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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1105903
異議申立番号 異議2003-73607  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-05-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2004-09-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3422267号「通信端末装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3422267号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3422267号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成10年10月29日に特許出願され、平成15年4月25日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人大木 茂により特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月3日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月16日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】 複写機能を備えた通信端末装置において、読み取った画像を格納する第1の画像メモリと、符号化された画像を格納する第2の画像メモリと、画像を記録する記録手段と、前記第1の画像メモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させるとともに該画像を符号化して前記第2の画像メモリに格納するように制御する制御手段を有することを特徴とする通信端末装置。」
を、
「【請求項1】 複写機能を備えた通信端末装置において、読み取った画像を格納する少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリと、符号化された画像を格納する第2の画像メモリと、画像を記録する記録手段と、読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する制御手段を有することを特徴とする通信端末装置。」
に訂正する。

イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】 前記制御手段は、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、記録終了後に次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。」
を、
「【請求項2】 前記制御手段は、前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、記録終了後に次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。」
に訂正する。

ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3の記載
「【請求項3】 前記第1の画像メモリは、複数の画像を格納可能であり、前記制御手段は、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、該記録と並行して次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。」
を、
「【請求項3】 前記第1の画像メモリは、複数の画像を格納可能であり、前記制御手段は、前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、該記録と並行して次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。」
に訂正する。

エ.訂正事項d
特許明細書段落【0009】の記載中の
「読み取った画像を格納する第1の画像メモリと、」
を、
「読み取った画像を格納する少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリと、」
に訂正する。

オ.訂正事項e
特許明細書段落【0009】の記載中の
「第1の画像メモリから画像を読み出して記録手段に記録させるとともに該画像を符号化して第2の画像メモリに格納するように制御する制御手段」
を、
「読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する制御手段」
に訂正する。

カ.訂正事項f
特許明細書段落【0010】の記載中の
「画像を格納できない場合には、制御手段は、」
を、
「画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、制御手段は、」
に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
ア.訂正事項aについて
まず、訂正事項aのうち特許請求の範囲の請求項1に記載された「読み取った画像を格納する第1の画像メモリ」を、「読み取った画像を格納する少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリ」と訂正する点については、第1の画像メモリについて「少なくとも2つのイメージメモリを含む」との限定を付加するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、かかる訂正事項は特許明細書の段落【0024】、【0045】や図2などに記載されていたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
次に、訂正事項aのうち特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記第1の画像メモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させるとともに該画像を符号化して前記第2の画像メモリに格納するように制御する制御手段」を、「読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する制御手段」と訂正する点については、制御手段についてその動作、すなわち、少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリ、第2の画像メモリ及び記録手段のこれらをどのように制御するのか限定して明確化するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、かかる訂正事項は特許明細書の段落【0027】〜【0034】に記載されていたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.訂正事項b、cについて
訂正事項b、cは、それぞれ特許請求の範囲の請求項2、3に記載された「制御手段」について、第2の画像メモリに格納することなく記録手段による記録を行わせるのは「前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合」である旨限定して引用する請求項1との関係を明確化するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮または明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、かかる訂正事項は特許明細書の段落【0010】〜【0012】、【0035】〜【0044】、【0046】などに記載されていたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ.訂正事項dないしfについて
訂正事項dないしfは、特許明細書の発明の詳細な説明を訂正するものであるが、いずれの訂正も、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)異議申立ての理由の概要
異議申立人大木 茂は、証拠として甲第1号証(特開平5-244361号公報)、甲第2号証(特開平6-40121号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、あるいは甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は取り消されるべき旨主張している。

(2)本件発明
上記2.で示したとおり、上記訂正は認められるから、本件請求項1ないし3に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 複写機能を備えた通信端末装置において、読み取った画像を格納する少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリと、符号化された画像を格納する第2の画像メモリと、画像を記録する記録手段と、読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する制御手段を有することを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】 前記制御手段は、前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、記録終了後に次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】 前記第1の画像メモリは、複数の画像を格納可能であり、前記制御手段は、前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、該記録と並行して次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。」

(3)引用刊行物に記載された発明
当審が通知した取消しの理由において引用した刊行物1及び2には、それぞれ図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.刊行物1:特開平5-244361号公報(甲第1号証)
(ア)「【請求項1】 画像入力装置からの画像データをページ単位で入力し、一旦ページメモリに記憶して該ページメモリに記憶された画像データを画像出力装置に送り出すと同時に、複数ページ記憶可能なデイスクメモリに記憶した後、繰り返し出力時は、該デイスクメモリから画像データを繰り返しページメモリに読み出して画像出力装置に送り出す画像処理装置において、
少なくとも1ペーシ以上の画像データを記憶可能なページメモリと、画像入力装置にセット可能なページ数以上の画像データを記憶可能なデイスクメモリと、ページメモリの管理情報と各画像データの画像履歴情報を記憶する記憶手段と、画像データの入出力その他各手段の制御を行う制御手段とを備え、制御手段は、画像入力装置から画像データを入力して画像出力装置に繰り返し出力する際、所望の画像データがページメモリにあるか否かを調べ、ページメモリにある場合には、デイスクメモリから画像データを読み出すことなく、ページメモリの画像データを画像出力装置に送り出し、所望の画像データがページメモリにない場合には、画像データをデイスクメモリからページメモリに読み出して画像出力装置に送り出すことを特徴とする画像処理装置。」(2頁左欄2〜22行)
(イ)「【0005】ところが画像データは、情報量が多いため複数枚の原稿を蓄積するには画像蓄積装置の容量が非常に膨大なものになってしまうという問題がある。そのため、一般には圧縮器を使って画像データを圧縮し蓄積することによって画像蓄積装置の容量を低減し、画像蓄積装置から読み出したデータは伸長器を使って伸長することによって元の画像データに復元して画像記録装置へ送り出すように構成している。」(2頁右欄17〜24行)
(ウ)「【0013】図1において、画像入力装置1は、例えばCCDセンサを使って光電変換により原稿の画像情報を読み取る一般的な画像読み取り装置である。ページメモリ2は、RAMの如き一時記憶手段であり、画像入力装置1から入力した画像データをページ単位で少なくとも1ページ以上記憶するものである。ディスクメモリ3は、磁気ディスクの如き大容量の記憶手段であり、ページメモリ2に記憶された画像データを順次読み出し蓄積記憶するものである。画像出力装置4は、画像入力装置1またはディスクメモリ3からページメモリ2に供給される画像データを読み出しレーザプリンタ、デジタルプリンタの如く被記録材に像形成するものである。」(3頁右欄9〜20行)
(エ)「【0019】一部目の複写ジョブが終了の場合、操作端末6において設定されたコピー部数全てが終了かチェックする(S111)。ここで、未終了の場合、2部目以降の繰り返し画像記録処理を開始する。本繰り返し処理においては、図2(c)に示す画像履歴情報を検索し(S112)、所望の画像データがページメモリ2にあるかチェックする(S113)。あればページメモリ2の画像データをそのまま画像記録装置3に送り出すが、ない場合は、所望の画像データをディスクメモリ3からページメモリ2に読み出した後(S114,S115)、画像記録装置3に送り出す。上記処理は、コピー部数全てを終了するまで繰り返し行う。」(4頁左欄39〜50行)
(オ)「【0031】なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記の実施例では、画像読み取り装置の画像データの場合について説明したが、PC(パーソナルコンピュータ)やFAX等の画像データの入力、繰り返し出力の場合にも同様に適用してもよい。」(5頁右欄23〜28行)

イ.刊行物2:特開平6-40121号公報(甲第2号証)
(ア)「【請求項1】 印刷部数情報が入力される印刷部数授受手段と、
印刷データをホストコンピュータより受信する通信手段と、
全ページ分の印刷データを記憶する記憶手段と、
前記通信手段により受信した印刷データをその記憶手段へ書き込む書き込み手段と、
その記憶手段に書き込まれた印刷データを読みだす再生手段と、
印刷するデータを用紙に印刷する印刷手段と、
その印刷手段と前記再生手段とを制御し、各ページを1度ずつそのページ順に印刷させる印刷制御手段と、
その印刷制御手段による印刷動作を前記印刷部数情報に基づいて繰り返させる制御手段と、
を備えたことを特徴とするプリンタ。」(2頁左欄2〜16行)
(イ)「【0021】また、印刷データが、印刷部数設定コマンドでなければ、印刷データが、印刷する文字もしくは図形を指示する描画コマンドであるかどうかの比較をする(S14)。もし、印刷データが、描画コマンドであったならば、CPU14は、その描画コマンドに従い、ページメモリ22に描画する(S15)。
・・・・(中略)・・・・
【0022】また、印刷データが、描画コマンドでなかったならば、印刷データがページ終了コマンドであるかどうかの比較をする(S16)。もし、印刷データがページ終了コマンドであったならば、ページ終了処理を行う。詳細には、図5のフローチャートに示すように、CPU14は、RAM16上のページメモリ22に保存されたビットマップデータをプリンタエンジンI/F17へ転送し、プリンタエンジン12を制御してプリントを実行する(S21)。その後、ハードディスクI/F19を制御し、ページメモリ22に保存されたビットマップデータをハードディスク13に記憶させる(S22)。さらに、RAM4上のページメモリ22をクリアし(S23)、印刷ページ数24に1を加算する(S24)。
【0023】また、図4のS16において印刷データがページ終了コマンドでなかったならば、印刷データがデータ終了コマンドあるかどうかの比較をする(S18)。もし、印刷データが、データ終了コマンドであったならば、データ終了処理を行う(S19)。詳細には、図7のフローチャートに示すように、まず、CPU14はRAM16上の印刷部数23が1であるかどうかを比較する(S41)。もし、印刷部数23が1であったならば、RAM16上のページメモリ22をクリアし(S44)、印刷ページ数24に0を設定し(S45)、データ終了処理を終了する。また、印刷部数23が1でなければ、ハードディスク13に保存されたビットマップデータをページメモリ22に1ページから最終ページまで順に読みだし、全ページの印刷を行う(S42)。次に印刷部数23より1減算し(S43)印刷部数23が1であるかどうかの比較(S41)のステップへもどす。」(3頁左欄50行〜同頁右欄50行)
(ウ)「【0030】また、ハードディスク13にページメモリ22に展開されたビットマップデータを記録する際に、周知のRunLength法やLZW法等を使用してデータ圧縮をし、2部目以降の印刷時にそれを展開して印刷してもよい。この場合、ハードディスク13の容量に比較して、より多くのページのソートされた複数部の印刷を行うことができる。また、ハードディスク13を他の外部記憶装置に置き換えた構成としてもよい。さらに、RAM16上に複数のページメモリ22を持ちそれを順に使用することにより、ハードディスク13への記録、読みだしを行わず2部目以降の印刷を行い、ハードディスク13を省いた構成としてもよい。」(4頁右欄21〜32行)

(4)対比・判断
ア.本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と刊行物1及び2に記載された事項とを対比すると、
刊行物1には、読み取った画像を一旦ページメモリに記憶し、該ページメモリに記憶された画像を読み出して1部目の全ページの記録を画像記録装置に行わせると同時に、圧縮してディスクメモリに記憶する点や、2部目以降は所望の画像がページメモリにあるか否かを調べ、ページメモリにある場合にはディスクメモリから画像を読み出すことなくページメモリの画像を読み出して前記画像記録装置に記録させ、ページメモリにない場合にはディスクメモリから画像をページメモリに一旦読み出してから、該ページメモリの画像を前記画像記録装置に記録させる点が実質的に記載され、また、刊行物2には、読み取った画像を一旦ページメモリに記憶し、該ページメモリに記憶された画像を読み出して1部目の全ページの印刷を印刷手段に行わせた後、該画像を読み出して圧縮してハードディスクに記憶する点や、2部目以降はハードディスクから全ページの画像を順に読み出してページメモリに展開し、該ページメモリの画像を前記印刷手段に印刷させる点が記載されているものの、そもそも刊行物1及び刊行物2に記載のものは、1部目の1ページから最終ページまでが順に記録(印刷)され、次に2部目の1ページから最終ページまでが順に記録(印刷)されるというように、いわゆるソートした状態で記録されるように制御することを前提としている点で本件請求項1に係る発明とはその前提において相違しており、本件請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する」点、なかでも「次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ」る点について記載も示唆もされていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記事項によって、第2の画像メモリから読み出した画像(2ページ以降のもの)についても、1枚目の画像が記録されるまでの時間を短縮することができるという効果が得られるものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ.本件請求項2、3に係る発明について
本件請求項2、3に係る発明は、それぞれ請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(なお、特許異議申立書の申立の理由の欄には、本件請求項2、3に係る発明に関しては何ら理由が示されていないので、そもそも本件請求項2、3に係る発明に対しての申立ては、不適法な申立てであるともいえる。)

(5)以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
通信端末装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複写機能を備えた通信端末装置において、読み取った画像を格納する少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリと、符号化された画像を格納する第2の画像メモリと、画像を記録する記録手段と、読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する制御手段を有することを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】 前記制御手段は、前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、記録終了後に次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。」
【請求項3】 前記第1の画像メモリは、複数の画像を格納可能であり、前記制御手段は、前記第2の画像メモリに画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、前記第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、該記録と並行して次の画像の読み取りを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機能を備えた通信端末装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
送受信機能を有する通信端末装置においては、送信時の原稿を読み取る読取部と、受信時の原稿を出力する記録部を有しており、この読取部および記録部を用いて、複写機能を実現している。
【0003】
通信端末装置における複写機能は、光学式の複写機とは異なり、原稿から読み取った画像を一旦メモリに蓄積し、蓄積された画像を記録部において被記録媒体上に記録する。そのため、例えば複数部の複写を行う場合でも、1回の読み取りでよいなどの利点を有している。
【0004】
図6は、従来の通信端末装置における複写機能時のデータの流れの一例を示す説明図である。図中、1は読取部、2,6はイメージメモリ、3,5はコーデック、4は画像メモリ、7は記録部である。読取部1で読み取った原稿上の画像は、一旦、イメージメモリ2に格納する。1ページ分の画像がイメージメモリ2に格納された後、コーデック3によってイメージメモリから画像を読み出し、符号化して画像メモリ4に蓄積する。画像メモリ4内の符号化された画像は、コーデック5によって読み出され、復号されてイメージメモリ6に一旦格納される。その後、イメージメモリ6に格納された画像は、記録部7において被記録媒体上に記録される。
【0005】
このような処理のうち、画像を読み取って符号化し、画像メモリ4に格納するまでの処理と、画像メモリ4から符号化された画像を読み出し、復号して記録部7で記録する処理は、並行して行うことができる。すなわち、1ページ分の画像が符号化されて画像メモリ4に格納されてしまえば、次の原稿の画像を読み取り、符号化して画像メモリ4に格納する処理を行うことができる。そのため、例えば複数部の複写を行って記録に時間がかかっている場合でも、読み取りは先に行うことができる。これによって、読み取りに要する時間を削減するとともに、次の複写や送信のために読取部1を提供することができる。
【0006】
しかし、最初の原稿を読み取らせてから複写された画像を得るまでに、符号化して画像メモリ4に一旦格納し、さらに画像メモリ4から読み出して復号するという処理を経るため、多大な時間を要する。そのため、利用者は最初の複写された画像を得るまでに長時間待たされるという問題があった。
【0007】
また、画像メモリ4には、例えば話中や予約機能により通信待ち状態の符号化された画像が多数格納される。そのため、画像メモリ4に空き領域がない場合もある。このような場合に従来の通信端末装置では、複写すべき画像を符号化して画像メモリ4に格納できないため、複写機能を利用できないという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、複写時に最初の原稿を読み取ってから複写された原稿が得られるまでの時間を短縮するとともに、画像メモリに空き領域がない場合にも複写を行うことができる、複写機能付きの通信端末装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複写機能を備えた通信端末装置において、読み取った画像を格納する少なくとも2つのイメージメモリを含む第1の画像メモリと、符号化された画像を格納する第2の画像メモリと、画像を記録する記録手段と、読み取った1ページ目の原稿上の画像を2つのイメージメモリの両方に書き込み、一方のイメージメモリに書き込まれた画像を読み出して1部目の記録を記録手段に行わせるとともに他方のイメージメモリに書き込んだ画像を読み出して符号化して第2の画像メモリに格納した後、記録処理と読取処理を並行して行い、前記記録処理として、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して前記記録手段に記録させる動作を指定された部数だけ記録するまで繰り返し、次のページの原稿の画像が前記第2の画像メモリに蓄積されている場合には、前記第2の画像メモリから次のページの原稿の符号化された画像を読み出して復号し前記第1の画像メモリの一方のイメージメモリに書き込むとともに1部目を前記記録手段に記録させた後、前記一方のイメージメモリから画像を読み出して2部目以降を記録手段に記録させ、前記読取処理として次のページの原稿が存在する場合には該次のページの原稿について読み取った画像を前記他方のイメージメモリに書き込み、前記他方のイメージメモリ内の画像を読み出して符号化し、第2の画像メモリに格納する処理を読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行うように制御する制御手段を有することを特徴とするものである。最初の原稿の画像は、読み取られて第1の画像メモリに格納された後、そのまま記録手段により記録出力するため、従来に比べて高速に記録画像を得ることができる。また、この記録出力と並行して画像を符号化し、第2の画像メモリに格納しているので、複数部の複写を行う場合でも従来と同様に1回の読み取りでよい。
【0010】
また、例えば第2の画像メモリに符号化した画像を格納できない場合あるいは複写部数が1部の場合には、制御手段は、第2の画像メモリに格納することなく記録手段による記録を行わせ、記録終了後に次の画像の読み取りを可能にする。これによって、第2の画像メモリに空き領域がない場合であっても、複写機能を実行させることが可能となる。
【0011】
このとき、第1の画像メモリが複数の画像を格納可能であれば、制御手段は、第2の画像メモリに格納することなく前記記録手段による記録を行わせ、該記録と並行して次の画像の読み取りを可能にすることができる。これによって、第2の画像メモリに空き領域がない場合であっても、複写機能を実行させることが可能となるとともに、記録中に次の原稿を読み取ることができ、複写速度を向上させることができる。
【0012】
なお、第2の画像メモリに符号化した画像を格納可能であっても、1ないし数部程度の複写を行う場合には、第2の画像メモリに格納することなく第1の画像メモリに格納された画像を記録手段によって記録するように構成してもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の通信端末装置の実施の一形態を示すブロック図である。図中、11は主制御部、12は表示部、13は操作部、14は読取部、15は記録部、16,17はコーデック、18はNCU、19はモデム、20は画像メモリ、21はRAM、22はイメージメモリ、23はROM、24はバスである。
【0014】
主制御部11は、装置全体を制御し、各部を動作させて、画像送受信機能、複写機能などを実現する。特に、複写機能においては、読取部14で読み取った画像をイメージメモリ22に格納後、コーデック16または17において符号化して画像メモリ20に格納するとともに、記録部15が空いていれば記録部15に転送し、記録を行わせる。また、画像メモリ20に空き領域がない場合には、符号化して画像メモリ20に格納せずに、そのまま記録部15に転送し、記録を行わせる。
【0015】
表示部12は、利用者に対するメッセージや、装置の状態を示すメッセージ、操作ガイダンスなど、種々の情報を表示することができる。操作部13は、利用者が各種の設定や指示などを行う際に用いられる。例えば、送信機能あるいは複写機能の選択や、複写部数の設定、選択した機能の実行指示などを行うことができる。
【0016】
読取部14は、原稿上の画像を読み取る。読み取った画像は、RAM21内のイメージメモリ22に格納される。読取部14としては、例えばイメージスキャナやディジタルカメラなどの種々の画像入力機器で構成することができる。
【0017】
記録部15は、RAM21内のイメージメモリ22に格納されている画像を、被記録媒体上に形成する。記録方法としては、例えば電子写真方式やインクジェット方式など、種々の方式を採用することができる。
【0018】
コーデック16,17は、画像の符号化および復号を行う。ここでは、コーデック16によってイメージメモリ22内の画像を符号化し、画像メモリ20に格納する。また、コーデック17によって画像メモリ20に格納されている符号化された画像を復号し、イメージメモリ22に格納する。ここでは画像の読込時の符号化と画像形成時の復号を同時に行うことができるように、2つのコーデックを備えているが、1つのコーデックで構成してももちろんよい。
【0019】
NCU18は、回線を制御して外部機器との通信を行う。モデム19は、送受信する画像データの変復調を行う。なお、通信は符号化データによって行うので、画像を送信する場合には、画像メモリ20に格納されている符号化された画像を送信する。また、画像を受信した場合には、符号化された画像を画像メモリ20に格納する。
【0020】
画像メモリ20は、送信すべきあるいは複写する符号化された画像や、受信した符号化された画像を蓄積する。
【0021】
RAM21は、主制御部11や他の各部の処理においてデータの保存が必要なときに用いられる。RAM21はイメージメモリ22を有している。イメージメモリ22には、読取部14で読み取った画像や、記録部15で記録する画像が格納される。なお、この例では読取動作と記録動作を並行して行えるように、読み取った画像を格納する領域と、記録する画像を格納する領域が設けられているものとする。これらの領域は、画像メモリ20に空き領域がない場合には、両方の領域を読取動作および記録動作に用いる。
【0022】
ROM23は、主制御部11の動作を規定したプログラムや、固定的なデータなどが格納されている。
【0023】
バス24は、主制御部11、表示部12、操作部13、読取部14、記録部15、コーデック16,17、NCU18、モデム19、画像メモリ20、RAM21、ROM23等を相互に接続しており、これらの間のデータ転送を可能にしている。
【0024】
図2は、本発明の通信端末装置の実施の一形態におけるイメージメモリの一構成例および複写機能実行時のデータの流れの概要を示す説明図である。図中、31,32はメモリ制御部、33,34はイメージメモリである。ここでは、イメージメモリ33には読み取った画像を格納し、イメージメモリ34には記録する画像を格納する。メモリ制御部31はイメージメモリ33を制御し、読取部14から送られてくる画像をイメージメモリ33に書き込み、またイメージメモリ33から読み出した画像をコーデック16に対して出力することができる。また、メモリ制御部31は、イメージメモリ34に対しても書き込みを行うことができる。メモリ制御部32はイメージメモリ34を制御し、コーデック17から送られてくる復号した画像をイメージメモリ34に書き込み、またイメージメモリ34から読み出した画像を記録部15に対して出力することができる。
【0025】
図3、図4は、本発明の通信端末装置の実施の一形態における動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、上述の図2に示した構成をもとに、複写機能を用いて複数部の複写を行う場合の動作の一例を説明する。例えば操作部13において、複写部数を指定した後、複写開始の指示を行うことによって、複写機能が開始される。
【0026】
S41において、画像メモリ20に空き領域が存在するか否かを判定する。もし、1ページ分以上の符号化された画像を格納できるだけの空き領域が存在しない場合には、S71へ進んで画像メモリ20を用いない複写動作を行う。画像メモリ20に空き領域が存在している場合には、S42以降の画像メモリ20を用いた複写動作を行う。なお、画像メモリ20が故障などによって利用できない場合も、空き領域が存在しない場合と同様の動作を行わせることができる。
【0027】
S42において、読取部14で原稿の画像の読み取りを開始する。S43において、読取部14で読み取った画像は、メモリ制御部31によってイメージメモリ33およびイメージメモリ34の両方に書き込む。その後S44において、メモリ制御部31は、イメージメモリ33に書き込んだ画像を読み出し、コーデック16に対して出力する。コーデック16はメモリ制御部31から渡された画像を符号化し、画像メモリ20に蓄積してゆく。それと同時に、メモリ制御部32は、イメージメモリ34に書き込まれた画像を読み出し、記録部15に対して出力する。記録部15は、メモリ制御部32から転送された画像を被記録媒体上に記録する。
【0028】
このようにして、1ページ目の原稿上の画像は、画像メモリ20を経由せずに記録部15で記録される。そのため、読み取りを開始してから1枚目の複写画像が記録されるまでの時間を短縮することができる。
【0029】
S45において、読取部14における1ページ目の原稿の画像の読み取りが終了し、またイメージメモリ33に蓄積された画像の符号化および画像メモリ20への蓄積が終了し、さらに記録部15における1枚目の記録が終了すると、少なくともイメージメモリ33を開放する。これ以後、S46〜S51における記録処理と、S61〜S65における読取処理を並行して行う。
【0030】
まず記録処理について説明する。ここまでの処理において、1ページ目の原稿画像の1部目の記録を行った。ここでは複数部の複写を行うので、さらに1ページ目の原稿画像についてさらに記録動作を行う。なおこの時点では、原稿画像がイメージメモリ34に格納されている。まずS46において、指定された部数だけの記録を行ったか否かを判定する。指定された部数だけの記録を行っていない場合には、S47ないしS48において、イメージメモリ34に格納されている画像をメモリ制御部32が読み出し、記録部15に転送する。記録部15は、転送されてきた画像を被記録媒体に記録する。この動作を、指定された部数だけ記録する間で繰り返し行う。
【0031】
S46において指定された部数だけの記録が終了したと判定されると、次のページの原稿について、指定された部数だけの記録を行う。なお、複数部の記録を行っている間に、S61〜S65において読取処理を行っており、さらに複写すべき原稿が存在する場合には、この時点で画像メモリ20に原稿の画像が符号化されて蓄積されている。
【0032】
S49において、次のページの原稿の画像が画像メモリ20に蓄積されているか否かを判定する。次のページの原稿画像が画像メモリ20に蓄積されている場合には、S50ないしS51において、画像メモリ20から次ページの原稿の符号化された画像を読み出し、コーデック17によって復号した後、メモリ制御部32を介してイメージメモリ34に画像を書き込む。これとともに、あるいは、イメージメモリ34に書き込んだ画像をメモリ制御部32で読み出しながら、記録部15において1部目の記録を行う。その後S46へ進み、2部目以降の記録動作を行う。
【0033】
このようにして各原稿の画像について、指定された部数だけの記録動作を繰り返し行う。S49において画像メモリ20に蓄積された次ページの原稿の符号化された画像がなくなると、複写処理を終了する。
【0034】
次に読取動作を説明する。1ページ目の原稿の1部目の記録が終了すると、上述のようにイメージメモリ33を開放し、次の原稿の読み取りを可能にする。S61において、次のページの原稿が存在するか否かを判断し、原稿が存在する場合には、S62において読取部14は次の原稿の読み取りを開始する。S63において、読取部14で読み取った画像は、メモリ制御部31によってイメージメモリ33に書き込まれる。読み取った原稿の画像をイメージメモリ33に蓄積後、S64〜S65において、メモリ制御部31はイメージメモリ33内の画像を読み出してコーデック16に転送する。コーデック16は転送された画像を符号化し、画像メモリ20に蓄積する。このような読取動作を、読み取るべき原稿がなくなるまで繰り返し行う。また、このような読取動作は、S46〜S51における記録動作と並行して行うことができる。S61において読み取るべき原稿がなくなると、読取動作を終了する。
【0035】
次に、画像メモリ20に十分な空き領域が存在しない場合の動作について説明する。この場合には、画像メモリ20を用いずに複数部の記録動作を行う。S71において、読取部14で原稿の画像の読み取りを開始する。S72において、読取部14で読み取った画像は、メモリ制御部31によってイメージメモリ33およびイメージメモリ34の両方、あるいはイメージメモリ34のみに書き込む。S73において、メモリ制御部32は、イメージメモリ34に書き込まれた画像を読み出し、記録部15に対して出力する。記録部15は、メモリ制御部32から転送された画像を被記録媒体上に記録する。このようにしてS74までにおいて、原稿の読み取りと1部目の記録が行われる。
【0036】
S75において、指定された部数だけの記録を行ったか否かを判定する。指定された部数だけの記録を行っていない場合には、S76〜S77において、メモリ制御部32は、イメージメモリ34内の画像を読み出し、記録部15に対して出力して記録する。この記録処理を、指定された部数となるまで行う。
【0037】
ある原稿について指定された部数だけの記録が行われると、S75からS78へ進み、S78において次の複写すべき原稿が存在するか否かを判定する。複写すべき原稿が存在する場合には、S71に戻って、次の原稿の読み取りおよび指定された部数の記録を行う。
【0038】
このようにして、画像メモリ20に空き領域がない場合には、画像メモリ20を用いずに、イメージメモリ34から直接、記録部15に画像を転送し、複数部の記録を行う。これによって、画像メモリ20に余裕がない場合でも、複写機能を利用することが可能になる。
【0039】
図5は、本発明の通信端末装置の実施の一形態における画像メモリに十分な空き領域が存在しない場合の動作の別の例を示すフローチャートである。上述の図4に示した画像メモリ20に十分な空き領域が存在しない場合の動作例では、指定された部数の記録が終了しないと次の原稿の読み取りを行っていない。しかし、図2に示すようにイメージメモリが複数存在する場合、あるいは、イメージメモリに複数ページ分の画像が格納可能な場合には、記録動作中に次の原稿の読み取りを並行して行うことができる。なお、メモリ制御部31およびメモリ制御部32は、イメージメモリ33,34のいずれもアクセス可能であるものとする。
【0040】
S81において、読取部14で原稿の画像の読み取りを開始する。S82において、読取部14で読み取った画像は、メモリ制御部31によってイメージメモリ33またはイメージメモリ34のいずれか一方に書き込まれる。ここでは、イメージメモリ33に書き込むものとする。S83において、メモリ制御部32は、イメージメモリ33に書き込まれた画像を読み出し、記録部15に対して出力して、画像の記録を開始する。
【0041】
S84において読取部14での1ページ分の原稿の読み取りが終了したことを確認後、S85において次に読み取るべき原稿が存在するか否かを判定する。存在すれば、S86において、読取部14は次の原稿の読み取りを開始し、S87において、読み取った画像をメモリ制御部31によりイメージメモリ34に書き込む。このとき、記録部15はイメージメモリ33に蓄積されている画像の記録を行っていてよい。これによって、画像の記録動作中に次の原稿の読取動作を行うことができ、処理時間を短縮することができる。
【0042】
記録部15は、イメージメモリ33に蓄積されている画像を、指定された部数だけ記録する。S88において、指定部数だけの記録が終了するのを待つ。指定部数だけの記録が終了すると、S89で読み取りが終了していることを確認後、S90においてイメージメモリ34に蓄積されている画像の記録を開始する。このとき、次の原稿の記録を開始する間で原稿の読み取りを待たなくてよいので、処理時間を短縮することができる。
【0043】
S91において、次に読み取るべき原稿が存在するか否かを判定する。存在すれば、S92において、読取部14は次の原稿の読み取りを開始し、S93において、読み取った画像をメモリ制御部31によりイメージメモリ33に書き込む。このとき、記録部15はイメージメモリ33に蓄積されている画像の記録を行っていてよい。記録部15は、イメージメモリ33に蓄積されている画像を、指定された部数だけ記録する。S94において、指定部数だけの記録が終了するのを待つ。指定部数だけの記録が終了すると、S95で読み取りが終了していることを確認後、S96においてイメージメモリ33に蓄積されている画像の記録を開始し、S85へ進む。
【0044】
このようにして、イメージメモリ33とイメージメモリ34を交互に用いて、読み取った原稿の画像を蓄積させ、記録部15において指定部数だけの記録を行う。これにより、イメージメモリのみを用いた複写動作の処理速度を向上させることができる。S85またはS91において、次の原稿がなくなると、S97において最後の原稿について指定された部数の記録の終了を待ち、複写機能を終了する。
【0045】
なお、イメージメモリの数が3つ以上、あるいは容量が3ページ分以上ある場合には、先読みする原稿のページ数を増加させ、処理速度を向上させることもできる。
【0046】
上述の例では、画像メモリ20の空き領域が少なく、符号化した画像を蓄積できない場合に、画像メモリ20に蓄積することなく、イメージメモリ22から記録部14に画像を直接転送して記録動作を行った。しかしこれに限らず、画像メモリ20に空き領域が存在する場合でも、例えば複写部数が1部のみの場合や、数部程度の場合には、画像メモリ20への蓄積を行わずに記録動作を行ってもよい。また、画像メモリ20が故障などによってアクセスできない場合も、同様にイメージメモリ22からの記録動作を行うことができる。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、最初の原稿を読み取って第1の画像メモリに格納するとともに、記録を開始するので、複写動作開始から1枚目の記録開始までの時間を短縮することができる。また、第1の画像メモリから直接、記録手段によって記録することによって、例えば符号化した画像を第2の画像メモリに蓄積できない場合でも、1ないし複数部の複写動作を行わせることが可能である。このとき、第1の画像メモリが複数の画像を格納可能であれば、処理速度の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の通信端末装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】
本発明の通信端末装置の実施の一形態におけるイメージメモリの一構成例および複写機能実行時のデータの流れの概要を示す説明図である。
【図3】
本発明の通信端末装置の実施の一形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】
本発明の通信端末装置の実施の一形態における動作の一例を示すフローチャート(続き)である。
【図5】
本発明の通信端末装置の実施の一形態における画像メモリに十分な空き領域が存在しない場合の動作の別の例を示すフローチャートである。
【図6】
従来の通信端末装置における複写機能時のデータの流れの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…読取部、2,6…イメージメモリ、3,5…コーデック、4…画像メモリ、7…記録部、11…主制御部、12…表示部、13…操作部、14…読取部、15…記録部、16,17…コーデック、18…NCU、19…モデム、20…画像メモリ、21…RAM、22…イメージメモリ、23…ROM、24…バス、31,32…メモリ制御部、33,34…イメージメモリ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-24 
出願番号 特願平10-309252
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松永 稔  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 井上 信一
加藤 恵一
登録日 2003-04-25 
登録番号 特許第3422267号(P3422267)
権利者 村田機械株式会社
発明の名称 通信端末装置  
代理人 柳澤 正夫  
代理人 柳澤 正夫  

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