形状に構成し、当該部分のラップ板厚を他の部分よりも厚くして剛性を増加させたので、逆転時において過大な応力が作用してもラップの破損を招くことがない。」(第3頁右上欄第12〜17行) 上記記載f、gを第7、8図の記載を参酌して看ると、引用例4には、「ラップ1bの巻き終り1dに、円柱状の膨出部4’を鏡板1a側からラップ1bのほぼ半分の高さまで段状に形成して、ラップの巻き終り部の剛性を増加させたスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 オ.引用例5:特公平5ー29796号公報 h.「第7図はラップ1bの巻き終り1dに、円柱状の膨出部4’を鏡板1a側からラップ1bのほぼ半分の高さまで形成した例を示している。また、第8図はラップ1bの巻き終り1dからある範囲(a〜b)に亘る膨出部14’をラップ1bのほぼ半分の高さまで形成した例を示している。」(第3頁左欄第27行〜同頁右欄第1行) i.「吸込口の圧力が異常に上昇した場合でもラップの破損を防止することができ」(第3頁右欄第14〜16行) 上記記載h、iを第7、8図の記載を参酌して看ると、引用例5には、「ラップ1bの巻き終り1dに、膨出部4’、14’を鏡板1a側からラップ1bのほぼ半分の高さまで段状に形成して、ラップの巻き終り部の剛性を増加させたスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 カ.引用例6:実願平3ー49461号(実開平5ー1882号)のマイクロフィルム j.「両スクロールの各渦巻き体の内外壁をインボリュート曲線に沿った形状とすると共に、外壁のインボリュート曲線の起点に対して伸開角180°の位置を内壁のインボリュート曲線の起点とし、両起点間を直線的に繋ぐ線を中央始端部における内壁面としている。従って、各スクロールの中央始端部は、インボリュート曲線に沿った外壁とほぼ直線状の内壁とを有する略半円形状となり、在来型の中央始端部に比してかなり厚手となる。そのため、各渦巻き体の中央始端部の強度が向上する。」(段落【0003】) 上記記載jを第4〜6図の記載を参酌して看ると、引用例6には、「渦巻部(1b、9b)をインボリュート曲線で形成するとともに、その中央部先端部分(1c、9c)のみを厚くしてインボリュート曲線に従わない形状にしたスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 キ.引用例7:特開昭59ー99085号公報 k.「トップクリアランス容積を実質的に零となし、損失を最小とする高効率、長寿命かつ製作容易な回転式流体機械を提供することを目的とし、それぞれ同一形状のうずまき体よりなる静止側うずまき体および旋回側うずまき体を具えたものにおいて、両うずまき体の当接点間に形成される中央部の小室容積が両うずまき体の相対的旋回に伴い実質的に零になるようにするとともに、両うずまき体をそれぞれ外側曲線と、内方に円弧を有する内側曲線と、上記両曲線を接続する円弧とで形成したことを特徴とする。」(第2頁右下欄第4〜15行) 上記記載kを第5図の記載を参酌して看ると、引用例7には、「両うずまき体の当接点間に形成される中央部の小室容積が両うずまき体の相対的旋回に伴い実質的に零になるようにするとともに、両うずまき体をそれぞれ外側曲線と、内方に円弧を有する内側曲線と、上記両曲線を接続する円弧とで形成したスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 ク.引用例8:特開昭60ー256581号公報 l.「両うずまき体をそれぞれインボリュート曲線よりなる外側曲線と、内方に半径Rの円弧を有するインボリュート曲線よりなる内側曲線と、上記外側曲線と上記半径Rの円弧とを滑らかに接続する半径rの円弧を有する接続曲線とで形成するとともに、パラメータβで決まるインボリュート曲線成立限界点間の内側曲線及び接続曲線の一部又は全部を当接から離すように両うずまき体間に僅少のすきまを与えた」(第4頁右上欄第13行〜同頁左下欄第2行) 上記記載lを第4、5図の記載を参酌して看ると、引用例8には、「両うずまき体をそれぞれインボリュート曲線よりなる外側曲線と、内方に半径Rの円弧を有するインボリュート曲線よりなる内側曲線と、上記外側曲線と上記半径Rの円弧とを滑らかに接続する半径rの円弧を有する接続曲線で形成したスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 ケ.引用例9:特開昭63ー201385号公報 m.「この発明は固定スクロールと旋回スクロールとの両渦巻き状のラップを、他のスクロールの端板に近接あるいは接触するこのラップの先端側の側面に階段状の切欠を設けたものである。・・・両渦巻きラップの先端側の側面に設けた切欠を互いにはめ合わせ、このラップのつけ根部の強度を低下させることなく、接触するラップ同士の径方向の幅を狭くさせて圧縮空間の容積を大きくさせられるようにしたものである」(第2頁左下欄第6〜17行) 上記記載mを第2〜4図の記載を参酌して看ると、引用例9には、「両渦巻き状のラップを、他のスクロールの端板に近接あるいは接触するこのラップの先端側の側面に階段状の切欠を設けたスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 コ.引用例10:特開平5ー215084号公報 n.「本発明は固定スクロールと旋回スクロールとの両渦巻き状のラップの両側面に階段状の切欠きを設けた。・・・固定スクロールと旋回スクロールとの両渦巻き状のラップの両側面に設けた階段状の切欠きを互いに噛み合わせる。このため、ラップのつけ根部の強度を確保すると共に、各ラップ厚さに対するラップ高さを小さく出来るため、加工が容易となり、ラップ精度の向上を図れるようにした。」(段落【0005】〜【0006】) o.「ラップ側面に設けた階段上の切欠きを全周にわたって設けた場合について説明したが、曲げモーメントの大きい巻き始めから、2πラジアンあるいはその近傍までに階段上の切欠きを設けてもよい。」(段落【0017】) 上記記載n、oを第2〜4図の記載を参酌して看ると、引用例10には、「固定スクロールと旋回スクロールとの両渦巻き状のラップの両側面において、曲げモーメントの大きい巻き始めから、2πラジアンあるいはその近傍までに階段上の切欠きを設けて、該階段状の切欠きを互いに噛み合わせたスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 サ.引用例11:特開平2ー81980号公報 p.「ラップ巻始め部の根元が細いとガス圧による大きい応力が発生するのでなるべく太くする。最も太くした状態は固定スクロールと旋回スクロールのラップが吐出行程の最後まで接点を持ち内部のクリアランスボリュームが零になるようにした凸円弧と凹円弧の組み合わせによる球根形状にする。一方ラップの先端にいくほど応力は小さくなるので先端部では大きい通路面積を確保できるインボリュート曲線と凹円弧からなる楔形状にする。巻始め部分以外は従来通り根元も先端も同じ形状のインボリュート曲線にする。そしてこれらの根元の曲線と先端の曲線を結ぶように側壁を形成する。・・・本発明のラップ形状は巻始め部において根元が厚く、先端へ行くにしたがって薄くなっているので根元の強度が向上し、先端部には固定スクロールと旋回スクロールを組み合わせたときに内側に広い空間ができる。この空間は吐出行程のガス通路になり従来の球根状ラップでは隙間が狭くなり、流体抵抗が大きくなっていたために圧縮動力損失が大きかったが、本発明では通路面積が大きいので流体抵抗が小さく、損失が少ない。」(第2頁左下欄第4行〜同頁右下欄第14行) 上記記載pを第2、3図の記載を参酌して看ると、引用例11には、「ガス圧による大きい応力が発生するラップ中央部の強度を高めるという技術的課題、および、この課題を解決するために、固定スクロールと旋回スクロールのラップをその内周中央部分においてのみ根元を厚くかつ先端に近づくにつれて薄くなる形状に形成したスクロール圧縮機」の発明が記載されているものと認められる。 (4)対比・判断 本件発明1、2と上記引用例1〜11記載の発明とを対比すると、上記引用例1〜11に記載のものは、いずれも「固定スクロール及び旋回スクロールの各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、該ラップの段部より根元側のラップ厚さを厚く、前記端板から離れた上方段のラップ厚さを薄く形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合う」事項を備えていない。 すなわち、引用例1に記載された発明においては、「両うずまき体に段付き逃げ部」が形成されているが、この段付き逃げ部は、吐出通路面積を大きくして圧力損失を低下させるものであって、吐出通路面積を大きくするためには、両うずまき体に形成された段付き逃げ部が噛み合うとは考えられず、また、引用例1に噛み合う旨の記載はない。 引用例2に記載された発明においては、「旋回スクロール2のラツプ先端部2fに段付部57」が形成されているが、この段付部57は、吐出部の流路面積を確保するものである。また、固定スクロールには段付部は形成されていない。 引用例3に記載された発明においては、「切り欠き52、53」が形成されているが、この切り欠き52、53は、圧縮ガスを常時円滑に吐出するものであって、吐出部の流路面積を確保するためには、スクロールに形成された切り欠き52、53が噛み合うとは考えられず、また、引用例3に噛み合う旨の記載はない。 引用例4に記載された発明においては、「ラップ1bの巻き終り1dからある範囲(a〜b)に亘って、ラップ1bのほぼ半分の高さまで形成された膨出部14’」が形成されているが、この膨出部14’は、ラップ1bの巻き終り部に形成されており、内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線のインボリュート始点の間に位置する中央部先端側の部分には、形成されていない。 引用例5に記載された発明においては、「ラップ1bの巻き終り1dに、鏡板1a側からラップ1bのほぼ半分の高さまで段状に形成された膨出部4’、14’」が形成されているが、この膨出部4’、14’は、ラップ1bの巻き終り部に形成されており、内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線のインボリュート始点の間に位置する中央部先端側の部分には、形成されていない。 引用例6に記載された発明においては、段差部は形成されていない。 引用例7に記載された発明においては、段差部は形成されていない。 引用例8に記載された発明においては、段差部は形成されていない。 引用例9に記載された発明においては、「両渦巻き状のラップの先端側の側面に階段状の切欠」が形成されているが、この階段状の切欠は、旋回スクロール14では内側に、固定スクロール13では外側に形成されており、各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、固定スクロールと旋回スクロールとにより対応する段部が噛み合うものではない。 引用例10に記載された発明においては、「固定スクロールと旋回スクロールとの両渦巻き状のラップの両側面において、互いに噛み合う階段状の切欠きを、巻き始めから2πラジアンあるいはその近傍まで」形成されているが、引用例10には、切欠がない部分と切欠がある部分との接続部における切欠の遷移状況、及び運転中におけるこの部分での噛み合い状況が記載されておらずこの階段状の切欠は、各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、固定スクロールと旋回スクロールとにより対応する段部が噛み合うものではない。 引用例11に記載された発明においては、「ラップをその内周中央部分においてのみ根元を厚くかつ先端に近づくにつれて薄くなる形状に」形成されているが、段差部は形成されておらず、また、両ラップ中央部の対応関係も不明である。 そして、この「固定スクロール及び旋回スクロールの各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、該ラップの段部より根元側のラップ厚さを厚く、前記端板から離れた上方段のラップ厚さを薄く形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合う」事項により、本件発明1、2は、簡単な加工で各うずまき状ラップの中央部先端側近傍の強度を高めるとともに、インボリュート部分の全てをつかって圧縮を行うことが可能となり、しかも中央部先端側の部分におけるガスの再圧縮を回避できるので、圧縮効率が向上する、という顕著な効果を奏するものである。 また、他に上記事項を、当業者にとって容易に想到することができたものとする根拠も見当たらない。 以上総合すると、本件発明1、2は、引用例1〜11記載の発明といえないばかりでなく、引用例1〜11に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1、2についての特許を取り消すことことができない。 また、他に本件発明1、2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 スクロール型流体機械 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 それぞれ端板にうずまき状ラップを立設してなる固定スクロールと旋回スクロールとを互いに偏心させ、かつ、位相をずらせて噛み合わせたことにより前記各端板間において前記各うずまき状ラップにより腹側密閉空間と背側密閉空間とを限界し、前記旋回スクロールを前記旋回スクロールの自転を阻止して公転旋回させることにより吸入口から前記腹側密閉空間及び前記背側密閉空間内に取り込まれたガスを圧縮させて吐出口から吐出するスクロール型流体機械において、 前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、該ラップの段部より根元側のラップ厚さを厚く、前記端板から離れた上方段のラップ厚さを薄く形成し、 前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合うことを特徴とする、スクロール型流体機械。 【請求項2】 請求項1に記載のスクロール型流体機械において、前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分とし、該中央部先端側部分のみを階段状に形成したことを特徴とする、スクロール型流体機械。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、例えばスクロール型圧縮機やスクロール型膨張機械として適用可能なスクロール型流体機械に関する。 【0002】 【従来の技術】 例えば、スクロール型圧縮機のスクロールラップの中央部形状は、スクロールの信頼性や性能に大きな影響を及ぼすので、従来から種々の形状が提案されている。例えば、特開昭59-58187号公報に一例が開示されているスクロールは、図6に示すように、旋回スクロールが固定スクロールの周りを(A),(B),(C),(D)の順に自転なしで不転的に旋回する際、両ラップの内端部に形成される最内包の容積が、同図(C)に示すように最終的にゼロとなる、いわゆる完全噛み合いプロファイルが性能上の要求から採用されることが多い。しかしながら、このタイプのスクロールプロファイルはスクロールラップ中央部先端に最大応力が発生し、この点から破壊に至ることが多い。これに対して、信頼性確保の点から、最大発生応力を低減する手段と、材料の疲労強度を増加させる手段とが各種提案されている。最大発生応力を低減する手段としては、中央部形状をなす曲線と、それより外側のインボリュート曲線の接合点をインボリュート伸開角の大きな方へ移動させることや、特開平6-66273号公報に開示され、図7に示すように、旋回スクロールと固定スクロールとのうち必要強度の大きい方を厚く、他方を薄くすることなどが提案されている。また実開昭61-171801号公報には、図8のうずまき体の噛み合い部の断面図に示すように、ラップ断面が台形となるスクロールも提案されているが、実際の加工が困難であるために、実用に供されていない。さらに材料の疲労強度を増加させる手段として、実公平1-28315号公報には、図9に示すように、ラップ根元にリブを設けることも提案されているが、この種の構造ではラップ根元のリブは圧力隔壁とならず、いわゆる完全噛み合いプロファイルを構成することが不可能であり、再圧縮動力増加により圧縮機効率が低下する等の問題がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、このような事情に鑑みて提案されたもので、スクロールラップの中央部先端側の強度が高く、加工が容易で、動力損失が少なく高効率で作動することができるような、スクロール型流体機械を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、請求項1の発明のスクロール型流体機械は、それぞれ端板にうずまき状ラップを立設してなる固定スクロールと旋回スクロールとを互いに偏心させ、かつ、位相をずらせて噛み合わせたことにより前記各端板間において前記各うずまき状ラップにより腹側密閉空間と背側密閉空間とを限界し、前記旋回スクロールを前記旋回スクロールの自転を阻止して公転旋回させることにより吸入口から前記腹側密閉空間及び前記背側密閉空間内に取り込まれたガスを圧縮させて吐出口から吐出するスクロール型流体機械において、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、該ラップの段部より根元側のラップ厚さを厚く、前記端板から離れた上方段のラップ厚さを薄く形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合うことを特徴とする。 【0005】 請求項2の発明のスクロール型流体機械は、請求項1に記載のスクロール型流体機械において、前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分とし、該中央部先端側部分のみを階段状に形成したことを特徴とする。 【0006】 【発明の実施の形態】 本発明の一実施例を図面について説明すると、図1はその第1実施例のスクロールラップの中央部を示す斜視図、図2は図1の平面図、図3は図1のスクロールの噛み合い状態を示す全体平面図、図4はその第2実施例のスクロールの中央先端部を示す平面図、図5は図4のラップを示すV-V矢視断面図である。 【0007】 本発明に係る固定スクロール及び旋回スクロールの各うずまき状ラップすなわち両スクロールラップ1、2の内端部は、図1〜図3に示すような形状をなしており、その断面は、図5(A)に示すように、階段状である。すなわち、インボリュート曲線で形成された固定スクロール1及び旋回スクロール2の各うずまき状ラップのインボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるインボリュート始点よりも中央部先端側の縦断面形状が、段差により端板から離れる上方段ほどラップ厚さが薄くなるように上下2段の階段状に形成されている。なお、上下2段の階段状に形成される各うずまき状ラップ1,2は、図5(A)に示すように、ラップの高さ方向の略中間部で上下2段に形成され、その根元側のラップ厚さがt+δ、上方段側のラップ厚さがt-δとなっており、根元側のラップ厚さを上方段側のラップ厚さより厚くしている。 【0008】 このような内端部形状をそれぞれ有する固定スクロール1、旋回スクロール2は、図3に示すように、固定スクロール上部ラップ11と旋回スクロール下部ラップ22、また固定スクロール下部ラップ12と旋回スクロール上部ラップ21同士は完全に噛み合っており、同図(A),(B),(C)の順に旋回スクロール2が固定スクロール1の周りを自転することなく不転的に旋回する。その際、同図(B)に示す最内包圧縮室30の容積を、同図(C)に示すようにゼロとなるようにすることができる。図4は図2の固定スクロール上部ラップ11と下部ラップ12とで極端に厚さを変えたスクロールプロファイルの例を示す。このプロファイルにおいても完全噛み合いは達成されており、極めて設計自由度の高いプロファイルであることが判る。さらに、図示は省略しているが、旋回スクロールと固定スクロールの中央部プロファイルが同一形状であるという制約は無く、強度が必要なスクロール側の下部、上部スクロールの一方の下部ラップが他方の上部ラップより厚いということも可能である。本発明の根本精神は、うずまき体中央部の強度を上げるために、各うずまき状ラップすなわち各スクロールラップの先端側のラップ厚さを薄くするとともに、相当分各うずまき状ラップすなわちスクロールラップの根元側のラップ厚さを階段状に厚くすることにある。このように、各スクロールラップの外側面を軸方向に段差のない曲面とするとともに、その内側面を根元から先端に向かって段差により厚さが階段的に減少する階段状としたことにより、加工容易で内端部が強いラップが得られる。ちなみに、図5(A)に示すように、曲げモーメントをM、断面係数をZ、曲げ応力をσとすると、応力σは、σ=M/Zで象徴的に表現される。つまり、板厚tを大にすると、Zは大となり、σは小となる。また、これを完全噛み合いスクロールに適用することができる。図5(B)は従来より慣用のうずまき体中央部の断面を示すものである。 【0009】 このような実施例によれば、各スクロールラップすなわち各うずまき状ラップの根元を厚く形成することができるので、うずまき状ラップの中央先端側部分のラップ剛性が高く、同部分での発生応力を低く抑えることが可能となる。また、固定スクロールと旋回スクロールとにより対応する段差部において完全噛み合いとなるから、最内包圧縮室の容積はゼロとなり、再膨張による動力損失の発生が防止される。上記実施例においては、すべての段が段差によりステップ状に変化するのであるから、従来の加工機で容易に加工可能であり、高性能,高強度の各スクロールラップすなわち各うずまき状ラップを安価に提供することができる。 【0010】 【発明の効果】 本発明によれば、下記の効果が得られる。 (1)請求項1に記載の発明のスクロール型流体機械によれば、それぞれ端板にうずまき状ラップを立設してなる固定スクロールと旋回スクロールとを互いに偏心させ、かつ、位相をずらせて噛み合わせたことにより前記各端板間において前記各うずまき状ラップにより腹側密閉空間と背側密閉空間とを限界し、前記旋回スクロールを前記旋回スクロールの自転を阻止して公転旋回させることにより吸入口から前記腹側密閉空間及び前記背側密閉空間内に取り込まれたガスを圧縮させて吐出口から吐出するスクロール型流体機械において、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分のみをその縦断面形状が、ラップ高さ方向の略中間部で上下2段の階段状に形成され、該ラップの段部より根元側のラップ厚さを厚く、前記端板から離れた上方段のラップ厚さを薄く形成し、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとにより対応する前記段部が噛み合うので、固定スクロール及び旋回スクロールともに根元を厚くすることができ、その結果各うずまき状ラップすなわちスクロールラップの剛性が高くなり、各うずまき状ラップの中央部先端側部分における発生応力が小さくなり、各うずまき状ラップの中央部先端側部分の強度が高く、また各うずまき状ラップの形状が段差により端板から離れる上方段ほど厚さが薄くなる形状であることにより加工が容易で、動力損失の少ない高効率のスクロール型流体機械を得ることができる。 (2)請求項2の発明のスクロール型流体機械によれば、請求項1に記載のスクロール型流体機械において、前記各うずまき状ラップの中央部先端側部分を、前記各うずまき状ラップの内側形状および外側形状を規定するインボリュート曲線で形成されたラップの該インボリュート曲線のインボリュート伸開角で決まるそれぞれのインボリュート始点の間に位置する部分とし、該中央部先端側部分のみを階段状に形成しているので、固定スクロール及び旋回スクロールともに根元を厚くすることができ、その結果、各うずまき状ラップの剛性が高くなり、各うずまき状ラップの中央部先端側部分における発生応力が小さくなり、各うずまき状ラップの中央部先端側部分の強度が高く、また、各うずまき状ラップの形状が、インボリュート曲線を利用して形成される形状である一方、段差により端板から離れる上方段ほど厚さが薄くなる形状であることにより、加工が容易で、動力損失の少ない高効率のスクロール型流体機械を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施例の固定スクロールの中央部を示す部分斜視図である。 【図2】図1の全体平面図である。 【図3】図2の固定スクロールとこれに対応する旋回スクロールとの噛み合い状態の変化を示す説明図である。 【図4】本発明の第2実施例の固定スクロールを示す全体平面図である。 【図5】同図(A)は図4のラップを示すV-V矢視断面図であり、同図(B)は従来より慣用のラップの断面図である。 【図6】特開昭59-58187号公報に記載されたスクロール型圧縮機の旋回スクロールの不転的旋回要領を示す作動原理説明図である。 【図7】特開平6-66273号公報に記載されたスクロール型圧縮機の旋回スクロールの不転的旋回要領を示す作動原理説明図である。 【図8】実開昭61-171801号公報に記載されたスクロール及びそのうずまき体の断面を示す図である。 【図9】実公平1-28315号公報に記載されたスクロールを示す斜視図である。 【符号の説明】 1 固定スクロール 2 旋回スクロール 11 固定スクロール上部ラップ 12 固定スクロール下部ラップ 21 旋回スクロール上部ラップ 22 旋回スクロール下部ラップ 30 圧縮室 31 吐出ポート |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-02 |
出願番号 | 特願2002-29482(P2002-29482) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(F04C)
P 1 651・ 537- YA (F04C) P 1 651・ 121- YA (F04C) P 1 651・ 113- YA (F04C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 刈間 宏信、尾崎 和寛 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
亀井 孝志 飯塚 直樹 |
登録日 | 2002-09-13 |
登録番号 | 特許第3350039号(P3350039) |
権利者 | 三菱重工業株式会社 |
発明の名称 | スクロール型流体機械 |
代理人 | 高瀬 彌平 |
代理人 | 青山 正和 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 宮田 金雄 |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 青山 正和 |