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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1105901
異議申立番号 異議2003-73520  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-08-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2004-09-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3450830号「画情報送信システム、スキャナ装置およびユーザ端末装置、並びにスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3450830号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3450830号の請求項1〜12に係る発明についての出願は平成13年2月2日にされたもので、平成15年7月11日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について正木 淳子より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月2日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1〜12を以下のとおり訂正する。
「【請求項1】 ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、
前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し、
前記ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置はメモリに前記IPアドレスおよび前記パスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信することを特徴とする画情報送信システム。
【請求項2】 ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、
前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し、
前記探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置は前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すことを特徴とする画情報送信システム。
【請求項3】 ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、
前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し、
前記ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置はメモリに前記IPアドレスおよび前記ユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出し、呼び出したIPアドレス宛てに前記スキャナ装置で読み取ったデータを送信することを特徴とする画情報送信システム。
【請求項4】 原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスとパスワードとを関連付けて格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、
前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された探索信号を受信する探索パケット受信部と、前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返す探索応答パケット送信部と、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスおよびパスワードを含むユーザ端末情報を受信する登録パケット受信部と、受信したIPアドレスを前記メモリに自動的に格納するアドレス帳管理部とを備え、
ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、前記パスワードの入力を要求する要求手段と、入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信するファイル送信部とを備えることを特徴とするスキャナ装置。
【請求項5】 原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスを格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、
前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された、前記ユーザ端末装置の所属情報を含む探索信号を受信する探索パケット受信部と、前記探索信号を受信し、この探索信号に含まれる所属情報が自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に、自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返す探索応答パケット送信部と、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を受信する登録パケット受信部と、受信したIPアドレスを前記メモリに自動的に格納するアドレス帳管理部とを備えるスキャナ装置。
【請求項6】 原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスとユーザ名とを関連付けて格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、
前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された探索信号を受信する探索パケット受信部と、前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返す探索応答パケット送信部と、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスおよびユーザ名を含むユーザ端末情報を受信する登録パケット受信部と、受信したIPアドレス及びユーザ名を前記メモリに自動的に格納するアドレス帳管理部と、
ユーザにより前記ユーザ名を入力する操作パネル部と、この操作パネル部からユーザ名が入力されると、これに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出し、呼び出されたIPアドレス宛てに読み取ったデータを送信するファイル送信部を備えるスキャナ装置。
【請求項7】 ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、
探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信する探索パケット送信部と、前記探索信号を受信したスキャナ装置が自動的に返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信する探索応答パケット受信部と、この探索応答パケット受信部が応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスおよびパスワードを含むユーザ端末情報を自動的に送信する登録パケット送信部とを備えるユーザ端末装置。
【請求項8】 ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、
自己の所属情報を含む探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信する探索パケット送信部と、前記探索信号を受信したスキャナ装置が自動的に返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信する探索応答パケット受信部と、この探索応答パケット受信部が応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信する登録パケット送信部とを備えるユーザ端末装置。
【請求項9】 ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、
探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信する探索パケット送信部と、前記探索信号を受信したスキャナ装置が自動的に返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信する探索応答パケット受信部と、この探索応答パケット受信部が応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスおよびユーザ名を含むユーザ端末情報を自動的に送信する登録パケット送信部とを備えるユーザ端末装置。
【請求項10】 ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納するスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法において、
ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置でメモリにIPアドレスおよびパスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信することを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法。
【請求項11】 ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納するスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法において、
探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置で前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すことを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法。
【請求項12】 ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納するスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法において、
ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置でメモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスをメモリから呼び出すことを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法。」

訂正事項b:明細書の段落【0009】及び【0108】を以下のとおり訂正する。
「【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、ユーザ端末装置からネットワーク上にブロードキャストした探索信号をスキャナ装置が受信し、ユーザ端末装置に対して少なくとも自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に返信された、少なくともユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を受信し、これをメモリに自動的に格納することとした。
そして、ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置はメモリにIPアドレスおよびパスワードを関連付けて格納し、ユーザがIPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードがIPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば画情報をユーザ端末装置に送信するようにした。また、探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置は所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すようにした。また、ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置はメモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納し、ユーザがユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスをメモリから呼び出し、呼び出したIPアドレス宛てに送信するようにした。」
「【0108】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザ端末装置で探索信号をブロードキャストし、それに自動的に応答したスキャナ装置からの応答信号からスキャナ装置のIPアドレスを認識し、これに対してユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、スキャナ装置にユーザ端末情報を自動的に登録させるので、ユーザがユーザ端末装置およびスキャナ装置のIPアドレスを調べることなく、ユーザがIT(情報技術)に関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、スキャナ装置のメモリからIPアドレスを呼び出し、原稿の読み取りを指示すれば、このIPアドレスが割り当てられたユーザ端末装置へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができるという効果を奏する。」

訂正事項c:明細書の段落番号【0062】を以下のとおり訂正する。
「【0062】
一方、PC3が起動し(ST503)、ネットワークスキャナコントローラアプリケーション31の起動を検知し、または、探索開始アクション(ユーザ登録の指示)を受けたことを検知したならば(ST504)、次のようにネットワーク1上のネットワークスキャナ2の探索を行う。まず探索パケット送信部35が探索パケットをネットワーク1上にブロードキャストし(ST505)、その応答を待つ(ST506)。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア 訂正事項aの請求項1に関して、請求項1に記載された「前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに格納し」を「前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し」と限定するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、特許明細書の段落【0010】の「これにより、ユーザ端末装置のユーザはそのIPアドレスを自分で調べることなく、ユーザ端末装置のIPアドレス等のユーザ端末情報をスキャナ装置に登録することができる。」という記載及び段落【0065】の「ユーザ端末情報の自動登録に関するものである」との記載からみて、この訂正は願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
請求項2〜12についても、同様である。

イ 訂正事項bは、訂正事項aにおいて訂正された記載との整合をとるために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項cは、特許明細書の段落【0062】における「探索開始アクション(ユーザ登録の指示)をから受けた」を「探索開始アクション(ユーザ登録の指示)を受けた」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とすることは明らかである。そして、訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人正木 淳子は、以下の甲第1〜4号証により、特許第3450830号の請求項1〜12に係る発明は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してなされたものであるから、これらの発明についての特許を取り消すべき旨主張している。
甲第1号証: 特開2001-028655号公報
甲第2号証: 特開2000-244694号公報
甲第3号証: 特開平09-204515号公報
甲第4号証: 特開平11-341065号公報

(2)請求項1〜12に係る発明
前記2.のとおり訂正請求は認められるから、本件請求項1〜12に係る発明(以下、本件発明1〜12という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記、2.(1)参照。)

(3)引用例
これに対して本件出願前に頒布された刊行物1〜4には以下の発明が記載されている。

刊行物1:特開2000-028655号公報(異議申立人提出の甲第1号証)
ネットワーク上に、クライアントPCと、複数または単数の原稿読取装置と、を接続し、前記原稿読取装置により得た画像データを前記クライアントPCに送信する画像配信システムにおいて、
前記クライアントPCは、ブロードキャストによりグルーピングされているネットワーク上の全ての原稿読取装置に対し装置情報の要求を送出し、ブロードキャストメッセージを受け取った原稿読取装置は、自機の装置情報をクライアントPCに対して返信し、クライアントPCは前記ネットワーク上の前記原稿読取装置を選択可能に表示し、選択された前記原稿読取装置へ宛先名称とネットワークアドレスを含む送信先情報を送信して送信先情報を設定し、前記原稿読取装置は、送信された送信先情報を内部保持し、当該送信先情報に基づいて前記クライアントPCに画像データを送信することを特徴とする画像配信システム。

刊行物2:特開2000-244694号公報(異議申立人提出の甲第2号証)
画像データを入力するデータ入力手段と、
前記画像データを出力するデータ出力手段と、
各部の動作指示を行う操作手段と、
ネットワークを介して情報の送受を行うネットワーク制御手段と、
ユーザに対して一意なユーザ識別情報を発行する識別発行手段と、
前記ユーザ識別情報に対応したユーザ領域を有する記憶手段と、
前記操作手段又は前記ネットワーク制御手段から、パスワード、メールアドレス、転送先アドレスを入力する手段と、
前記ユーザ識別情報に対応したユーザ領域内に、前記パスワード、前記メールアドレス、前記転送先アドレス、前記画像データを記憶する手段と、
前記ユーザ識別情報と前記パスワードとによってユーザの正当性を判定し、正当なユーザのみに前記ユーザ領域内における前記画像データの処理を許可する手段と、
を具えたことを特徴とする画像処理装置。

刊行物3:特開平09-204515号公報(異議申立人提出の甲第3号証)
ネットワークに接続されたネットワークスキャナ装置であって、クライアント端末からネットワークスキャナ装置に対して、端末名とともに読み取り解像度等のスキャン条件情報を事前に送り、ネットワークスキャナ装置にてパスワードを入力した上で上記スキャン条件情報を操作パネルのメニューから選択し、読み取り動作を行い、自動的に上記クライアント端末に対してスキャンデータを送ることを特徴とするネットワークスキャナ装置。

刊行物4:特開平11-341065号公報(異議申立人提出の甲第4号証)
ネットワークに接続された複数の機器間で通信を行うネットワーク通信の機器設定システムであって、
前記各機器は、
自らの機器属性と通信処理のための処理データとを記憶する記憶手段、
ユーザから発行されたコマンドの実行に必要な通信相手の機器属性を判定する判定手段、
前記ネットワークに含まれる他の機器に対して、前記判定手段によって判定された機器属性と一致するか否かを問い合わせる問い合わせ手段、
問い合わせられた機器属性と一致すれば自らの機器属性と処理データとを問い合わせ側の機器へ送信する応答手段、
他の機器からの応答結果に基づいて通信可能な機器を出力する出力手段、
前記出力手段から出力された通信可能な機器から所望の機器を選択してコマンド実行を許可する実行許可手段、および前記実行許可手段によって選択された機器の処理データに従って通信処理を行う通信処理手段を備える、ネットワーク通信の機器設定システム。

(4)本件発明1について
本件発明1と上記刊行物1〜4記載の発明とを対比すると、本件発明1の「ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信」するという発明特定事項は、いずれの刊行物にも記載されていない。

この点に関し、申立人は「甲第1号証の図3および甲第1号証段落0024に記載されるように、装置情報をスキャナ装置から受信したクライアントPCは、画情報の宛先名称と転送先のネットワークアドレスをクライアントPC上の操作画面で設定し、スキャナ装置に対して宛先名称とネットワークアドレスを送信する。この甲第1号証の宛先名称およびネットワークアドレスは本件特許発明のユーザ端末情報に対応し、したがって、この構成は本件構成要件dに相当する」(特許異議申立書14頁24行〜15頁5行)と主張している。しかしながら、同主張中にもあるように、刊行物1記載の発明は宛先名称とネットワークアドレスを送信する前に、ユーザによる宛先名称と転送先のネットワークアドレスの設定操作が必要であり、本件発明1のように「ユーザ端末情報を自動的に送信」することは不可能である。そもそも刊行物1記載の発明は「ユーザによる送信先アドレスの変更及び登録にかかる操作性を向上させる」(2頁2欄17〜19行)ことを目的とするものであり、ユーザによる送信先の変更登録操作が前提となっているのであるから、ユーザ端末情報を自動的に送信することにより「ユーザがユーザ端末装置及びスキャナ装置のIPアドレスを調べることなく、ユーザがIT(情報技術)に関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる」本件発明1とは、その前提からして異なるものである。
また、申立人は「甲第2号証では、イメージスキャナを含むイメージサーバとネットワーク端末から成る画像処理システムにおいて、ネットワーク端末からユーザ登録を行い、これによりネットワーク端末とイメージサーバの通信を介してユーザID、パスワード、メールアドレス、転送先アドレスのようなユーザ情報がイメージサーバのファイルシステム中に登録される。このネットワーク端末からイメージサーバへのユーザ情報の送信、及び送信されたユーザ情報の登録処理は本件構成要件dおよび本件構成要件eに相当するものである。」(特許異議申立書18頁6〜12行)とも主張している。しかしながら、刊行物2記載の発明もユーザによる入力操作を前提とするもの(10頁18欄22行〜11頁19欄9行)であるから、「自動的に送信」することは不可能であるし、そもそも「応答信号を受信したならば」、「自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報」を送信するものではない。

したがって、本件発明1は、刊行物1〜4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、ましてや各刊行物に記載された発明であると認めることもできない。

(5)本件発明2〜12について
本件発明2〜12はいずれも、上記(4)であげた発明特定事項と同義の発明特定事項を含むものであるから、上記(4)と同様である。

(6)結論
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1〜12についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜12についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画情報送信システム、スキャナ装置およびユーザ端末装置、並びにスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、
前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し、
前記ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置はメモリに前記IPアドレスおよび前記パスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信することを特徴とする画情報送信システム。
【請求項2】 ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、
前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し、
前記探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置は前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すことを特徴とする画情報送信システム。
【請求項3】 ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、
前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納し、
前記ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置はメモリに前記IPアドレスおよび前記ユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出し、呼び出したIPアドレス宛てに前記スキャナ装置で読み取ったデータを送信することを特徴とする画情報送信システム。
【請求項4】 原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスとパスワードとを関連付けて格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、
前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された探索信号を受信する探索パケット受信部と、前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返す探索応答パケット送信部と、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスおよびパスワードを含むユーザ端末情報を受信する登録パケット受信部と、受信したIPアドレスを前記メモリに自動的に格納するアドレス帳管理部とを備え、
ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、前記パスワードの入力を要求する要求手段と、入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信するファイル送信部とを備えることを特徴とするスキャナ装置。
【請求項5】 原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスを格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、
前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された、前記ユーザ端末装置の所属情報を含む探索信号を受信する探索パケット受信部と、前記探索信号を受信し、この探索信号に含まれる所属情報が自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に、自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返す探索応答パケット送信部と、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を受信する登録パケット受信部と、受信したIPアドレスを前記メモリに自動的に格納するアドレス帳管理部とを備えるスキャナ装置。
【請求項6】 原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスとユーザ名とを関連付けて格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、
前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された探索信号を受信する探索パケット受信部と、前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返す探索応答パケット送信部と、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスおよびユーザ名を含むユーザ端末情報を受信する登録パケット受信部と、受信したIPアドレス及びユーザ名を前記メモリに自動的に格納するアドレス帳管理部と、
ユーザにより前記ユーザ名を入力する操作パネル部と、この操作パネル部からユーザ名が入力されると、これに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出し、呼び出されたIPアドレス宛てに読み取ったデータを送信するファイル送信部を備えるスキャナ装置。
【請求項7】 ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、
探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信する探索パケット送信部と、前記探索信号を受信したスキャナ装置が自動的に返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信する探索応答パケット受信部と、この探索応答パケット受信部が応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスおよびパスワードを含むユーザ端末情報を自動的に送信する登録パケット送信部とを備えるユーザ端末装置。
【請求項8】 ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、
自己の所属情報を含む探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信する探索パケット送信部と、前記探索信号を受信したスキャナ装置が自動的に返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信する探索応答パケット受信部と、この探索応答パケット受信部が応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信する登録パケット送信部とを備えるユーザ端末装置。
【請求項9】 ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、
探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信する探索パケット送信部と、前記探索信号を受信したスキャナ装置が自動的に返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信する探索応答パケット受信部と、この探索応答パケット受信部が応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスおよびユーザ名を含むユーザ端末情報を自動的に送信する登録パケット送信部とを備えるユーザ端末装置。
【請求項10】 ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納するスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法において、
ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置でメモリにIPアドレスおよびパスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信することを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法。
【請求項11】 ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納するスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法において、
探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置で前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すことを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法。
【請求項12】 ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに自動的に格納するスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法において、
ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置でメモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスをメモリから呼び出すことを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画情報送信システム、スキャナ装置およびユーザ端末装置、並びにスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のネットワークスキャナの中に、パーソナルコンピュータ(PC)との通信にSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)のような電子メール転送プロトコルを利用しているものがある。この場合、ネットワークスキャナで読み取った画情報を例えばTIFFファイル等にファイル化し、電子メールメッセージに添付している。
【0003】
SMTPを用いてPCに電子メールメッセージを送信するには、PCに直接送信するルートと、メールサーバを経由するルートの2つのルートがある。アナログ情報である紙原稿をディジタル画像データに変換し、PCに蓄積し、利用するイメージスキャナとしては、リアルタイム性が求められるので、前者が好ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、SMTPでPCに直接電子メールメッセージを送信するためには、PCのIPアドレスを使用する必要があるので、ユーザが自分のPCのIPアドレスを調べる必要がある。しかし、自分で調べるにはネットワークやPCについてある程度の知識が要求され、また、煩雑な操作を強いられる。
【0005】
また、ネットワークスキャナに画情報の送信先となるPC等のIPアドレスを登録し、送信時(スキャン時)に登録内容から任意のPCのIPアドレスを呼び出すことにより、アドレス入力の手間を軽減することが考えられる。しかし、少なくとも1度はユーザがPCのIPアドレスを調べ、手入力する必要がある。
【0006】
また、近年、IPアドレスの有効活用等の観点からネットワーク端末に自動的にIPアドレスを割り当てるDHCPサーバが用いられるようになっている。DHCPサーバ管理下のネットワークでは起動のたびにPCに割り当てられるIPアドレスが異なっている。従って、ユーザはネットワークスキャナを使う度に、自己のIPアドレスを調べる必要が生じる。また、ネットワークスキャナの登録内容を変更する必要も生じる。
【0007】
SMTP以外にもネットワークスキャナからPCに画情報を直接送信するプロトコルを用いることができるが、その場合にも上記と同様に問題が発生する。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ユーザ端末装置のIPアドレスなどのユーザ端末情報を容易に登録できる画情報送信システム、スキャナ装置およびユーザ端末装置、並びにスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、ユーザ端末装置からネットワーク上にブロードキャストした探索信号をスキャナ装置が受信し、ユーザ端末装置に対して少なくとも自己のIPアドレスを含む応答信号を自動的に返し、ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して自動的に返信された、少なくともユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を受信し、これをメモリに自動的に格納することとした。
そして、ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置はメモリにIPアドレスおよびパスワードを関連付けて格納し、ユーザがIPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードがIPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば画情報をユーザ端末装置に送信するようにした。
また、探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置は所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すようにした。また、ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置はメモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納し、ユーザがユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスをメモリから呼び出し、呼び出したIPアドレス宛てに送信するようにした。
【0010】
これにより、ユーザ端末装置のユーザはそのIPアドレスを自分で調べることなく、ユーザ端末装置のIPアドレス等のユーザ端末情報をスキャナ装置に登録することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記課題を解決するために、ネットワークに接続された1または2以上のスキャナ装置および1または2以上のユーザ端末装置で構成され、前記スキャナ装置で原稿から読み取った画情報を、前記スキャナ装置のメモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に直接送信する画情報送信システムにおいて、前記ユーザ端末装置は探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記スキャナ装置は前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を返し、前記ユーザ端末装置は前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を送信し、前記スキャナ装置は前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに格納することを特徴とする画情報送信システムを提供する。
【0012】
この構成により、ユーザがユーザ端末装置およびスキャナ装置のIPアドレスを調べることなくユーザがコンピュータやネットワークに関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、スキャナ装置のメモリからIPアドレスを呼び出し、原稿の読み取りを指示すれば、このIPアドレスが割り当てられたユーザ端末装置へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができる。
【0013】
本発明において、ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置はメモリに前記IPアドレスおよび前記パスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信するようにしても良い。
【0014】
この構成により、画情報の送信に先だってパスワードの照合を行い、パスワードが一致したときにのみ画情報の送信を許可しているので、画情報をユーザ端末装置へ勝手に送信されるのを禁止することができる。
【0015】
また、本発明において、探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置は前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すようにしても良い。
【0016】
この構成により、例えば1つのネットワークにスキャナ装置を複数配置し、これらをユーザ端末装置の所属に応じて使い分けすることができると共に、ユーザ情報登録の際にユーザがこの使い分けを意識する必要もない。
【0017】
また、本発明において、ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置はメモリに前記IPアドレスおよび前記ユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出すようにしても良い。
【0018】
この構成により、メモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納しているので、原稿読取の際に識別し難いIPアドレスに代えてユーザ名によりユーザがメモリからIPアドレスを呼び出すことができ、操作をより簡単に行うことができる。
【0019】
また、本発明は、上記課題を解決するために、原稿を読み取り画情報を得るスキャナ部と、ネットワークを介して接続された1または2以上のユーザ端末装置に割り当てられたIPアドレスを格納するメモリと、前記メモリからユーザが呼び出したIPアドレスが割り当てられた前記ユーザ端末装置に対して前記画情報を直接送信する画情報送信部と、を具備するスキャナ装置であって、前記ユーザ端末装置から前記ネットワーク上へブロードキャスト送信された探索信号を監視し、前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を返し、前記ユーザ端末装置から自己のIPアドレスに対して送信された、少なくとも前記ユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を受信し前記メモリに格納することを特徴とするスキャナ装置を提供する。
【0020】
この構成により、ユーザがユーザ端末装置およびスキャナ装置のIPアドレスを調べることなくユーザがコンピュータやネットワークに関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、スキャナ装置のメモリからユーザ端末装置のIPアドレスを呼び出し、原稿の読み取りを指示すれば、このIPアドレスが割り当てられたユーザ端末装置へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができる。
【0021】
本発明において、ユーザ端末情報はユーザ端末装置のIPアドレスの他にパスワードを含み、メモリに前記IPアドレスおよび前記パスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信しても良い。
【0022】
この構成により、画情報の送信に先だってパスワードの照合を行い、パスワードが一致したときにのみ画情報の送信を許可しているので、画情報をユーザ端末装置へ勝手に送信されるのを禁止することができる。
【0023】
本発明において、探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返すようにしても良い。
【0024】
この構成により、例えば1つのネットワークにスキャナ装置を複数配置し、これらをユーザ端末装置の所属に応じて使い分けすることができると共に、ユーザ情報登録の際にユーザがこの使い分けを意識する必要もない。
【0025】
本発明において、ユーザ端末情報は、ユーザ端末装置のIPアドレスの他にユーザ名を含み、メモリに前記IPアドレスおよび前記ユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出すようにしても良い。
【0026】
この構成により、メモリにユーザ端末装置のIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納しているので、原稿読取の際に識別し難いIPアドレスに代えてユーザ名によりユーザがメモリからIPアドレスを呼び出すことができ、操作をより簡単に行うことができる。
【0027】
また、本発明は、上記課題を解決するために、ネットワークを介して接続された1または2以上のスキャナ装置から送信された画情報を受信する画情報受信部と、前記画情報を蓄積する画情報蓄積部とを具備するユーザ端末装置であって、探索信号を前記ネットワーク上へブロードキャスト送信し、前記探索信号を受信したスキャナ装置が返した前記スキャナ装置のIPアドレスを含む応答信号を受信したならばそのIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を送信することを特徴とするユーザ端末装置を提供する。
【0028】
この構成により、ユーザがユーザ端末装置およびスキャナ装置のIPアドレスを調べることなくユーザがコンピュータやネットワークに関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、スキャナ装置のメモリからIPアドレスを呼び出し、原稿の読み取りを指示すれば、このIPアドレスが割り当てられたユーザ端末装置へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができる。
【0029】
本発明において、ユーザ端末情報に自己のIPアドレスの他にパスワードを含めて送信するようにしても良い。
【0030】
この構成により、画情報の送信に先だってパスワードの照合を行い、パスワードが一致したときにのみ画情報の送信を許可しているので、画情報をユーザ端末装置へ勝手に送信されるのを禁止することができる。
【0031】
本発明において、探索信号に自己の所属情報を含めて送信するようにしても良い。
【0032】
この構成により、例えば1つのネットワークにスキャナ装置を複数配置し、これらをユーザ端末装置の所属に応じて使い分けすることができると共に、ユーザ情報登録の際にユーザがこの使い分けを意識する必要もない。
【0033】
本発明は、ユーザ端末情報に自己のIPアドレスの他にユーザ名を含めて送信するようにしても良い。
【0034】
この構成により、メモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納しているので、原稿読取の際に識別し難いIPアドレスに代えてユーザ名によりユーザがメモリからIPアドレスを呼び出すことができ、操作をより簡単に行うことができる。
【0035】
さらに、本発明は、上記課題を解決するために、ユーザ端末装置から探索信号をネットワーク上へブロードキャスト送信し、スキャナ装置で前記探索信号を監視し前記探索信号を受信したならば自己のIPアドレスを含む応答信号を返し、前記ユーザ端末装置で前記応答信号を受信したならば前記スキャナ装置のIPアドレスに対して少なくとも自己のIPアドレスを含むユーザ端末情報を送信し、前記スキャナ装置で前記ユーザ端末情報を受信し前記メモリに格納することを特徴とするスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法を提供する。
【0036】
この方法により、ユーザがユーザ端末装置およびスキャナ装置のIPアドレスを調べることなくユーザがコンピュータやネットワークに関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、スキャナ装置のメモリからIPアドレスを呼び出し、原稿の読み取りを指示すれば、このIPアドレスが割り当てられたユーザ端末装置へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができる。
【0037】
本発明において、ユーザ端末情報は自己のIPアドレスの他にパスワードを含み、スキャナ装置でメモリに前記IPアドレスおよび前記パスワードを関連付けて格納し、ユーザが前記IPアドレスを呼び出し画情報の送信を指示したとき、パスワードの入力を要求し入力されたパスワードが前記IPアドレスに関連付けられたパスワードと一致したならば前記画情報をユーザ端末装置に送信しても良い。
【0038】
この方法により、画情報の送信に先だってパスワードの照合を行い、パスワードが一致したときにのみ画情報の送信を許可しているので、画情報をユーザ端末装置へ勝手に送信されるのを禁止することができる。
【0039】
本発明において、探索信号はユーザ端末装置の所属情報を含み、スキャナ装置で前記所属情報を自己の所属情報と比較し両者が一致した場合に応答信号を返しても良い。
【0040】
この方法により、例えば1つのネットワークにスキャナ装置を複数配置し、これらをユーザ端末装置の所属に応じて使い分けすることができると共に、ユーザ情報登録の際にユーザがこの使い分けを意識する必要もない。
【0041】
本発明において、ユーザ端末情報は、自己のIPアドレスの他にユーザ名を含み、スキャナ装置でメモリに前記IPアドレスおよび前記ユーザ名を関連付けて格納し、ユーザが前記ユーザ名を入力したならばこれに関連付けられたIPアドレスを前記メモリから呼び出しても良い。
【0042】
この方法により、メモリにIPアドレスおよびユーザ名を関連付けて格納しているので、原稿読取の際に識別し難いIPアドレスに代えてユーザ名によりユーザがメモリからIPアドレスを呼び出すことができ、操作をより簡単に行うことができる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るネットワークスキャナが動作するネットワークシステムを示す概略図である。
LANなどのネットワーク1には、複数のネットワークスキャナ2およびこれらを利用するユーザの端末である複数のPC3が接続されている。
【0044】
図2は、上記実施の形態に係るネットワークスキャナの機能を示すブロック図である。
ネットワークスキャナ2において、スキャナ部11は、原稿をスキャンして画信号を得るスキャナ部11である。画像ファイル生成部12は、スキャナ部11が出力する画信号から画像ファイルを生成する。画像ファイルのデータ形式は、例えば、TIFF、GIF、JPEGなどであり得るが、この例ではTIFFである。ファイル管理部13は、この画像ファイル14をストレージ部15に格納する。
【0045】
ネットワーク通信部16は、ネットワーク接続インターフェイス回路(図示せず)によりネットワーク1に接続し、これを介してPC3と通信を行う。このネットワーク通信部16において、Lpd送信部17は、後述のPC3のLpd受信部33との間でLpr/Lpdプロトコルを実行する。ファイル送信部18は、このLpr/Lpdプロトコルの手順上でファイル管理部13が画像ファイル14をPC3へ転送する処理を実行する。
【0046】
さらにネットワーク通信部16において、探索パケット受信部19は、後述のPC3が送信する探索パケットを受信する。探索応答パケット送信部20は、探索パケット受信部19が受信した探索パケットに対する応答である探索応答パケットをPC3へ送信する。
【0047】
また、登録パケット受信部21は、後述のPC3が送信する登録パケットを受信する。一方、登録応答パケット送信部22は、登録パケットに対する応答として、登録応答パケットをPC3へ送信する。
上述のネットワーク通信部16の各部の機能は、この例ではCPUが実行するソフトウエアにより実現さているが、限定されるものではない。
【0048】
アドレス帳管理部23は、後述のユーザ端末情報を登録したアドレス帳データ24を管理する。操作パネル部25は、送信先のIPアドレスをアドレス帳データ24から読み出したり、未登録の場合IPアドレスを手入力するために用いられる。
【0049】
図3は、上記実施の形態に係るパーソナルコンピュータの機能を示すブロック図である。
PC3は、ネットワークスキャナ2を用いた画像読取処理を制御するネットワークスキャナコントローラアプリケーション31を実行する。このネットワークスキャナコントローラアプリケーション31において、ネットワーク通信部32は、ネットワークスキャナ2との間で通信を行う。このネットワーク通信部32中、Lpd受信部33は、上述のネットワークスキャナ2のLpd送信部17との間でLpr/Lpdプロトコルを実行する。ファイル受信部34は、このLpr/Lpdプロトコルの手順上でネットワークスキャナ2から画像ファイルを受信する処理を実行する。
【0050】
さらにネットワーク通信部32において、探索パケット送信部35は、ネットワーク1上に探索パケットを送出する。探索応答パケット受信部36は、この探索パケットに対して応答された探索応答パケットを受信する。
【0051】
画像ファイル保存処理部39は、ファイル受信部34が受信した画像ファイル14をストレージ部15に保存する。ファイル管理部13はストレージ部15に保存された画像ファイルを管理する。
【0052】
また、登録パケット送信部37は、ユーザ端末情報管理部40が管理するユーザ端末情報41から登録パケットを生成し、ネットワークスキャナ2へ送信する。登録応答パケット受信部38は、登録パケットに対して応答された登録対応パケットを受信する。
【0053】
外部アプリケーション管理部42は、PC3で実行される外部アプリケーション43を管理する。この外部アプリケーション43は、例えば、TIFFビュアーやAdobe photoshop(アドビ社登録商標)などの画像ビューア、画像編集アプリケーションである。
【0054】
このような機能を備えたネットワークスキャナコントローラアプリケーション31に代わって、同等の機能を備えた回路であっても良い。
【0055】
ネットワークスキャナ2とPC3との通信に利用しているLpr/Lpdプロトコルは、UNIXをOSとして採用しているホスト間で印刷データを送受信するために用いられている通信プロトコルである。このLpr/Lpdプロトコルでは、プリントサービスを受けたいホストは、あるホスト上で実行されているラインプリタデーモン(Lpd)に対して要求を出す。要求を受けたデーモンはそれをジョブとして受け付け、キューに入れて処理する。
【0056】
図4は、上記実施の形態に係るネットワークスキャナおよびパーソナルコンピュータ間での画像ファイル転送を示すシーケンス図である。
図4に示すように、送信側のネットワークスキャナ2が、ジョブの受信を指示するコマンド“Receive Job”を送信する(ST401)。これに対してPC3がACKを返したならば(ST402)、コントロールファイルの受信を指示するサブコマンド“Receive control file”を送信する(ST403)。このサブコマンドには、コントロールファイルの大きさとコントロールファイル名が含まれている。
【0057】
これに対してPC3がACKを返したならば(ST404)、ネットワークスキャナ2は、コントロールファイルをPC3へ送信する(ST405)。このコントロールファイルには、ユーザ名、画像ファイルのファイル名等が含まれている。
【0058】
次いで、PC3がコントロールファイルの受信を完了し、ACKを返したならば(ST406)、画像ファイル送信を示すサブコマンド“Receive data file”を送信する(ST407)。PC3がACKを返したこと(ST408)を確認したならば、画像ファイル(TIFFファイル)を送信する(ST409)。画像ファイルの受信を完了したならば、PC3はACKを返す(ST410)。
【0059】
上述のような画像ファイル転送で利用するLpr/Lpdプロトコルは、TCPベースであるので、コマンド、サブコマンド、コントロールファイルおよびデータファイルの送受信は、パケット単位ではなくストリーム単位により行われる。言い換えれば、ネットワークスキャナ2およびPC3の間でコネクションを確立して通信が行われる。このような通信プロトコルを、コネクション型通信プロトコルといい、他にftpプロトコルを用いることができる。従って、ネットワークスキャナ2からPC3へデータ送信を行うためには、ネットワークスキャナ2は、送信時にPC3のIPアドレスを知る必要がある。さらに、IPアドレスをユーザ名などと一緒にアドレス帳データ24に登録するには、IPアドレスおよびその他の関連情報(以下、これらをユーザ端末情報という)を取得する必要がある。
【0060】
以下、本実施の形態に係るネットワークスキャナでのIPアドレス取得方法について説明する。図5は、上記実施の形態に係るネットワークスキャナおよびパーソナルコンピュータ間でのユーザ端末情報登録動作を示すフロー図である。
【0061】
ネットワークスキャナ2が起動(ST501)すると、探索パケット受信部19は、ネットワーク1上で特定のポート番号のパケットを監視する(ST502)。
【0062】
一方、PC3が起動し(ST503)、ネットワークスキャナコントローラアプリケーション31の起動を検知し、または、探索開始アクション(ユーザ登録の指示)を受けたことを検知したならば(ST504)、次のようにネットワーク1上のネットワークスキャナ2の探索を行う。まず探索パケット送信部35が探索パケットをネットワーク1上にブロードキャストし(ST505)、その応答を待つ(ST506)。
【0063】
図6は、上記実施の形態に係る探索パケットを示す模式図である。この探索パケット60には、UDPパケットを用いている。探索パケット60の、IPヘッダ61において、宛先アドレスフィールドにブロードキャスト・アドレス(例えば、255.255.255.255)を指定し、また、送信元アドレスフィールドに、PC3のIPアドレスを指定している。
【0064】
また、IPデータフィールド62の先頭にあるUDPヘッダ63には、宛先ポート番号として、ネットワークスキャナ2の探索パケット受信部19が監視するのと同じポート番号が指定されている。
【0065】
さらに、UDPデータフィールド64には、このパケットが、探索パケットであることを示す各種情報を含んでいる。すなわち、このパケットがユーザ端末情報の自動登録に関するものであることを示す情報“Discovery”、このパケットが処理要求に関するものであることを示す情報“REQ”、さらに、パケットの送信元が属するグループ名を示す情報“Group”を含んでいる。
【0066】
UDPプロトコルは、TCPプロトコルのようにコネクションを確立する必要がないコネクションレス型の通信プロトコルであるので、ネットワークスキャナ2の探索に適している。
【0067】
ネットワークスキャナ2の探索パケット受信部19は、探索パケット60を受信し、情報“Group”を認識し、応答すべきグループ名か否か判断する(ST507)。例えば、自己の属するグループ名と一致していれば応答すべきと判断し、一致しなければ応答すべきでないと判断する。応答すべきでないと判断した場合、応答せずに再び探索パケット待ちの状態に戻る(ST508)。一方、応答すべきと判断した場合、探索応答パケット送信部20が探索応答パケットをPC3へ返す(ST509)。PC3が情報“Group”を含まない探索パケット60を送信した場合、ネットワークスキャナ2は、グループを超えた探索であると判断して必ず応答する。
【0068】
図7は、上記実施の形態に係る探索応答パケットを示す模式図である。この探索応答パケット70には、UDPパケットを用いている。探索応答パケット70の、IPヘッダ71において、宛先アドレスフィールドに探索パケット60の送信元、すなわちPC3のIPアドレス(以下、PC・IPアドレスとも言う)を指定し、また、送信元アドレスフィールドに、ネットワークスキャナ2のIPアドレスを指定している。
【0069】
また、IPデータフィールド72の先頭にあるUDPヘッダ73には、宛先ポート番号として、PC3の探索応答パケット受信部36が監視するのと同じポート番号が指定されている。
【0070】
さらに、UDPデータフィールド74には、このパケットが、探索応答パケットであることを示す各種情報を含んでいる。すなわち、図6に示す探索パケット60において、処理要求に関するものであることを示す情報“REQ”に代えて、処理応答に関するものであることを示す情報“ACK”を用いている。
【0071】
PC3が探索応答パケット70を受信すると、PC3の登録パケット送信部37は、登録パケットをネットワークスキャナ2へ送信する。
図8は、上記実施の形態に係る登録パケットを示す模式図である。この登録パケット80には、UDPパケットを用いている。登録パケット80の、IPヘッダ81において、宛先アドレスフィールドに探索応答パケット70を返したネットワークスキャナ2のIPアドレスを指定し、また、送信元アドレスフィールドに自己のIPアドレスを指定している。
【0072】
また、IPデータフィールド82の先頭にあるUDPヘッダ83には、宛先ポート番号として、ネットワークスキャナ2の登録パケット受信部21が監視するのと同じポート番号が指定されている。
【0073】
さらに、UDPデータフィールド84には、情報“Discovery”,“REQ”および“Group”に加えて、ユーザ名を示す情報“USER”、ユーザ端末情報(特にIPアドレス)の有効時間(リース時間)を示す情報“Lease period”、および、ユーザが指定したパスワードを示す情報“Password”を含んでいる。
【0074】
ネットワークスキャナ2の登録パケット受信部21が登録パケット80を受信すると、アドレス帳管理部23は、ユーザ端末情報を登録パケット80から抽出し(ST511)、アドレス帳データ24へ登録する(ST512)。その後、登録応答パケット送信部22は、PC3へ登録完了を知らせる登録応答パケット90を送信する(ST513)。
【0075】
図9は、上記実施の形態に係る登録応答パケットを示す模式図である。この登録応答パケット90には、UDPパケットを用いている。登録応答パケット90の、IPヘッダ91において、宛先アドレスフィールドに登録パケット80の送信元、すなわちPC・IPアドレスを指定し、また、送信元アドレスフィールドに、ネットワークスキャナ2のIPアドレスを指定している。
【0076】
また、IPデータフィールド92の先頭にあるUDPヘッダ93には、宛先ポート番号として、PC3の登録応答パケット受信部38が監視するのと同じポート番号が指定されている。
【0077】
さらに、UDPデータフィールド94には、このパケットが、登録応答パケットであることを示す各種情報を含んでいる。すなわち、図8に示す登録パケット80において、処理要求に関するものであることを示す情報“REQ”に代えて、処理応答に関するものであることを示す情報“ACK”を用いている。
【0078】
上記のようなユーザ端末情報登録のフローにおけるネットワークスキャナ2およびPC3の動作についてさらに詳細に説明する。
図10は、上記実施の形態に係るパーソナルコンピュータによるネットワークスキャナの探索処理手順を示すフロー図である。
【0079】
PC3において、まず探索再送カウンタをゼロにリセットする(STST1001)。次に、探索再送カウンタが探索再送回数最大値を超えているか否か判定する(ST1002)。初めは探索再送カウンタ=0であるので「NO」であり、ST1003へ進む。ST1003では、探索パケット60をネットワーク1上にブロードキャスト送信する。次いで、送信開始時間をPC3の内蔵時計から獲得する(STST1004)。その後、現在の時間(内蔵時計から取得)が、送信開始時間および探索応答待ち総時間の和よりも大きくなったか否か、すなわち、ブロードキャスト送信(ST1003)から所定の探索応答待ち総時間が経過したか否か判定する(ST1005)。
【0080】
ST1005で「NO」である場合、所定の1回あたりの探索対応待ち時間が経過するまで探索応答の受信を待つ(ST1006)。受信待ち中に探索応答パケット70を受信したか否か判定する(ST1007)。「YES」である場合、受信した探索応答パケット70が、自らが送信した探索パケット60に対するものであるか否か判定する(ST1008)。この判定は、例えば、探索応答パケット70のUDPデータフィールドの情報が“Discovery”でかつ処理応答が“ACK”かどうかを判定することにより行うことができる。「YES」であった場合、探索応答パケット70から取得したネットワークスキャナ2のIPアドレスを応答テーブルに登録する(ST1009)。登録終了後、ST1005に戻る。
【0081】
ST1008で「NO」であったならば、探索応答パケット70が自己の探索パケット60に対するものでないので探索応答パケット70を破棄してST1005に戻る。
【0082】
ST1007で「NO」、すなわち探索応答パケット70を受信しなかった場合、応答テーブルが空か否か判定する(ST1010)。ここで「YES」の場合、探索パケット60が何らかの理由でネットワーク1上から消失し、いずれのネットワークスキャナ2にも到達しなかった場合が考えられるので、探索パケット60を再度送信するために、探索再送カウンタを1インクリメントした後(ST1011)、ST1002へ戻る。次いで、ST1002で探索再送カウンタが最大値を超えていないか判定した後、ST1003〜ST1009を繰り返す。これにより、探索再送回数最大値まで探索パケット60の再送を行う。
【0083】
一方、ST1010で「NO」である場合、探索パケット60は有効に送信されているので、ST1005へ戻り、ST1006〜ST1009を繰り返すことにより、探索パケット60のブロードキャスト送信(ST1003)からの経過時間が、探索応答待ち総時間に達するまで、ネットワークスキャナ2からの応答を待つ。
【0084】
このようにして、PC3は、ネットワーク1上にある利用可能な全てのネットワークスキャナ2を探索し、そのIPアドレスを取得することができる。また、探索パケットの消失やネットワークスキャナ2の応答時間にずれがあっても確実に洩れなく探索することができる。
【0085】
一方、PC3がネットワークスキャナ2の探索を行っているときの、ネットワークスキャナ2の動作について説明する。
図11は、上記実施の形態に係るネットワークスキャナによるパーソナルコンピュータからの探索に対する応答手順を示すフロー図である。
【0086】
ネットワークスキャナ2は、PC3からの探索パケット60の受信を常時待っている(ST1101)。パケットを受信したならば(ST1102)、探索パケット60か否か調べる(ST1103)。受信したパケットに、図6に示すように情報“Discovery”および“REQ”が含まれていれば探索パケット60であると判定する。
【0087】
ST1103で探索パケット60であったならば(YES)、探索パケット60に含まれる情報“Group”からPC3のグループ名を認識し、自己の属するグループのグループ名と一致するか否か調べる(ST1104)。一致したならば(YES)、自己のIPアドレスを含む探索応答パケット70を作成し、PC3へ送信する(ST1105)。一致しなかったらならば(NO)、探索パケット60が情報“Group”を含んでいるか否か調べる(ST1106)。探索パケット60が情報“Group”を含んでいない(YES)のであれば、グループを超えた探索であると判断し、ST1105へ進み探索応答パケット70を送信する。一方、NOであれば、パケットを破棄してST1101へ戻る。このようにして、ネットワークスキャナ2は、PC3からの探索に応答し、自己のIPアドレスをPC3に通知するようになっている。
【0088】
次に、PC3がネットワークスキャナ2にユーザ端末情報を登録する手順について説明する。
図12は、上記実施の形態に係るパーソナルコンピュータにおいてネットワークスキャナへのユーザ端末情報登録手順を示すフロー図である。
【0089】
PC3は、応答テーブルが空か否か判定する(ST1201)。空であれば(YES)、登録手順を終了する(ST1202)。空でなければ(NO)、応答テーブルの先頭から一つめのネットワークスキャナ2のIPアドレス(登録宛先)を取り出す(ST1203)。次に、登録再送カウンタをゼロにリセットする(ST1204)。その後、登録再送カウンタが登録再送回数最大値を超えているか否か判定し(ST1205)、NOであるならば、図8に示す登録パケット80を作成、送信する(ST1206)。
【0090】
登録パケット80を送信したならば、PC3の内蔵時計から送信開始時間を取得する(ST1207)。次に、現在の時間が、送信開始時間および登録応答待ち総時間の和を超えているか否か、言い換えれば、送信開始から所定の登録応答待ち総時間が経過したか否かを判定する(ST1208)。
【0091】
ST1208で「NO」であるならば、所定の1回あたりの登録応答待ち時間が経過するまでネットワークスキャナ2からの登録応答パケット90を待つ(ST1209)。その後、登録応答パケット90を受信したか否か判定する(ST1210)。「YES」であるならば、自ら送信した登録パケット80に対する応答か否か判定する(ST1211)。ST1211で「YES」であるならば、登録応答パケット90から応答してきたネットワークスキャナ2のIPアドレスを抽出し、登録先テーブルに登録し(ST1212)、応答テーブルから登録宛先を削除した後(ST1213)、ST1201へ戻り、次の登録宛先へのユーザ端末情報の登録手順に移行する。
【0092】
一方、ST1210で「NO」であった場合、登録パケット80が消失しているおそれがあるので、登録再送カウンタを1インクリメントした後(ST1214)、ST1205へ戻り、登録再送カウンタが最大数を超えていないか確認した後、登録パケット80を再送し、ST1206〜ST1212を繰り返す。また、ST1211で「NO」であった場合、登録応答パケット90を破棄し、ST1208へ戻り、ST1209〜ST1212の処理を繰り返す。このようにして、ST1205で登録再送カウンタの値が登録再送回数最大値を超えるか、ST1208で登録パケット送信からの経過時間が、登録応答待ち総時間を超えたならば、登録宛先の電源が落ちているなどの理由により登録宛先が応答できない状態であるので、その登録宛先への登録をあきらめ、次の登録宛先への登録手順に移行する。このようにして、PC3は、応答テーブルに登録された全ての登録宛先に対してユーザ端末情報の登録を行う。
図13は、上記実施の形態に係るネットワークスキャナによるパーソナルコンピュータからのユーザ登録に対する応答手順を示すフロー図である。
【0093】
ネットワークスキャナ2は、PC3からの登録パケット80の受信を常時待っている(ST1301)。パケットを受信したならば(ST1302)、登録パケット80か否か調べる(ST1303)。受信したパケットに、図8に示すように情報“Discovery”、“REQ”および“USER”等が含まれていれば登録パケット80であると判定する。
【0094】
ST1303で登録パケット80であったならば(YES)、登録パケット80に含まれる情報“Group”からPC3のグループ名を認識し、自己の属するグループのグループ名と一致するか否か調べる(ST1304)。一致したならば(YES)、ST1305に進む。一方、一致しなかったならば(NO)、ST1306において、登録パケット80に情報“Group”が含まれているか否か調べ、含まれていないならば(YES)、グループを超えたユーザ端末情報登録の依頼であると判断してST1305へ進む。
【0095】
ST1305では、登録パケット80に含まれる情報“USER”を用いてアドレス帳データ24を検索し、同一のユーザ名が既に登録されているか否か調べる。「NO」であったならば、登録パケット80から抽出したユーザ名、PC・IPアドレス、グループ名、パスワードなどのユーザ端末情報をアドレス帳データ24に新規に登録する(ST1307)。
【0096】
一方、ST1305において「YES」であったならば、既に登録済みのユーザ端末情報のユーザ名およびパスワードが、登録パケット80に含まれる情報“USER”、“Group”がそれぞれ示すユーザ名およびパスワードと一致するか否か調べる(ST1308)。ST1308において「YES」であったならば、両者は同一であると判断し、登録パケット80から抽出したユーザ端末情報でアドレス帳データ24に既存のユーザ端末情報を上書きする(ST1309)。一方、ST1308において「NO」であったならば、両者は同一でないと判断して、ユーザ端末情報をアドレス帳データ24に新規に登録する(ST1307)。このようにして、ユーザ端末情報が誤って上書きされることを防止している。
ST1307およびST1309で登録が終了したならば、登録応答パケット90を作成、送信し(ST1310)、登録パケット80の受信待ち状態に戻る(ST1301)。上述のように、ネットワークスキャナ2は、PC3からの登録パケット80を受信するとユーザ端末情報を抽出し、アドレス帳データに新規に登録したり更新したりすることができる。
【0097】
上述のようにして、PC3からネットワークスキャナ2へ登録されたユーザ端末情報を用いて、ネットワークスキャナ2で原稿を読み取り、そのデジタル画像データをPC3へ送信する手順について説明する。
図14は、上記実施の形態に係るネットワークスキャナおよびパーソナルコンピュータ間でのデジタル画像データの送信手順を示すフロー図である。
【0098】
ネットワークスキャナ2では、まず、デジタル画像データの送信宛先を指定するのに、アドレス帳を用いるか否か選択する(ST1401)。この選択は、例えば、ネットワークスキャナ2でメニューからアドレス帳メニューを選択することによって行う。ST1401でアドレス帳を使うことを選択した場合(YES)、例えば、操作パネル部25に設けられたLCDにアドレス帳データ24に登録されたユーザ名を表示し、ユーザに選択させる(ST1402)。ユーザ名を選択すると、このユーザ名に関連付けしてアドレス帳データ24に登録されたPC3のIPアドレスが呼び出され、宛先として指定される。
【0099】
次いで、指定されたIPアドレスに関連付けしてパスワードが登録されているか否か判定する(ST1403)。YESである場合、LCDにパスワードの入力要求のメッセージを表示し、パスワードの入力を待つ(ST1404)。パスワードが入力されたならば、アドレス帳データ24に登録されたパスワードと照合する(ST1405)。両者が一致したならば(YES)、ST1406へ進むが、一致しなかったならば(NO)、処理を終了する。ST1403でパスワードがなかった(NO)場合も、ST1406へ進む。
一方、ST1401で「NO」であった場合、ユーザは操作パネル部25に設けられたキーを用いた宛先のIPアドレスの直接入力を受け付け(ST1407)、ST1406へ進む。
【0100】
ST1406では、ネットワークスキャナ2のスキャナ部11が原稿を読み取り、画情報を得る。次に、画像ファイル生成部12が、画情報をTIFF形式の画像ファイルに変換する(ST1408)。その後、上述のようにLpr/Lptプロトコルに従って、指定された宛先のPC3に画像ファイルを転送する(ST1409)。画像ファイルを受信したPC3では、画像ファイル保存処理部39が画像ファイルをストレージ部15に保存する(ST1410)。
【0101】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、PC3で、ネットワークスキャナコントローラアプリケーション31を起動したり、ユーザが探索開始アクションを行うだけで、ユーザがPC3およびネットワークスキャナ2のIPアドレスを調べることなく、ネットワークスキャナ2にPC3のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に登録できるので、ユーザがPCやネットワークに関する知識が乏しくてもネットワークスキャナ2にPC3のユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、ネットワークスキャナ2のアドレス帳データ24から宛先のIPアドレスを呼び出し、スキャナ部11に原稿の読み取りを指示すれば、PC3へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができる。
【0102】
また、登録パケット80に含めるユーザ端末情報に情報“Password”を含め、ネットワークスキャナ2のアドレス帳データ24に、IPアドレスおよびパスワードを関連付けて登録し、図14に示すように、原稿読取開始(ST1406)に先だってパスワードの照合(ST1403〜ST1405)を行い、パスワードが一致したときにのみ原稿読取を許可しているので、画像ファイルをPC3へ勝手に送信されるのを禁止することができる。
【0103】
また、登録パケット80のユーザ端末情報に情報“USER”を含め、ネットワークスキャナ2のアドレス帳データ24に、IPアドレスおよびユーザ名を関連付けて登録しているので、原稿読取の際に識別し難いIPアドレスに代えてユーザ名によりユーザがアドレス帳データ24からIPアドレスを呼び出すことができ、操作をより簡単に行うことができる。
【0104】
また、図13のST1305において、登録パケット80で指定されたユーザ名が既にアドレス帳データ24にあった場合、それらのパスワードを比較(ST1208)し、両者が一致したときだけユーザ端末情報を上書きするので、上書きの誤りにより正しいユーザ端末情報が消失するのを防止している。
【0105】
また、探索パケット60および登録パケット80に情報“Group”を含めることにより、ネットワークスキャナ2とPC3の所属グループが同じ場合にのみ、応答や登録を行うことにより、例えば1つのオフィスにネットワークスキャナ2を複数配置し、これらをユーザの所属に応じて使い分けすることができると共に、ユーザ情報登録の際にユーザがこの使い分けを意識する必要もない。
【0106】
本発明は、当業者に明らかなように、上記実施の形態に記載した技術に従ってプログラムされた一般的な市販のデジタルコンピュータおよびマイクロプロセッサを使って実施することができる。また、当業者に明らかなように、本発明は、上記実施の形態に記載した技術に基づいて当業者により作成されるソフトウエアを包含する。
【0107】
また、本発明を実施するコンピュータをプログラムするために使用できる命令を含む記憶媒体であるコンピュータプログラム製品が本発明の範囲に含まれる。この記憶媒体は、フロッピーディスク、光ディスク、CDROMおよび磁気ディスク等のディスク、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、磁気または光カード等であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザ端末装置で探索信号をブロードキャストし、それに自動的に応答したスキャナ装置からの応答信号からスキャナ装置のIPアドレスを認識し、これに対してユーザ端末装置のIPアドレスを含むユーザ端末情報を自動的に送信し、スキャナ装置にユーザ端末情報を自動的に登録させるので、ユーザがユーザ端末装置およびスキャナ装置のIPアドレスを調べることなく、ユーザがIT(情報技術)に関する知識が乏しくてもスキャナ装置にユーザ端末情報の登録を簡単に且つ確実に行うことができる。登録終了後は、スキャナ装置のメモリからIPアドレスを呼び出し、原稿の読み取りを指示すれば、このIPアドレスが割り当てられたユーザ端末装置へ画情報を送信し、蓄積することができるので、原稿読取の際にIPアドレスを入力する手間を省くことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態に係るネットワークスキャナが動作するネットワークシステムを示す概略図
【図2】
上記実施の形態に係るネットワークスキャナの機能を示すブロック図
【図3】
上記実施の形態に係るパーソナルコンピュータの機能を示すブロック図
【図4】
上記実施の形態に係るネットワークスキャナおよびパーソナルコンピュータ間での画像ファイル転送を示すシーケンス図
【図5】
上記実施の形態に係るネットワークスキャナおよびパーソナルコンピュータ間でのユーザ端末情報登録動作を示すフロー図
【図6】
上記実施の形態に係る探索パケットを示す模式図
【図7】
上記実施の形態に係る探索応答パケットを示す模式図
【図8】
上記実施の形態に係る登録パケットを示す模式図
【図9】
上記実施の形態に係る登録応答パケットを示す模式図
【図10】
上記実施の形態に係るパーソナルコンピュータによるネットワークスキャナの探索処理手順を示すフロー図
【図11】
上記実施の形態に係るネットワークスキャナによるパーソナルコンピュータからの探索に対する応答手順を示すフロー図
【図12】
上記実施の形態に係るパーソナルコンピュータにおいてネットワークスキャナへのユーザ端末情報登録手順を示すフロー図
【図13】
上記実施の形態に係るネットワークスキャナによるパーソナルコンピュータからのユーザ登録に対する応答手順を示すフロー図
【図14】
上記実施の形態に係るネットワークスキャナおよびパーソナルコンピュータ間でのデジタル画像データの送信手順を示すフロー図
【符号の説明】
1 ネットワーク
2 ネットワークスキャナ
3 パーソナルコンピュータ
11 スキャナ部
12 画像ファイル生成部
13 ファイル管理部
14 画像ファイル
15 ストレージ部
16 ネットワーク通信部
17 Lpd送信部
18 ファイル送信部
19 探索パケット受信部
20 探索応答パケット送信部
21 登録パケット受信部
22 登録応答パケット送信部
23 アドレス帳管理部
24 アドレス帳データ
25 操作パネル部
31 ネットワークスキャナコントローラアプリケーション
32 ネットワーク通信部
33 Lpd受信部
34 ファイル受信部
35 探索パケット送信部
36 探索応答パケット受信部
37 登録パケット送信部
38 登録応答パケット受信部
39 画像ファイル保存処理部
40 ユーザ端末情報管理部
41 ユーザ端末情報
42 外部アプリケーション管理部
43 外部アプリケーション
60 探索パケット
70 探索応答パケット
80 登録パケット
90 登録応答パケット
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-23 
出願番号 特願2001-26646(P2001-26646)
審決分類 P 1 651・ 851- YA (H04N)
P 1 651・ 121- YA (H04N)
P 1 651・ 113- YA (H04N)
最終処分 維持  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
深沢 正志
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3450830号(P3450830)
権利者 パナソニック コミュニケーションズ株式会社
発明の名称 画情報送信システム、スキャナ装置およびユーザ端末装置、並びにスキャナ装置へのユーザ端末情報登録方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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